機動戦士ガンダムSEED DESTINY 運命の破壊者 作:くまたいよう
ミネルバのデッキでは、収容したシャトルの点検が行われていた。爆発の危険は無いと確認されたが、元々ミネルバは試験運用艦であり先日のミラージュコロイド搭載艦の例があるので不用意な事は出来ないし設備も足りない、オーブの者達はそのまま上層部の指示が来るまでシャトル内で待機を通達していた。
それを命じた者は?
(運が良いのか悪いのか・・・・)
デュランダルはいずれ向き合うべき事が性急に来た分、慎重に考えていた。
【トダカ一佐】
(正直なところ、成る程・・・・上手いっ!)
この佐官の事は調べた。確かに、プラントにいるオーブ市民に話を聞いてもらうなら最良かもしれない人選だが?
【途中からと、その後は?】
それに気付いたからには、最早遠慮はいらないと確信した。正直、ギリギリのタイミングであったしハイネの報告からの結論として。
(感謝するよ【セツコ・オハラ】・・・・)
計画を練り直した後でも要となるシンにとっての【特効薬であり劇薬】となってくれた。尤も本人達にとって関係無くなるが。
(新入りや下っ端や弟子等はだね、水汲みやお茶入れ、おさんどん等から始めるべき理由を知るべきだったね)
そして、二日後。
整えた場に目当ての人物が通された。隣にいるサングラスとオールバックの髪型にしたギリギリな青年は今なら気付いたばかりを含めて用無しだ。似合ってないよと言ってあげる気もない。
「オーブ軍のトダカ一佐です。この度は無理なお願いを承諾して頂き・・・・」
礼節を弁えてはいるが甘いとデュランダルは見た・・・・隣にいる者の【不満】を見図れてはいないのだ。自分が言えた義理ではないから調子に乗らないようにしなければならないとして席に座って、秘書にお茶を出してもらった。聞くところのカガリが来たイメージによると紳士の嗜みとやらかと見なしてもらえれば楽だ。
「では、本題といきますか。移民して来たオーブの元市民に誠意を示したいらしいですが?」
「はい・・・・今回の件、何とぞ我が国からの移民達に不備が無きようにと」
ミラージュコロイドを搭載してプラントに接近していた戦艦をディテクターで探知して返り討ちにしたのは良いが、この防衛態勢の構築に関与していた元オーブ市民についてが問題だ。彼等の軍事関与に内外から圧力を掛けられて抗議してしまったオーブの立場からしたら問題過多で、当面はトダカの言うような事が尤もであろう。
「それは勿論です。しかし、貴方に頼んだと言う事は、アスハ代表は【橋渡し】を頼んだと言う事ですか?」
「えっ、いえ・・・・それは」
【橋渡し=仲介】
即ち、いずれカガリ自らが会談したいので、その為の前段階なのか問い掛けている。
深い意図があるか否かにしてもトダカはアスハ支持者と言うより宗教の徒呼ばわりされる程に盲目かどうか以前にやはり政治性は無い、デュランダルの本命が見抜けはしなかった。そもそもセイランからの提案では、要するに関わった者がいくべきであり、仮に拗れていたとしたら最低でも市民達に縁がある者が最適としたので選ばれただけだ。
戸惑うトダカな一方で遠回しにしているようにしか感じない二名のやり取りに耐えている者の心情にデュランダルは、内心で呆れ始めた。
(私はさておき、君が居るからトダカ一佐は中々に本題に切り出せないのだよ【アスラン・ザラ君】・・・・)
【アレックス・ディノ】
そう名乗って、髪型を変えてサングラスも掛けた青年は自分の要望にも周りの意図にも考えが足りな過ぎた。セイラン家からすれば、トダカに随行する者に、よりによってな人選をしてくれたので、有り難くカガリの要望通りにしたのだが。
的外れとされる意図で動きたがる者達が少しずつ増える反面で、皮肉な事に現状の経緯が一番わかりやすいと数えられる者がアスランだとデュランダルは確信した中でまとめ始め、トダカには最初の目的は達した言葉が聞けた。
「わかりました。先ずは元オーブの民にアスハ代表を始めとした方々が騒がしくしてしまった事に謝意を示したいとしている事を伝えておきましょう、次の会談はその結果が出てからとするので、数日お待ち頂くという形で一区切りをお願いします」
「では、元オーブの民は?」
「はい、私が責任を持って守ります。今はプラントの国民ですから当然の事です」
「ありがとうございます!」
一安心するトダカだが、そのやり取りに付き人として立つアレックス=アスランは密かな不満があった。カガリの為に来たハズが?
【不用意な事をしてしまったカガリの変わりに頭を下げに来た】
実際、その通りで、縁がある者の中で一番良心的な者が最適として人選が進んだのだが、アスランが求めるのはもっと性急な方向だ。実を言うと、違う可能性において再び袂を一時的にだが分かった親友と共通する要素がアスランにはあった。
だが?
「ところで、トダカ一佐。貴方は、連合の侵攻の際に【避難できた】同胞達のかなりの数を匿ってくれて、落ち着いてからプラント行きを奨めてくれたそうですね?」
「はい、私としては・・・・それ以外に・・・・」
「ふむ・・・・【スカンジナビア】ならば?【亡きシーゲル・クライン元議長の故国】だから・・・・其方の選択肢もあったかも・・・・しれ・・・・っ、いえ失礼しました。貴方の立場を考えない失言でしたね、どうかお聞き流しを・・・・っ」
【失言】
そう言って、頭を下げるデュランダルは立場上の傲慢さは無いとも取れるが、トダカとアスランは完全な不意打ちを受けた気分で考えに入れられかった。
【連合の侵攻を受けたオーブに真っ先に支援の手を差し伸べてくれたスカンジナビア】
トダカは自分が取るべき手は其方だったのではなかったかと後悔が広がった。慎重に慎重を重ねていたつもりが最後の最後で大いに揺るがされてしまったのだ。
尤も、トダカが基本的に【3隻同盟】の支持者である事を直接会って見て取ったデュランダルの策である。
(しかし、自分の【義理の父】となるハズだった存在の情報がおなざりだが、それで良いのかね?戦争が起きなければ学者にでもなる道を進んでいたハズでもな身だが、それでは私が危惧した形にならん限り勝者にはなれんよ)
次の会談からシャトルの修理を待つ迄は賓客用ホテルに滞在してもらう流れになるし、外出等は自由にとしたが、そこにもデュランダルの【探り】があるのだ。
(【ナチュラルにプラントの内部を直接見られる】・・・・マトモだった頃のパトリック・ザラを含む政治家ならば、断固反対だったが・・・・どうなるかな?)
(白々しいな・・・・その辺りも君は調べたのだろうギル?)
(わかっているさ、私は君と同じ失敗をするところだった・・・・君にはそうなる程に致命的だったが、私にとっては武器になるものがあるのだよ、時間と言う名の武器がな、そうだろう【ラウ】)
皮肉な笑いを浮かべる仮面の男がチェスの盤を置いたテーブルを挟んでデュランダルに向き合っていた。少なくとも幻ではないのだ・・・・元を正せば、この男こそが自分の理論を完全に破壊したハズとして心に焼き付けている。
【ナチュラルのクローン】
それが最適な機体に乗っただけで、キラ・ヤマトに戦意を向けた結果がスクリーンに出した映像。前大戦の最終決戦となった戦いの映像を密かに持ち出せていた。
デュランダルからしても、正に物語の最終決戦とやらでクルーゼが駆るプロヴィデンスの前に絶体絶命になるキラ・ヤマトのフリーダムの画像、それだけなハズがデュランダルからしても【当事者達の声】が聞こえるようだとして最後の場面になる。
『クルーゼ!!貴様に引導を渡すのはこの俺様だああっ』
一度撃退されたハズがいつの間にか、もう型落ちであるメビウス・ゼロに乗って再出撃したエンデュミオンの鷹と呼ばれた【クルーゼの息子】は決死の覚悟でメビウス・ゼロのガンバレルを展開しながら突撃して有線で雁字搦めにしてしまう。腐ってもナチュラルの中で遺伝子操作要らずに優秀な男の血筋ではなかった。
『撃て、キラ!俺がこいつを抑えているうちにっ!』
『そ、そんな』
『チッ、だが・・・・甘いな【ムウ】よ!』
そのままでもドラグーンを一斉に射出したクルーゼは笑っていた。この先を見通しているかのように。
『う、うわあああっ!』
このままでは後方にいる仲間達すらやられると理解したので一門だけ残ったビーム砲バラエーナで慟哭しながらムウもろともクルーゼを撃ったキラ。バラエーナのビームに撃ち抜かれたプロヴィデンスのコックピットの中でクルーゼがどういう顔をしているかわかる。
【笑っている】
生き死にの勝負には負けたが、戦いはクルーゼの勝ちだった。後に残した禍根は関係無く、キラ・ヤマトは自分で始めた戦いに負けた。
【守れなかった】
【救えなかった】
そして、自分達が育てた闇に未だ気付いていないし出自上の頑強な身体が無ければ死んでいただろう。
だからこその予定を見直した結果、最悪の場合に対する剣にすべきシンにも違う危険を想定すべき結論が出せた。
結局のところ?
【私達は、戦争を起こす理由になる価値は無いのだよ】
そもそも、自分達は結局【生み出された側】なのだ。そんなのを殲滅したがる者達と、それ等からの遠回し圧力に負ける者をマトモに向き合おうとする事でどうなると言うのだとデュランダルは嘆きすら浮かべた。
チェスの席で向き合ってるクルーゼは笑うのみだ。死んだ人間とすら語り合うのはオカルトな話だが、やはり夢や幻で片付けられないしデュランダルは繋がりがあると確信はしているし望んでいる。それが全てだった。
そして、デュランダルは自分が動かないで済む事を確信していた。自分達の運命を抗う以前に把握してない代償は大きい。
「こ、これは?」
「どう考えても【吹き込み】とやらか。私達はどう動くべきなのだろうな?」
ギルバード・デュランダル議長との次の会見まで二日後、友好国からの使者として外出は許可されているアレックスとトダカではあるが、そんな二人に宛がわれたホテルでルームサービスのコーヒーと共に届いたものがある。
【シン・アスカの外出先】
スティックシュガーの周りに巻かれた紙に記された場所に何があるかは知らないのが不幸であるが、そもそも目当ての人物でもある。
トダカが会って話をしたかったが、わざわざこんな形をする理由を考えた際に、思い当たりは?
【有るようで、見落としている】
権謀術数に疎いアレックスは、自分の本名がアスラン・ザラであるとの関連が思い浮かんではいるが、余りにも肝心な事を考えてなかったのだ。
【前大戦で、何故自分達が独立勢力として動けたのかを】
その事より、決断を迫られていた。この紙に記された場所に向かうか否か。
おさらいとして、高山漫画に一味足したようなクルーゼの最期が今作設定。