栄主と歌姫と白閃と   作:イ―グル

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今回は日常回です
2026年2月22日 改稿


第十話 何気ない日常

2033年7月2日 山本家

 

6:00 起床

ピリリリリリリリリ

 

目覚ましアラームの音が朝の静寂を切り裂く。

時計に目をやると6時丁度。

今日は土曜日。

普通の人なら二度寝しようとか考えるのであろうが、生活リズムを崩さないためにこうしている。

それに5年も同じような生活をしていれば、嫌でも身についてしまうのである。

まだ微かに残る眠気と格闘しつつリビングへと向かう。

リビングに着くと、やはり誰もいない。

そりゃ、今日は休日なのだから普段と同じ時間に起きようという方が稀だろう。

ソファーに座りながらテレビの局を適当に回していると、父が起きてきた。

「ふぁ~。お、おはよう仁。相変わらず早いな」

「おはよう父さん。起きてくるの早いね」

「なんだか最近は起きるのが早くなってな。起きるのが苦じゃなくなったんだ」

「いいことなんじゃないの。早起きは三文の徳って言うし」

「100円位の徳って聞いたけどな……、まあ、得をするだけありがたいか」

そんな雑談をしながら、父さんは食事用のテーブルの椅子に座る。

「なんかニュースあったか?」

「特には。平和だね」

だが、この平和がいつまでも続くとは限らない。

そのための自衛隊。

そのための俺達。

そんなことを思っていると母さんが降りてきて、朝食を摂ることになった。

 

 

7:30 朝食

朝飯を食べながら、その日の予定を共有する。

「なんか予定ある?」

「特には。買いたいものもないからな」

「あっ、洗剤切らしてた。仁、この後買いに行ってくれるかしら?」

「いいよ。他になんかある?」

そんな会話をしながら朝食を食べ終わり、各々の行動に移っていった。

 

9:30

母さんは家事へ、父さんは釣り具を見に。

一方、俺は母さんに頼まれた洗剤を買いに行っていた。

家事で今すぐ必要になるかもしれないし、早めに行ったほうがいいだろう。

ドラッグストアやスーパーが開くにはまだ早い時間帯なので、近所のコンビニへと向かっている。

向かっている途中、業務用の携帯電話が鳴った。

発信者を見ると島崎一尉だった。

ガチャ

「はい、山本です」

「おう、島崎や。休みの日なのに呼び出してすまんな」

「大丈夫です。どうしたんですか」

「今後のスケジュールについてや。その前に、周りに人いないか?」

この一言で、ASAWP計画についてだなと感じた。

「今大通りにいるので。少し待ってください」

急いで裏路地へと回る。

「お待たせしました。」

「4日の月曜日、『胎動』の試験やるから、こっち(東京湾基地)に来てくれへん?」

「わかりました。それ以外には何かありますか?」

「あと火曜日は企業との協議もあるから、それも頭に入れといてや」

「承知しました」

「おう、それじゃあな」

それにしても『胎動』の試験か。

最近はそれで基地の方に赴くことも多くなったな。

そんなことを思っていると、コンビニに到着した。

「いらっしゃいませー」

さて、どれを買うかな。

コンビニは色んなものを置いてある代わりに、サイズに制限があるからな。

それなりに量を買わなにゃらんが……

お、いつも買ってるやつの500mⅼがある。

これでいいか。

5個ほど同じものをかごに入れ、レジへと持っていく。

「お会計2360円です」

「3060円でお願いします」

そつなく買い物を終わらせ帰路へ着く。

ピリリリリリリリ

今度は個人用の携帯が鳴った。

発信者は星街さんだった。

「もしもし山本です」

「あ、仁君、おはよう〜」

「おはようございます。どうしたんです、いきなり」

電柱に寄り掛かりながら、話を続ける。

「今日の午後空いてる?」

「特に予定入れてないですけど、どうしました?」

「えっとね、今日、買い物行くんだけど着いてかない?」

まさかのお出かけのお誘いだった。

「いいですけど、どこに行くんです?」

「この前リニューアルオープンしたショッピングモールあるでしょ?あそこに行く予定」

「わかりました。どこに集合します?」

「うちの公営住宅の玄関でいい?」

「では、それで」

「うん、じゃあね〜」

アイドルとお出かけって大丈夫なのか?

まあ、俺と星街さんはただの知り合いだし、心配しなくていいか。

そんなことを思いつつ再び歩き出す。

その先に待つのは一体何なのか。

 

11:30 昼食

 

今日の昼食はそうめんか。

最近めっちゃ暑いし、ちょうどいいな。

「そういえばさ、父さん」

「どうした仁」

「星街さんといっしょに買い物行くことになったんだけど、なんか気をつけることとかある?」

「おっ、ついに仁もえデe」

スパン!

「ごめんね、仁。余計なこと毎回言って」

「いいよ。別にただの付き添いだと思ってるし」

そんな会話を交わしながら、そうめんは消えていった。

その後、カジュアルな服装に着替えた後、星街さんの住む公営住宅に向かった。

しばらく待っていると、すいちゃんが出てきた。

「ごめん待った?」

星街さんは白いワンピースに植物を編んだ帽子を被った、三つ編みだった。

「……」

「ん〜?もしかしてすいちゃんに見惚れちゃった〜?」

「そうですね、あまりにも綺麗だったので」

一瞬、星街さんが黙ったような気もしたが気のせいだろう。

「今回なに買うんですか」

「新しい服とかかな〜」

まあ、おしゃれは女の子にとって必須だしな。

そんな雑念とともに熱気の下を駅へと向かっていった。

 

13:10 

 

「あつい~。電車の中に戻りたい~」

「ショッピングモール着いたら涼しいですしそれまで我慢するしかないですね」

この世界でも7月の暑さは容赦なく、俺たちの体を溶かそうとする。

現在の気温 33度と表示された気温計が目に入る。

「気温見ると余計暑くなりますね……」

「見ないようにしてこ!見ないように!」

そんな会話をしてると、目当てのショッピングモールが見えてきた。

「それなりに大きいですね」

「地域最大級って言ってるらしいからね~」

パチンコ屋みたいな宣伝文句だな。

「さ、暑いし早く入ろ!」

「そうですね」

中に入ると通路の脇に様々な店が並んでいる。

館内地図を見ると、三階建てで4本の通路が中央の円から放射状に伸び特徴的な形だと分かった。

「五角形なんですね、この建物」

「ね、不思議だよね」

そんなことを疑問に思いながら、目当ての店を探す。

それにしても五角形がなんか引っかかるんだよな……。

「あっ、あった!」

「見つかりましたか」

その場所を見てみると、北の方の通路の先端の方の店で、洋服店だった。

さっそくその店へと移動し、服選びに付き合う。

その後、試着に対して意見を求められた

「こ、これ、どうかな仁君?」

見せられたのは、白めのジーンズに青のTシャツ。その上に薄手のカーディガンを羽織っていた。

「かわいいですね」

「む~、他になんかないの!」

「いや、だって綺麗な星街さんには何でも合うんですもの」

「ふ〜ん、ありがとう」

ちょっと不機嫌そうにしながら、口を尖らせる。

「?どうかしましたか?」

「ほんと、君女たらしだよね」

「えっ!突然なんですか⁉」

そうやって感想を言いあい、最終的に最初の物を購入することになった。

「ありがとうございましたー」

「それにしても、俺の意見なんか参考にしてよかったんですか?」

「いいの、いいの。一般人の意見って大事だから」

店を出ると、向かいにある水がめが目に入った。

「?なんでしょうこの水がめは」

「さぁ?隣の店は雑貨店だし、特に関係があるようには見えないけど……」

北に水がめ。なんか関係あるのか?

「どうしたの、考えこんじゃって」

「いえ、なんでも。行きましょうか」

 

次の目的の店は服飾品店だった。

「こういうところに来るのは初めてなんですよね」

「仁君はあんまり興味なさそうだもんね」

そのとおりである。

「ん~これもいいけどな~」

星街さんが探している間、丁度いい機会だと感じたので、店内を回ってみていると

「お客様、何かお探しでしょうか?」

店員に声をかけられた。

「はい、何かいいものがないかなと」

「では、こちらなどいかがでしょうか」

おすすめされたのは、中央に青い石がはめ込まれたブローチだった。

「これは?」

「ラピスラズリのブローチとなっております」

ラピスラズリか。

その青色には人を引き込んできた歴史があるが、それもよくわかる気がする。

あまりに濃い青色には十分すぎる魅力がある。

まるで、星街さんみたいだな。

ふと、彼女のことを思い出し、どうせなら贈ろうと思い購入することにした。

「2万3000円となります」

若干痛い出費となったが、まあいいだろう。

支払いを済ませると、後ろから星街さんがやってきた。

「ん?仁君何か買ったの?」

「はい。ちょっと興味が出たもので」

「へ~ちなみにどんなの?」

「それは秘密です」

「え~ケチ~」

顔を膨らませ、不服の意を示すが同時に可愛いとも思えてしまう。

「そんなかわいい顔してもダメです」

「そういうのナチュラルに出てくるよね、君」

「ん?どういうことです?」

(こいつ、わざとやってんのか?)

と、レジの店員は思うのであった。

 

その後、いくつかの店をめぐっていると時刻は3時を少し過ぎていた。

「もう3時ですか。早いものですね」

「ちょうどいいし、フードコートでなんか食べない?」

「いいですね。何にします?」

「ん~、そういえばさっき地図見たときカフェあったんだよね。そこにしない?」

「そうしましょうか」

そんなことを話しながら、エスカレーターは上へと昇って行った。

 

「ん~‼おいしい!!」

「いい店引けましたね」

チーズケーキを食べながら、そう言う。

「それにしてもここ、景色いいですね」

「ここ三階だしね」

さっきまで買い物していたのは2階で、フードコートは3階にある。

「秋とかだったら、大通りの紅葉とかが綺麗なんでしょうね」

「だろうね~。機会があればまた来たいね~」

なんてことないことを話しながら、時間は過ぎていった。

 

 

カフェを出た後、日が沈みかけるまで買い物していたら

「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」

「わかりました。ここで待ってるので、行ってきてください」

そう言って、自分は待つことになった。

「すいません。隣いいですか」

その方向を見ると、眼鏡をかけた男性がいた。

「あぁ、どうぞ」

「ありがとうございます」

そう言って、自分の隣の椅子に腰を下ろす。

「あなたも誰か待ってるんですか?」

「はい、妻と子供を」

「はあ~、ずいぶんとお若いのに」

「よく言われます」

その男性と話していると、とある話題があがる。

「このショッピングモールの形って特徴的ですよね」

「おっ、そこに気づかれましたか」

気づかれましたか?どういうことだ?

「この建物は風水を使って建築したんですよ。ほら、各方位に色んなものがあったでしょう?」

「もしかして、北にあった水がめも?」

「そうです。一階の中央にも土に植物が植えてありましたよね?」

確かに。なんか特徴的だなと思っていたら風水に対応していたのか。

それと同時に、とある疑問も浮かび上がってくる。

「はぁ~、勉強になります。それにしても、なぜそんなことを知っているんですか?」

「実は私、この建物の建設に建築家として関わっていたんです。その時に風水を利用して……」

まさかのこの建物の建築家だった。

「あなた~」

「パパ~」

その方向に振り向くと、栗毛のウマ娘の親子がいた。

「おっと、どうやら時間が来たみたいです。それではこれで」

「興味深い話が聞けて良かったです。ありがとうございました」

その人は妻子と一緒に行ってしまった。

「ごめん、待たせちゃった?」

「いえ、大丈夫ですよ。行きましょうか」

俺も星街さんが帰ってきたので出発することにした。

 

「パパ、あの人は?」

「偶然あった人。話せて楽しかったよ」

「はえ~。風水の話もしたの?」

「少しだけね」

「ふ~ん。そういえばパパ!私進路決まったの!」

「それはよかった。どこにするんだ?」

数年後、彼女がダートでG1を11勝することはまだ誰も知らない。

 

その後も買い物を続け、気づくと7時をまわっていた。

「ねぇ、最後に屋上から夜景見ない?」

そう誘われ、屋上へ行くと家の電気がイルミネーションとなって輝いていた。

「イルミネーションもいいけどさ、こういう景色もなんだか綺麗だよね」

「そうですね。こういう夜景は自分も好きですよ」

そうやって、しみじみと夜景を見ていたが星街さんが話を切り出す。

「あのさ仁君」

「なんでしょうか、星街さん」

「私をすいちゃんって呼んでくれない?」

…………。

え?

「い、いいんですか」

「恩人に敬語で呼ばれるのも何だしね」

少し考えた後、口を開ける。

「わかりました。4年も呼んでいたので変えるのは容易ではないかもしれませんが」

「ホント⁉やった!」

こっちもタイミングいいなと思ったので、こっちからも話題を切り出す。

「すいちゃん。こっちから渡したいものがあります」

「な、なに?」

若干緊張しながらも、しっかりと渡す

「これは?」

「ラピスラズリのブローチです。それを見たときすいちゃんに似合うなと思ったので」

「ありがとう仁君!今開けてみてもいい?」

「もちろん、いいですよ」

星街さんがゆっくり箱を開けると、その輝きを持つラピスラズリが姿を表した。

「すごい綺麗!着けてみるね?」

そう言って笑顔を見せた。

あぁ、笑顔がやっぱり似合うな。

「ありがとう仁君!大切にするね!」

やっぱりすいちゃんは今日もかわいい。

そんなことを感じながら、その笑顔を見ていた。

 

帰宅後 星街家にて

楽しかったな〜今日のお出かけ。

でも…

今日のが楽しかったのは、ただ買い物ができただけじゃないかもしれない。

この気持ちって何なんだろうなぁ





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