栄主と歌姫と白閃と   作:イ―グル

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ちなみに、いままでの機能は大半が他の機体にも受け継がれています。


第二十二話 ENEMY

2034年8月26日 トレセン学園合宿所自衛隊派出所格納庫

「計器異状なし。動作チェックに入ります」

この日は夏合宿中で最後の機動試験。

と言っても、伊豆諸島の方でやる火器試験なので、トレセンに戻っても試験は変わらないのだが。

そう思いながら、計器のチェックを行った後各部の動作チェックに移る。

今回の『巨人』の兵装は

右腕 34式光波剣

左手 試作型34式粒子圧縮砲

両肩  33式両用誘導弾20発

左手に搭載されている試作型34式粒子圧縮砲は先月の末に完成した試作型ビームライフルであり、本格的な試験はこれからで、今回のデータを生かして現在開発している『巨人』の後継機の主兵装の一つが開発される予定である。

それ以外の兵装はこれまでの物と変わらない。

ちなみに後継機の開発には転移してきた機体のデータを使うらしい。

その転移してきた機体を目にしたことはないが、どんな機体になるか楽しみだ。

そうして各部のチェックが終わり、いよいよ試験だ。

いつもと変わらない動作感覚に安心しながら一歩、また一歩と踏み出す。

出発地点に移動し、周囲に誰もいないのを確認して、ブースターを噴射する。

ドシュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!

この音もいつもと変わらんな。

その後、30分の飛行の後に試験地域に到達した。

試験地域は曇りであり、なんだ良くないことが起こりそうだが、気にせず続行する。

今回の試験内容はビーム兵器と他種兵装とのかみ合わせだ。

ビーム兵器はGNドライブから直接エネルギーを取るので、GNドライブで発電した電力を使うことで駆動する他種兵装とのかみ合わせがどうか不明なので、試験を行うことになった。

まずは、ビームライフル単体の試験を行う。

海上に用意されたボート改造の標的に向けて何発か試射する。

トリガーを引くと、空気を焼くビームが発射される。

耳に残る特徴的な音が鳴り響き、標的が溶解する。

流石ビーム兵装。撃ったら速攻で命中するな。

まあ、レーザーと同じく光の速度の弾速なんだからそれもそうか。

「粒子圧縮砲単体の試験終了。同時使用試験に移ります」

次はパルスブレードとのかみ合わせ試験だ。

ちなみにこの試験は命中率の試験も行っているので、より集中しなくてはいけない。

パルスブレードを斜め後ろに向けると、緑色で20mほどの光の剣が出現する。

そのまま、ビームライフルを構えて打ちながら接近する。

今のところは目立った出力ダウンは感じない。

 

前方にあった三つの目標の内、二つに命中する。

そして中央に位置する目標をパルスブレードで溶断する。

よし、何とか予想通りにできた。

その後は33式とのかみ合わせを行い、試験は終了

 

するかに思われた

 

「こちらドラゴン1!マッハ6で小型の飛翔体が接近中!」

周辺を哨戒中のP-1から報告が入った。

ビービービービービー

その十数秒後、こちらでも接近警報が鳴り始めた。

急いでブースターを吹かし、回避行動をとる。

レーダー画面を見直すと、小さいが何かが高速で迫ってきている。

その様子は去年にあったドローン爆発事件のようだった。

まさか同一人物によるもの?

そんなことを考えていると、残り20㎞のところまで接近しておりとにかく急いで離れる。

そして数秒後

ドガァァァァァン!!!!

自分がいた場所でとてつもない爆音が空気を揺らした。

なんだ⁉一体何が起こっているんだ⁉

情報を整理できないままわずかな時間が流れると、突如通信回線が開かれた。

「初めましてですね、自衛隊の皆様。そして山本仁」

その時に更なる疑問が浮かんできた。

なぜ俺の名前を知っている⁉

どうして自衛隊の回線を使用できる⁉

その疑問をひき潰すように、更なる情報が入ってくる。

「こちらドラゴン2!高速で正体不明の機体が接近中!」

くそったれが!どんどん悪い情報入ってきやがる!

というかこの声ってまさか…

「キャロり~ん。相変わらず丁寧なあいさつだねぇ」

やっぱキャロりんか!!

ていうことは話しかけてるのはもしかして

「おい!!聞こえているんだろ!

 

         主任!!

思い切って開いてい居る回線に対して怒鳴る。

俺は前世界のACシリーズについての見分が幾らかあるため、この声で分かった。

「おや、どうやら向こうはあなたのことを知っているようですね」

「へぇ~、意外なこともあるもんだね」

自分たちの名前が当てられたというのに、反応は薄い。

「貴様ら!何が目的だ!」

再び怒号がコックピットと回線を震わせる。

「まあまあ、そう怒らないの」

「怒らないでいられるか!こんな状況!」

「さあ、キャロりん始めようか」

そんな俺を無視し、キャロりんと話す主任。

「人類の可能性の検証を」

 

 

戦いの火ぶたは切って落とされた。

主任の長距離射撃により、こちらは動きが制限される一方でこちらは反撃が出来ない。

「上からの反撃許可はまだか!」

「今確認取れました!反撃できます」

その言葉を聞くと同時に一気にブースターを吹かす。

「哨戒機!飛翔体の発射方向は!」

「南西100kmにある無人島だ!」

その島に主任の機体がいるはず!

射撃による牽制も十分に避けながら行ける!

だが、一つ気がかりになることがある。

先程哨戒機から報告のあった謎の機体。

ゲーム中では基本単騎だった主任が護衛機を引き連れているのか?

護衛機だったとしても一体どんなやつなんだ?

疑問は尽きないが、そんな事を考えている暇はない。

一先ず主任を無力化しなければ!

そう思っていた矢先だった。

「ドラゴン2より仁二尉へ!5機の機影が50km圏内に侵入!」

その気がかりな機体が接近してきたようだ。

だが、射撃を避けながら同時に5機相手するのは厳しい。

だからいっそ振り切ってしまうか、主任に接近して一緒に相手するのが得策だ。

その無人島までの距離は残り50㎞。

だったらあのシステムを使うか。

「トランザムを起動する!」

「え、ええっ!りょ、了解!」

素早く起動コードをパネルに打ち込み、入力ボタンを押す。

入力ボタンを押すと同時に、サイドパネルに「TRANS‐AM」の文字が表示される。

キュオオオオオオオ

太陽炉の駆動が一層激しくなるのを感じる。

そして機体が赤く発光し、一気に強いソニックブームを巻き起こす。

途轍もないGに襲われる中、速度計を見るとマッハ4と表示されていた。

やっぱりこのシステムじゃじゃ馬だな!

圧倒的に早くなるがそれのせいで制御も同時にしずらくなってる!

それに実戦で使うのは初めてだし、パワーダウンの懸念もある!

そんな雑念をすべて取っ払い、一気に主任の元へ向かう。

赤いGN粒子の五線譜に爆発の音符が乗る。

生きた心地を感じないまま残り5㎞となった。

「よし、トランザムを切るぞ」

今後の戦闘での粒子の大量消費の可能性を考えてトランザムを切る。

そして、その疲労した目に映ったのは

吊られた男(ハングドマン)」だった。

「おや、もう来たようですね」

「早いねぇ~。迎撃しますか」

まるで戦闘していることが感じられないような口調で話す二人。

そう言って、オーバードウェポンを再び構える。

「やらせるかァァァァァァァァ!!!!!」

ビームライフルで牽制しながら近づき、パルスブレードを振り下ろし、砲身を溶断する。

「おっとお!」

急いでオーバードウェポンをパージし、背部に装備された二丁のライフルに切り替える主任。

赤色に発光する曳光弾を避けながら、ビームライフルを撃つ。

そのうちの一発が左足に命中し、派手に爆発する。

それによって動きが鈍ったのを見て、とどめの一撃を刺す

 

とはならなかった。

 

「こちらドラゴン2!敵機が残り5㎞に侵入!」

「!チイッ!」

接近していた5機の機体が交戦範囲に入ったようだ。

最悪の場合、主任を加えた6対1となる。

そんなことは絶対に避けたいので、急いで主任を無力化する。

左足に続き右足を撃ち抜き、接近して両腕を切り落とす。

「貴様はそこで指を咥えて待っていろ!」

そうして機体を180°転換し、5機の迎撃に移る。

「あ~あ、行っちゃった」

「仕方ありません。見物と行きましょう」

「だね。品定めしようか」

そんな会派が無線から聞こえながらも、向こうに見える黒い点にビームライフルを連射する。

蜘蛛の子が散るように五機が散開しながらも、こちらに接近してくる。

そしてその機体が詳しく見えてくると、とあることに気づいた。

この機体ってUNACじゃないのか!

ACVDに登場する無人AC。

なぜそれがここに!?

まさか財団までこの世界に転移しているのか⁉

「クソっ、何がなんだか分からん!」

一先ず向こうが撃ってきたので、迎撃する。

シュオオオオオ!!!

33式が煙を立ち上げながら背部のミサイルコンテナから発射される。

数は半分の十発。

マッハ5の高速でミサイルは目標に接近し幾つかは着弾し、幾つかは外れる。

10発の内、7発が3機に命中して二機撃破一機中破。

「残りは一斉発射で片付ける!」

この機体にはフリーダムガンダム等を参考にしたマルチロックオンシステムが搭載されている。

ピピピピピ

残っている3機にロックオンを行う。

「喰らいやがれ!」

残りのミサイル、ビームライフルの残弾をすべて発射する。

艦船や複数機の戦闘機の編隊に比べれば少ないものの、3機に対しては圧倒的な火力を発揮した。

空に三つの光の花が咲く。

「ふぅ、何とか終わったな」

それにしても、自衛隊創設以来二度目の戦いを自分が経験するとはな。

この世界の日本は北海道戦役を経験しているので、まったく戦闘が未経験というわけではないが、それでも戦闘には慣れないものだ。

そんなことを思いながら、再び主任のもとへ向かう。

 

主任のもとへ到着すると、変わらず両手両足を捥がれた状態のハングドマンがいた。

「勝敗は決したぞ、主任」

「あ~うん、そうみたいだね」

興味なさそうに話す主任。

「一体どうしてこんなことをした、主任」

「ん~、そうだね。強いて言うのなら人類の可能性を証明するためかな」

「人類の可能性?」

「そう、人類の可能性」

「そうか。詳しいことは連れ帰って聞かせてもらおう」

そう思い、ハングドマンに手を伸ばして鹵獲しようとした時

「残念だけど、それはできない」

「っ⁉」

その発言に嫌な予感を感じたので急いで後方にバックする。

その数秒後、ハングドマンが爆発した。

そして、ノイズ交じりの通信が入る。

「あなたを認めましょう。私たちの(ENEMY)として」

その通信を最後に主任からの無線は途切れた。

爆発の煙が空を覆う雲に向かって伸びていくのを唯々見つめる。

一体全体何だったんだ、アイツは。

まず、なぜ俺を狙ってきた?

人類の可能性とはなんだ?

あのUNACと思わしき機体は一体?

世界各地で確認されている人型機と関係あるのか?

どれだけ考えても疑問は尽きない。

だが、たった一つ言えることがある。

それは、アイツらが俺の敵だということだ。

「仁二尉、帰還してください」

その命令に従い、トレセン学園合宿所に帰還する。

現場に残された煙はなにか嫌な予感を感じさせるものだった。

 

パシュウ

合宿所に帰還すると、そこは重々しい雰囲気だった。

まあ、しょうがないだろう。

我々が人の命を奪ったかもしれない二回目のことかもしれないんだから。

「お疲れ様、仁」

「あぁ、橋塚」

すると、俺の様子にびっくりしたような感じで答える。

「お前、よくそんな軽い感じでいられるな」

「俺は良くも悪くも鈍感って言われるからな、そう言うところが影響されてるんだろう」

「そうなのか。でも、それだけじゃないような?」

「戦った相手の影響かもしれないな」

「戦った相手の影響?」

「戦ったやつは俺にこう言い残していった、『私たちの敵』と」

「え、それって」

そのことに気づいたかのように、橋塚が聞く。

「あぁ、恐らく戦ったやつはまだ生きている」

「でも、あの爆発からどうやって」

「確かに、人間なら生きていられないかもしれない。だけど人間じゃないなら?」

「人間じゃない?どういうことだ?」

「所謂、意思を持った電子生命体…AIの発展版みたいなものってことだ」

「確かにそれなら辻褄はあうが…あり得るのか?」

「あぁ、俺の経験がそう言っている」

そして、二人はタラップを歩いていく。

その足音にはどこか重々しさが宿っていた。

 

 

2034年8月27日 霞が関 防衛省

この日、仁は一足早く東京に帰って防衛省にいた。

目的は先の交戦の報告会議だ。

出席している人物は以下の通り。

・統合幕僚長

・防衛大臣

・戦略幕僚長

・総責任者 島崎一尉 

・現場責任者 仁二尉

・技術士官 アレス二尉 +etc

「それでは会議を始める」

防衛大臣が会議の始まりを宣言した。

「まずは島崎一尉、説明を頼む」

「はっ、報告いたします」

島崎一尉が重々しい雰囲気に立ち向かうように、立ち上がる。

「先日2034年8月26日15時から行われた34式人型機動機の試験において、正体不明の存在らから攻撃を受け、それに対して仁二尉が反撃しこれらを撃破、当該機体一機の鹵獲を試みようとしたものの自爆され、鹵獲出来ずに終わりました」

「ありがとう、座ってよろしい」

島崎一尉の報告が終わるとともに統合幕僚長、防衛大臣、戦略幕僚長の話し合いが始まる。

「戦後二度目の自衛隊の交戦か…」

防衛大臣がことを憂うように話し始める。

「それにしても、よく人型機体と戦って切り抜けられたな」

「シミュレーターには対人型機用のデータもあるからな。十分に対応できる」

「はぁ~。今回の件は世界各地で目撃されている人型機体と以前の事件に関係あるのか?」

「大いにあるだろうな。機体の特徴や足跡が一致している」

「渦中に我々も巻き込まれたわけか…」

会議室に厳しい空気が流れる。

「そういえば、機体を解析した結果はどうだったんだ?」

「それについてはアレス二尉から説明してもらおう」

「はっ、お伝えします」

アレス二尉が素早く立ち上がる。

「まず交戦した機体の全機に共通していたのがコックピットブロックがないということです」

「コックピットがない?つまり全機無人機ということか?」

「おそらくは。それに加えて使っている駆動部品等にも全機互換性が見られました」

「全機見た目が違うが、それらを接続しても動くということかね」

「はい、そういうことです」

「ほ~ん。逆に違う点は何なのかね」

アレス二尉が、息を継ぎつつ話し続ける。

「武装以外での違う点としては、この青とオレンジの機体。便宜上ナンバー1と称しますが、この機体には内部に大型のコンピューターユニットが取り付けられていました」

靑とオレンジの機体はハングドマンのことだ。?

「ということは、何か特別な機体ということかね」

「指揮機のような役割を果たしていたと思われます」

「ほう。ありがとう、座ってよろしい」

多少息を継ぎ直しながら座る。

「それにしても、こいつらを動かしていた正体が全く分からんな」

「何か手掛かりとかはないのか?」

「ないと思っていたのだが、意外なところか手がかりが見つかった。仁二尉、頼む」

「はい。まずこれらの機体ですが自分が転移してくる前の世界のゲームであるアーマードコアという作品に出てくる機体と酷似しています」

それと同時に機体の比較画像がプロジェクターに映される。

「確かに似ているな、同じものと言ってもいいぐらいだ」

「それで、この機体を操っているのは誰なんだ?」

「ナンバー1と呼称されている機体はハングドマンと言い、生物かすらわからない存在である主任という存在が乗っています。ナンバー2~5はUNACという無人機体で搭乗者はいません」

「だから通信記録で主任と言っていたのか。一時君をスパイだと思っていたよ」

一瞬シャレにならない文言を聞いたが、そのまま話を続ける。

「この主任という存在は人類の可能性を探っているらしく、ゲーム内では主人公にたびたび戦いをけしかけてきました」

「となると、また仁二尉が狙われる可能性があるのか」

「通信記録の最後からして、その可能性は高いでしょう」

「となると試験場所の重警備化が必要だな」

「哨戒機の数を増やして、地対空誘導弾の配備も行おう」

「今できることはそれくらいだな。仁二尉、座ってよろしい」

警備の体制が変わる話を聞きながら、ゆっくりと座る。

その後も会議は続き、警備の厳重化と情報収集で決着がついた。

 

その夜 山本家

夜には交戦のニュースが流れ、各メディアで大騒ぎとなっていた。

俺の家族やmiCometもこのニュースを見て、当事者が俺であることを伝えたが、

「自衛隊っていう職業だし、仕方ないよ」

と、肯定してくれた。

だが、事実は本人にのしかかるものだ。

風呂も入り、あとは寝るだけとなったがいかんせん眠れない。

やはりストレスがかかっているのだろうか。

すると、携帯が鳴った。

「すいちゃん、どうしたんです」

「仁君、今日寝落ち通話してもいい?」

「良いですけど、何でです?」

「今日のニュースを聞いてね、仁君が急にいなくなるんじゃないかと思って…」

若干涙声で話すすいちゃん。

お世話になった人が急にいなくなったら、悲しむだろう。

顔を伏せているが、少し泣いていたのだろう。

「そういうことなら、どうぞ」

「ありがとう、仁君」

こうして平気なようにふるまっているが、実は俺も同じような心境だ。

推しであるエースとすいちゃん。

この二人にまで危害が及んだらどうしようと不安になっている。

そう思うと心苦しくなってくる。

その夜は互いに傷を癒すように長い時間話した。




試作型34式粒子圧縮砲
7月の末に完成した試作型ビームライフル。これらのデータを生かして現在開発している『巨人』の後継機の主兵装の一つが開発される予定である。
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