栄主と歌姫と白閃と   作:イ―グル

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あと1話で防大編は完結するのでAC要素を期待している人はお待ちください…………

2025年7月2日 改稿
2026年2月18日 改稿
2026年2月19日 改稿


第三話 開校記念祭

国を守る防人たちを厳しく育成する学び舎である防大。

そんな防大にも学園祭に相当するものが存在する。

それが毎年11月に行われる開校記念祭だ。

当然、他の学校と同じ様に来校者を楽しませる目的もあるが、普段の自分達全員の訓練の成果を

見せるのも目的の一つであるのが他の学校と違う点の一つである。

今年(2028年)、二年生に上がった戦略要員過程の自分はこのための準備を進めている。

「なぁ、お前は今年はなにに出るんだ?、仁」

「射撃部の展示と訓練展示かな。晴斗と違って棒倒しには多分出ないし」

棒倒し。春のカッター競技、年度末の断郊競技と並んで3大競技とされる記念祭の目玉。

ルールはそれぞれのチームの円の中に設置された棒を、制限時間の2分以内に30度以上倒すか30度を3秒キープすれば勝ちという単純なもの。

今回の棒倒しで晴斗は第二大隊の150人のチームメンバーの一人に選抜されたものの、自分は選ばれず、補欠という形となった。

かといって競技に出ないからやることがないというわけではなく、自分が所属する射撃部の展示、訓練展示、大隊行事などやることには事欠かない。

「それにしても、仁は応援団とかにも入った方がいいと思うけどな俺は」

「あんまり人の前に出るのは好きじゃないんでね」

「まぁ、それはそれとして。ほかの大学はもっと遊びの要素が強いらしいが、自分たちはどちらかというと普段の訓練の成果が人に対して恥じないものなのかを発表する面もあるよな」

「そうだな、自分たちの一挙手一投足が防大のイメージを左右するかもしれないから、それを発表するとなると俄然気が引き締まるな」

「だな、俺らの実力、見せつけてやろうぜ」

 

そして迎えた記念祭当日、一日目。

 

 

仁は射撃部の説明に回っていた。

校内には多くの人が溢れかえっており、それは射撃部とて例外ではなかった。

訪問してくる人に対しての説明に忙殺されていると

「頑張っているな、仁」

「あ、父さん、母さん」

父母が来校していた。

「まさか来てくれるとは思ってもなかったよ」

「ちゃんと予定は開けといたわよ。それに私たちだけじゃないの」

私たちだけじゃない?どういう意味だと思っていると

「ヤッホー、仁君」

まさかの星街さんまで来てくれていた。

数か月前、「歌ってみた」や元の世界のオリジナル曲を出し、それが三千万回をを超える再生回数をたたき出して、ちょっとした有名人になっていたが、まさか来てくれるとは。

「星街さんまで来てるとは思いませんでしたよ」

「前の世界でもこういうところ来たことなかったからね、行ってみたいと思ってたんだ」

「来てくれてありがとうございます。ぜひ、楽しんで行ってください」

「じゃあ私たちは、自由に巡っているから。それじゃあね」

「じゃあね~仁君」

そういって父母たちは行った。

その後も説明を続けていたがシフトが終わったので、今度は自分が所属する第2大隊の大隊行事のシフトへと向かうことになった。

 

 

 

「あの子かわいくね?」

「そうだな、ちょっと顔が見えないがよさそうに見えるな」

この場に似合わない魔の手が忍び寄っていることをまだ彼女は知らない。

 

ここで、自分たちが所属する学生隊について説明しておこう。

防大では全生徒によって学生隊が組織されその下に、大隊、中隊、小隊と続く。

そして、記念祭では各大隊ごとに催し物を行われている。

今回の第二大隊では、大隊本部開放、カラオケ大会、受験相談会等を行っている。

「よぉ仁、お疲れ様」

「あぁ、お疲れ様晴斗。そっちの調子はどうだい?」

「ぼちぼちってところだな。どうも一大隊のマジックと、五大隊の士気上げ体験に取られてる」

「なるほど……、なんか策は無いものか」

うちはいわゆる真面目系の催しが多く、楽しい系がカラオケ大会くらいしかない。

本当に何かないものか………

「おっ、仁君じゃん。こっちに移動してたの?」

「あっ、星街さん。どうも」

「仁、星街さんってあのVtuberの?」

「あぁ、そうだ。星街さん、こいつは吉井晴斗って言って同級生で寮も同室なんです。それと星街さんの転移のことも話してあります」

「こんにちは、晴斗さん。仁君にお世話になった、Vtuberやってる星街です」

「はじめまして、吉井晴斗と申します。お会いできて嬉しいです。ぜひ、開校祭を楽しんでいってくださいね」

 

それはそれとして、どうやって集客するか………

「なにか困りごとですか?」

「えぇ、人の集まりが悪くて、どうしたものかと」

「それならいい方法、ありますよ!」

 

10分後

 

第二大隊のスペースは大勢の聴衆で埋め尽くされていた。

会場は熱気に溢れ、中には帽子を振り回す人まで出てきた。

それもそのはず、前世界ではあらゆる人を魅了した歌声を持つ歌姫が歌っているのだ。

え、こんなことしてもいいのか?身バレはしないのかって?

あくまで星街さんが自分にカラオケ大会に参加したいという「お願い」をし、それを承諾しただけなので問題はない。

身バレに関しても、第一大隊のマジックから借りてきた目元を隠すマスクと、即席で用意した私物のニット帽で髪を隠しているので直接的な身バレは防げるし、歌う曲も他の歌手の曲に絞ってやることで、曲での身バレも対策している。

「それにしても仁、お前よくこんな屁理屈思いつくな」

「昔いじめられた反動で、どうやったらいじめられなくなるかっていろいろ考えた結果、ずる賢くなればいいんじゃないかって思ってな。それの名残だな」

「重い過去なのに軽く話すな」

「人生なんてそんなもんだよ」

「20年弱で人生語っていいのかとおもうがな…」

細かいとこはともかく、会場は大盛り上がりで観客の整理が追い付かない状態だ。

俺たちも観客整理に駆り出され、1時間ほど拘束された。

1時間後…

「はぁ、はぁ、観客整理って疲れるな」

ライブとかで観客整理している人たちって凄いなと思いつつ、立ち上がる。

会場を見ると、星街さんに感化された人たちによってカラオケ大会が続行されている。

多少人は減ったが、相変わらず他のとこの3倍は人が来ている。

「さて、これからどうするか」

晴斗ともはぐれてしまったし、今のところ人が必要そうな場所がない。

どうするか考えながら、周りを見回しているととある人影が目についた。

「あ、あの、困ります。そういうのは」

そこには困っている様子の星街さんが居た。

「いいじゃ~ん。俺たちと一緒に回ろうぜ~」

「そうそう、一人じゃ寂しいだろ?」

周りはナンパ野郎二人に囲まれている。

こんな典型的なナンパする奴らって本当にいるんだな。

しかも防大の開校記念祭に。

一人じゃどうにもならなさそうだし、助けに行くか。

と言っても、どうやって助けるか。

その時、頭の中にあるアイデアが浮かんだ。

 

 

 

はあ、面倒なのに絡まれちゃったな。

ナンパ二人に星街すいせいは防戦一方だった。

あまり大きな騒ぎにして、ことを荒げたくないのでこうしている。

募るフラストレーションと不安。

誰か助けてくれないかな、そう思っていた時だった。

「あのすいません」

「あん?」

声のした方に顔を向けると、この世界で最初にお世話になった人がいた。

「他の人に迷惑になることは控えていただけるようにお願いしますか?」

「あぁ!?俺たちがこの子に迷惑かけてるように見えるのかよ?」

そう言われるも毅然とした態度で、話を続ける仁君。

「はい、見えます」

「あんまりふざけてるといてこますぞ!!あぁ!!」

だんだんと大きくなっている声に周りの人も反応する。

「行動は自由ですが、ここにいるのは訓練を受けた者達だと忘れずに」

その発言にナンパたちは苦虫をかみつぶしたような顔をすると

「ちッ、行くぞ!」

「え!?でも」

「いいから行くぞ!ここにいると気分が悪くなる!」

仁君を睨みつけながら、その人たちは去っていった。

何とか場が収まったところで

「ありがとう仁k、あっ」

仁君に話しかけようとして近づくが、小石につまずく。

「おっと、危ない」

そう言われるとともに、仁君に支えられる私。

「あ、ありがとう仁君」

「いえ、怪我がないようで何よりです」

そうして私を放した後、立ち去る仁君。

「…………」

あの時の仁君……

ちょっとかっこよく見えたのは何なんだろうなぁ……

その問いに誰も答えることなく、ただ時間だけが過ぎていった。

 

 

 

そして翌日。

 

棒倒しにおいて、決勝までコマを進めた第二大隊は、昨年敗北した第五大隊との決勝に臨む。

十一月でも煌々と照り付ける太陽の元、最後の戦いの幕が開けようとしていた。

「位置について、よ~い」

互いのチームに緊張が走る。

「パァン!」

静寂を破るピストルの合図とともに両チームとも一斉に駆け出した。

最初に棒にたどり着いたのは第五大隊だった。

味方と防衛チームの背中に無理やりよじ登りながら、棒を倒そうと攻め続ける。

一方、第二大隊も負けじと必死に攻勢をかけつづけ、棒を18度まで倒すことに成功する。

だが、第五も20度まで倒すことに成功しており、互いに拮抗している。

残り30秒となり、互いのチームはラストスパートをかける。

第二は下の人員を上に送り、棒を倒すことに集中し、第五は絶え間ない攻撃を根元に与え続けた。

結局、どちらも防衛側の奮戦により30度傾くことはなく、判定待ちとなった。

 

「判定の結果、第二大隊の勝利です!」

 

照らしつける夕日の元、去年の雪辱を晴らした者たちの姿がそこにはあった。

そんなこんなで、いろいろあった開校記念祭は終わりを迎えた。

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