栄主と歌姫と白閃と   作:イ―グル

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第三十二話 計画の第二段階

2035年4月20日 東京湾基地

俺はトレセン学園ではなく、東京湾基地の方に出勤していた。

理由はASAWP計画の定例報告会。

なんだかんだ見慣れた白い廊下を歩いて、会議予定の場所を探す。

「会議室A3…ここか」

見慣れたと言っても、見慣れたのは景色だけで地下まであるこの基地で迷うことは度々ある。

中に入るとアムロ二尉とイアン二尉、ラスティ三尉と島崎一尉がすでに居た。

「ちょっと遅かったみたいですね」

「いや、30分前に集合してる時点で十分速いで」

「逆に皆さん早すぎませんかね」

「まあ、この基地に慣れてるん人材やからな。迷わずに来れるんや」

俺は基地の外での勤務だし、しょうがないか。

「それじゃ、定例報告会始めていくで」

席に座り、用意されていた資料を手に取る。

資料には「ASAWP計画第178次報告書」と書かれている。

この計画とんでもなく長く続いているな。

そう思いながら、島崎一尉の方を向く。

「今回の報告会での議題は二つ」

そう言ってホワイトボードに書き出す。

「1つ目は純正GNドライブの開発状況。2つ目は新型機の開発・生産状況や」

二つともASAWP計画において重要な要件だ。

「まず1つ目の純正GNドライブの件」

ついに疑似じゃない純正が作れるのか。

「まず今年の一月に無人採掘宇宙船”つくよみ”が帰還。必要な資源を持ち帰ってきた」

宇宙からの資源採掘。

これは人類全体で見ても偉大な一歩だ。

もし地球の資源を掘り尽くしてしまったら、人類が次に向かうのは宇宙の資源だ。

それを実際に回収出来たのはとても大きい。

このことはメディアでも大きく宣伝されて、世界中で反響を読んだ。

今現在”つくよみ”は再出発し、次の資源を取りに行ってる。

「そういえば”つくよみ”のペイロードっていくつでしたっけ」

「170tや」

世界一強力なロケットのサターンVでも低いところに100tだから相当すごいな。

でも、鉱石運搬船何かと比べれば全然だ。

「この170tで取り敢えず太陽炉5基分は取ってこれたな」

やっぱ最低限の量しか取れないのか。

これからの改良に期待だな。

「それで太陽炉の製造状況はどうなんや?イアン二尉」

貫禄がますます増してきたイアン二尉が口を開ける。

「今のところは順調だな。ヴェーダの正確なデータと俺の経験でELS戦時の性能で作れそうだ」

「安定生産はできそうか?」

「材料があればだけどな。マニュアル化とライン化で年4基のペースで生産できそうだ」

かなりのハイペースで生産できるな。

「でも依然として高価なのがネックやな」

「そこら辺は擬似太陽炉との併用だな」

やっぱり宇宙から取ってくる以上高いよなぁ。

「それでその太陽炉5基の使い道やけど」

5基ともなればかなり慎重に使い道を決めなければいけないが、どうなるのか。

「1基は試験用兼この基地の発電用、4基は戦略機の動力源として使うことになった」

戦略機はこの計画の最終段階で製造される機体だ。

文字通り、戦略兵器にふさわしい機体として設計が進んでいる。

ちなみにその設計には最近転移してきた設計者が関わってるとか。

そして、1基は試験用兼この基地の発電用と言ってるが数ヶ月前から工事が増えたのはこれか。

そんなことを思っているとホワイトボードに2つの資料が貼られる。

1つ目は”つくよみ”が持ち帰ってきた資源の概要。

中高の理科でしか見ないような物質や全く知らないような物質もある。

本当に未知すぎないかこの動力。

そんなものに命預けてるのが俺なんだけど。

二枚目の資料が純正太陽炉の図面。

正式名称は永久機関(GN型)というらしい。

見た目はGN-X等のコーン型ではなくダブルオークアンタ等に採用されている円柱型。

個人的には円柱型のほうがメカメカしくて好きだな。

そんなどうでもいいことを思っていると、次の議題に移る。

「次の議題の新型機の開発・生産状況やけど…アムロ二尉どうや」

「こっちも特に問題はない。状況は通常機と戦略機の場合に分けて話すぞ」

通常機は今まで試験してきた機体のことだ。

「まずサイコフレームとサイコミュの開発も終わって、ついに一般人でも使えるようになった」

ついにサイコミュもここまで来たか。

一体、この行き着く先はどこなのだろうか。

「これらを通常機の新型機と”不屈”と戦略機の全身に組み込むことによって、機動性・運動性・反応性が大幅に向上した」

フル・サイコフレーム機を量産機でやるのか。

これ、つまりユニコーンみたいな化物がバンバン量産されるってことじゃ…

…アクシズショックを地球で起こさないことだけ祈っておこう。

「次に兵装についてだが、これもサイコフレームとサイコミュを使う」

一体、何作るんだろうか

「これは以前転移してきたペーネロペーとアリュゼウスの武装からヒントを得た」

あ、あの武装か。

ちなみにアリュゼウスとペーネロペーの量産計画は頓挫した。

ペーネロペーは技術が高すぎ、アリュゼウスは外付けユニットが高価すぎたため。

でも、ビームバリアーだけはなんとか再現できそうだというのを聞いたことがある。

「あれに装備されていたファンネルミサイルを改良する形で作ったのがこれだ」

そう言うと同時にホワイトボードにもう一枚張り出す。

それはミサイルの設計図だった。

ただし、従来のものより誘導装置が大型化している。

「従来の誘導方式とサイコミュを使って誘導する新世代のミサイルだ」

新技術と既存技術の融合。

けっこう面白いな。

「長距離は従来の誘導方式で誘導するが、標的に近づいた時の誘導方式が違う。先端部にカメラを取り付けるのは赤外線を使って誘導するミサイルと同じだが、そこにサイコミュを噛ませて脳内映像で誘導できるようにしてる」

長距離でも使えるファンネルミサイルって感じか。

たしかにあれ、使ってるのは割と近距離だったな。

「これを新型機と改良型を戦略機に搭載する」

シンプルに優秀な兵器が出来たなこれ。

近距離妨害が効かないミサイルって恐ろしい以外の何物でもない。

「そして肝心の機体だが、通常機の新型機が来週ロールアウトする予定だ」

開発ペース早すぎないか?

まあ、数十年の計画の基礎があるからこれくらい早いのか。

「スティールヘイズ・オルトゥスをベースにした機体だが…ラスティ三尉、どうだった?」

「操縦感覚はそんなに変わらなかったな、むしろ使いやすいようにも感じたな」

使いやすいのにはサイコミュ関係のもあるだろう。

「ただ、ファンネルミサイルは使いにくかったな」

「まあ、それは慣れていくしかない」

サイコミュがない世界から来た人だし、当たり前か。

「話を戻すが、新型機は月産20機を目処に生産ラインを建てている」

”巨人”と違って、こっちは本腰を入れて生産するから機体数も多いな。

「新型機のことは分かった。それで戦略機の方はどうなんや?」

この計画の最終到達点の戦略機の話題に移る。

「戦略機は設計が終わりそうってところだな。生産に関しては既存機のものを流用したりするから、かなり短期間でできるはずだ」

ここで戦略機の設計思想を話しておこう。

戦略機の設計思想は簡単に言うと『真のマルチロール制圧者(conqueror)』。

兵器というのは大抵なにかに特化している。

例えば戦車は歩兵の火力支援と盾。

自走砲は戦場全体の支援。

歩兵は地形適応性と占領。

だが、これにはそれらの兵科を維持するコストがかかる。

だったら、人の形をして装甲もあって火力もある兵器作ればいいじゃん。

それがこの人型機開発プロジェクト。

戦車であり、自走砲であり、歩兵でもある兵器。

この”究極の汎用性”こそがこの兵器の最大の利点。

だが、無論弱点もある。

まずはコスト。

”不屈”は10式戦車2両よりも少し高い程度だが、初期の”巨人”は10式5両分のコストが掛かった。

次に歩兵との比較。

歩兵の利点である地形展開性を受け継いでいるものの、狭いところや森林には向かない。

その結果、これを兵種の一つとして運用することが決定。

結局、既存の兵種を代替することは出来なかったが、新しい展開を拓く事ができた。

ここまでが「通常機の話」。

戦略機となると話が違う。

戦略機はその究極の汎用性に加えて、火力と機動性を加えたものだ。

呼ばれればすぐにどこの戦場にも到着し、その火力で戦場を制圧する。

その存在は戦争の趨勢を決めるレベルとなっている。

そして、その機体を開発しているのが俺達というわけだ。

「戦略機の試験も仁二尉にやってもらうが、いいか?」

「わかりました」

まさか戦略機も試験パイロットを務めるのか、俺。

まあ、頑張るしかないか。

そんなこんなで会議は続く。

国防の要を作るために。

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