2036年7月1日
久々に走る道を眺める。
静岡県の海岸沿いの道。
俺達は夏合宿のために合宿所へと向かっている。
人員は俺、橋塚、晴斗含めた戦自15名、陸自5名。
高機動車の後ろには73式トラック5台と73式特大型セミトレーラーが3台続く。
これらは前年と同じ、装備と試験用機材の輸送のためだ。
ちなみに、特大型セミトレーラーには”巨人”、"不屈"、”明星”が載せてある。
学生たちを載せたバスはこれの更に後続に続いており、その後ろに高機動車一台がつく。
それなりに厳重な警護だ。
まあ、あの事件が与えた影響は大きいんだろうな。
ふと腕時計を見ると到着時間まで残り10分というところだった。
「こちらトレセン1、トレセン1。トレセン2、状況どうか。オーバー」
無線機を片手に、定時の状況報告を行う。
このトレセン1とトレセン2は高機動車のコールサインだ。
「こちらトレセン2、トレセン2。特に問題なし。オーバー」
「こちらトレセン1、トレセン1。了解。アウト」
とりま無事に合宿所に着けそうで良かった。
そう思っていると、合宿所と自衛隊派遣舎が見えてきた。
この派遣舎には前年から大型の格納庫が設置されているので、かなり目を引く。
車を敷地内に止め、機材を運び出す準備をする。
それには当然、機動機の運び出しも含まれるので…
「…やっぱこうなるよね」
バスから降りてくる学生たちの注目の的になる。
中にはロマンに目を輝かせていそうな人がいるが、多分デジタルだろう。
「よし、これで終わりか」
"明星”のコックピットでそう呟く。
三機も動かすのは中々大変だった。
「よいしょっと」
コックピットから抜け出し、タラップに移る。
「それにしても壮観だな」
格納庫内はハンガーで区切られ、三機の機体が並んでいる。
ロボットアニメファンが見たら歓喜するだろうな。
タラップを降りながら、機材関係の確認する。
「補給機材は後日運ばれてくる予定で、特に新しいものはないか…」
そう考えながら、自衛隊舎に入る。
取り敢えず午前中で仕事初めの準備は出来たので、トレセン舎の方に行く。
訪れるのは2回目になるトレセン舎。
ゲームとかRTTTと感じは変わらないな。
少し玄関先で待っていると、説明が終わった生徒たちが次々と出てきた。
エースは何処か…
そうやって探していると
「お〜い!トレーナーさ〜ん!」
元気のいい耳慣れた声が入ってきた。
「トレーナーさんも早いな!自衛隊の仕事もあるだろうに」
「仕事初めの準備だけだったからな。早く終わったんだ」
そんな事を話していると、
「おーい、仁!」
後で練習すると決めていた、晴斗と橋塚が呼んでいた。
「早くしないと始めちまうぞ!」
「今行くから待ってろ〜!」
橋塚たちの方に歩きながら、話を続ける。
「あの防大時代の知り合いさんって、担当できたのか?」
「あぁ。しかもシンボリルドルフの担当だ」
その発言に目を見開くエース。
「え!あのルドルフのか!?」
「俺も聞いた時は驚いたな」
まさか同期の二人が三冠馬スカウトするとは思ってもみなかった。
「トレーナーさんって、強いウマ娘のトレーナーに縁があるのかもな」
「どう反応するか困るな」
そうして練習場所のビーチに着くと、すでにシービーとルドルフが待っていた。
「お初にお目にかかります、と言ったほうが?」
「いや、そこまで堅苦しくしなくても構わない」
シンボリルドルフ。
元の世界ではG1 7勝という一つの指標を打ち立てた伝説級の馬。
伝説と何回も鍔迫り合いをこれからしなければいけないと思うと、気が重い。
だが、それを打ち破ってこそのG1 10勝という目標だ。
そう気を入れ直す。
「それで、今回の練習はどうするんだ?」
「取り敢えずタイヤ引きと走り込みだな」
あんまり普段と変わらないが、砂浜と海という環境が練習をより効果的にさせる。
「じゃあ始めるか」
そう言って彼らは練習を始める。
来たるべき決戦に備えて。