栄主と歌姫と白閃と   作:イ―グル

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第四十九話 決戦

2036年12月29日 防衛省

日本の存亡をかけた戦いの火蓋は切って落とされた。

「第一フェーズ開始」

村正が静かな作戦室でそう告げる。

 

 

 

同時刻 太平洋 洲埼灯台から600km

雲海の中を高速で駆け抜ける、数百機の航空機。

「司令部より通信。『オクホダカノボレ』」

複数展開されている早期警戒機のうちの一機のE-767のオペレーターがそう命令する。

「了解、攻撃体制に移る」

F-15JSMFの編隊が発射のための高度まで上昇する。

このような編隊が艦隊を取り囲むように配置されている。

「第一波攻撃隊、攻撃開始!!」

それと同時に、翼下に装備されたAAM-6とAMRAAMを発射する。

他の編隊も同時に長距離空対空ミサイルを発射する。

フェーズ1の航空攻撃は三波に分かれる。

艦対空ミサイルは三波とも変わらないのだが、航空攻撃は変わる。

一波目は長距離空対空ミサイルによる迎撃機の漸減。

二波目は半分を長距離空対空ミサイルと

「第二波、攻撃位置につけ」

低空を飛行するF-2。

翼下にはASM-4と自衛用空対空ミサイルを装備している。

攻撃隊の残り半分を対艦ミサイルにしている。

「第二波攻撃開始!!」

Su-30MKI、F-2、F/A-18E/F、ラファール、ユーロファイター等から対艦ミサイルが放たれる。

ブラモス、ASM-4、JSM、エグゾセ、ハープーンなど種類は様々だ。

三波目は完全に対艦ミサイルだけだが、少し違うものも加わる。

この三波目にはB-52JやB-21、Tu-95、Tu-160も参加し、桁違いの火力が投射される。

なぜなら三波目は最大の目標である、中央の大型島艦に攻撃を加えるのも目標だからだ。

無論、戦闘機からも発射はされるのだが戦略爆撃機は巡航ミサイルも発射する。

B-52、B-21からはJASSM-XR、Tu-95、Tu-160からはKh-101が発射される。

発射されるミサイルの数は4000発を超える。

地獄の業火

 

 

 

俺は編隊を離脱し、作戦開始位置へ移動していた。

36式の加速力を使えば、数分で着けるが粒子量を温存するために低速で移動している。

レーダーには飛翔する対艦ミサイルと巡航ミサイルの群れが見える。

それらはどんどん艦隊に殺到し、目標に食いついていく。

何発かは迎撃されているものの、次々と着弾し護衛艦艇の反応が消えていく。

「統合作戦司令部より「白閃」へ。『キタダケノボレ』」

とうとう俺の出番が来たようだ。

操縦桿を握り直し、一瞬目をつぶる。

………よし。

旋回を完了し、突撃の準備が完了する。

最後の一発の巡航ミサイルが着弾し、第一波の攻撃が完全に終わったのを確認。

それと同時にスロットルを全開に上げる。

その瞬間、彼はこの世界で最も光に近い人間となった。

vobに酷似した増設ブースターユニット、35式によって速度はマッハ20に達する。

マッハ20という速度は殺人的な速度だが、イノベーターであるためなんとか耐えれている。

今回の任務は言えばSEED任務だ。

第三波を成功させるための敵の防空網の完全制圧と敵機の殲滅。

それだけに、最も重要な任務だ。

気がつくと艦隊まで残り200kmになった。

さ〜て、まずは前菜を片付けねえとな。

E-2Dから共有された艦対空、空対空ミサイルの標的になっていないUNACをロックオンする。

「FOX3!!」

35式に設置されたミサイルランチャーから36式特殊誘導弾が発射。

20数発が放たれ、200機以上のUNACが撃破される。

向こうから艦対空ミサイルの歓迎も来るが、圧倒的な速度で躱していく。

残り100kmを切り、より一層攻撃が激しくなる中でも敵艦とUNACをミサイルで無力化する。

35式のミサイルの残弾が約半分で残り50kmとなったとき、それは姿を表した。

「で、デケェ……!!!それに残存UNACも多い…!!」

偵察機の情報によると島艦は全長約5kmといっていたが、それ以上あるように見える。

加えて、残存しているUNACも2千機以上いる。

「こうなったら!!」

俺は35式に装備されたもう一つの兵装を使う。

ブースターの四隅に装備されたビーム・キャノンを展開する。

36式ビームキャノンは対多数用の収束・拡散選択式ビームキャノン。

これをGNフィールドを使って更に収束させ、防衛に穴を開ける。

コンマ数秒で展開、発射されるところまで移行し、トリガーを引く。

極太のビームが射線上の機体を次々と薙ぎ払い、後ろの島艦の一部すら貫く。

その一瞬空いた穴に、スロットル全開で突っ込む。

それと同時にビームキャノンを35式から「白閃」の方に移動させる。

そしてブースター部を切り離し、基地に帰還させる。

フェーズ2の予定時間は少ない、どうにかしなければ。

天使の舞

 

 

 

「フェーズ2残り時間10分!!」

作戦室ではそのような報告が飛び交う。

「今のところは作戦通りか」

ある程度敵の勢力は漸減出来たが、尋常じゃない数が残っている。

「連合艦隊と連合航空部隊の状況は」

「現在、こちらへ向かってくる敵機体の迎撃を行っています。損害はゼロ」

その報告を村正は聞きながら、第三フェーズの懸念点を思案する。

艦隊の艦対艦ミサイルの弾数は普通の艦隊を無力化するのには十分だ。

そう、普通の艦隊なら。

島艦がいるおかげで、この火力すら威力不足になる恐れがある。

その場合この作戦は失敗となり、東京本土決戦という最悪の展開を招くだろう。

一応手もないことはないが、望みが薄すぎる。

作戦の不安

 

 

 

一先ずは迫るUNACの殲滅。

多対一はこの機体の得意とするところだ。

ビームライフル2挺合体させ、右腕に装備する。

左腕の射撃戦用ユニットをフルに活かすためだ。

囲いを狭くしながら攻撃してくるUNAC。

それを破る、戦いの再開のゴングが鳴り響いた。

一筋の光が輪をなぞるように回る。

それと同時に爆発が連続し、一瞬陣形が乱れる。

陣形が乱れた隙に更に攻撃を行う。

左腕の指先に装備された5門のGNビーム砲を薙ぎ払うように使う。

UNACの胴体が焼け落ち、その焼け落ちた胴体が更に別の機体にぶつかり連鎖的に撃破。

その後も接近する敵機を右手のチタン製ネイルで貫き、腕全体をパルスブレードにして薙ぎ払う。

それでも1500機はいるUNAC。

あれ使うしか無いか……!!!

GN粒子の消費量が不安だが、最低限は動ける!!

ビームライフルを分割した後、両腕と36式ビームキャノンを真上に向けて展開する。

一見すると降伏のようにも見えるが、それが違うことはすぐに分かった。

それと同時にトランザムを行い、キャノンの砲口にビームの光が集まる。

宇宙まで届くような光の柱が一瞬で出来上がった。

それはライザーソードの発展版、グリントソード。

4基で尚且つそれぞれがツインドライブ化しているGNドライブの出力はその剣を悠々と支える。

それを斜めに倒しながら、機体を回転させてUNACを次々と消滅させていく。

それでも一矢報いようと必死に攻撃するUNACと設置兵器が抵抗するも次々と消されていく。

その剣が水平近くになる頃には敵機は全て消滅していた。

「後30秒か!!」

HMDのディスプレイに表示された残り時間が、作戦最終段階を告げる。

終局?

 

 

 

「作戦第三フェーズへ移行」

村正が威厳のある声でそう告げる。

その心の奥底には不安があったが、仮にも部下の前で晒すわけには行かない。

指揮官の苦悩。

 

 

 

「統合作戦司令部より伝達!!『フジノヤマノボレ』!!」

その号令とともにすでにロックオンしていた島艦へ向けて対艦・巡航ミサイルが発射される。

すでに36式は退避済みであり、総火力を投射できた。

発射ミサイルはハープーン、28式、LRASM、P-800、エグゾセ、トマホーク、クラブ等多種多様。

艦隊との距離は100キロと少しであり、10分ほどで到達した。

…そう、到達(・・)はしたのだ。

 

 

 

「到達ミサイルの損耗率、5割を突破!!」

「一部着弾するも効果なし!!」

クソ!!想定よりも最悪の事態が起きやがった!!

村正は苦虫を噛み潰したような顔でモニターを見ていた。

10分という時間は島艦内に残っていたUNACを起動するには十分な時間だった。

途中で36式が空爆を開始したものの、弾薬の枯渇、時間と数の問題で途中で止めるしかなかった。

その結果、展開したUNACが迎撃を開始。

ミサイルの7割が叩き落とされ、着弾したミサイルもわずかにUNACを吹き飛ばすだけだった。

「ミサイル着弾、効果なし……」

「……陸上自衛隊に連r」

「待ってください!!通信が!!」

 

 

 

「村正統合作戦指揮官!!僭越ながら具申します!!」

急いで統合作戦司令部に通信する。

3000万人の命がなくなるくらいなら、俺の命を賭けた方がマシだ!!

「聞こう。内容は」

「あの艦に降りた時、決して深く無い所に強烈な熱反応がありました!!おそらく動力です!!」

「だがどうやって貫通する、あれは巡航ミサイルですら貫通できないのだぞ」

「トランザムとキャノンで集中砲撃します!!アレの火力は段違いです!!」

「敵機はどうする、数百機はくだらんぞ」

「短時間で高火力を叩き込みます!!ご決断を!!」

少しの逡巡の後、決断が出る。

「…許可する。必ず撃破し、生還しろ」

「了解!!」

通信を切って、機体を反転させる。

最後の攻撃。

 

 

 

「攻撃はなんとか防ぎきったか」

そう無機質な声で呟く財団。

UNACの大半と防衛設備は破壊されたが、船体は生きてる。

それに予備のUNACが500機ほどある。

これなら東京に突入しても、十分な戦力だろう。

そう言って、東京突入の算段を立てていた時だった。

「?一つの機影が高速接近中!?」

 

 

 

島艦に高速接近する36式。

当然、艦上に展開したUNACによる迎撃が始まる。

それをGNフィ―ルドとパルスシ―ルドで防ぎながら接近する。

その攻撃を躱しながら、艦の直上まで上がる。

そしてビームキャノンを横に連結したビームライフルと合体させる。

これがこの機体が出せる最大火力の1つ、GNバスターライフルだ。

どれと同時にトランザムを行い、威力を底上げする。

「データ照合…薬室収束臨界……今!!」

その言葉とともにトリガーが引かれ、グリントソードに劣らないビームが発射される。

その光の束は島艦の中央部へと着弾し、UNACを巻き込みながら艦体を抉る。

「装甲破壊率は35%!!後2発か!!」

そのまま続けて第二射を撃ち、残存UNACの大半が消滅し動力炉があらわになる。

三射目を打とうとした時、それは起こった。

「!!システムエラーかよ!!」

ライフルは流石に短期間でトランザム込みのビームを撃つことは想定していなかった。

ビームキャノンだけ装備し直し、ライフルを迫ってくるUNACに投擲。

「……やるしか無いか」

その場で覚悟を決めて、200機はいるであろう機体の群れに突っ込んでいく。

集中砲火を増加パーツのGNフィールドで耐えながら、ミサイルの残弾をありったけ撃つ。

「ウオァァァァァ!!」

穴の空いた島艦の動力炉にそのまま吶喊する。

否が応でも撃破せんとするUNACが迫るが関係ない。

そのままアサルトアーマー起動コードを打つ。

戦いの終わり

 

 

 

「敵艦動力炉消滅!!」

指揮所では作戦成功の歓声が上がっていた。

一方で偵察機からの情報を見ていた村正は驚愕していた。

作戦の二つのフェーズを単機で完結させたのだ。

まさしく化物と評するしか無い強さだった。

また、36式の反応もあり被害ゼロでの作戦成功だった。

この結果を見て後々の世界が変わっていくことは誰も知らない。




F-15JSMF/DJSMF
1980年代に航空自衛隊が導入した第四世代ジェット戦闘機を改修した機体。
内容は現実のJSIの内容に加えて、レーダー・コックピット周りをF-35と同等のものに換装。
エンジンをF100からライセンス生産したF110に変更。
F-15EXと同じハードポイントを増設、F-15E系列と同等の対地・対艦攻撃能力を持つ。
具体的にはASM-2・3(改)、L/JDAM、AAM-6・7、AGM-88・84・65、GBU-39等が搭載可能。
余談だが、この世界では改修元のF-15J/DJは史実よりも多い266機(J型208機、DJ型58機)、それに加え喪失分の13機が追加生産されている。
これらの機体は全機がJ-MSIP仕様に改修された後にこの仕様に改修されている。
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