栄主と歌姫と白閃と   作:イ―グル

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ガンダム要素も含まれます
2026年2月15日 改稿
2026年2月18日 改稿


第六話 神の知恵(ヴェーダ)

2032年4月6日

戦自で働き始めて二日目。

昨日と同じように出勤し、業務を進めていると島崎一尉に話しかけられた。

「仁君、ちょっといいか?」

「はい、なんでしょうか」

「昨日説明し忘れたことと、新たに決まったことがあってな。ちょっとついてきてくれへん?」

なんだろうかと思ったが、上官の命令なので取り敢えず付いて行くことにした。

ついていくと、昨日案内してもらった研究区画へと着いた。

「あれ、ここは昨日も案内してもらいましたけど」

「まあまあ、取り敢えず付いてきてや」

そう言いながら「最重要区画 関係者以外立入禁止 内部の口外禁止」と書かれた扉をキーカードで開け、その先の階段をカツンカツンと音を立てながら降りていく。

「君の元の世界のことは、防大時代とか履歴書である程度知っているけど、なにか疑問に思ったことはないか?」

「疑問に思ったことですか」

「そうや。例えば〇〇がない〜とか」

「そういえば、以上にレーザーとかの兵器の開発が早いなとか、知らない組織(戦略自衛隊)があるなとは思いました」

「ほぉう。では、その秘密がこの基地の地下にあるとしたらどう思う?」

「え?」

なんとなく重要なものの雰囲気は感じていたが、やはり当たっていた。

「君は確か歴史が得意やったな」

「はい、特に近代以降は」

「じゃあ、転移現象が初めて起こった年代は覚えてるか?」

「確か、古代からだったはずです」

「正解。古代から長い間、転移してくるのは転移者だけやった」

「転移者だけだった?」

「2013年1月3日、突然東京湾の中心部が光った」

「はぁ」

「これが転移現象だと判断した政府は、すぐ捜索を開始した。けど、転移者は見つからんかった」

「転移現象が起きたのに転移者がいない?妙ですね」

「当時の対応チームも同じこと思ったやろな。だけどこれにはもう一つの可能性があった」

「もう一つの可能性?」

「それが転移してくるのは生物だけではなく物体や物質も転移してくるっちゅー仮説や。」

確かに、転移現象の仕組みが解明されていない以上、その可能性はある。

「対応チームはその可能性も考慮して、海中も調べたが何も見つからなかった」

「でも、まだ探査してない場所がありますよね」

「あぁ、そこまで言えるなら、君はわかっているはずや」

海上、海中に無いとなったら、残りは一つしか無い

「海底の地中の下ですよね」

「正解。二連続で正解した君には二重丸あげたいところや」

若干ふざけつつも、その表情は真剣だった。

「そう思って、海底をレーダー探査した。すると異常にでかい物がレーダーに引っかかったんや」

そう話していると階段を降りきると、検問が見え、その横には重厚そうな扉があった。

「チームはすぐに探査隊を編成して、その場所を掘削した」

検問にて名札を見せると、俺含めて通してくれた。

「そこで見つかったのがこれというわけや」

扉を抜けた先には衝撃的な光景が広がっていた。

あまりにも巨大な長方形の部屋の奥には巨大な球体状のオブジェクトが存在し、その他の四面は配線が設置されている。

「調査隊と対応チームは、海上との接続を確立した後に調査を開始した。その結果、この構造物が現代で作れるようなものでは無いことが判明すると同時に、これは量子コンピュータであること、これがとあるアニメに出てくるものと酷似していることが判明した」

「まあ、どう見ても現代で作れそうもないものですしね」

というかこれ、どっかで見たことがあったような……

「その後もこのコンピューターに対する研究や分析が進められた。中々にガードが固く、内容を垣間見ることができなかったが、なんとかこじ開けることができた。その時に名前もわかった。

その名は……」

その瞬間、ようやくこれが何なのかを思い出して声に出した

 

                 「「ヴェーダ」」

 

「おっ、知ってるんやな」

「昔はガンダムが好きだったもので」

昔の知識が役に立って、少しだけ誇らしい。

「そういえば、ヴェーダの内容ってどの程度わかってるんです?」

「一番高いレベルのレベル7以外やな。だから、太陽炉の情報とかはわかってない」

「このヴェーダがあったソレスタルビーイング号はどこに?」

「見つかってない。どこにあるかは分からない。これだけ転移してきたと考えられとる」

「戦略自衛隊ができた理由っていうのは」

「公式に発表している周辺情勢の変化もそうやけど、これ(ヴェーダ)を活用する目的もある」

大体の聞きたいことは聞けたので、引き続き島崎一尉の話を聞いていく。

「そういえば新たに決まったことってなんですか」

「あぁ、そういえば話してなかったな」

「それにここに来た理由も教えられていませんし」

「それも新しく決まったことに関係あるんや。ところで君、防衛力整備計画の内容は見たか?」

「はい。ざっとですが、全部に目を通しましたが一体?」

「その中に『ASAWP計画』って言うのがなかったか?」

「確かあったはずです」

ASAWP計画。

戦略自衛隊が去年度から開始した新しい戦略兵器開発プロジェクト。

変化する世界情勢に対応するために、他の三自衛隊に任せていた戦略抑止を戦略自衛隊でも担えるようにするための新しい戦略兵器開発を目的にしているらしいが、詳細まで覚えていない。

「その中で検討されている戦略兵器を覚えてるか?」

「すいません。そこまでは覚えていなくて」

「ASAWP計画で考案されてる案は3つ。1つ目は大気圏と宇宙空間を行き来できる戦略攻撃機。2つ目は、一発で空域内の戦闘機・巡航ミサイルを殲滅することができる空域制圧用弾道ミサイル。最後の3つ目は汎用性を持った人型兵器。この3つや。」

3つともとんでもない超兵器だな。

まぁ、こんなもの(ヴェーダ)があるのにいまさらという感じもあるが。

「そん中でも、君には3つ目の人型兵器の開発チームに入ってもらうことになった」

「ゑ!?」

まさか自分が人型兵器の開発に関わることができるとは思っておらず変な声が出てしまった。

「どうしたんや?どっか体でも悪いんか」

「すいません。まさか自分が開発プロジェクトに関われるとは思ってもなくて」

「まあ、そのプロジェクトに関わらせないなら、これ見せていないしな」

「ということは、これを使うんですか」

「あぁ、人型兵器の開発チームはヴェーダの解析も兼ねているし、ASAWP計画はこれの活用が前提となっているからな」

元々ガンダム世界のものだし、解析チームも兼ねているのは当然だろうな。

「そういえばこれ公式に発表されるまで口外禁止だから、気を付けてな」

「はい、肝に銘じておきます」

その後各部を紹介されあと、開発チームへと案内された。

開発チームの部屋へと案内されると、四名ほどの人物が話していた

「実はASAWP計画はウチ(特殊試験課2班)の管轄なんや。昨日伝えられなくてすまんな」

そう言った後、各員の自己紹介が始まったが自分がよく知る人物もいた。

「元アーキバス社ACパーツ研究グループの、ジョン・アレス二尉です。よろしくお願いします」

まさかのAC6からの転移者だ。

「山本仁です。よろしくお願いします」

「元地球連邦軍外部部隊ロンド・ベル所属、アムロ・レイ二尉だ。よろしく頼むよ」

いきなり大物がきて、多少恐縮してしまったが挨拶し返す。

「よろしくお願いします。実はあなたのことは知っているんです。ちなみにシャアさんは?」

「わからない。いつの間にか脱出ポッドだけ消えていた」

ん?脱出ポッドだけ消えていた?多少引っかかりつつも次に移る。

「元ソレスタルビーイング所属イアン・ヴァスティ二尉だ。よろしく頼むぞ」

今度はOOからの転移者だ、しかも凄腕の技術者の。

まあ、ヴェーダがあるんだし不思議では無いか。

「よろしくお願いします。あなたのことも知っています。奥さんと娘さんは元気ですか?」

「もちろん元気だ!一家で転移してこれて安心したな」

一家離散することなく転移してきて良かったと思いつつ最後の人に移る。

「元アナハイム・エレクトロニクス社サイコミュ部門のハルマ・ザアク二尉です」

遂に、宇宙世紀の禁断技術とも言えるサイコミュの技術者までいた。

「よろしくお願いします。転移前はどういうものを開発していましたか」

RX-0(ユニコーンガンダム)MSN-06S(シナンジュ)のインテンション・オートマチック・システムの開発や、サイコフレームの改良に関わっていました」

一通りの自己紹介が終わった後に、島崎一尉が話し始めた。

「一先ずこんな感じやな。これ以外にも制作スタッフを含めるともっといる」

「ウチって班ですけどかなり規模が大きいんですね」

「まあ、ここは例外っちゅーわけや」

「ヴェーダある時点で、まあそうでしょうね」

「それじゃ、一旦現状をまとめるで〜」

そういって、現状報告会的な会議が始まった。

「まずウチの計画についてやけど、ヴェーダと転移者、この世界の技術を結集して全く新しい戦略兵器を作ることやな。ちなみに民間企業への技術移転も目的の一つや」

改めて思うとスゴイ計画だな。

「ウチの進捗やけどどうやアムロ二尉」

「アレスの案をベースにしつつ、俺とハルマの知識を使ってなんとか試作機の設計は目処が立ってきたが、問題は操縦系統だな。俺の世界(宇宙世紀)のOSの解析・コピーができないから作らないといけない」

「私もOSの技術はあまり詳しくないので、本当に一から作らないといけませんね」

「一先ずは試作機を作るまで待たないかんな。イアン二尉、ヴェーダの解析状況は」

「レベル6は概ね解読できたが、レベル7はまだだな。ミスった場合、自爆すらしかねないから、まだまだ時間は掛かりそうだ」

「う〜ん、あんま芳しくないな。ハルマ二尉、サイコミュ関係の進捗は」

「5ヶ月前にミノフスキー粒子の存在は確認できてサイコミュが使えるとわかったので、今はサイコミュの試作中ですね。サイコフレームはまだ構想段階です」

「順調そうやな。それで、他班の進捗状況やけど……」

そう言って、ホワイトボードに数枚の画像を貼る。

「航空班が開発している大気圏内外両用戦略攻撃機やけど、もう設計を終わらせて、試作段階に入っているらしい。やっぱり航空機の延長線上ということもあって、開発が早い」

そう言いながら、二枚の画像を示す。

一枚は、その戦略攻撃機と思しき機体の設計図。

見た目はB-1に似ているが、広げた状態の固定翼になっており、エンジンも六基になっている。

二枚目の画像はその試作機の製造過程の様子。

胴体は下面が完成しており、翼の制作が始まっているようだった。

「逆に、誘導弾班が開発している空域制圧用弾道ミサイルは開発中止に追い込まれそうになってる。なんでも試製32式拡散地対空滑空弾として試作はできたみたいやけど、試験時にスピードが早すぎてロックオンができないとか、再突入時の熱で、誘導装置が駄目になるとかの問題が生じたらしく、対地や対艦に使おうとしても他のと役割が被るかららしい」

残っている一枚の画像を見てみると、その試作型の発射管と弾体が写っていた。

発射管は、重装輪回収車の車体に一発が乗っており、かなり巨大だということがわかる。

「……とまあ、こんなもんだな。大丈夫かいな仁君」

「はい。大体の内容は把握できました」

「それは良かった。それで君の配置だが……」

配置二日目で配置換えかよと思いつつも聞く。

「君は確か大特とMOSを持っていたよな」

「はい、幹部候補生学校で取りました。大体の免許は持ってます」

どうやら戦略自衛隊は、四自衛隊の中で最も隊員数が少ない代わりに何でもできる器用な隊員を欲しているようで、戦車を運転するために必要なMOSまで取らされ、大体の免許は持っている。

「なら君にはアムロ二尉のチームに入って、テストパイロットをやってもらう」

え、えぇ!?

「テ、テストパイロットですか」

「そうだ、君にしかできない仕事だ」

「でっ、でも。それならアムロ二尉がやったほうがいいデータが取れるんじゃ」

「生憎、アムロくんは設計で手一杯な上に、OSが宇宙世紀と違うものになる以上、完全にまっさらな状態のパイロットがほしいんや」

「そういうことなら、わかりました」

取り敢えず、テストパイロットを拝命することになった。

その後は解散となり、アムロ二尉についていった。

「あの〜」

「どうしたんだい。仁君」

「個人的な質問になってしまうのですが、自分がアニメの存在かもということにどう思いで?」

「そうだな......。今考えると特に何も思ってないな」

「以外ですね。多少はショックを受けるものだと思っていたんですが」

「自分が創作の中の住人だろうと、今生きている。それだけで十分じゃないか」

今生きているだけで十分。

改めて思うとそうだ。確かに、生きていれば悲しいこと、辛いこともあるがそれを捲り返したり、それ以上の楽しいこと、嬉しいこと、感動することなんかを感じることができるかもしれないんだから、それで十分じゃないのか。

そんなことが生きる理由になるのかな。

でも、少しだけ生きる理由を見つけられた気がする。

「まあ、これは俺個人の意見だがな」

「いえ、私的な質問に答えてくれてありがとうございました」

そのまま少し歩いていると、とある部屋の前に着いた。

「ここが俺とアレスの仕事場だ、これからは君の職場でもある」

扉を開けると、乱雑に物が散らかっている部屋が広がっていた。

「散らかっていて済まないね。俺も彼も物事に没頭すると周りが見えなくなるものだから」

「いえ、大丈夫ですよ」

「右が俺のデスクで、左の手前がアレスの。それで左の奥の方のやつは君のデスク。奥の部屋はシュミレーターがあるから当分君にはそこで練習してもらう」

「もう機体データがあるんですか?」

「あぁ、操縦系統が問題とはいえ大体完成してるからな」

話を聞いていると、机の上の設計図らしき紙にめがいった。

「これがその試作機の設計図ですか?」

「あぁ、細部はまだ突き詰められるが大体は完成してる」

その設計図に絵が描かれていた機体には見覚えがあった。

長方形の頭部にモノアイ。

胴体はV字形で中央部には球体状のセンサーらしきもの。

「この機体、見たことがあるんですけど」

「ん、そうなのか?」

「はい。前の世界で流行っていたアーマードコア6っていうゲームの初期機体と同じなんです」

「俺はおそらくその世界の出身ではないしな。アレスくんがその世界から来てるのか?」

「アレス二尉がその世界から来てることは、元アーキバス社所属だったことからわかっていたんですけど、このパーツはアーキバスのものでは無いんですよね......。アレス二尉、アーキバスの前に何処にいたか言っていましたか?」

「そういえばRaDとか言う組織からヘッドハントされたとか言っていたような」

「やっぱり。これで辻褄が合いました。あの組織は汎用性の高いパーツを作っていて、さっきの報告会で複数の企業が関わっているって言ってたので、それらの企業への技術移転も考えているんですし、この機体を選んだんでしょう」

「まあ、いきなり複雑なのを作るのはキツイしな」

その後合流したアレスさんとともに職場の説明をされ、セットアップをしていると終業となった。

家に帰り、夕食を取っていたときだった。

「そういえばみこさん、すいせいさんと同じ公営住宅に住むって」

「へぇ〜そんな意外でもないな。同じ市町村に転移してきたんだから」

Vtuberが二人も近くに住む家になってしまった山本家。

一体、仁はどういう運命をたどるのか。




ジョン・アレス
本作オリジナルの元アーキバス社ACパーツ研究チーム所属の技術者。
元はRaDの技術者だったが、アイスワーム戦後にアーキバスにヘッドハントされた。
年齢は32歳。
2029年6月に転移。
好物はハンバーガー。

ハルマ・ザアク
本作オリジナルの元アナハイム・エレクトロニクス社サイコミュ部門の技術者。
ユニコーンガンダムやシナンジュの開発に関わっていた。
年齢は29歳。
2030年2月に転移。
好物はお好み焼き。

アムロ・レイ
皆さんご存知ガンダムシリーズに登場するエースパイロット。
アクシズショック後にこの世界へと転移。
2028年5月に転移。

イアン・ヴァスティ
OOシリーズに登場する技術者。
劇場版のELS戦後にこの世界へと転移。
2031年5月に転移。

アーキバス
AC6に登場する企業。

アナハイム・エレクトロニクス社
ガンダムシリーズに登場する企業。
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