それではどうぞ。
(うぉ〜〜〜っ、すっげ〜〜〜っ、こんなんどこに生息してんだよ。いねーぞこんなのうちの高校)
俺の名前は
「あの…、おかかがいしたいんですが、
ここじゃねーと思うけど、説明すんのメンドクセーなー。
「あーそうそう」
それを聞いたバァさんは「有難うございます」と言って離れて行った。だがしばらくするとまた戻って来やがった。
「あの…、やっぱりここじゃ…、ないみたいなんですけど」
「あのね〜バーちゃんさぁ、自分で努力しなよ。人頼りにしないでさァ」
困った様子で俺に縋ってくるが読書を邪魔されてカチンときた俺は億劫な態度で言い放った。
「…すみません……」
バァさんはすごすごとその場を後にする。
我ながら冷たい奴だと思うが、俺は世の中ハッキリ言って見下している。その辺のおっさんも長く生きてても大して深いこと考えてねーだろうし、若い奴はなおさらだ。脳みそツルツルに違いない。
少し離れたとこにいる顔中毛むくじゃらのフラフラした様子のおかしいオッサンは……、まぁいっか、どうでも。
そんなことを考えていると、一際背の高い学ランの男子学生が隣に立ってきた。妙に迫力あるソイツの横顔に見覚えがあった。
(げ!!こいつ!!)
転校してからずいぶん荒れてるって聞いてたけど、俺のこと覚えてねーだろうなー。あ〜あ、しょーもねーヤンキーみてーになっちゃって。
ドサッ
向こうで何か落ちる音がして目を向けると、さっきの毛むくじゃらのおっさんが線路に落ちていた。
「う〜〜〜、痛てて…」
様子がおかしかったのはそうとう酔っ払ってるせいだったようで、自分から勝手に落ちていったらしい。おっさんは自分の状況もわかっておらず、ゴロッと線路の上で寝そべってしまった。他の乗客も気づいて『なんだなんだ?』とホームに人だかりが出来始めていた。
「駅員来ねーのかよ」
「オジさん大丈夫〜?」
時折声をかける人もいたけど、降りて助ける奴なんかいねーよな、こんなおっさんのために。
このままいくと、人間がバラバラになるとこが見れるかもしれないという黒い期待を抱きながら見守っていたら、隣の加藤が震えていた。人の死体見るのがやっぱ怖いらしい。グレても小心者なのは変わんねーな、と俺は内心ほくそ笑んでいたら、
「おし、決めた!」
!?………ハァ………!?
加藤は何かを決意した表情でそう言うと、線路に降りて行った。なんだお前!?頭おかしいんじゃねーの!?他の乗客も、「何やってんだアイツ」「オイ上がれすぐ!」と声をかけるが、加藤は構わずおっさんに駆け寄る。
「おいオッサン!起きろ!!」
「う〜〜ん…、痛てぇ…」
加藤はおっさんを抱えて運び出そうとするが、おっさんは完全に脱力していて上手く運べない。すぐに上の乗客に助けを求めた。
「おい!!誰か!!降りて一緒に手伝ってくれ!!」
「……駅員何やってんだよ〜」
「誰か駅員呼びに行ったのかよ」
声をかけられた上で見ていたヤツらが目を逸らす。
「あのなーおまえら!俺も見殺しかよ!!」
そんなこと言ったって、おまえの方が非常識だって……。
加藤は焦りが出てるのかさっきから「ハァハァ」と息切れ起こしてる。もう諦めて登ればいいのに、そう思っていたら…、
「ハァ…ハァ………ッ!?」
(ドキッ)
目が合った!まさか俺に気づいて手伝ってくれって声かけるんじゃねーだろーな!?おいおいカンベンしてくれよ!!俺がやるわけねーだろ!!
「計ちゃん!! 計ちゃんだよな———」
「その人をホームに引き寄せて!!!」
「え…ッ!?」
……は?
俺の目の前を風みたいな速さで横切ってったソイツは、ためらうことなく線路に降りると、加藤とおっさんの元に駆け寄った。
「さぁ早く!!」
「あ・・・あぁッ!」
加藤は思わぬ助け舟に一瞬戸惑ったようだがすぐ行動を再開した。2人で協力しておっさんを運び出すつもりだ。
「僕が足を持つから、君は肩持ってて!」
「わかった!」
「よし行くよ……、せーのッ!」
的確な指示を出すソイツはこれまた見覚えのある顔だった。
『まもなく2番線に電車がまいります。白線の内側におがりください』
「やばい!!早く早く!!」
「落ち着いて!大丈夫だから!」
「……おれたちも手伝うか」
「おい!早くこっちに持ち上げろ!急げ!」
列車の接近を知らせるアナウンスが流れ、警笛が遠く聞こえても葉狩は慌てることなく加藤に落ち着かせようと声をかけている。その様子に感化されたのか、さっきまで見てるだけだったヤツらが手を貸そうとゾロゾロ集まってきやがった。俺もなんとなく寄ってみたが、おっさんはすぐに引き上げられていた。
「おいっ、早くっ!おまえたちも上がれっ!早くっ!」
「く……ッ!」
電車のライトが見え始めてすぐ近くまで来てるのに、足が上手くかからないらしく、葉狩はなかなか上がってこれない。つーかテメーら助けてやれよ!なんで誰も手ぇ貸すくらいしないんだよ!?さっきまでの結束はどうしたんだ!?俺は自分のバッグとヤンジャンを床に置き、難儀してる葉狩に手を差し伸ばした。なんで俺がこんなことを……。
「おら!捕まれ!」
「……!ありがとう!」
「押してやるっ、早く上がれ!」
加藤が下から葉狩の尻を押し上げ、俺が手を引っ張る形でようやくホームに上がってこれた。そして葉狩は線路に向き直り、今度は加藤を引き上げようと手を掴んだ。
「よしっ、もう大丈夫!」
「あぁ!ありがとう……、本当に、ありが——」
「うわぁッ!!?」
葉狩は力を入れた途端に不自然にバランスを崩し、加藤の上に重なる形で再び線路に倒れた。なにか足を滑らせたように見えたから、葉狩が体重かけてた足のあった場所に目を向けると、そこには漫画雑誌が落ちていた。さっきまで俺が見惚れてた『鮎川もも』の写真のページはすっかりくしゃくしゃになっている。
(あのヤロー俺のヤンジャン踏みやがったな!!!)
そうこうしているうちに線路上にいる2人は、電車の進行方向へ走り出していた。そうか!先頭車両の停車位置より前まで走れば、まだ助かる可能性は……、
「通過列車だぞバカ野郎!!」
……一瞬2人は諦めたように立ち止まって振り返ったが、目前まで来て再び走り出した。
「隙間っ隙間っ、隙間探せ!!」
「いやぁッ、もうダメ……ッ、だッッ———」
バキャッ
その一瞬の鈍い音が、乗客の悲鳴と電車の通過音の中でも明確に聞こえた。人が紙クズみたいにバラバラになる、期待してたけどまさか身近な人間がこうなるなんて……。
(あ〜あ、加藤……あんなことすっからさ〜)
スローモーションのように長く感じる光景を呆然と見ていた俺の足元に、葉狩の生首が飛んできて我に帰る。その生気を失ってなおまっすぐな目と俺の目が合った。
「うっぷ、お゛ぉえ゛え゛!!」
目の前の現実に猛烈な吐き気と罪悪感に襲われた。それと同時に言い知れぬ怒りを覚えた。目の前のコイツに、自分にとってなにかとてつもなく大切なものを横取りされた。この時はまだそう思っていた。
「気に食わねぇ・・・」
いかがだったでしょうか?少しテンポが遅いですかね(笑)オリ主の詳細な設定などは次回の後書きに載せようかと思います。続けられるかわかりませんが、次回もよろしくお願いします。