GANTZ:Another Reboot   作:ユーブロン

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手短に書くといいながら割としっかり書いてしまいました…。
それではどうぞ。


0006 帰路

「で、なにが知りたいんだ?」

 

西は依然として余裕な態度で質問を受け付けた。そこでまず最初に名乗りを上げたのは、意外にも金髪の青年だった。

 

「じゃ、じゃあ俺からッ、コレ……、一体なんだってんだよ……、TVとか、催眠術じゃねーのかよッ?」

「TV?催眠……?プッ」

「な、なんだよ……ッ!」

 

小馬鹿にするように吹き出す西に不快感を露わにする青年。

 

「呆れた、あんな目に遭ったのにまだあの話を信じてんのかよ」

「なんだと…?」

「全部嘘ってことだよ。お前らが勝手にTVだなんだって言うから利用させてもらったんだ」

 

恵留が予想していた通り、アメリカのケーブル局との連携で作られたTV企画だと言う話は、その場で西が考えたデタラメであった。

 

「おいおいふざけんなよ、だったらなんなんだよコレ!」

「さぁ…、それは知らないね」

「バカにしてんのかテメー!だいたいお前は——」

 

西の態度に苛立ちが募る青年が西を捲し立てはじめる。恵留はそんな青年を宥めるように、彼の肩に手を置いた。

 

「質問は1人につき一つ、さっきみんなでそう決めたでしょう?」

「……チッ」

 

青年は舌打ちをし、釈然としないながらも渋々引き下がった。

 

「えっと、次は僕が……、西くんはいつからここに“呼ばれる”ようになったの?」

「…1年前だ」

「そんな前から……ッ」

 

恵留は西が以前からここに来たことがあるような言動をとっていた。そのため、今夜のような凄惨なことがずっと前から繰り返されているのだと推測していた。

 

「そうさ……、死んだはずの人間がここに連れてこられて……、人が死ぬとこいっぱい見てきた、今回なんかよりスゲーのもあった!俺はその中でずっと生き残り続けてきた」

 

西は息を荒くし、だんだんと興奮していきながら語る。そして思いついたようにガンツにツカツカと近づく。

 

「おいガンツ、死んだ奴全部見せてくれ…。おい、ガンツッ、シカトすんなよ」

 

西の言葉に無反応を貫くガンツ。その中に座っている裸の男の耳に指を突っ込み、強めにくすぐると、球の表面に複数の小さな顔写真が一覧で浮かび上がった。

その1番下に山田やヤクザたちの顔写真もあり、その内の1人を撃ってしまった青年は再び気分を悪くし「う…ッ」っと唸って顔を背けた。

 

「コイツら今まででもかなりマヌケ……、その点アンタはそのスーツが重要なのカンですぐ気付いた」

「…………」

 

押し黙り、聞きに徹する恵留のことを、西はそう評した。

 

「ま、それでその偽善者根性が無ければカンペキなんだけどねー」

「……なんで教えなかった?お前がウソついてなきゃ、みんな生き残れたかもしれない」

 

加藤が怒気を含んだ声で西に問い詰める。青年や少女も「確かにそうだ…」「なんで教えてくれなかったの?」と、西を責める姿勢でいる。

 

「なんでもっと早く教えなかった……、答えろコラ!」

「加藤くんッ、落ち着いて!」

 

加藤は西に詰め寄り、今にも掴み掛かりそうな勢いだ。恵留は2人の間に入り、加藤を抑えた。

 

「……アイツらが殺されてる間、ターゲットが油断するだろ」

「ずっと隠れてておいしいとこ持ってくってか?お前は今までもそうやって他人を見殺しにしてきたのかッ、命をなんだと思っている!!」

「知ったこっちゃないね、他人が死のうが生きようが」

 

西の冷徹な返答に加藤は憤りを隠せず、目に涙さえ浮かべている。その加藤を西はさらに焚き付ける。

 

「なに、お前泣いてんの?ダッセーなぁ、お前偽善者くせーんだよ。なぁオイ偽善者…、偽善者!」

「…………ッッ!!!」

 

「もういいさっさと殴れよ!そんなクソヤローぶっ飛ばしてやれ!!」

「うん!!」

 

青年の言葉に少女さえも同意している。しかし、恵留に抑えられた加藤の身体は、一歩も西に近づけなかった。

 

「う、動かねえ……ッ!?」

「あの子は今スーツ(これ)と同じものを身につけている、殴り合いにでもなったら勝ち目はないよッ」

「フッ、そっちは賢いねェ、誰に従うべきかよーくわかってる」

 

なおも嘲る西を睨みつけながら加藤は力を抜き、引き下がった。加藤を抑える手を離した恵留はゆっくり振り返り、西に近づいた。二つほど年下の中学生を見下ろすその顔は、まるで人形のように無表情だ。

 

「な、なに……?やんの?」

 

恵留のただならぬ雰囲気に僅かに警戒する西。

 

「……えっと、なんて言うかさ……その……」

「あ…?」

「君の言い分はよくわかった、そうして今日まで生き残ってきた君に、あとから来た僕らがなにかを言う権利はないと思う」

「……フンッ」

 

恵留は努めて感情的にならずに言葉を紡ぐが、打てど響かず、西は鼻であしらうばかりだ。

 

「こんなことは今日限りではないんでしょ?君には君の考えがあるなら、僕らも僕らのやり方を貫かせてもらう」

「何を言ってくるかと思えば……、目の前の星人も殺せねーような偽善者ならどの道先はねぇだろ」

「どう思ってくれても構わないよ。でもこれだけは覚えておいて、自分のやり方がいつまでも通じると過信しないことだね。いつか足元すくわれるよ」

「説教かよッ、うざってーな」

 

まっすぐと見据えて忠告をする恵留に対して、西は鬱陶しげに顔をしかめた。そのまましばらく見合っていたが、言いたいことを言い終えたのか、恵留はいつもの声音に戻って切り出した。

 

「さて……、ねぇ、君は何か聞きたいことある?」

「えっ?あ、あたし!?……いや、特には…」

 

少女は加藤や青年と息をのんで恵留と西の会話を見守っていたが、急に話を振られるとは思わなかったため、上擦った声でそう答えた。

 

「そっか、じゃ、代わりに僕が」

(多分これが今みんなが一番知りたいことかな?)

 

少女に代わり、恵留が再度西に質問する。

 

「僕らは確かに死んだ筈だ。でも君は生きてるって言ったね?でもさっき外に出ていた時は他の人には僕らの姿が見えていないようだった。それってホントに生きてるの?」

「…外のヤツらに見えないのはミッションの間だけだ。俺たちは生きてる。ただ……」

「ただ…?」

 

西の口ぶりはどこか重々しかった。恵留は急かさずに答えを待つ。

 

「俺の考えでは、オリジナルは本当に死んでる」

「…どういうこと?」

「俺たちはファックスから出てきた書類なんだよ」

「…………ッ!!?」

 

ほとんどの者はその言葉の意味がわからない中、恵留だけは違った反応をしていた。

 

「ここまで聞けばアンタならわかるだろ?」

 

西はそう言うと、ねぎ星人探索にも使われていた小型のコントローラーを操作した。すると、西の姿がみるみる透けていき、完全に見えなくなった。

 

「消えた!?」

「帰ってもここのことは誰にも言わない方がいいよ…、頭バーンだからな」

「あ、お、おいッ待ちやがれ!!」

 

青年の制止も聞かず、西は文字通り姿を消した。玄関の方から扉が開閉する音がしたので、部屋から出て行ったことがわかる。

 

(それにしても…だ)

 

部屋を出た西は家路につきながら思い起こす。

あの葉狩とか言う偽善者その2。無意識だろうか、虫も殺さないような顔して貪欲に情報を取り込み自力で最適解を導き出す状況判断力。おまけにその情報を元手にこの俺からもさらに情報を引き出そうとしてきやがった。

さっきにしてもそうだ。

 

『毎晩のようにこういうことしてるんだ?』

 

誘導尋問、とまではいかないが、わざとテキトーこいて俺に正しい情報を吐かせようとしやがった。ヤツの策に乗るくらいなら自分から話してやろうと思ってたけど、こういう思考になることさえ織り込み済みだとすると末恐ろしく思える。

 

「……ふっ、おもしれーじゃん」

 

僅かばかりに嫌悪感を覚えつつも、西は葉狩恵留への興味が尽きなかった。

 

 

  ● ● ●

 

 

程なくして、恵留たちも玄関の扉を開けて部屋から外へ出た。その際に少女に着せていた加藤の学ランは大きすぎるため、少女の自宅までは恵留の制服を借りるとし、恵留は例のスーツのままでいた。犬は勝手にどこかへ走り去って行った。

 

「ハァ……」

 

正面玄関まで降りると、金髪の青年はすっかり疲れ切った様子で溜息をついた。

 

「あの……、大丈夫ですか?え…っと、ぱ、ぱつきん…さん?」

「俺は稲森貴史(いなもりたかし)だッ!大丈夫なわけねーだろッ、こちとら人1人ヤッてんだぞ」

「そ、そうですよね……すいません」

 

恵留は金髪の青年こと稲森を心配して声かけたが、彼はトゲトゲしい口調で返した。そんな稲森の態度に加藤が文句を言う。

 

「アンタなぁ、助けてもらっといてその態度は…」

「頼んでねぇし、てか俺そん時の記憶ねーんだけど」

「だからって……」

「い、いいんだよ加藤くん、僕は気にしてないから」

 

恵留は加藤に気を遣わせないように、また、西の時に続いてこれ以上場の空気を悪くしないためにそう言った。

 

「それより、僕らタクシー拾って帰ろうと思いますけど、稲森さんも乗ってきますか?お代出しますよ?」

「……いや、歩くわ……、ちょっともう1人にさせてくれ」

 

恵留の誘いに稲森はぶっきらぼうに断ってそっぽむく。恵留は彼の気持ちを汲み取り、そっとしておくことにした。

 

「そうですか、じゃ、気をつけて帰ってくださいね」

 

そう言って恵留たちは道路の方へ向かう。加藤は非難の目で稲森を見ており、少女はというと「感じワルッ」と、稲森に聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた。

 

「……ったく」

 

稲森は足音が遠ざかるのを確認して振り向くと、早々にタクシーを捕まえて乗り込む恵留たちの背中を見送った。

 

「……あっしまった、あの巨乳ちゃんもいるなら一緒に乗ってけばよかったッ!あちゃ〜」

 

稲森の立ち直りは思ったより早そうであった。

 

 

 

一方タクシーに乗り込んだ恵留たち一行は、まず少女の家に向かった。

表札に『岸本』と書かれた一軒家にたどり着くと、少女は合鍵を使って家に入り、自身の部屋で恵留の制服から手近な服に着替えた。

そしてタクシーまで戻り、恵留に制服を返した。

 

「服、ありがとうね……」

「うん、どういたしまして」

「あっ、な…名前」

 

別れ際に加藤は若干頬を赤らめて名残惜しそうにする少女に名前を尋ねた。

 

 

「あっ、あたし、岸本 恵(きしもと けい)

「けい……」

 

その名前を聞いた瞬間、恵留は既視感を覚えた。

 

 

 

  ● ● ●

 

 

岸本と別れ、2人を乗せたタクシーは次に恵留の家へと向かった。

車内はしばらく静寂に包まれていたが、ふと加藤が切り出した。

 

「なぁ……、今日みたいなこと、また、あるんだよな」

「うん、そう遠くないうちにね。多分あの球のレーザーでまた……いや、やめよう…、今は」

「……ッ、そうだな」

 

今の話はタクシーの運転手に聞かれてはならない内容だ。もし西の忠告が本当なら、自分たちの身に何が起こるかわからない。加藤としてもあの地獄を思い出したくないから今は話す気になれない。

タクシーに揺られ、微睡む意識の中で恵留は今日のことを思い起こす。

 

(図書委員の仕事がいつもより少し早く終わってから、電車も早い時間に乗ろうと思って駅に来たけど、あんな場面に出くわして、さらにその後あんなことになるなんて……)

 

あの時線路に落ちた酔っぱらいを助けた選択に後悔はない。だが、あの決断が全てを変えてしまった、そんな気がしていた。

 

(これから僕らはどうなっちゃうんだろうか……。加藤勝(かとうまさる)西丈一郎(にしじょういちろう)稲森貴史(いなもりたかし)岸本恵(きしもとけい)……、ああそうだ、アイツと同じ名前だったんだ)

 

さっき感じた既視感の正体がわかった。同じクラスの男子にして、地下駅のホームで手を引っ張ってくれた男の名も“けい”だったのだ。

それともう一つ、“けい”という名前につい最近触れたような気がするが、頭がうまく回らない。意識が疲労で沈んでいくようだった。

 

「——かり?……葉狩!」

「え……ッ!ごめん、なに?」

 

隣の加藤の声にハッとする。

 

「もうすぐじゃないのか?お前の家」

「あぁ…そうだね」

 

タクシーは既に恵留の見知った道へと差し掛かっており、自宅まですぐそこまで来ていた。

 

 

「……ありがとうね、加藤くん」

「えっ?なんだよ急に」

 

加藤は突然に礼を言われ、何のことでだったかを思い返しながら恵留に聞き返した。

 

ねぎ星人(アレ)にやられそうになってる時、僕と岸本さんのことを庇ってくれてたでしょ?そのことで」

「あ、あぁ……」

 

 

『そこにいる葉狩と、もう1人の女の子には手ェ出さないでくれ!!』

 

 

加藤はねぎ星人に崖際に追い詰められていた時に、確かにその言葉を発していたことを思い出す。

 

「いやぁ、あんときはホラ、お前が必死になってやられた人らを助けようとしてるの見て咄嗟に……、アレがなきゃ言えてなかったっていうか」

 

頬を掻き、照れ臭そうにする加藤。恵留は続けて感謝を伝える。

 

「そうだとしても、あの言葉を聞いて僕は勇気が出てきて、ねぎ星人(アレ)に立ち向かうことができた。加藤くんにとってのヒーローが“けいちゃん”のように、僕にとってのヒーローは加藤くんだから」

「…ッ、お前」

 

加藤は恵留の真摯な言葉に胸を打たれた。まさか自分がそんなふうに言ってもらえるとは思わなかった。

そうこうしてるうちにタクシーは恵留の家の前に停車し、ドアが開く。

 

「葉狩、お金は俺が出すよ」

「えっ、いいよ僕も出すって」

「いいからいいから、巻き込んじまった詫びもあるし」

「そっか……じゃ、お言葉に甘えて、じゃあまたね」

 

恵留はタクシーを降り、加藤に手を振って家へと歩いて行った。手を振りかえす加藤はひとりごちる。

 

「葉狩か……、やっぱり変なヤツ…」

 

そう言いながら加藤の口元に笑みがこぼれる。こんなに心が満たされるのはいつぶりだろうか。

 

「少しはお前に近づけたかな…?計ちゃん」

 

脳裏に浮かぶのは、幼き日の親友にして憧れの存在、それに一歩近づけたような気がしたのだった。

 

すると、コンコンッとタクシーの外から窓を軽く叩く音がした。なんと家に入ったはずの恵留が戻って来たのだ。加藤は窓を開ける。

 

「どうしたんだ?」

「ごめんね、ちょっと聞きたいことがあったの思い出して…」

「ん……?」

「加藤くんの言う“けいちゃん”だけどさ、

 

 

 

 

もしかして、玄野計(くろのけい)って名前じゃない?」




次回は玄野サイドで話を書こうと思います。
それではまた。
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