転生司書だけどのんびり生きて行こうと思う。   作:欲望貯金箱

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年末年始のアレコレ
冬休みの話


 期末テストをフルスイングでクリアして、現在。

 冬休みに突入した、その三日目。

 

「浮いてる!ホントに浮いてるよ!」

 

「はぁ?……いや、でも……下に何も無い、よな?」

 

「だから言ったでしょう?SFバイク入手と」

 

「あーうん。巻き込まれても楽しそうで何よりだ」

 

「原動力が水と電気……うーん人類の命題になりそうなエネルギーだね」

 

「上昇できるか!?チョーセンデス!」

 

 夏休みと変わらない6人のメンバー(ヘクサゴン・バカ)で。

 土地開発に失敗して整地されコンクリートを打って基礎まで立てたは良いが費用が足りずポシャったと思われる空き地にてラピッドラビットの御披露目と相成った。

 肌寒い風は吹くもののカラッとした天気なので、悪くは無い。

 トロトロと押していく間にユウとネイダーをゲーセン前で拾い。

 駅前でナンパに連敗している花菱を連れ。

 コンビニで立ち読みしているモッチを誘い。

 空き地で走っているハッスを見つけた次第なのだが。

 ガイメタルも持ってきている。

 案の定というか。

 初フライトは父さんが持っていった。

 が、1mほど浮いたあとゆっくりと後退していき。

 家の壁に激突して母さんにしこたま怒られた。

 

「じゃあセットします」

 

「うお!?今緑の光が!?」

 

「ビッシー一回見てるんじゃ無いっけ?」

 

「大方、新鮮な驚きをプレゼントとか思ってるんだろ」

 

「近未来じゃねーか……現実、だよな」

 

「これを中学生が作ったのかぁ。IS作れる女の子だもんね、作れるか」

 

 一瞬。

 自分を中心に風が吹いた。

 気のせいではなく、みんなが身構えたのでわかった事でもある。

 僕はそれどころではない。

 今までは普通のバイクと同じか、それより軽い感覚だったのだが。

 比ではない。

 何処へでも行けるという感覚。

 何処に行けばいいか分からない感覚。

 これは父さんも失敗する。

 おそらくイメージ云々はISを動かす上で必要な要素としてあるものを利用しているのだろうが。

 僕は男子です。男なんです。ユウじゃあるまいし、女性に見えるわけでなし。

 そもそもIS触った事すらねえよ。

 でも、ちょっと分かってきたかも。

 

「う、おぉー!?」

 

「って降りるのかーい!」

 

「上下運動だけでヤバそう」

 

「俺にはムリだな」

 

「俺にもムリだな」

 

 って、上昇下降に関してはハンドルじゃなくてもいいのか。

 これは、こうだ。

 

「あ、ジブリで見たかも」

 

「メーヴェ?それメーヴェ?」

 

「カーブじゃなくて横に水平移動も出来るのかよ」

 

「なんだこの、なに?」

 

「乗りたくはねーな!」

 

 力場で落ちない、んだったか?

 じゃあ、こう!

 

「おい……おい」

 

「側転しちまった!?」

 

「今の超怖い!」

 

「こう飲み込みが速いのは俺がパルクール教えたとき以来だったか?」

 

「ハッスが覚えてるくらいが一番じゃないかな?あとは毎回塗り替えるバッティング記録」

 

 おー落ちないわ……。

 前進は……あれ?スロットル関係ないのか?

 回らなくなっている。

 ……ちょっと休もう。

 

「こう、降りる直前に少し浮くのがまたなんともゲームみたいでおもしれーわ」

 

「ノエ的にどんな感じ?」

 

「バイクとして乗るのとは違う感じに肩が懲りますね。体重移動とイメージって言うのが解りましたけれど」

 

「ちょっと乗ってみてもいい?」

 

「モッチ行けんの?ハッスなら余裕そうだけど」

 

「俺はパス。非現実に巻き込まれたくないわ」

 

 既に巻き込まれていると気が付かないのだろうか。

 主に僕のせいで。

 

「モッチ上手ぇ!?」

 

「水上バイクみたいだね!体重移動が違う感じかな!このまま少し走らせてみる!」

 

「僕と違って話をする余裕まであるとは……」

 

 スムーズに動くそれを見て、覚える事にしよう。

 いきなりアクロバット始めたりはしないようだ。

 まあアレは僕が確認したかった事だけれど。

 というか。

 水上バイク乗ったことあるのか、モッチ。

 あ、立ち乗りなのか。

 いや、普通に座った。

 ちょちょちょ!

 縦ぇ!?

 

「垂直でそのまま進めるんですか!?」

 

「さっきの側転見て思いついたんだけどね!たぶん横に倒れたままとかでも出来ると思うよ!」

 

「ゲームであるような急停止も再現できそうな勢いだな」

 

「というか再現可能っしょ!」

 

「メテオフォールとかやれそうだ」

 

「くっ、お前らといると俺がオカシイのかと思うぜ」

 

 充分おかしいけれどね、パルクール超電磁砲デブ。

 略してパチデブ。

 

「ふう。面白かった」

 

「御見事です。参考にさせていただきますね」

 

「モッチ見たら俺は乗らなくて良かったと思うぜ」

 

「俺もムリだ、ありゃ人間業じゃねーって」

 

「でもラピッドラビットの補助もあったし、そうでもないよ?」

 

「誰だよモッチのこと平凡とかいったやつ」

 

「「「最初はお前(ハッス)だよ」」」

 

 ハッスが俺たちの中じゃ没個性だとか言ったのではないか。

 だろう?

 友人関係というつながりが無ければ凄く失礼だよ。

 関係がなくても失礼ではあるが。

 というか。

 

「今までモッチがバイクの免許持っていること知りませんでしたよ、僕」

 

「言ってなかったっけ?」

 

 聞いた事はない。

 

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 帰りに牛乳買ってきて欲しいと母さんからメールがあったので、ラピラビで買いに行く。

 人間の脳って結構曖昧で、それでいていやに高性能。

 だから目の前で可笑しなことが起こっても、それを自分で補正してしまう。

 今日、僕は友人らの前で飛行したけれども。

 『宙に浮いているバイク』というものはこの世に存在しないと思っているだろう?普通は。

 だから疑わない。

 珍しいバイクに乗っている少年と認識しても。

 飛んでいるバイクに乗っているとは思わない。

 ハズだったんだけどなぁ。

 

「ノエおにいちゃん?」

 

「えっと、サンちゃん?こんにちわ」

 

「うん、こんにちわ」

 

 お使いと思しき童女と出会った。

 

「おにいちゃんもおつかい?」

 

「うん。牛乳」

 

「ヒーローバイクで?」

 

「小学生くらいだとそういうものですか」

 

「飛べるバイクだよね。ういてるもんね」

 

「……」

 

 嬉しそうなのはいい。

 しっかり理解しているじゃないですか、この子は。

 

「一応秘密です。あれは天才美少女科学者が僕にくれたものなので」

 

「ひみつ?」

 

「はい、秘密です」

 

「わかった」

 

 えへへ、と笑う。

 よく見たら背負ってるリュックは男の子向けの戦隊モノに登場するマスコット型だった。

 ヒーロー好きなんだろうな。

 国を問わず。

 

「そだ。ノエおにいちゃん。わたしはさらしきかんざしです。しょうがく2ねんせいです」

 

「これはご丁寧に。僕は九重安寿。高校3年です」

 

「ネイダーおにいちゃんといっしょ?」

 

「ですね」

 

 聞捨てなら無い名前だったが華麗にスルー。

 いや、デカイ家があるなぁくらいの認識だったんだけれど。

 名前も一緒だし分家とかかな?とは思っていたんだけれど。

 

「そちらの御使いは終わりですか?」

 

「うん。これからかえるとこ」

 

「引き止めては悪いですね、ではこのへんで」

 

「じゃあね」

 

「はい。縁が合えば」

 

「えにし?」

 

「タイミングですね」

 

「うん。えにしがあえばまたね!」

 

 これ、厨二に引き込んだ?

 まあいいか。

 そんな事もある。はず。

 

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 夜。

 この時期に父さんが帰ってこられるということは、突発的な仕事が入らぬ限り年末年始は家にいられるという事である。

 まあボランティアで市の図書館に出没しているようだが。

 久しぶりの一家団欒状態の冬休みであった。

 あった。

 うん、またなんだ。

 今日は何かと人に会うなぁ、と。

 9時だよ?9時。

 インターホンが鳴って、母さんが出てくださいという。

 

「あそびにきたヨ!」

 

「さむいさむいさむいさむい……」

 

 玄関先に居たのはダッフルコートに身を包み、死んだ魚の目をして震える少女と。

 

「って聞いてる?」

 

「聞いてます。とりあえず上がりなさい」

 

 お前そんな格好で寒くないの?と言った風情の一人不思議の国アリスを体現する。

 篠ノ之束その人だった。

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