暇になると来ている事の多い場所は人によるだろう。
図書館や最寄のコンビニ、いやに週刊誌の陳列が良いスーパー、誰かの家。
それとバッティングセンター。
うん。戦場だけれど。
おもに店主と僕の。
「お店の人が選ぶんですか?」
「本当はタブレットで利用者が球種と速度を選ぶんだけれどね」
「プリペイドカードも売ってるよテンちゃん」
「直接のお金がいいんじゃないですか。店主、236で」
「まいど!女連れとは良いご身分だなチビすけ」
「うるさいです、砂漠化頭皮」
睨み合う。
違うな、視線を交し合う。
「「ハッ」」
速度は僕が決め、一球ずつ店主が球種を決める。
利用するたびにルールが出来上がっていった一騎打ちスタイル。
タイミングも何もかも、店主の思う様だ。
ほとんど白球が見えた、いや奥の機械が動いた瞬間に振っている気がする。
ハッスいわくもはや人間業じゃないそれを、やってきたのだ。
「うわっ惜しい!」
「すまん、私にはよくわからないんだが」
「ちーちゃん見えてるよね?」
「見えているのと理解するのは違うぞ束」
オーバースペックたちが何か言っている。
気にしない、気にしないぞ。
感謝の正拳突じゃあないけれど、全てのものに感謝すれば物事は単純になる。
素からそうだったのかもしれないけれど。
トリコが食義を習得中にふいに放ったナイフが気がつかぬうちに高威力になっていたように。
食義が生活自体に取り込まれた天野家の血を引く僕ならではの技。
思えば、一つ目の壁だった150を打った際も親や友との出会いに感謝した瞬間だった。
だから、現在の壁も。
簡単に超えられる。
「!?」
「おー掠ったー」
「今、動きが」
「変わったねぇ。動きって言うか、雰囲気が」
「……安寿さん?」
「
!?
今、悪寒が……?
違う、気を引き締めろ。
キィン。
「打った!」
「ちっ!ああなったら俺の負けだ!クソッ!」
「そうなんですか?」
「最終的に調整までしてホームランするような馬鹿だぞ!クソッ!」
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いやぁ236は強敵でしたね!
ところでホームランを出すと何か景品がもらえるどこか場末のような雰囲気のバッティングセンターですが。
今僕の手元にあるのはぬいぐるみが2個。
(。-ω-。)みたいな顔と、(# ゚Д゚)の顔。
正直いらないので女子二人に押し付けてみることにする。
「ふむ、二人のおかげで取れたので差し上げましょう」
「じゃあわたしこっちー」
「え、いいんですか?」
「イーンダヨー!」
「グリーンダヨー!」
テンションの威容に高い束ちゃんとハイタッチ。
ちょっと目が怖いんだが気のせいだと思いたい。
さっき髪の毛抜かれた事もぐいって引っ張る感じだったからノリで大丈夫なはず。
変なフラグ立っていないかなこれは……。
二人とも本気で規格外なのは予想してたけれど、束ちゃんは範囲勉強すれば受験なんて小学生レベルだよ!などという意味のわからない事を言い、千冬ちゃんは規定時間勉強を繰り返す努力型の天才であったようだ。
うーん、並列思考と記憶を振りかざしてゴリ押しする僕とは大違い。
記憶力に関しても絶対とか完全とかいう便利なものじゃあないから忘れるときはすっぽ抜けるし。
歴史を覚えるのが苦手という千冬ちゃんに親近感を持てたのでよしとしようと思う。
暇なときって何故だか人がつかまらないもので。
楽しげなバカたちも花菱も用があっておらず。
他に友達と呼べる存在が思い至らない僕はもしや…考えるのをやめよう。
数えられないから友達なんてどこかの少女が言っていた気がするけれど、知った事ではないわ!
「行ってみたい所ってあります?」
「テンちゃんの学校!」
「部活動やっている後輩と教師ぐらいしか居ないとは思いますが」
「いきなり受けるでもない高校にいったら迷惑だろうが!すいません安寿さん……」
いいんじゃない?
暇な事は確かなんだから。
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笑顔のステキな竹岡先生(若干教員の中で浮くほど空気が読めない)に許可を取り見学させる。
結構大きな校舎でロの字型をしている三年間の思い出がつまった僕の高校は、部活動を行う後輩たちが居ることを差し引いても寂しい感じがした。
色々な事があったなぁなどと感慨にふけるのは卒業式でいいか、なんて思ってはいたのだが。
年を越したら本気で来る機会が減るもので。
だからというわけではないが、考える所はあるのだ。
「ってオーイ何してやがりますか束ちゃん」
「こう、謎の扉を開けるためにピッキングをデスね?」
「御花摘みにいってる千冬ちゃんに言いつけますよ」
「それだけはご勘弁を!あ、開いた!」
「どうせ使ってない教材や机くらいしか入ってないとは思いますが」
「よよよ……テンちゃんの言うとおりだった……」
「いや、閉めろよ」
って、待て。
何か今。
とっさにポケットに手を伸ばす。
バイクの鍵じゃない。財布でもない。
ガイメタル。
G波が出てるとか、そういうのは感じられないけれど。
見間違いじゃなければ絶対アレは……!
「どったの?」
僕に与えられたのが一つきりだったとして。
転生者が複数居る事が確認できたあの時以来、何かと探す癖がついていた。
慎重に調べるというか、なんというか。
転生である事を公表する人が居ないのは信じる人が居ないからだとしても。
確証は無いが、僕は一時的にガイメタルを手元においておかなかった。
天野牧場にあるとはいえ、侵入者束ちゃんが傷つけようとしたように。
侵入して盗み出してしまえる事も考えられたわけだ。
特徴的な小さい機械。
スマートフォンのようなそれに、ガイメタルをセットする。
機能しない。
壊れているのか、しかし。
「束ちゃん、この機械直せますか?」
「なぁに?スマホ?」
「の、ようなものです」
「ん?どうやってくっ付いてるのコレ」
「こうして、こう」
「ぺたりはんど?」
そういえばどうやって付いてるんだコレ。
機械は機能していないのに。
この
「まあ束さんに任せなさい!面白いものが見つかったとして直してしんぜよう!」
「おねがいします」
その後、何事も無かったように扉を閉めて戻ってきた千冬ちゃんとともに学校案内をして帰路に着いた。
どうでも良いけれど、いや、良くないけれど。
これ、窃盗じゃね?
皆さん、窃盗は犯罪です。
この小説は窃盗を含む犯罪を助長させる物ではありません。
聞こえていますか束ちゃん?束ちゃーん?
安寿くんもですよ!?
どうやら作者は炉辺の石ころのようです。