良い引きの練習になったのかなぁ?
身体が軽い。
気分が高揚している。
床を、壁を、天井を。
バリバリメキメキグシャゴシャと。
破壊しながら大きくなっていく。
視界は良好。テンションアゲアゲ。
しかし、外に出たはいいものの。
やはり場所がわからない。
ひと際厚い天井を破壊した瞬間に水が入ってきた事と、妙な流れを感じることから海の中だったのだろうか。
よくやるよ。
まだ中学生だろう?
お金とかどうやって算出したのさ、この子。
下には水。上は星空。
翼はあってもどうやって浮いているのか。
翼は飛行に関係ないのかもね。
「なんでなんでなんでなんでなんでなんで」
「うそだうそだうそだうそだうそだうそだ」
「ありえないあまのぼくじょうのはなしは」
「でたらめじゃなかったの?どうしてだよ」
「りゅうなんていないはずじゃん!わたし」
「まちがってない!わたしがげんじつなん」
「だ!わたしがみているものがげんじつな」
「んだよ!わたしはせいじょうだ!わるく」
「ない!いじょうじゃない!いじょうじゃ」
「うるさい!僕の怒りは結構派手だぞ!」
「ひぃ……!」
睨み付けただけで怯えるとかどうなって……ああ、今は人の姿じゃないんだっけ。
作業用の建設機械をロボットみたいに繫ぎ合わせた何かで空を飛ぶ、一人不思議の国のアリス。
ウサギの耳をつけて、怯えと狂気で彩られた瞳の少女。
篠ノ之束がそこにいた。
いやぁ、後先考えずに突っ走ったけれど。
コレ結構危険だぞ?
天野牧場の護神龍、海上に現る!とかならまだ良いほうで。
謎の生命体が少女を襲う!とかなら相手が束ちゃんなぶん、かろうじてセーフ。
場合によっては人体実験されそうないびつな存在だからね。
「じゃ、行ってみよう!」
息を吸う。
深く深く、長く長く。
普通では考えられないほど吸うことができ、苦しくもないし思考も安定している。
それを扇状に勢いよく吐き出す。
吐き出された息は風の塊となって、竜巻を作り水を巻き上げる。
もちろんというかなんというか。
束ちゃんは身動きしないし、影響を受けているでもない。
一度黙らされて沈静化したのだろう。
最初の彼女の目論見どおりに、全てを見るためにデータを取っているのだろうか。
大草原不可避wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww。
手のひらを上に。目を瞑って深呼吸。
ボパァン……。
水が飛沫を上げて一瞬凹む。
「来るなら来なよ、弱虫少女」
「だ、れが!」
「だってそうだろ?僕が怖いから離れた所にいるんだろ?」
「こんのぉ!」
煽り耐性ゼロですかそうですか。
距離をとったかと思えば、恐らく最大出力の全速力で突っ込んでくる。
あのね?わるいけどさ。
「必殺蚊叩き」
「へぶにゃ!?」
がしゃん。
ぼちゃん……。
この姿で身体能力上がるなら、剛速球ホームランなんて片手で出来らァな。
そんなこんなで。
初戦闘というか、初ケンカは。
あっけなく終わったのであった。
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「へーいへい!停まってプリーズ!」
「テンちゃんのバイク置いてきたのが痛かったねぇ」
「そもそもココは何処だ」
ヒッチハイクなんて生まれて初めてだよコンチクショウ!
海(結局ホントに海だった)に落ちたパーツを拾い集めるのが実質不可能になった僕たちは、大人しく帰ることにしたのだが。
少なくとも国外にいることだけは確実であり、いろんな意味で危険なのだった。
イギリスとかデンマークとかあっちの方の海だよ!とは束ちゃんの弁。
おい、ホントにどうするんだ。
「パーツをどこかからパクってこようよ、素直に」
「えぇい張り付いてくるな鬱陶しい!だいたい誰の所為でこうなったと思ってるんだ!」
僕にいたっては裸足だぞオイ!