転生司書だけどのんびり生きて行こうと思う。   作:欲望貯金箱

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年越し話

 あ、という暇もなく。

 大晦日である。

 とはいえもう夜もふけ、紅白も終わったドが付く深夜に自転車を転がしていた。

 荷台にバスタオルを幾重にも巻いて、その上に千冬ちゃんが座っている。

 ハッスはあの日の報復後すぐに海外へ。

 花菱は1月17日が試験なので最早コチラを相手にする余裕はなく。

 ユウは家族で横浜に行き。

 モッチは件の音楽学校を受けるために県外へinした。

 毎年の事とはいえ年越しの除夜の鐘を衝くという建前の元、しっかりとした米の食感残る酒粕を使ったかなり甘めのまさしく『甘酒』と言った甘酒を飲みに行くという作業をネイダーと約束していた。

 いつもなら花菱とネイダーだが仕方ない。

 今年は束ちゃんと千冬ちゃんも連れて行きなさい、と母さん。

 現地集合であるが、簡素な地図を見せるなりすっ飛んでいってしまった束ちゃんを追いかけるようにこうして自転車を走らせているわけだが、会話が続かない。

 というか寒いのが本当に苦手なのか最初のうちから言葉少なになっていき、現在では「はい」「いいえ」と言ったまるで昔のRPGのようになってしまった。

 僕は途中で暑くなったため僕のマフラーが千冬ちゃんのマフラーの上に掛かり首周りがモッフモフである。

 女子に密着されていてうらやましい、と親友は言うだろうか。

 だがかなり厚着で感触なんておなか周りを掴む毛糸手袋の小さい手ぐらいだ。

 もうね、自分が身長低いのを気にしていられないというか。

 近所の交番のオッサンに「似合ってる」などといわれたのは果たして恋人的なのか兄妹的なのか。

 よく考えたら言葉少なになったのオッサンの所為じゃなかろうか。

 

「安寿さん」

 

「あ、えっと何ですか?」

 

「寒いです」

 

 訂正しよう。「はい」と「いいえ」と「寒い」だ。

 背中に頭がぐりぐり押し付けられた。

 うーん、もうすぐなんだけどなぁ。

 

「ホントにもうすぐですから。我慢ですよ」

 

「はい」

 

 僕の考えが失礼かもしれないのだけれど、泣きそうで怖い。

 泣き出さないか、怖い。

 本当に失礼だな、僕。そんなに弱い子なわけ、無いじゃないか

 

 

 

 駐輪場に自転車を停め、クソ長い砂利の坂道を登る。傾斜がゆるいのが唯一の救いかもしれない。

 視界の端にちらちらと映るあの寒そうな格好がイラっと来た。うん、そういうことだな?

 

「千冬ちゃん、ちょっと」

 

「え、はひゃぁ!?」

 

 手を握り、そのまま僕のポケットへ。

 

「ああぁあぁ安寿さん!?」

 

「はーい、落ち着いて。ゆっくり顔を上げて鯛焼き屋台の影を確認しましょう。余りしっかり見ないようにしてください。気付かれます」

 

「え、え?」

 

 言葉通りに実行してくれたのだが、一瞬時が止まったような感じがした。

 

「ふ、ふふふ。束め、そういうことか」

 

「自転車に乗っていたときもどこかで監視されていたと見るのが自然でしょうかね」

 

「で、どうするんですか?」

 

「ネイダーに連絡して、後は野となれ山となれですかね」

 

「それってどういう……?」

 

「デートごっこです」

 

「っ!?っっ!?」

 

「あくまでごっこですから、そのように緊張せずにお願いします。アレに気取られるとかなり厄介です」

 

 とりあえずネイダーにメール。

 物の数秒で返信が着たが、心配性なネイダーが寒そうな格好の束ちゃんを放置しておくとは思えない。

 程なくして捕獲される事だろう。あるいはコチラの監視が増えるかも知れない。

 

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 ところでツリ目気味で敬語な後輩とか中々クる物があるだろうと思う。

 何だこのナマモノ。可愛いぞ。

 今の僕の気持ちは選択肢があって、こんな感じ。

 

 ニア ・千冬ちゃんは可愛いな。

  ・千冬ちゃんは可愛いなぁ!

  ・千冬ちゃんは可愛いな!!

 

 全部一緒だと言う冗談はそこらへんに捨ててきてくれるとありがたい。

 まあやっていることは単なる餌付けなのだが、ぐうカワ。

 僕に負けず劣らずの健啖家、というのは女子に対する評価としてはいささか失礼であるとはいえ。

 タコ焼イカ姿煮今川焼き鯛焼き牛串焼そば綿飴あんず飴ポテトクレープフランクフルトetc……。

 同じものを僕も食べているとはいえ、晩ご飯の後にこれである。

 ザ・食べすぎ。

 で、はぐはぐと食べる姿が凄くかわいい。

 バカ共に可愛い食べかただと言われる僕が認める可愛さである。

 チョコバナナは固まったチョコがこぼれるから嫌いだということで買っていない。いや僕は食べたけど。

 ふはは、どうせ運動するから大丈夫なのだー(乾いた笑い)!

 デートじゃないね、食べ歩きだ。

 

「目的が完全に食べ歩きになってません?」

 

「いやぁよく気がついてくれました。ミルクせんべい美味しい?」

 

「美味しいです。こういう屋台のってどうしてこう、その…身体に悪そうなのに美味しいんですかね」

 

「どうしてですかねぇ。そろそろ鐘の方に行きますよ」

 

「はい、えっと束は?」

 

「今さっきネイダーからメールがあって、先に行って待っているそうです」

 

 あ、でもその前に。

 

「甘酒ぶんのおなかは大丈夫ですか?」

 

「女の子は甘いものは別腹なんです」

 

 それ、女の子だけじゃないと思いますが。

 苦笑するように言うと、千冬ちゃんも釣られて笑い出した。

 

 

 

「へーい、めーん」

 

「おう束お前それ何杯目だ」

 

「鐘を一衝きすると一杯もらえる。ちょっと回数こなしてきましたー!イエーイ!」

 

「……ネイダー」

 

「すまん、止められなかった。というか安寿、お前も人のことが言えるのかどうか」

 

「見事にブーメランが刺さりましたね。すいません」

 

「束!人様の迷惑になるな!」

 

「ちーちゃんもチョックラ衝いてきなよ!へいへーい!」

 

 うん、正直なところ場酔いだと思うんだけれど完全に出来上がっていた。

 甘酒でこんなになるヤツ見たことないんですが。

 ……中学生に飲酒させた高校生。うん、事案発生ではなかろうか。

 みんな!未成年の飲酒は犯罪だ!

 何処に言っているんだ僕は。まあチビッコに甘酒出すここも悪い!と言う事にしておこう。

 僕と千冬ちゃん以外チビじゃなくね?とは絶対に言ってはならない。絶対にだ。




甘酒美味しいれすぅ。
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