春は出会いの季節でしょうね
入学式の空気ほど、面白いものは無い。
今の僕はそれを改めて実感している。
去年は去年で新しい図書館司書としてのあいさつがあったけれど、今年は教員と事務の増強があった。
言わずと知れた織斑一夏くんがみょんなことからISをうごかしちゃって編入するために動かした人々だ。
月イチで生存確認のために彼の家に行く事が、毎日に変更された瞬間から3月頭の問題が一区切り付くまでの間は織斑家の前で報道陣や研究員各所関係者を言語的にまたは物理的に排除し続けた。
それでも政府が動いてくれるまでの間だったのだけれど。
イロモノゲテモノ一般生徒、オマエ年齢的に制服大丈夫ですか?な女性とか殺気を隠せ未熟者()とかどうなっているんだろうね?この学校。
こちとら一般的な図書館司書だから厄介ごとに巻き込まんでくださいね。
「それでは九重さん、あいさつをお願いします」
「新入生のみなさん、入学おめでとうございます。謹んでお祝い申し上げます。
僕はこのIS学園で司書をしています九重安寿と申します。
受験という人生の難関を乗り越え、IS学園の生徒となったみなさんにあらためてお祝い申し上げます。
義務教育を終え、自分の力で人生の進路を決めたのは初めてという人も多いのではないでしょうか。みなさんがIS学園で、充実した三年間を過ごせるように祈っております。
この学園では一般教養に加えインフィニット・ストラトスについて学んで頂く事になりますが……」
そうさなあ。
「みなさんの未来に輝かしい栄光があることを祈っています。以上、九重安寿でした」
「ありがとうございました、続きまして……」
失笑と苦笑が入り混じっているなあ。
元ネタ解った人は僕と握手!
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入学式も終わり、我が居城図書館の司書室へ。
利用者が来るまで時間があるし、ここで一息入れるのも手かなあ。
司書室に持ち込んでいいものではないけれど、年代物のコーヒーミルに豆を入れてがりがりし始める。
コレを導入したのは僕ではないがほぼ毎日ここに逃げてくる少女に感謝しなければね。
中挽きしたマンデリン・スマトラ4:コロンビア3:ブラジル・サントス2:キリマンジャロ・キボ1のブレンドをサイフォンのロートに……えっと三人分だから40gかな?
その間に予めネルフィルタで濾過した水を沸騰させる。
サイフォン導入に際しましてはもう一人の少女が難色を示しましたが。
だってこのままだと喫茶店じゃないか。
竹ベラで一回目の攪拌をしながら苦笑。
もうねー書類仕事でねーぐったりしているときに差し入れてくれたコーヒーが美味しくてねー。
いい意味でも悪い意味でもあらゆる意味で
せいぜいが街やら地域の図書館で守りなさいって言われている事がどうして学園の図書館でできないんですか?なんて、笑顔で丁寧に一人ひとりに話していけば納得してもらえるとは思うんだ。そんな時間無いけど。
だから去年の夏休み前にルール遵守できなかったら大昔の図書館ばりに書籍が鎖でつながれたうえで監視カメラがつくことになりますけど良いですか?場合によって該当生徒には面談も検討していますよ?って生徒総会で聞いたらパタリと素行不良によって被害受けていたものがなくなるんだから、やはり対話って大事。
ただしあの時の僕の背後に何かが見えたとかいう生徒会長ちゃんぜってぇゆるさぬぇ!ウソだけど。
何がライバックだよ。あんな「お前のようなコックがいるか」な人ではないでしょう(笑。せめてもっと、こう、緑で二足歩行して何でもできる恐竜のような謎生物にして欲しいところ。オッサンがスタンドになるよりも可愛いと思うんだ。
二回目の攪拌。廊下を歩く足音が聞こえてくる。
そっと図書館の扉、左だけをロックして司書室に鍵をかける。
そこは僕だけの空間で、僕だけの城。
ホラ、彼女が来……
ガチャゴッ
左の扉に手をかけて、そのまま激突した音が聞こえた。
いつも右がロックしてあるから油断したな!?
今日は左だ!
「九重司書!?えげつないんじゃないですか!?」
「ほぁ?あんだって?」
がっちゃがちゃがちゃ
「ってコッチも鍵かけてあるし!そんなに入れたくないんですか?」
「だって会長ちゃんココで一時限サボタージュしようとするでしょう。理由ある、例えば生徒会の仕事があるならまだしもコーヒー飲む為だけにココにこられても困るんですよ」
だってココ図書館だし。
喫茶店じゃないし。
まあIS専用機の水?を使ってピッキングするから意味無いけどね。彼女の場合。
「いい匂いがするのに飲めないとはどういった了見だ!司書室にサイフォン設置したのは生徒会だ!おーぼーだ!」
ばっと開いた扇子には『ムカ着火ファイアー』の文字。
横暴はどっちなんでしょうね?
「ああでも、理想のタイミングです。抽出終了、こちらへお掛けくださいお嬢様」
「意地でも開けないんですね、扉」
ピッキングで司書室をあけて室内へ入る会長ちゃん。
美しいカップなんて上等なものは無い。
ビーカー。ビーカーである。
ドラマで見た理科室のセットでコーヒー入れるシーンが好きになったんですよね。
なお自分の分は某緑色の匠型(四角い緑色のボマー)カップで入れる。
「そっちのカワイイやつがいいなー、なーんて……」
「自分で調達してきなさい。ビーカーは理科教諭のライラさんが持って来たヤツです」
誰でも使えるようにとのことでしたが、適当に持って来たと言うのが正解でしょうね。
食卓塩を一振り。うーん、マイルド。酸味の強いブレンドは朝に効く。
「おいしー……」
「じゃあ生徒会室の保護者さんに連絡しますね」
「さっせるかー!」
こんなに楽しそうにしている彼女ですが、初対面はまさに衝撃でした。
ある意味では高校最後の夏休みばりと言えばいいでしょうが。
思えばあのときから束ちゃんの掌に乗ってしまったのでした。しょうがないので地団太踏んでいますが。
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IS学園で司書を始めて3ヶ月の事でしたか。
蔵書毀損の件はとりあえず置いておき、まずは一時的に図書館を閉鎖してたりない本や欠けた本をリストアップし経費にて買いに行ったり誰も読んでいないのに教室に置きっぱなしなら取りに行ったり。
そんな毎日でも正式利用者は来るから放課後には開放したり、借りパク現行犯を捕まえたら訴えるだの男性は立場が弱いだの煩いから生活指導の教員に押し付けたり。
ただ楽な仕事がしたいと図書委員に立候補したと思しき生徒に正しい(とはまだまだ言いがたいけれど)委員会の仕事を教えたり、と。まあ忙しかったわけです。
その日は確か司書室に棚を増やそうと自腹でステンレス棚をホームセンターで買ってきて、事務室から台車を借りて届いた書籍の段ボールを積み、載らない分はネット通販で買った
この頃には一部を除き新しい図書館と司書の作るルールに反発する生徒も少なくなっていた気がします。
ガラガラと台車を押しながら恋愛心理についての某曲をハミングする僕を見て、手伝いましょうか?の言葉を、背中を見て飲み込む生徒が多い事多い事。
笑いしかでねえや。
しかし、背後で凄まじい喧騒と、とある生徒(後に確認したところ副会長ちゃんでしたが)の怒鳴り声、そしてのんきな少女の声がして。
今まで何度と無く味わってきた厄介事の感覚に思わず振り返ると。
「おーっと手が滑ったー(棒)」
とても綺麗な投球フォームで大きめの何かを投げつける、青みがかった灰髪の少女の姿でした。
黄色い悲鳴や悲痛な叫び、多種多様な背景とBGMを聞き流して、抱えたポールをまるでバットのように構える僕。
ええ、とても遅い球でした。
欠伸が出るほどに。
しかし実際のところかなりの速度が出ていたそうで、万が一人体に当たったら大怪我ではすまない物だったようです。
「××町のバッティングセンターで出直してきなさい!」
カッキーnがしゃーんっ
思わず地元の名前を出して、ピッチャー返しを敢行。
もちろん運動神経抜群の彼女が避けないはずも無く。
彼女の背後に悠然と存在した窓ガラスが粉々に砕け散ったのです。
強化ガラスだったそうです。
彼女の投球も僕の返しも恐ろしい。
その後、貴重な体験もしました。
ええ、普通は体験できるものではありません。ありませんとも。
生徒と一緒に廊下に正座させられて生活指導教諭に怒られるなんて事。