ジリリリリリリ、ジリリリリリリ……。
司書室内の場違いなほど古めかしい黒電話が音を立てる。
電話線など繋がっておらず、電源にコードも刺さっていない。
なんて。言ってみたもののコレはあの子の直通電話だ。
出たくないな……。
まあ出ますけど。
「もしもs」
「もっしもっしカメよー!カッメさんYO!HEY!」
「うるせえな叫ばなくても聞こえていますよバカ兎」
「バカじゃないですー天才束さんですぅー」
知っていますよ。だからなんだって話なんですが。
「いやぁちょこーっと考えてる事があってさー」
「聞きたくないです切りますよー?ハイ5、4、3」
「待って待って待って待って待って!もうせっかちさんなんだから。早すぎるのは嫌われちゃうぞ?」
「お前相手じゃ誰だって早漏でしょうに」
せっかくぼかしてたのに言ったー!?と騒ぐ束ちゃん。
ホント元気ですねコイツ。
「じゃあまず一つ目~。夏休みくらいまでくーちゃん預かっててくれない?」
「一つ目って何だ一つ目って。あとおばさまに預けろ家族だろ」
くーちゃんこと、クロエ・クロニクル。盲目なれど義眼にIS仕込んだ少女。いや幼女。
だから見えているというか、認識できている子。
作られたドイツ人形の姉。製作途中で捨てられた失敗作。
母親代わりに捨て犬や捨て猫でもないのに拾ってきた束ちゃんの教育にて常識は身についている。
だけど何故だか料理は上達しないんだよね。お菓子作りは得意なんだけど、普通の料理はからきし。
教えているからだんだん上手くはなっているみたいなんだけど、控えめに言って……遅いよね。
まだ若いし夏休みくらいまでって言うし、ユウの料理教室に通わせて見るか。週2で。
代金?僕持ちだよ、当たり前じゃん?
「あいたたたた……ちょっちキツいからそれはやめてくださいお願いしますよ」
「大丈夫です、言ってみただけですから」
「ってマジかーい!じゃじゃ二つ目ね?くーちゃん預けてる間にちょっかいかけます。決定事項です」
「知ってた。解ってた」
「ウソ吐けー」
いや知ってるよ。読んだし。
束ちゃんがちょっかいかけると世界がグルリとひっくり返るんだから自重して欲しいんだけどね。
オモチャ箱をひっくり返して中身を部屋にぶちまけるように、世界をしっちゃかめっちゃかにする。
本人はたのしい。まわりは酷く迷惑。
いや、本人もたのしくは無いか。何かをするために、見つけるためにやっていることなんだから。
難儀なものだね。
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放課後。少し騒がしいというか、小声で言い争う声が聞こえる。
ちら、と顔を出してみると案の定。一夏くんと箒ちゃんだった。
ただ剣道場で試合を行うだけじゃなかったんだね。基礎固めは大事だ。
とはいえ3年生の邪魔になるといけないので数冊つくろって持っていこう。
航空力学入門とISエネルギー運用と、最新版のIS兵装辞典。それと寄贈本のバンブーブレード全巻。
あー両手ふさがると前も見えなくなるのか。まあいいや落ちないし片手で。
ごめんちょっと道開けてくださいね。おっと辞書に書き込んだらダメですよ。
はいはい、少年少女静かにしなさい。
「千冬ちゃん出席簿アタックと僕の兵装辞典クラッシュ、どちらが良いか選びなさい一年生」
「「どっちもいやです」」
「じゃあ静かになさい。今の君たちに必要な本を見繕ってきましたので閉館時間まで読み、足りないなら借りていってください」
「あの、安寿さんこれマンガ……」
「息抜きに読むといいでしょう」
マンガが寄贈されるのは何故でしょうかね?
司書質においてあるので気軽にどうぞ、と言っても読まないくせに。
卒業生が来て「あれ?司書さん代わった?」と溜まり場にする際に読んでるくらいですよ。
ところで。
試合は何時になるんでしょうね。
僕、詳しく知らないんですよ、試合の時期。
たぶん今週中だろうけれど。