ペルソナ5 if ストーリー:マコトを改心させてみた 作:シロダ
アケチの話①
僕にとってはなんでもない日曜日の昼のことだ。全国模試の会場で、偶然にも新島冴の妹を見かけた。そういえば、ヤツらの学校の生徒会長だったよな。少々、探りを入れておくか。
「冴さんの妹さん、だったよね?少し、話せないかな?」
新島冴の妹は、こちらを振り向いて、
「怪盗団のこと?明智君」
なるほど、新島冴の妹だけあって、察しはいいようだ。
「察しがいいね。鴨志田と班目の件で、何か共通点はないのかなって。被害者が出てるんだし、怪盗団のことを追求しておかないとってさ」
新島冴の妹、たしか新島真だったか。あまり期待はしていないが、頭はそこそこ回るようだし、情報は手に入れられそうだ。
少しの間、新島真と話し合った。それで思ったのだが、どうやらこの女、姉の新島冴と怪盗団の間で揺れているようだ。どちらに対しても優位に立っている僕に、わかりやすく敵対心を剥き出しにしてきた。まあ、ここは適当にあしらっておくことにするか。
「なんだ君、意外と言いなりのいい子ちゃんタイプか」
僕は、俯いて怒りを抑えている新島真を後にし、怪盗団の今後の動向のことを考えた。学園内の鴨志田の件とその時退学を噂されていた学生二人、鴨志田のお気に入りの女子学生の介入、そして今回の班目の件の前後で班目の門下生だった学生の介入。
ほんと、わかりやすすぎて噴き出しそうになるぜ。
だが、いざ相手にするとなると、油断は禁物だ。怪盗としてはアルセーヌ・ルパンと比較することすらおこがましいレベルの稚拙なヤツらだが、曲がりなりにもあれほどの欲望を抱える鴨志田と班目のシャドウを撃破したんだ。それに、今後も怪盗団は人員を増やし続け、戦力を増大させることだろう。ヤツら全員を完全に屠るのはさすがの僕も骨が折れる。
だが、こちらの策に抜かりはない。
リュウジの話①
「くわぁ…」
よく寝た。
俺は、伸びをする勢いで、体を起こした。
久しぶりによく寝れた気がする。そういや、ここ最近はずっと怪盗団の仕事で忙しかったからな。
パレスを攻略し、班目を改心させることに成功した俺たちは、記念パーティ兼歓迎会を開き、仲間と親睦を深め合った。鍋を囲んで食べ、色んなことを話し、その後は蓮と裕介と銭湯に行った。
今回の作成で、新しく裕介が仲間に加わった。裕介も怪盗団の仕事には乗り気のようだった。同じような境遇にあることを確かめ合って、シンパシーを感じているのかもな。
けど、これからまた大物を狙うとなった場合、センリャクを考えないといけないな。でも、今の俺たちには頭脳役がいない気がする。銭湯でも話したけど、俺は特攻隊長だし、モルガナはあっちの世界専門、蓮はリーダーだし、裕介はまああんまり得意じゃなさげだった。ちなみに、杏は論外だ。人のこと言えねーけどさ…
時計を見て、昼ごろだと気づいた。いまの今まで寝てたってことは、相当疲れてたんだな。と自分を労ってみる。まあもちろん、毎回の怪盗団の仕事はみんなのおかげではあるんだけどさ。
ま、なんにせよ、次の大物とセンリャク、だよな。
ユウスケの話①
「こんなおいしいコーヒーが飲めるなんて」
寮を飛び出して行くアテもなかった俺は、喫茶ルブランにお邪魔していた。ここのコーヒー、マスターの淹れるのは、本当に美味しかった。
昨晩は二階にある物置に泊めさせてもらった。物置といっても、それなりに住める部屋ではあったのだが。物置部屋に住んでいるのは、最近出会ったばかりの、怪盗団のリーダー、雨宮蓮である。怪盗団であることは伏せており、この物置部屋に住んでいるのも訳アリのようだったが、とにかく世話になった。
ふと気になって、マスターに聞いてみた。
「マスターと彼は、親戚なんですか?」
マスターは後頭部を掻きながら、
「まあ、なんつうか、ただの知人だ。血は繋がってねえ」
俺はさらに気になって訊いてみた。
「どうして引き取ることに?」
マスターは気まずそうな顔を上げて、
「似てるからかね、昔の自分に」
昔を思い出したのか、目は遠くを見つめていたようだった。
その後、マスターには血の繋がっていない親子の関係について、親切に言葉をかけてくれた。
俺は、一晩泊めてもらったお礼も込めて、「さユリ」をルブランに置いておくことにした。マスターは感謝してくれたが、この絵にとっても、こうして一目につくところに置かれた方がいいだろう。
俺はマスターにもう一度感謝の言葉を言い、ルブランを出た。
太陽がとても眩しいが、まだ昼前で、これからさらに強く光を照らすようになるだろう。ここ四茶にも少しは人の騒がしさが聞こえてくるが、大都市に比べると閑散として静かに感じる。まるで、これからが本当の人生の始まりであることを示唆しているかのようだ。
俺は駅に向かいながら、ここ最近の出来事を思い出して思索を巡らすことにした。怪盗団、心を盗む、パレスにシャドウ、そしてペルソナ、か。ペルソナの力、これを手にしたからには、やはり怪盗をやるしかないと思っている。俺はついこの間、ペルソナの力を使って、班目のシャドウを倒し改心を成功させた。だが、俺以外にも困っている人はたくさんいるはずだ。もちろん、蓮や竜司がそうだったように。
俺は、スマホで蓮にメッセージを送ることにした。今朝声を掛けようとしたのだが、あまりに良い顔で寝ていたので憚られたのだった。俺は、世話になった礼とともに、鍋のシメはおじや意外ありえないことを強調しておいた。
アンの話①
珍しく昼前に起きた私は、歯を磨いて洗顔をしたところで、窓から差し込む光を見て、ふと出かけたいなと思った。今日もばっちりメイクをキメて、お気に入りの服を身に纏って、とっとと外に出て、いつも行っている渋谷に繰り出した。
渋谷の地下にあるショッピングモールは、私がよく行くスポットだ。たまに蓮や竜司と会って話し込んじゃうのだけれど、ここに売ってる流行りのコスメや洋服を一通り見て回るのが私のルーティンだ。
今日もそのルーティンの最中、これからのことを考えていた。鴨志田、班目ときて、私たちは改心を二連続で成功させた。しかも、今回の班目改心の作戦で、新たに祐介が仲間になった。会った時は、とてもセンスのある人だなと感心したけど、さすがにヌードには驚いちゃった。でも、今は同じ怪盗団の仲間だ。他にも、蓮や竜司にモルガナがいて、ちょっぴり頼りない気がするけど、これから一緒に、サイテーな大人たちを改心させるために頑張るんだ。
でもなんだが、ちょっと胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。これまで成り行きでなんとか上手くやれていたけど、もし私らの正体がバレてしまったらと考えると、怖くなってしまう。
私は、鴨志田のことを思い出してしまっていた。今でも思い出して、自分のことを嫌悪してしまう。志帆のことを思うと、本当に自分を情けなく思ってしまう。そんな弱い自分はあの時捨てたはずなのに。
私は、根拠のない胸騒ぎの恐怖と自分に対する嫌悪感を振り払った。私は、この間読んだファッション雑誌のかわいい夏服を思い出して、それに近いイメージのコーデ探しを再開した。