(おや、広じゃないか。珍しいな休みの日に共有スペースにいるなんて)
寮の共有スペースに行くと篠澤広が椅子に座りぼうっとしていた。
広は普段休みの日は部屋に籠って何かしているか、友達やPと外に遊びに行っていると聞いていた。
休みの日にこうして、しかも1人でこの広い共有スペースにいるのは珍しい。
(なんだか窓から差し込む光と合わさって神秘的だな)
そんなことを考えていると、広がゆっくりと顔をこちらに向け目があった。
「やあ、広」
「こんにちは、麻央寮長」
「今日は珍しいね。一人で何をしているんだい」
「うん。今日はみんな予定があって、それで今日は麻央寮長にお願いがあってここでまっていた」
「ほう、ボクにできることならなんでも言ってくれたまえよ」
後輩の頼まれごとなら断る理由はない。
「ありがとう。それじゃあ、わたしにお姫様抱っこをしてほしい」
「お姫様抱っこかい。それはいいけど・・・唐突だね」
何か思い荷物を運んだりかと思ったけど、相変わらず広は変わった子だ。
「麻央寮長のお姫様抱っこはとてもドキドキして心が苦しくなるという情報を聞いた。わたしも苦しみたい」
「ははっ、まったくどこの情報だい。でもそういうことなら」
苦しみたいという理由はよくわからないけど、ボクが王子様として全力で振舞えばいいということだろう。それなら大得意だ。
ボクは座ってい広の前でひざまずき、広の手を取る。広の目を見つめ言葉を紡ぐ、笑顔を忘れずに。
「さあ、お姫様。ボクの手を取って」
「う、うん」
ボクは広を椅子から立たせて腰に手をまわし、お姫様抱っこをした。広はボクよりも身長があるが、身体が軽いからどうってことはない。というか軽すぎる。
「わっすごい。お姫様抱っこされちゃった」
「お姫様どちらに向かいましょうか」
「えっと。じゃあ、わたしの部屋までお願い」
「わかりました。お姫様」
広に顔を向けて笑顔を向ける。ボクは今王子様だ。
「こっこれは。すごい。麻央寮長かっこいい、よ」
「ふふ、ありがとう、どうだいドキドキしたかい」
ときどきすれ違う後輩達からキャーという声が聞こえる。
「うん。すごくドキドキする。そして確かに心が苦しい」
「それはよかった」
広の部屋の前に着いたので部屋の前におろす。
「ありがとう、麻央寮長。とても貴重な体験ができた」
「お安い御用さ。またいつでも行ってくれたまえ」
「うん。麻央寮長もう一つお願いしたいことができた」
「なんだい?」
「わたしにお姫様だっこのやり方を教えてほしい」
「えっ」
「わたしもできるようになってみたい」
後輩のお願いだ。叶えて上げたいのは山々だが、広の今の身体ではそれは。
「それは・・・えっとまずは身体を鍛えようか」
「うん」
とてもわくわくしている後輩の姿に喜ばしいものを感じるけど、これは長い道のりになりそうだ。