ブルアカ聖杯戦争   作:だーず

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2話 それぞれの願い

 

「本当に叶えたい願いとかホシノにはないの?」

 

 そう問いかけたのはアリアンだ。

 師匠への紹介も終わり、現在は自室に二人きりとなっている。

 ホシノは椅子に、アリアンはベッドに腰を掛けて向かい合い、互いについて話し合っていた。

 

 

「んん~?最初に言ったと思うけど、本当に今は無いんだよねぇ~……まぁ、少し前なら、どうしても叶えたい願いがあったんだけどさ」

 

 アリアンの問い掛けに対しても、ホシノは普段と変わらずに気怠そうな態度で答えた。

 

 

「かぁ~!!つまんないよホシノ!!もっと求めようよ!!」

 

「う~ん……じゃあ帰ってもいい?」

 

「それは……あの、もうちょっとお付き合い頂ければと……あっ!!肩でもお揉みしますよ!?」

 

「いや、いいよ別に……まぁ聖杯戦争でどんな相手と戦えるのか興味あるしさ?少し位なら付き合うよ……おばあちゃんには悪いけどねぇ」

 

「おお!戦闘狂だね!戦いに飢えてたんだね!!戦いこそが願いだね!!!人を殺してたくて疼いてんだね!!!!ひゅう~」

 

「……喧嘩売ってる?」

 

「え?どうして?」

 

「………おばあちゃんも大変だねぇ」

 

「な、なんだよぉ~」

 

 

 (……それにしても)

 

召喚されたタイミングがもう少し早ければ、自分はユメ先輩を生き返らせる為に、なりふり構わず聖杯を求めていただろう。

 

そう考えるとこのタイミングで良かった……と、ホシノは心底そう思った。

 

 

「そういうアリアンは願いとかないわけ?」

 

「うん?あたい?」

 

「ん……あたい?」

 

「あたいの願いが知りたいんだね?」

 

「いや~別にいいかも……」

 

「わ、笑わないで聞いてくれる?」

 

「……うん、言葉が通じないのは分かったよ」

 

「私の願い……それは–––」

 

「…………うん」

 

「とりあえず世界征服」

 

「それじゃさ、とりあえず令呪で適当に3回命令してくれるー?」

 

「帰ろうとしないで!!」

 

「だってさ、真剣に聞いてるのに世界征服とか言い出すんだもん」

 

「……だって本当にこと言ったら引かれるし」

 

「うへぇ~やっぱり嘘だったか~」

 

くだらない冗談に呆れつつも、これくらいの方がやり易いとホシノは思う。

自分だって腹を割って話すのは好きじゃない。

 

ここで気を悪くするのは、あまりにも身勝手過ぎるだろう。

 

だから彼女が本当の願い語るなんて事は、期待していなかった……のだが。

 

 

「……何かに……本気で取り組める何かを見つけたいと思ったんだよね」

 

「……へ?」

 

それは予想外の返答だった。

またはぐらかされると考えていた矢先、真剣味の帯びた表情で聞かされた願いだった。

 

無論、ほんとである保証はない。

今度も偽った可能性もあるだろう。

 

しかし、ホシノにはそう思えなかった。

また、彼女の俯き加減や、気まずそうな表情はそれが真実だと物語っている。

 

 

「………引かないよ」

 

「え?聖杯で叶える願いじゃないと、一応、自分では思ってるけど?」

 

「いやさ、自分探しは大事だよ?」

 

恐らく、彼女には自分がない。

師匠とのふざけた会話も、自身に対する軽口も、無いものを悟られないように繕ってるだけに過ぎないのだ。

 

それはアリアン自身にも自覚はない。

また、強い自己と信念を持っているマギアにも分かり得ない事。

彼女が聞いていたら、そんなの自分で探せと呆れられて終わってしまう。

 

だけどホシノの違った。

少し前までアリアンと同じだった自分にだからこそ分かってしまうのだ。

 

 

(この子には、導いてくれる人が必要かもね)

 

マギアは後継者として少女を気に掛けてきた。

愛情は間違いなくあるのだが、魔術が全てであるマギアにとって、あらゆる魔術を簡単に覚てしまうアリアンは優秀な存在であり、また、悩みとは無縁に考えてしまう。

実際、マギアは魔術以外で悩んだ事がない。

 

 

「……うん!なんか君はほっとけないし、少しくらいは本気で付き合ってもいいかもね」

 

「……え?なに急に……怖っ」

 

「………腹立つ」

 

 

 

ーーーホシノは勢よく椅子から飛び起きた。

 

良く見れば殺風景な部屋だ。

ゲームが積まれているだけでインテリアなんかまるでない。

 

自分ですら色々飾ってあると言うのに……

 

 

「とりあえず、作戦でも考えようか!」

 

「え……急にやる気出さないで……正直、引く」

 

「……逆にこっちが引かれたの?」

 

うんうんとアリアンは頷いた。

 

 

「なにさ、やる気があるのはいい事でしょ?」

 

「いやでも、なんか口調も変わってるし」

 

「……君とは真剣に向き合おうと思ってね」

 

「………なんでそこまでーーー」

 

最後まで言わずに口を噤む。

自分が変な事を口走ったせいで、変に気を遣わせてしまったんだと気づいたからだ。

 

そして同時に思った。

心優しい女性なんだと。

 

 

「……ふぅ~、じゃあ、まぁ、折角だし、本気で聖杯でも取りに行こうか!改めてよろしくホシノ!」

 

「うん!こっちこそよろしくね」

 

「……さっきみたいに『うへうへ』言いなよ」

 

「うん、喧嘩売ってるね、やっぱり」

 

そう言いながら二人は熱い握手を交わした。

先ほどマギアと交わした形式的なモノではなく、互いを受け入れようとする握手を。

 

 

「ところでホシノは、本当に願いとかないの?」

 

「……う~ん……特にないかなぁ~お金はなんか違うと思うし」

 

「ふぅ~ん……じゃあさ、好きな人とか居ない訳なの?」

 

「ふ、ふぇ!?べ、別にいいでしょそれは!!」

 

「え、いるじゃんそれ……急に女の部分見せてくるなよこのど変態が!!」

 

「うるさいな!!もう!」

 

ホシノは赤面する。

それを見ていたずら心が湧き上がったらしく、アリアンは更に畳み掛けた。

 

 

「ってかホシノは真面目だなぁ……私なら聖杯を使って好きな人を手に入れるけど」

 

「……………ん?」

 

「だってそうじゃん?別に私を好きになって……とか、相手の感情を消してしまう願いならホシノは嫌がるかも知れないけど、自分としっかり向き合って欲しいとか、何日か一緒に居られるように……とか良いんじゃない?」

 

無論、適当に言っている。

人を好きになった経験がないから、めちゃくちゃ適当に勢いだけで言っている。

 

しかし、それはホシノに対してあまりにもクリティカルだ。

 

 

「…………聖杯で………先生と………」

 

「え、ちょ、ホシノ?目がちょー怖いよ、え、いや怖いな!?どうしたの急に!!?」

 

「………うん!ちょっと本気で聖杯取りに行こうか!」

 

 

 

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