善と正義と本日の一悪   作:お昼寝【スタジオホルス】

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※pixivにも同時投稿しています
自作のSSを動画化しています。
動画の台本を小説用に追記したものとなりますので、会話文が8割です。
イラスト、ナツメ以外のオリキャラ立ち絵、スーツアルは相方が自作しているものです。
過去の動画の設定等が入りますのでわかりにくい部分もあるかと思いますが
お楽しみいただければ幸いです。
動画も見ていただけると非常に喜びます。
https://youtu.be/MIbAQd2a8hM?si=oPZ_TzadftB6Z2-G


善と正義と本日の一悪 前編

「えー、それでは…」

「まずはお名前を聞いても良いかな?」

「陸…いえ…」

「空条アルマです」

「ふふ、アルマ君…いいやアルマちゃんか」

「素敵な名前じゃないか」

「(な、なんで私だけこんなことに―?!)」

 

 

【挿絵表示】

 

 

──これは、陸八魔アル率いる便利屋と、可能性創造部

その二つの何でも屋が為した、善と悪のお話

 

しばらく前、便利屋事務所

 

「前の依頼、大変だったねー」

「ナマナさんからのアレ?ヴァルキューレ相手だけじゃなかったからね」

「でも稼ぎは凄く良かったです!」

「大変な分見返りは大きい…悪くない依頼だったんじゃないかしら」

「なにより今の私達は依頼を選ぶ余裕はないからね…」

 

苗木ナマナ、可能性創造部のスポンサーと名乗る彼女からの割の良い依頼で…

ヴァルキューレと色々あったのが前回の依頼

 

「アル様アル様、来客ー!」

 

そう話していると、皆の妹分、ナツメが来客だと教えてくれた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あら、誰か来る予定はあったかしら…」

「どうも、ご好評だったようでなによりですわ」

「!?」

 

そこには件のトリニティ生徒、苗木ナマナの姿が

 

 

【挿絵表示】

 

 

「な、ナマナさん?」

「敬語はいりませんでしてよ、私はただの一年生ですので」

「…依頼主に対しては相応の礼儀を、便利屋として当然のことよ」

「成程、そういうことでしたら…」

「今回も依頼主として、対応していただきたいと思っていますわ」

「ということは…」

「また依頼が貰えるんですか!」

「そのつもりですわ」

「またハチャメチャな依頼じゃないといいけど…」

「話を聞こうじゃないの、便利屋としてなんでも受け持ってあげるわ!」

「…前回の件でお話した可能性創造部、覚えておられますか?」

「確か貴方がスポンサーをしているのよね?」

「ええ、彼女達の競争意欲に火をつけるのが前回の依頼の理由だったわけですが…」

「…ということは、また彼女達が関係しているのかしら」

「率直に言いますね」

「今回の依頼は彼女達との共同活動となっていますわ」

「共同活動?」

「彼女達可能性創造部ですが…貴方達便利屋から見ての評価はどうでしょうか?」

「評価ですか?」

「といっても前回の接触では私達と直接戦うことはなかったし…」

「基本遠くから見てなかった?」

「…まさか、荒事が苦手なのかしら?」

「流石便利屋社長、お見通しですね」

「彼女達は一芸特化集団、秀でている面にあっては非常に優れてはいますが…戦闘能力は乏しい」

「なるほど…ということはつまり」

「荒事になりそうな依頼がある、ということかしら」

 

…一呼吸置き、ナマナは再び話し始めた

 

「…歯車重工」

「?」

「聞いたことは無いと思われますわ」

「物流支援ドローンの製造・販売等を行っている、最近急に伸び始めた新興企業」

「『市民と物流を繋げる歯車になる』をテーマにしている模様ですわ」

「…表向きは」

「…裏があるのかしら」

「その物流の裏で大量の違法薬物の原料を密輸しているとの情報が入っていますの」

「密輸…なにが目的で?」

「それが不明なのですわ」

「仕入れるばかりで捌くことはしていないことから内部でなにかしらの開発をしているのではないかと予想はしていますが」

「例えば…」

「物流ドローンにて得たデータを生かした高速強襲型ドローン」

「それに密輸した原料で製造した新型薬物を搭載し散布する…とか」

「!?」

「テロじゃない?!」

「銃弾ならまだしも…薬物はまずいね」

「あくまで予想ですわ、故にヴァルキューレも動けてはいないのですが…」

「なにかあってからでは被害が出てしまう」

「そこで依頼なのですわ」

「依頼内容は大きく分けて二つ」

「一つ目は企業へ社員として潜伏、調査しその実態と違法行為の有無を確認し、証拠を得ること」

「そして確認できた場合は二つ目…」

「その行為の阻止、ですわ」

「成程、私たちは二つ目ということね」

「荒事ならまかせてー!」

「アル様の命令なら…破壊します!」

「いえ…」

「?」

「貴方達便利屋には一つ目と二つ目」

「両方担当していただきます」

「え?!」

 

完全に荒事担当だと思っていた便利屋一同は意表をつかれた形となった

 

「社員として潜伏調査しろってこと?」

「私達より可能性創造部の方々のほうが向いているのでは…」

「…彼女達より貴方方のほうが向いているのですわ…」

「えぇ…」

「自分で言うのもなんだけどさ、私達より向いてないってどんだけやばいの?」

「1人はまだまともなのですが…禁忌に触れた途端破綻しますし…」

「あー、たしか建築士の方だったよね、リフォームの匠さん!」

「もう片方は常時頭ゲヘナといいますか…いえミレニアムの方なのですけど…」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あははは、ゲヘナ生の前でそれ言うー?」

「あと1人は?たしか3人だったよね?」

「素直すぎて演技が出来ませんね、ヴァルキューレ所属ですし…」

「あれ?ウタハさんって確か」

「あの方はエクストラですので、力を借りる訳にはいきません!」

 

そう、ウタハは通称"規格外"と呼ばれ名が知れ渡っているのだが…ここで力を借りては意味がないとのこと

 

「規格外ではなく可能性創造部の名を広める為の依頼でもあるのですわ!」

「それに、スタジオホルス及び可能性創造部は先生が関与しています」

「内容的に今回の潜入活動には絡んでほしくありませんの」

「決定的な証拠があればまた話が変わってきます、なので…」

「それまでは私達の出番ってわけね、これこそアウトローだわ!」

「そして貴方達には多額の報酬!これぞwinwinですわ!」

「成程、阻止活動からは支援が受けられるわけだね」

「社員証等の手配は済んでいるの?」

「それらはおまかせください、準備出来次第潜伏していただく形になりますわ」

「怪しまれないようタイミングを少しずらして臨時社員として入っていただきます」

「用意する社員証は3名分となります、残った1名は私とともにサポートですわ!」

「なら私がサポートするね、社長」

「ならアルちゃんとハルカちゃんと私が潜伏だねー!」

「ハルカちゃん、しっかりね?」

「ナツメちゃんはまたお留守番でごめんね」

「ユメお姉ちゃんのとこ行ってくる!」

「アビドスの人達にはお世話になりっぱなしね…」

「偽名どうするの?3人共」

「私は深海ヤヨイ!」

「即断、素晴らしいですわ!」

「い…伊草ナツメ…」

「ナツメちゃんじゃん!バレたときやばいでしょ!」

「…伊草ハルナ?」

「苗字変えてないし!しかも美食にいるでしょ!」

「じゃ、じゃあ五十嵐リコで」

「それならいいと思うよ!」

「えへへ、ジャスミンから取ったんです!」

「社長は?」

「…空条アルマでいくわ」

「けってーい!」

「ではそれらで社員証は準備いたしますので、皆さんも用意をしておいてくださいね」

「あと…社長さん」

「なにかしら?」

「貴方には特注の品を用意する予定ですので、ちょっと失礼しますわ」

「え?え?え?」

「な、なにするのー?!」

 

そういいつつそのまま採寸を始めるナマナ、依頼の為なのだ、アルは抵抗できず脱がされていく…

 

「わぁ、ナマナちゃんって大胆ー!」

「採寸するってことは…なにかしらの装備?」

「アル様だけなんですね?」

 

…そしてその後、社員証が出来た順にムツキ、ハルカが無事入社していった

 

「次はいよいよ私の番ね…」

「いまのところ二人からの報告によると…」

「特に怪しいところは見つけられてないみたいだね、思ったより長期になるかもしれない」

「社内ネットワークにも潜り込めているのですけれど…なにも出てきていないのですわ」

「ということは…ネットワークに依存していないのか、ローカルな部分に隠しているのか…」

「…任せなさい、私が一日で解決してあげるわ!」

「社長、無理してばれないようにね?」

「心配無用よ、例のアレもあることだし…」

「サポートは致しますので、それでは頑張って下さいね!」

 

──歯車重工、オフィス

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ここが歯車重工のオフィス…」

「工場の方ではないのね、事務員ということ…」

「あ、貴方は本日入社予定の空条アルマ様では?」

「え?」

 

アルがオフィスに入ると、待ち構えていたかのように話しかけられる

 

「お待ちしておりました、こちらへお越しください!」

「(…アルマ様?お越しください?)」

 

「えっとここは…」

 

そこは薄暗く、椅子と机だけがある尋問室のような部屋だった

 

「少々お待ちください!社長の歯車をお呼びしますので…」

「…」

「(しゃ、社長ー?!)」

 

「おぉ!君が例の!!」

「それでは早速…」

「秘書面接を始めようではないか!!」

「(な、なななな、何ですってーーーーー!!!???)」

 

…そして冒頭に戻る

 

「(秘書面接ってなに?!聞いていないのだけれど!)」

「ふむふむ…年齢は二十歳か、幼く見えるねぇ!」

「(あ、そこは年齢上げてあるのね)」

「特技はタイピングに簿記、経理関係はばっちしと…素晴らしい!」

「(出来ないわよ?!簿記なら少しは出来るけどタイピングは無理!!)」

「…ん?あと狙撃?」

「!?」

「憧れるものはハードボイルドなアウトロー…?座右の銘は一日一悪…?」

「(ちょ、ちょっとなに書いてるのよー?!)」

「…」

「ガハハ!良い良い!これぐらいの冗談が書けるぐらいじゃないとわが社は務まらん!!」

「大事なのは多少の事でへこたれないメンタルと愛嬌の良さだ!」

「…あと眼鏡」

「なにか言われましたか?」

「ガハハハ!何もないさ!」

「ワシの名前はわかるかね?」

「歯車ダイゴロウ、歯車重工の代表取締役社長ですわ」

「よろしいよろしい!」

「ふむ…面接という以上なにかせねばなるまいな…」

「そうだ、アルマちゃ…君」

「はい、なんでしょうか」

「筆記用具は持っているね?」

「えぇ、持参しております」

「…それを私に10万円で売ってみたまえ」

「(なんかよくあるやつきたんだけど?!)」

「(アルさん!サポートします!そこの答えは…)」

 

…ナマナからのサポートが入る

 

「(…嘘でしょ?!)」

「(入社がかかっているんです!ファイトですわ!!)」

「(い、依頼の為…お金の為…社員の為…!!)」

「…10万円、普通なら書くだけの筆記用具にそんな価値があるとは思いません」

「まあ、そうだろうね」

「ですが社長…逆に考えてみてください」

「貴方が今ここでこれを買わなければ…私が秘書として貴方の隣にいることもないでしょう」

「だからこれは…」

 

──アルは社長の胸ポケットにボールペンを挿し込みながら、囁いた

 

「…これはボールペンを買うんじゃないの、貴方と私の…"後悔しない未来"を買うのよ、10万円でね」

「それとも…私の個人的な連絡先でも追加してくれたら、倍にでもなるのかしら…?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ブッ!!(鼻血?鼻オイル?)」

「よ、よよよろしい!君には事務員ではなく私専属の秘書として働いていただこう!」

「…ありがとうございます」

「それではよろしく頼むよ」

「あ、私は珈琲派だからね、よろしく」

「あと…」

「眼鏡は決して外さないように、これは最優先事項だ」

「えっ」

「それでは支度をして社長室まで来るように!」

 

「ちょっとナマナさんカヨコ?!どういうことなのよ!」

 

誰も居ない部屋でアルは専用回線を使ってナマナ達を問い詰めた

 

「…それが昨日の出来事なのですが、ハラスメントに耐え切れず秘書の方が辞めてしまったらしく…」

「そこで社員情報を見た歯車が新しい秘書として目を付けてしまったのが…」

「社長ってことだね」

「…重度の眼鏡愛好家として知られているのは知っていましたが、まさかこうなるとは…」

「ま、まぁ結果オーライですわ!アルさんに惚れていることは会話内容から一目瞭然でしたし!」

「だからあの回答だったわけだね」

「…やり過ぎな気がしないでもないけど」

「履歴書の内容、あれは…」

「えっと、ムツキさんが手伝ってくれるというので任せましたわ」

「社長、ブラインドタッチ出来たっけ?」

「(…ブラインドどころか指一本一刀流よ!)」

「…秘書なら移動しながら入力できるタブレットになるでしょうし、そこまで求められないはずよ!」

「とにかく秘書として潜伏出来るのは大きいですわ!これで歯車の身辺情報も探れますし…」

「お手柄ですわ!アルさん!」

「社長、頑張ってね」

「先に入った二人とも機会があったら接触してみてね」

「こうなったからには仕方ないわね…」

「秘書として、完璧にこなしてやるんだから!!」

 

…準備を終え、オフィスに戻ったアル

 

「さて…準備できたわね…」

「でも社長室ってどこかしら?」

「あ、アルちゃーん!」

「この声は…」

「ムツキじゃない!」

「無事は入れたんだ、良かったねアルちゃん」

「…一悶着あったけどね…」

「?」

「…秘書採用?やっちゃったねぇアルちゃん」

「…溢れ出るカリスマ故、致し方ないようね」

「(カリスマとはあまり関係なさそうだけどねー)」

「でもまぁ…」

「?」

「うん!凄く似合ってる!眼鏡外しちゃダメってとこは同感かな!」

「そうでしょう?眼鏡が似合う知的なアウトロー、空条アルマが…」

「一悪を成し遂げて見せるんだから!」

「(一悪っていうよりは一善な気もする)」

「確かムツキは営業にまわされたのよね?」

「うん、そうだよ」

「営業…内部調査は難しそうね」

「そうなんだよねー、でも結構楽しいよ!」

「た、楽しいの?まぁ楽しくないよりはいいのかしら…」

「ハルカは経理だったかしら、うまくやれているの?」

「ハルカちゃんねー、凄いんだよ!」

「最初は経理として配属されてたんだけど、開発部の人にアピールできたみたいで」

「今は工場の方に配属されてるよ」

「凄いじゃない!」

「…でもアピールってなにをしたのかしら」

「んじゃ、私は外回りに行ってくるから」

「アルちゃん頑張ってねー」

「…さて、私も行くとしますか」

 

「失礼しますわ、社長」

「…社長?」

 

アルが社長室に入ると、そこはもぬけの殻だった

 

「いないわね、社長室までということだったのに」

「こんの馬鹿もんが!!」

 

──突然聞こえる罵声

 

「な、なに?」

 

オフィスに戻ると、歯車が社員に向かって怒鳴り散らしていた

 

「なぜこの程度の処理もできん?!こんなものサインしておけばよいだけであろうが!」

「い、いえ社長…条例に違反していないか確認しなければならないので時間がかかっていて」

「であればなぜすぐ確認せん?!貴様が担当だろうが!」

「確かに担当と言われましたが初めてやるので…というか私は違う係なので…」

「知らん!任されたからにはやりとげろ!最短で!」

「しゃ、社長、私から言い聞かせておきますので…」

 

止めに入った課長の静止も聞く耳を持たず、怒り心頭のようだ

 

「全く近頃の若い者は…」

「とにかくデータの抽出を済ませろ!最短でだ!」

「お、アルマ君準備出来たのかね」

「叫んで喉が渇いてしまった、アイスコーヒーを頼む」

「え、ええ…今準備しますわ」

「…申し訳ありません、課長」

「謝ることはないよ、担当は本来別の子に頼んでいたんだがやめてしまったからね」

「私がカバーする予定が…社長がいきなり君を指名してしまったから…」

「…」

 

社長室に戻ったアルと歯車

 

「ガハハハ、情けないところを見せたねアルマ君!」

「いえ…苦労なさっているようで(社員が)」

「全くだ!無能な部下を持つと苦労する!」

「近頃ではハラスメントだのなんだのですぐやめていくからな!」

「私の若い頃はもっと…」

「…」

「で、でも社長は能力がおありになるんですね?」

「む?」

「普通はその課の長…課長等に任せるところを自ら部下を鼓舞しに回る…」

「自分が全ての業務を把握していないと出来ないことですから」

「ハハハ、なにを言ってるんだアルマ君、把握などしているわけないだろう」

「…え?」

「なぜ私が把握せねばなるまい?その担当がしっかりこなせば良いのだ」

「その為に尻を叩いているのだからな!」

「で、でも結果責任は社長が取ることになるかと…」

「…」

「…」

「(えぇー!?無言?!)」

 

返事がされることはなく、そのまま席を立つ歯車

 

「さて、休憩は終わりだ、ついてきたまえ!!」

「…その後、歯車は社内をずっと徘徊し…難癖をつけて急がせるだけで特に仕事らしい仕事はしなかったわ…」

「スケジュール管理をするために聞いてみても…」

「ん?外回り?ないない!必要ないんだよアルマ君」

「君は私に着いてまわって…珈琲を淹れてくれればいいから!」

「(嘘でしょう?!そんな秘書いる?!)」

「ところで社長と言う呼び方ではなく歯車…いやダイゴロウと呼んでもらっても…」

「…いやですわ社長、こういうのは肩書で呼ぶからこそ雰囲気が出る…そういうものでしょう?」

「ふ、雰囲気…そうかそうか!ガハハハハ!」

「それから1週間、ほとんど同じ感じよ」

「私からの報告は異常よ」

 

便利屋事務所に戻ったアルは疲れた顔でナマナとカヨコに共有した

 

「異常ではありますが…成程」

「本当に最近イケイケの企業なの?!破綻しているとしか思えないのだけれど…」

「…確かにおかしいですわね、現にハラスメントで退職者は出ているわけですし」

「…あがるはずのない利益…様子のおかしい社長…」

「…社長、歯車だけど、なにか他におかしいところはなかった?」

「おかしいところだらけだけど…」

「そうね…ちょっと…というかかなり視線を感じる時があるのと…」

「妙に返事が遅いときがあるのよね」

「返事が遅い?」

「そうなのよ、そんな考えるようなことじゃない時でも間が空くの」

「あ、あとそういえば」

 

歯車はアルに大事なことと言って告げていた

 

「アルマ君、これは大事なことなのだが」

「私は持病を患っていてね、治療のために社長室に籠るから」

「その間は自由時間だ、好きに過ごしてくれたまえ」

「ただし…」

「絶対に社長室には入らないように!」

「絶対に、ですか?」

「絶対に!なにがあってもだ!」

 

「…まあ治療ならそういうこともあるのかなと思ってたけれど…」

「…なるほどね」

「ムツキとハルカは?」

「私は順調ー、今日もまたドローン配達の契約取れたよー!」

「いや、契約は別にどうでもいいでしょ…」

「あはは、冗談だよ」

「…契約先の顧客から羨ましがられたんだけど、歯車重工って給与面凄く良いんだよね」

「え?そんなに良かったかしら?」

「通常の給与はまぁちょっと良いかな?程度なんだけど」

「定期的な所謂ボーナスがあって、それが破格なんだよね」

「それを目当てに入社する人もいるみたいだよ」

「歯車のハラスメントがあっても辞める人がそこまでいないのはそれが理由…?」

「…ハルカは?」

「えっと…工場内はかなり警備が厳重であまり探ることもできなくて…」

「ひたすら部品を組み立ててます…」

「…ハルカが経理から工場にまわされたのって」

「部品の配線が少し図面と違っていたので直してみせたら配属が変わりました」

「…その部品って?」

「タイマーと連動してて、カウントが0になると解放される収納ボックス的ななにかです」

「…収納ボックス…」

「大きさは1種類?」

「いえ、色んなサイズがあるんですけど、タイマーは1種類です」

「…ただ少し気になるのが、タイマーの長さがあまり長時間設定できるタイプじゃないんです」

「仮に配送に使用するのだとしたら、長時間のほうが利便性は良いんじゃないかしら?」

「ボックス自体に開閉できる機能はついているので、タイマーが使用出来なくても問題はないのですが…」

「実はその配送ドローンサービス、使ってみたんですの」

「配送に問題はありませんでしたけれど…タイマー機能は使用されていませんでしたわ」

「…じゃあ一体なんのために?」

「昨日、なんか偉そうな人が視察にきたことがあったんですが」

「おい!配線の接続に気を付けたまえ!漏電したらLHに引火…」

「LH?」

「なんのことでしょうか…」

「偉そうな人って、この人?」

 

そういって歯車の画像を見せるアル

 

「あ、そうですこの人です」

「歯車じゃない…」

「え?視察に来た?」

「昨日私が一緒に居たけれど、工場に向かったことはなかったはずよ」

「…例の治療時間中に外出していた…?」

「ハルカ、それはいつ頃だった?」

「13時頃、昼休憩が終わった直後でしたので覚えています」

「…違うわ、治療の時間は毎回15時だもの」

「どういうことなんでしょうか…」

「…ナマナさん」

「ええ、私も同じ結論だと思いますわ」

「アルさん、これを」

「これは?」

「ハッキング用のガジェットですわ、対象となる機器に直接接続する必要がありますけど」

「歯車のパソコンに繋げばいいのね?」

「いえ、繋ぐのはパソコンではなく…」

 

翌日、15時

 

「ではアル君、あとは自由にしていいからね」

「はい、社長」

「…」

「行動開始は歯車が部屋に籠った10分後…」

「もし仮に本当に治療をしていた場合は…」

「場合は?」

「なんとかごまかしてください」

「な、ななな、何ですってーーーーー!!!???」

「でも、おそらくそんなことにはならないでしょうから安心してください」

「そうだね、私たちの想定が正しければ…」

「社長室ってわりには簡単な構造の鍵で助かったわ…」

「…し、失礼しまーす…」

「ひぃっ?!」

 

早速歯車と正面からぶつかるアル

しかし歯車はぴくりともしていなかった

 

「…」

「…もしもーし、社長さーん?」

「…動いてないわね」

「まさか、本当にダミー用の義体…?」

 

そう、それは…

 

「ダミー用換装義体?」

「そう、見た目は全く一緒、簡単な受け答え等も出来る影武者用のロボットですわ」

「遠隔操縦も可能なので重役の方ほど使用している傾向が強いと聞きます」

「つまり…普段はAIによる自動操縦に任せていたってこと?」

「複雑な仕事を一切せずに巡回し、定時になると休止させデータを抽出する…」

「社員を理不尽に怒鳴っていたのも、そうプログラムされていたから」

「プログラム外の質問には本人が遠隔で対応しているけれど…レスポンスは悪くなる」

「そう考えれば辻褄が合うね」

「…本当に義体であれば首の後ろに点検用のソケットがあるはずですわ」

「それにこのコネクタを挿してください」

「うまく行けばデータ転送先がわかるかもしれませんの」

 

「ここね…ソケットがあったわ」

「カヨコ、挿したわよ」

「了解、あとは時間との勝負だね」

「…ここまで来ればもう黒は確定ですわね」

「パスさん、よろしく頼みますわ」

 

ナマナは便利屋事務所に呼んでおいた件の可能性創造部の部員、重団パスに頼んだ

 

「なんで便利屋の事務所に呼ばれたんだろって思ってたけど、そういうことかー」

「んじゃ、いっちょ頑張ろっかね!」

「サポートするよ、パスさん」

「ありがとー、カヨコさん」

「あ、エナドリはそこに置いておいてね、3本!」

 

彼女はエナドリ狂い、1本ではエンジンがかからないのだ

 

「アルさんはいまのうちに社長室を調べてください、もしかするとなにか情報があるかもしれませんので」

「情報…なにかあるかしら…」

「ん?これって…」

「!?」

「私の写真じゃない!?」

 

そこにあったのはタブレットを見つめ、知的(そう)な表情を浮かべる眼鏡秘書の姿であった

 

「…我ながら仕事の出来そうなアウトロー…」

「じゃない!盗撮されてたなんて…」

「ん?後ろになにか書いてあるわね」

 

「ルストヘイズを吸わせたらどんな様子になるのだろうか…楽しみだ」

 

「…ルストヘイズ?」

「!!」

「来たよ!データ送信先!それに映像も映ってる!」

「これは…軍用ドローン?」

「薬品の製造プラントみたいなのも映ってるね」

「送信先は2か所!」

「歯車重工工場、座標の地下と…」

「DU市内高層ビル、その最上階!」

「工場だけじゃないんだね」

「映像は工場のようだけど、ビルにもデータが送られているってことは…」

「歯車の潜伏先…ってことなのかな」

「とりあえず口実は得ることが出来ました」

「アルさん、ムツキさん、ハルカさん、はとりあえず定時まで務めたのち…」

「便利屋事務所に集合しましょう」

「りょーかい!」

「なにかエレベーター等がないか、探してみます」

「痕跡は残さないようにしないと…」

 

ついに証拠をつかんだ便利屋一同

彼女達は歯車の野望を阻止できるのか

 

次回、スタジオホルス

善と正義と本日の一悪、後編

 

──闇夜に便利屋達が舞う

 

 

【挿絵表示】

 




恐らく初見さんにはわかりづらいところもあると思いますが、ここまで読んで下さりありがとうございます。
次回に続きます。
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