善と正義と本日の一悪   作:お昼寝【スタジオホルス】

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pixivにも同時投稿です。
https://youtu.be/zuJk48Jzb5g?si=sp2JuIY_bdCYhrP1


善と正義と本日の一悪 後編

──一同は便利屋事務所に集結していた

 

「…さて」

「一度情報を整理しますわ」

「睨んだ通り…違法薬物の製造及び軍用ドローンの開発が確認できましたわ」

「残念なのはそれぞれの詳細なデータは入手できなかったことです」

「今のままではヴァルキューレを動かすまではいかないでしょう」

「製造プラントは工場地下、それと…」

「DU市内にある高層ビル、その最上階付近にもなにかがある」

「既に組み立てが終わっている可能性もあります、急がねばなりません」

「今夜、工場と高層ビル、両方を奇襲します」

「まず工場を襲撃、これは陽動も兼ねていますわ」

「恐らく歯車重工の武装組織と衝突することが予想されます」

「派手にやって相手の人員を引き付けてください、その間に…」

「アルさん、ミクモさん、パスさんの3名で高層ビルに侵入、研究データのコピーお願いします」

「工場側は私とハルカちゃんだけ?」

 

ムツキが戦力について疑問を呈した

当然だろう、二人だけで工場を攻めるのは無理がある

 

「いえ、アビドスの方々に依頼をしています」

「アビドスの人達!アヤネちゃんも来てくれるんだ!」

「想定していたより大規模な作戦になりましたから…」

「相手が黒なのは間違いありません、問題はありませんわ」

「こちらのほうが少人数…それに戦力は未知数の二人ってことね」

「頼りになる部分は頼りにしていただいて…そのほかの部分は導いてあげて貰えると助かりますわ」

「アルちゃーん、便利屋の先輩として見せつけてあげなねー!」

「と、当然よ!」

「では最後に…」

「…先生より伝言を預かっていますわ」

 

全員の顔が強張る

 

「私もまだ見ていませんの…」

「!?」

「せ、先生?!」

「お、怒られるのかしら…」

「危ないことをやっていたみたいだね、正直心配だよ」

「本来なら君達に任せることではないのかもしれないけれど…」

「ナツメの面倒と、なにかあったときの責任は私が取るから」

「…便利屋として、君達の悪がそうすべきだと思ったのなら、貫いて欲しい」

「…悪、ですか」

「さて、いよいよ失敗は許されませんわね」

「作戦開始時刻は23:00」

「各自、準備をお願いします!」

 

──時刻、22:55

 

「こちら工場襲撃班、アビドスの人たちと合流したよ!」

「よろしくね、便利屋さん」

「ん、暴れていいって聞いた」

「羽振りが良い企業だって聞いていたからバイトしてみようと思ってたのに!」

「セリカちゃん、流石に未成年のバイトが出来るような企業じゃないと思うよ」

「こちらのサポートは私が担当します、よろしくお願いしますね」

「シホちゃん、行きますよ」

「背中は任せてね!ホシノちゃん!」

「…じゃあ社長…いや」

「…ノワール、準備はいい?」

「…こちらノワール、配置についているわよ」

「さて…」

 

 

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「さあ、我が職員達?仕事の時間よ」

「うへー、やる気満々だねー」

「私達は便利屋じゃないけどね」

「合わせてあげて!セリカちゃん!」

「では…」

「作戦開始ですわ!」

「ノワール、打ち合わせ通り…」

「上層階でバレットとレイヴンが待っているよ」

「開放部まで…頑張って登ってね」

「全く…カッコよく決めたのにトカゲの真似事なんてあんまりよ!!」

 

「さて、この装備の説明ですわ」

 

 

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「試作潜入用簡易強化服、彩雲」

「苗木家の私財を費やしてパスさんと共同開発したスーツですの」

「着用者の身体能力の補強、掌の吸着機能による登攀能力、そして消音機能」

「防弾性能もありますわ、あと手首から単分子ワイヤーを出せますの」

「単分子ワイヤー?!」

「先端が吸着するタイプだからね、アレが出来るよアレが!!」

「アレってなによ?!練習もしてないのに出来るわけないでしょう?!」

「…機能としてはあるってだけで、使用は非推奨だね」

「蜘蛛の真似事して落下したりしたら洒落にならないよ、社長」

「残念ですわ…」

「蜘蛛と言えば…擬態能力もつけていますわ」

「数秒静止していると付近の色に合わせて変化してくれますの」

「蜘蛛ってそんな能力持っているの?」

「どちらかというと蛸かなぁ」

「あと折り畳み式ダンボールを収納出来ていて…」

「どこから出したのよそんなもの?!」

「どうせなら透明化とか飛行能力とか付けてくれないかしら…」

「そんな規格外なもの創れるわけないじゃん!」

「本来は工場潜入を想定していましたが…」

「こんなこともあるかと思って創っておいて良かったですわ!!」

「用意が良すぎて怖くなってくるわね」

「ところで…」

「コードネームを決めるわよ!」

「コードネーム?」

「まあ…潜入任務になることだし意味ないわけじゃないかな」

「私は00Rね!!」

「じゃあ私は妖怪マキシマム!!」

「ミクモちゃんはねー、筋肉メットでいいんじゃないかな!」

「…却下、社長はノワールね」

「パスさんとミクモさんの苗字って重団と烏我だよね」

「そうなりますわ」

「じゃあバレットとレイヴンで」

「定番の名前だったのに…」

「つまんない!!」

 

──そんなやりとりをしたことを思い出しながら、登っていく

 

「思い出して見ればトカゲじゃなくて蜘蛛の真似事だったわね…」

「でも凄いわ、身体能力補助機能もあってすいすい登れる!」

「そろそろ開放部が…」

「こっち!こっちだよ!」

「!」

「いらっしゃい、ノワールさん」

「おー、ちゃんと登ってこれたんだね、偉い偉い」

「何で貴方はそんなに偉そうなのかしら…?」

「それにしても二人とも、良く入れたわね?」

「実はこのビルだけど、ちょっと建築に携わってたんだよね」

「その時のIDが残ってたからそれを複製してちょちょっと書き換えて…」

「ノワールさんのも用意出来れば話が早かったんだけど」

「蜘蛛の真似事しなくて済んだのね…」

「でもここからはちょっと管理が違うみたい」

「AI監視だけじゃなくて、雇われによる警備もいるみたいなんだ」

「つまり…複数人による行動は逆に危ないってこと?」

「多分無駄にリスクを負うことになっちゃう」

「適任は…」

「まぁ、どう見てもスーツを着てる私でしょうね」

「社内潜入といい、まかせっきりでごめんなさい」

「構わないわ、先輩として貴方達に便利屋が何たるかを見せてあげる!」

「カヨコ、聞いていたわね?」

「了解、工場側は銃撃戦の際中だよ」

「想定通り武装したロボットで固められてる、上手い具合に膠着状態に持ち込んでるから」

「今のうちに、行動して、ノワール」

「了解!ノワール、潜入を開始するわ!」

 

潜入を開始した陸八魔アル

 

「消音機能も問題ないわね、足音が全くしない」

「さて…」

「さっそく警備とかちあっちゃったわね…」

 

目の前には、4人の傭兵たち

 

「…準備はいいか?」

「ふん、当たり前よ、こっちの心は常在戦場」

「言われて備えるなんざ、素人のやることよ」

「…油断はしてなさそうね、どうするべきかしら…」

「何時問われても問題なく語れるぜ」

「ふ…ならば問おう…」

「?問う?なんのことかしら…」

「お前たちの推しの学園どーこだ!!制服編!!」

「!?」

「まずは俺からいくぜ!」

「よく聞け!俺の推しはトリニティだ!」

「まずは王道のセーラー服!それを黒く染めたアレンジ!」

「そしてお嬢様学校特有のお洒落な服装にシスターさんまで!」

「まさに制服の宝石箱!三大校は伊達じゃないっ!!」

「でもあの黒いセーラー、返り血が目立ちにくいからって理由らしいぜ…?」

「返り血に染まるJK、それもまたいいんじゃねーか!」

「えぇ…いいか?」

「例えばこうよ」

 

──鮮血が迸り、制服を汚していく

 

「…どうして?」

彼女は驚愕し、目を見開いていた

それもそうだろう、今まさに彼女が仕留めようとした悪党歯車ダイゴロウは…

この俺の手によって、息絶えたのだから

 

「…もういいんだ、制服は汚れていたとしても…君が手を汚す必要はない」

「これからは俺が、君の手になるよ」

「君の正義を…実現するための手に」

 

 

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…彼女の目から流れる涙

彼女は笑っていた

泣きながら、笑っていた

─俺は誓う、その涙を…彼女が流す最後の悲しみの涙にさせることを

 

「ひゅうううううう!!」

「いいぞー!トリニティー!!」

(な、なんなのこの人達!?)

「次はだれがいく?!ゲヘナか!?ミレニアムか!?」

「まさかコードネームをそういう意味合いにしている奴が俺以外にもいるとはな…」

「まさに運命の出会い!」

「…ところでお前どこだったっけ」

「俺?俺はアビドス」

「アビドス!?あんな辺境高、制服ねーだろ?」

 

──素人は黙っとれ…

 

「俺は見たのさ、奇跡をな」

「?」

「おっと、ボスから催促だぜ」

「ちっ、夢を語る時間は終わりか…」

「人に夢と書いて儚い…俺だって女の子のために命を張れれば本望さ」

「だが現実は糞歯車の野郎に使われる日々か…」

「…傭兵は仕事を選べない、悲しいがやることはやらねーとな」

「さて、いつも通りミレニアムとトリニティ、ゲヘナとアビドスのツーマンセルだ、ぬかるなよ」

「応!!」

「…傭兵稼業も色々あるのね」

「1名がフロアを巡回し、もう1名が階段を見張ってる」

「どうにかやり過ごしても階段の見張りをどかさないと…」

「…」

 

「あれ?ノワール戻ってきたの?」

 

一度二人の元に戻って来たアル

 

「ちょっと二人にお願いがあるの、いいかしら?」

「?」

 

その後…しばらくして

 

「…準備は整った、あとは祈るのみね」

「行くわよ!」

(来た!擬態機能が上手くいくかどうかだけど…)

「やっぱ萌え袖が最高だよな、白衣にカチューシャ…そそるぜこれは!」

 

擬態機能が上手く機能し、傭兵は気づかぬまま過ぎて行った

 

(う、上手くいってくれたわね)

(白衣ってことは、ミレニアムね)

(ということは階段を張っているのはトリニティ)

「…」

「(ええい、迷ってる暇はないわ!これは賭けなんだから!)」

(くらいなさい!!)

「黒か白か…ノーマルか正実か…究極の二択だな…」

「ん?なにか落ちてる?」

「…」

「こ、これはああああああああああ!?」

 

──アルが放り投げたもの、それは…

 

 

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写真だった

 

「な、なんだこの写真は!?見たことのない制服を着た生徒ちゃん!?」

「色合いは正実…だが長めのスカートといいアレンジが入っている!?」

「こんな…こんなものが存在したとはあああああああああ!!」

「…作戦成功ね」

 

──少し前に戻る

 

「…写真?」

「写真を作ればいいのー?」

「ええ、欲しいのは貴方達2人とナマナさん」

「あとアビドスの生徒の写真が欲しいのだけれど…」

「えっ、私も?」

「へぇー、ノワールってそういう趣味があったんだね」

「違うわよ?!あくまで潜入の為に…」

「いいよ!それが貴方の欲なら出力したげる!」

「いいよって、画像データは…」

「勿論あるよ!通常アングルからローアングルまで…」

「なんで持ってんのさ!?いつ撮ったの!」

「人の欲ってのは人それぞれなんだよミク…レイヴン」

「ナマナちゃんのもあるしー、アビドスのは…これでいっか」

「な、なんで私のもあるんですの?!」

「どうせならサービスショットにする?レイヴン」

「サービスショット?」

「ほら、もうちょっとこう…腕で寄せてから前傾姿勢に…」

「しばくぞコラ」

 

 

「効果覿面ね…さっきのがミレニアムとトリニティだとしたら残りはゲヘナとアビドス」

「どちらがどっちなのか特定できるといいのだけれど…」

「!?」

 

──突如、強化服にスパークが迸り、擬態機能が解除されてしまった

 

「ちょ、ちょっと!?擬態機能が…」

「クールタイムですわノワールさん!しばらく使用できません!」

「な、なななな、何ですってーーーーー!!!???」

「早く!早く段ボールに隠れてください!」

「それは悪手じゃない?!ナマナさん!」

「いいから社長早く!!」

 

仕方なくダンボールに隠れるアル…

 

「温泉開発部の子達ってなんでああも魅力的…いやだが風紀のあの控えめな感じも素晴らしい…」

「ん?」

「…」

 

 

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(見てる見てる、滅茶苦茶見られてるー?!)

「…さっきまではなかった段ボールがある」

(ひいいいいい!もう詰んでるわよこれ!)

「はっ!?」

(そういえば聞いたことがある…戦場にまつわる伝説…)

(あるはずのない場所に突如として現れる段ボールの話!)

(それを開けて生きて帰った者はいないと言われている…)

(…いやしかし、開けたい…開けてみたい…!)

(というか普通に開けるべきだよな!?それが仕事だし!)

(だが…頭ではわかっていても身体が動かん!!)

(この俺…ゲヘナ13と呼ばれた俺が臆しているというのか!?)

「…なんか固まってない?」

「今、アルさんとこの傭兵さんの間では高度な心理戦が繰り広げられているのですわ!」

「…本当?」

(ど、どうなるの!?開けられたらもう戦うしか…)

「…HQHQ」

「!?」

「…こちらHQ、どうした?」

「…謎の段ボール箱を発見、指示を願う」

「!?」

「…"何もなかった"復唱しろ」

「何もなかった、了解」

「…」

「げ、ゲヘナのボーイッシュの子の制服も可愛いんだよなぁ…」

 

…そのまま傭兵は過ぎ去っていった

 

(み、見逃された!?なんで!?)

「わ、わけわかんないけど…突破ね…」

「あとは階段前…アビドスよね」

「…」

「む?なにか飛んで…」

「!?」

 

 

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「あ、あれは…アビドスのホシノちゃん!?」

「識別名は暁のホルス!大人社会でもキヴォトス有数の実力者としてその麗しい見た目と共に有名な小鳥遊ホシノちゃんじゃないか!?」

「…心の声が漏れてるわよ…」

「でもその割には飛びつかないわね」

「くっ…落ち着け俺…これは罠だ!俺を陥れるための罠だ!」

「…」

 

──もう一枚が追加される

 

 

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「!?」

「な、なにぃー!?ユメちゃんだと!?」

「知る人しか知らないアビドスの女神!梔子ユメちゃん!その胸部装甲は説明不要!おっとりとしたあらあらうふふなお姉さんかと思いきやドジっ子でもあるそこがまたいいそれがいい!」

「…なんでこの人こんなに詳しいのかしら、私ユメさんの苗字とか知らなかったのだけれど…」

「だ、だがこれだけでは…二人なら偶然かもしれん、だがあと一人…」

「…仕方ないわね、持っていきなさい」

 

──最後の一枚が、投げられた

 

 

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「!?」

震える俺の指が、その写真を拾い上げる

「…あぁ」

「…夢じゃなかった」

同じ服装の3人が笑いあっているのを見たとき、目を疑ったが…

俺が見た光景は…奇跡でも夢でもなかったんだ…

 

 

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「アビドスにも制服は…あったんだ…」

「…HQ」

「…こちらHQ」

「…私の夢は、叶ったよ…」

「どうした!?なにがあった!?」

「応答しろ!アビドス!アビドース!!」

「勿論アヤネちゃんセリカちゃんのアイドル衣装もノノミちゃんシロコちゃんも全員素敵…」

「…人数少ないと厄介な人に把握されて危ないわね?」

 

そのままアルは最上階へと

 

「やったわ!最上階よ!」

「…窓からロープを垂らしたけれど…登ってこれるのかしら?」

「あ、ロープがきたよ!上手くいったんだね」

「ほ、本当に登るの?レイヴン」

「当然でしょ、バレットがいかないと扉開けれないわけだし…」

「私も行くの!?ロープ登攀なんてしたことないよ!!」

「2階分、約6mなら背負ったままでもいけるよ、ほら行くよ!」

「レイヴンはゴリラでも私は乙女なんだからあああああ!!」

「…スーツの補助もなしで、凄いわね…」

「ノワールみたいに何十階も登るのは無理だけど、少しなら建築業で鍛えてるからね」

「私はそういう系じゃないのにー!」

「じゃあ…次はあなたの強み、見せて頂戴?」

「あったまきた!こんなセキュリティ、すぐ突破してやるんだから!」

 

──5分後

 

パスのハッキングにより、ドアが開放される

 

「凄い!もう開いちゃった!」

「…やるじゃない、本当に一流のハッカーだったのね!」

「…うーん?」

「どしたの?バレット」

「なんか違和感というかね」

「セキュリティ、無かったの?」

「いいや、センサーがあったよ?ちゃんと解除もした」

「ならいいんじゃ?」

「端末があったわよ!」

「…とりあえず作業に移るね、レイヴンは警戒してて」

「…うん」

「…警報装置とのリンクをカット…よし…あとは目当ての証拠を…」

「…自爆停止機能?自爆?なんだか物騒な名前だし切っておこう…」

「あったよ!ドローンの設計データ及び精製ガスのデータ!」

「精製ガスの名前は…」

 

──突如、パスの顔が青ざめる

 

「…まずった」

「え?」

「警報装置はダミーだ!入口についてたセンサーと連動して…」

「扉が?!」

「うわー!!」

 

パスに向かって桃色のなにかが噴射され、部屋を満たす

 

「バレット!」

「ノワール、吸っちゃだめだ!」

 

──数分後、ガスが収まった部屋に現れたのは…

 

歯車であった

 

「ククク…」

「精製ガスの名前が知りたいのかね?」

「そのガスの名前は"ルストヘイズ"」

「まさか本当に来てくれるとはな…アルマ君…いやアルマちゃん!」

「さあ、ガスを吸った君は一体どんな表情を…」

「!?」

 

「ふぅー…」

 

そこには、ガスを吸っていない二人の姿が

 

「おあいにく様、ガス分かってて吸うほど馬鹿じゃないわよ」

(スーツの補助がなかったら危なかったわね)

「単純な息止めなら5分はいける!」

「…」

「…バレてしまったわね、歯車社長」

「いや、歯車ダイゴロウ!」

「貴方の企みはここまでよ、私たちが…」

「…誰だ」

「?」

「誰だ貴様はー?!」

「え!?」

「眼鏡はどうした?!眼鏡が…眼鏡がないと…」

「アルマちゃんではないじゃないか!!」

「…まさか眼鏡でしか認識されてなかったのかしら…?」

「レイヴン、バレットの様子は?」

「…なんか凄い顔してトリップしてる、これって確か…」

 

なにやら見たことのあるような恍惚の表情を浮かべているパス

 

「…違う、私が吸わせたいのはその子ではなく…」

「…だがまぁいい、どの道君にも吸わせれば…」

「また!アルマちゃんに戻る!そして私の理想に一歩近づくのだ!」

「…どういうことかしら?」

「出てこい!傭兵共!」

「!?」

「しまった、挟まれた!?」

 

挟み込むように現れた4名の傭兵たち

 

「…やれやれ、予定通り通せって話だったけどな」

「ふ、まぬけを演じるのも苦労するもんだぜ」

「…嘘つけ、お前ら完璧気づいてなかったじゃねーか」

「お前らだって出し抜かれてただろう!?」

「そんなことは…」

「その写真、あとで俺らにも見せろよな」

「それは出来ん、これは神棚に飾らせていただく」

「…ところで歯車の野郎、また発作が出てるみたいだぜ」

「眼鏡のどこがそんなにいいんだか…理解できぬ」

「ふー…ふー…」

「…」

 

しばらくすると、落ち着きを取り戻した歯車が話始める

 

「やれやれ…どこぞの正義の味方かと思えば」

「まさかアルマ君、眼鏡を取った君の正体が…」

「あのゲヘナの無法者、便利屋68の社長、陸八魔アルだったとは」

「…便利屋を知っていて?」

「知っているとも、悪を成すことを本懐としつつも毎回肝心なところで失敗するおまぬけ集団であろう?」

「たった三人でここまで来れたことを考えると腕前は確かなのだろう」

「だが成功を収めることができない、それはなぜか…」

「貴様がぶれているからだよ」

「悪を成すと言いつつ正義の真似事をする今の行為こそその証だ」

「つまり…指導者が悪い!」

 

会話を聞いていた便利屋達が殺気立つ

 

「こいつ…」

「言わせておけば…」

「殺します殺します殺します殺します」

「…さっきも言った通り腕前は悪くない、大人しくわが社に雇われたまえ」

「私が有能な指導者になってやろうではないか、ガハハハハ!」

 

殺気立つ便利屋達…だが…

 

便利屋社長、陸八魔アルは…

 

歯車と対峙し、こう言い放った

 

「…善と悪、その意味は時と場合、立場…様々な要因で変わるわ」

「?」

「悪事を成せば悪なのかしら?その悪事の裏で助かる人々がいて、もしかしたらそれはその人達や本人にとっては善なのかもしれない」

「少なくとも、私がこれまで対応してきた依頼には…大なり小なり依頼者にとっての善…」

「正義があったわ」

「私利私欲、金銭の為だろうとそれは正義に成り得るの」

「ふふ…貴方のところのヨナちゃんが聞いたら、卒倒するかもしれないわね?ミクモちゃん」

「…違いないね」

「そして当然、私たちと対立する者にもそれはあるのよ」

「悪には悪の正義がある、その正義を踏み越え、依頼を達成する…」

「お互いの正義に悪を持って介入し悪を成す」

「それが私たち…便利屋68よ」

「一度もぶれたことなどないわ、私達は私達の悪を貫き通す」

「…日も変わったわね、さて…」

「本日の一悪、成させていただくわ」

「…お覚悟はよろしくて?」

 

 

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「アルちゃん…」

「アル様アル様アル様アル様!!」

「…社長」

「素晴らしいですわ、アルさん」

「…ふん、言葉遊びを」

「ならば倒してみろわが社の最高傑作と傭兵たちを!その悪とやらで!」

 

そして現れる軍用ドローン

 

 

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(くっ、見栄切りはしたけど…以前状況は厳しいわね…)

「…」

「…なぁ」

「…ああ」

「…そうだな」

「…やれやれ、お前らも全員アホだな」

「?」

 

同時に襲ってくるかと思われた傭兵たちだが…

 

「嬢ちゃん、あんたの言葉…痺れたぜ」

「現実に屈して腐ってた俺達だが…」

「…今回は自分の正義ってやつを、貫かせてもらおうか」

「全員!服用しろ!」

 

そう言って全員、スプレーを取り出した

 

「!?なにかを吸い始めて…」

「な、それはルストヘイズの携行用スプレー缶!?」

「やめろ!お前らが眼鏡好きになったところで…」

「め、眼鏡好き?」

「…このガスの名前はルストヘイズ、直訳で欲望の霧」

「そのままさ、吸った者は欲望に支配される」

「歯車の野郎は眼鏡好きになるって信じてたみたいだがな!それはてめーの欲だろうが!!」

「俺達の今の欲は!!」

「自分たちの信じた正義を貫き、守り通すこと!!」

──見栄を切る傭兵たち

 

「あ、貴方達!」

「あと制服万歳!!女の子万歳!!」

──…素直な傭兵たち

 

「あ、貴方達…」

「バレット、しっかりしなよ!」

「!?ま、待ってくれ!!」

「な、なに?!」

「この萌え袖は…ミレニアム!?この子ミレニアムか!?」

「というか履いてな…」

「ふぉおおおおおおおおおお!!」

「あ、あんた…もしかして温泉開発部か!?」

「え?う、うん…一応そうだけど…」

「…連絡先、教えていただいても?」

「今それどころじゃないよね?!」

「な、なんなのよこの人達ー!?」

「やべぇ!アルちゃんの例の顔だ!生で見れるなんて!!」

「なぁ、この写真の子達なんだけど…ちょっと個人的にお話を…」

「…全く状況を見れていないね…」

「…本当に欲望に支配されていますわ…」

 

これにはカヨコとナマナも呆れるほかなかった

 

「危ねぇ!!」

「わ、あ…ありがとう?」

 

ドローンからの銃弾を身を挺して防ぐ傭兵

 

「なぁ、あいつをやったら…連絡先…」

「わかった!わかったから真面目に」

 

その言葉を聞いた傭兵の眼の色が変わる

 

「おい、おめーら!先にアイツをやるぞ!」

「装甲は厚いだろうが…メンテナンス用コックピットの強化ガラスはそこまでじゃねぇ」

「火力を集中させろ!各自散会して的を絞らせるな!」

「屋内でドローン運用なんざ馬鹿のやることだって思い知らせてやれ!」

「…落差が激しすぎてついていけないよ」

「いやー、やってるねぇ!」

「パス!?大丈夫なの!?」

「私はバレット…いやもういっか」

「いやー、素敵な夢を見れたよ、一発で壁の向こうへ行けたね!」

 

…壁の向こうに、エナドリの夢でも見ていたのだろうか

 

「…平気なの?」

「私常に欲望に忠実だし!もうなんか普通になっちゃった!」

「えぇ…」

 

「割れたぞ!あとは…」

「コックピットにぶち込んでやれ!」

「ちょ、ちょっと!私たちの出番がないじゃない!?」

「へへ、わかってますって」

「とどめは任せるぜ!アルちゃん!」

「…ほんとハチャメチャというか…なんというか…」

「まぁ、ここまでお膳立てしてもらえたなら…」

 

──トドメの一撃を、便利屋社長が放つ

 

「一撃で十分よ」

 

「そ、そんな…わが社の最高傑作が…」

「なぜお前らそんなに強い?!無能じゃなかったのか?!」

 

傭兵たちは当然のように言い放つ

 

「やる気の違い」

「くそがぁ!!」

 

「さて、大人しくしなさい、歯車ダイゴロウ」

「私の野望が…眼鏡好きによる眼鏡好きの為の世界の創造が…」

「…動機はどうあれ、このガスは危険よ…データをコピーしてヴァルキューレに渡すわ」

「端末は…ここね」

「…最後に、もう一度だけ眼鏡を付けて…」

 

最後の願いを言っていた歯車だが、急に顔色を変える

 

「ん?ち、違うぞアルマ君!そのスイッチは!」

「え?」

「自爆スイッチ!それを押したらここと工場は30秒後に自爆する!」

「な、なななな、何ですってーーーーー!!!???」

 

…なんとついていたのは、この世に最もいらない機能とされるものだった

 

「なんでそんないらない機能つけるのよー!?」

「証拠隠滅のためだ!!」

「こ、工場の皆さん!早く退避を!!」

「早くとなりの停止スイッチを!」

「お、押したわよ!…止まらないじゃない!!」

「…間違えて自爆機能じゃなくて停止機能のほう、切っちゃったかも…」

「なんで切るのよー!?」

「だ、誰だってミスはあるでしょー!!」

「奴は倒したぞ!さあ連絡先を!!」

「そんなこと言ってる場合じゃないって!!」

 

「ば、爆発オチなんて最低よー!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

…そのまま、工場とビルは爆発するのであった

 

「クロノススクール、川流シノンです!」

「昨日謎の爆発事故が起きた歯車重工の工場となります!」

「本来届け出されていた計画書にない設備が発見され、ヴァルキューレによる捜査が行われています!」

「また、同時刻に同じく事故が起きたDU市内の高層ビルとの関連性を含めて捜査が行われる予定でとのことです!」

「ヴァルキューレは代表取締役社長、歯車ダイゴロウ氏を書類送検する見込みで…」

 

「…それで、よく無事でしたわね?」

 

便利屋事務所にて、全員は無事に集合していた

 

「私達は陽動の役目が済んだと思って外で待機してたしねー」

「アル様たちは…」

「…まさか本当に蜘蛛の真似事することになるなんて…」

「アルさんが単分子ワイヤーつかってぶら下がらなかったら、危なかったねぇー!」

 

アルがまさにどこぞの蜘蛛男よろしく、ビルからワイヤーでぶらさがっていたのだ、パスを抱えて

 

「ミクモちゃん、歯車も助けたんだ?」

「うん、ロープが持つかどうかは賭けだったけどね」

 

ミクモは歯車を抱え、進入に使用したロープでぶらさがっていた、爆風に吹き飛ばされなかったのは幸運であっただろう

 

「えっと…傭兵さん達は…」

「…」

 

…彼らは、そのまま行方不明となっていた

 

「いい…やつらだったね(?)」

「…最後に、己の正義を貫いて散ったのだから、本望」

 

突如、ミクモの端末が鳴り始め、プラナが告げる

 

「ミクモさん、可能性創造部宛に電話です」

「え?電話?依頼かな?」

「はい、もしもし可能性創造部…」

「あ、オレオレ!オレだよ!ミクモちゃんって名前だったんだね!」

 

…なにか聞き覚えのある声が、していた

 

「…えーと…」

「あ、そっかわかんねーか!こういえばわかるかな!」

「あの時の傭兵!ゲヘナ13」

「おいてめぇ!何抜け駆けしてやがる!」

「パスちゃーん!俺だよー!あんたのミレニアム12だ!」

「頼む!アビドスの子の名前を教えてくれ!」

「正実の子!今度一緒にお茶」

「ブツッツーツーツー」

 

そのまま、電話は切れてしまった

 

「…」

「お元気、そうでなによりでしたわね」

…こうして、歯車の野望は二つの便利屋により阻止された

…定期的に可能性創造部、そして便利屋68に謎の電話がかかってくるようになる

パスがなにやらやり取りをしているようなのだが…それはまた別のお話

 

「…しかし、歯車は思い違いをしていましたが、本当に危険なガスでしたわ」

「…他に流出していなければいいんですけれど…」

 

 

【挿絵表示】

 




善と正義と本日の一悪、完結です。
動画前提の読みにくいSSではありますが、読了感謝致します。
独自のスチルや立ち絵を使った動画を投稿していますので、よろしくお願いします。
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