大惨事聖杯戦争 with リリス   作:箱イベ・10周年備えなし

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暑過ぎる。辛過ぎる。
戴冠戦も走りたい……リリスの絆をせめて十二にしたい
更新です
追記:箱イベざけんな石ねぇよ、忙しい時期なんだよ


10話

 

 

 

 冬木の教会。街の人々が働き盛りである人のいない時間の静謐な場所で、天草は祈りを捧げてくれている。機会を与えてくださった主に、無念にも敗れた戦友(とも)に、残酷に散った子供達に黙祷を捧げている。

 

 

 それは、何時間だっただろうか。いくら聖杯戦争が夜に行われるとはいえ表にこれだけの時間、姿を表すというのは大層豪胆なことである。

 

 

 その様子を言峰璃正はジッと見つめていた。

 

 

 

 天草は思い出す。それは以前話された(マスター)との会話。この聖戦を勝ち抜くための策についてである。

 

 

 

 

 怪物と聖職者。されど目指すべき道は同じ。

 

 

 天草と臓硯がまず行ったのは情報交換である。両者、珍しくわからないことだらけ。それでもお互いに知恵者である。顔を合わせて意見を共有し合えば自ずと答えは見えてくる。まず初めに天草から堰を切ったように疑問が出た。

 

 

 

「では私から質問を。勢力図について教えていただけますか? どのような敵が存在するか、それを知らねば対策の立てようがありません」

 

 

「なるほど。当然よな」

 

 

 知る必要のある情報だと臓硯は納得する。間桐の翁は蟲で得た知識と御三家としての経験を持って知りうる情報を提供した。

 

 

「先ずはアインツベルン……マスターについては気にしなくても良い。ホムンクルスは脅威にはなり得ぬ。相手の英霊と戦うこと、それだけに集中すればよい」

 

「となれば……私たちは有利ですね」

 

 

 天草はその言葉に聖職者としてはしてはいけない悪どい笑みを浮かべながら首元を見せた。その笑みに臓硯も笑って返す。彼らが見る先は、臓硯の右手の令呪であり天草の鎖骨辺りに並んだびっしりとした令呪である。

 

 

 

 裁定者。

 

 

 イレギュラーもイレギュラーなクラスの特徴は……他のサーヴァントとルールが違う勝負をしていると言ってもいいほど最高だ。

 

 臓硯はマスターとしての透視能力を含め、天草四郎個人にどのような能力を持っているか聞いているため、既に知っている。

 

 

 宝具も、スキルも、クラス特性も今まで遭遇したサーヴァントと一線を画していた。

 

 

 そこで臓硯が特に目をつけたのは破格の能力を持つ()()()だ。

 

 ・真名看破 B

 裁定者として召喚されると直接遭遇したサーヴァントの真名及びステータス情報が自動的に明かされる。ただし、隠蔽能力を持つサーヴァントに対しては、幸運値の判定が必要になる。

 

 ・真名裁決 C

 裁定者にのみに許された、サーヴァントに対する令呪執行権。今回は正規の召喚ではないためマスターの令呪に比べて効果は落ちている。参加したサーヴァントに対し、二画まで令呪による命令を執行できる。

 

 

 

 この二つ、反則も反則であった。

 

 どちらも持っていれば勝利に確実に近づく切り札。それを最も聖杯戦争の仕組みに詳しい臓硯が運用するという事実。正直彼らは、

 

((勝ったな。茶を飲んでくる))

 

 くらい言ってもいい条件を揃えていた。

 

 

 

 天草士郎という英霊は並み居る英傑に比べれば劣るかもしれないが、ステータスは極東の知名度補正で取り戻している。裁定者としての頑強さも併せて充分優秀である。術師なのに最低レベルのセイバーと打ち合える肉体スペックを持っている。

 

 

 

 ──裁定者を抱えた臓硯は蟲越しに英霊を見るだけで真名を手に入れることができる。

 

 

 ──裁定者を抱えた臓硯は魔術師三画、英霊十四画の合計十七画体制で聖杯対戦に臨める。ましてや天草自体が自分自身に使える令呪を二画所持しているため臨機応変に戦争を行うことができる。

 

 

 ──最悪、宝具で彼らは…………

 

 

 

 

 天草は逸る気持ちを抑えられなかった。これだけの優位、これだけの資源を持って挑める戦など生前には体験したことのない未知のものだった。興奮は止まることを知らずに、自分たちの理想の叶う世界に思いを馳せようと

 

 

「これ、慢心はするな。まだ決着は着いてはおなぬわ。落ち着くがいい、天草よ」

 

 

 その油断を臓硯に嗜められた。その瞬間、冷や水を浴びせられたように心が落ち着きを取り戻す。数秒目を閉じて瞑想をした後、机に出されたお茶を飲んで気分を和らげる。

 

(熱い……それを熱いと感じれるほどには私は冷静さを取り戻せている)

 

 

 反省した顔をした天草は己のマスターに未熟を見せたことを詫びた。

 

 

「失礼しました、マスター」

「なに気にするでない。そのやる気はいつか役に立つだろうて。しかし今は抑えよ。時と場合を考えて我ら我らの最善を成す。……悲願の成就もすぐそこよ。掴んでから喜べばいいというもの」

 

 

 

 臓硯は静かに、しかし熱い目で返す。天草は森宗意軒の狂気の孕んだ理想とは違う真っ直ぐな気持ちに当てられ感嘆の息が出た。自分と同じ理想の先駆者、これほどに頼もしいのかと実感する。

 

 

「……教えられることばかりです。マスター」

「ククク何、伊達や酔狂で長生きしていた訳ではない。年の功というやつじゃよ。お主にも直ぐに出来よう……焦らぬことじゃ」

 

 

 

 この後も情報の交換は続いた。

 

 

 

 サーヴァントについての見解。

 啓司スキルでの対応。

 魔術師(キャスター)クラスとしての役割作り。

 

 蟲の動かし方。

 令呪の効果的な使用法の検討。 

 参加した魔術師のプロフィールチェック。

 

 

 

 詰める。詰める。詰めていく。

 

 やれることはまだまだあると、抜かることのない求道者。己の限界を超える勢いで両者は自分の出来ることをこなしていく。

 

 

 それも終わった。盤面は整った。

 

 

 あとはどう壊していくかという調整だけ。

 

 

 魔術師(キャスター)陣営は全ての準備を整えた。タイミングを伺い、未来に手を伸ばすその時を今か今かと待っている。不安はない。あともう時期で全ての敵に蟲が這い寄るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます、璃正神父」

「いえ、戦争の中でもこうして祈りを捧げるとは。貴方も敬虔な同胞ということ。聖堂教会はともかく私はいつでも貴方の来訪を歓迎しています」

 

 

 天草は祈りを終えて教会から帰っていく。その様子を見ていたのは、言峰璃正と()()()()だ。

 

 

「で、アイツを潰しておかなくて良かったのかよマスター?」

 

 

「良かったというよりやめておけ。あれはかの間桐臓硯のサーヴァント。対峙して何が起こるか予想できないアレと正面からぶつかるのは得策ではない」

 

 

「チッいいけどよ……教会ねぇ。祈りを捧げたら国が回ると思ってる頭の固い奴らの巣窟じゃねぇかよ。神は信じるが祈る奴らはあんまり好きじゃねぇんだよな」

 

 

「そう言うものではないぞアーチャー。祈り願うことも重要であれば平和を願う心も重要である。事実、教会がいなければ今頃世の中は怪物(しと)で溢れているだろうからな」

 

 

「ほう、嬉しいことを言ってくれますね遠坂さん。正直魔術師である貴方はこの場が苦手かと」

 

 

「遠坂は隠れキリシタンの家系だからな」

 

 

 

 そう言って遠坂家三代目当主、遠坂徹誠(とおさかてっせい)は十字の首飾りを神父に見せる。神父はそれを見て納得した。

 

 

 遠坂はこの街の土地の管理者であり、今回開催された聖杯戦争の御三家の一角だ。けれど祈りを捧げ身体を鍛える鍛錬者の身の上。教会の日々の活動と苦難には理解があった。彼ら一組はこの聖杯戦争で聖堂教会と一番パイプが強いと言ってもいいだろう。

 

 

 

「そうかい。神々に聞かれたら厄介なことになるから口にはしねぇが、好きにしてくれマスター。ところで、そろそろどう出るよ」

 

「どう、とは」

 

「当たり前のことを聞くなよ、聖杯戦争だ」

 

 

 

 アーチャーはつい先日まで楼閣の頂上から常に敵を見守っていた。昼も常に。それは狙撃手として反撃されない位置から相手を常に分析するためだ。

 

 

 狙撃手は全て見ていた。街の様子を。人の営みを。夜の月の軌道も。──魔術師と英霊も。

 

 

 

 アーチャーを通して徹誠(てっせい)は全てを把握した。今通り過ぎて行ったサーヴァントを含めて全てのサーヴァントの確認をアーチャーの肉眼を持って達成したのだ。 

 

 

 敵を探すエーデルフェルトも。時計塔からやってきたもう一人の傑物も。この土地を知り尽くした遠坂の扱うアーチャーの餌である。

 

 襲いかかってきた鋏を携えた女も、アインツベルンの黒い幻霊も敵ではない。アサシンも見つけて仕舞えば的と同じであった。

 

 

 それ程の偵察をして尚被害は軽微。それは、重傷を負う前に全てアーチャーが撃ち抜いたからだ。

 

 

 事実、アーチャーを見た者はいたが。アーチャーを観察できた者は少ない。アーチャーの弓矢は対峙する英霊も、偵察のための使い魔も……偶然そこにいた魔術師にすら被害を与える。アーチャーに高所から見られているというのはどの参加者からしても恐ろしかっただろう。

 

 

 それも今日で終わり。

 

 

「では璃正殿。失礼致します」

「ええ」

 

 

 弓兵陣営は狙いを定めた。目線の先には獲物がいる。彼らに最も狩りやすいと思われた存在が一方的に暴力で襲われるだろう。

 

 

「いくぞ、アーチャー」

「おう」

「まずは……エーデルフェルト。聖杯戦争の情勢を動かす。根源の到達は我が手の中に。お前の力を貸してもらうぞ」

 

 

 

 有力者は願いのために動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「不味いな……」

「不味いね……」

 

「どうしよっか」

「「黒いモヤ(アンリマユ)殺しちまった(ったね)……」」

 

 

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