大惨事聖杯戦争 with リリス   作:箱イベ・10周年備えなし

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冠位無料終わっちゃった……


間話2

 

 

 彼は人にしてもらったことに感謝をする。彼は人として抱くようになった興味に困惑する。彼は彼女の残した形見を抱えて足を動かした。彼女の言っていた旅をしてみたくなったからだ。

 

 自然と、彼女を真似(てほんに)するようになった。

 

 

 自然と口元は笑っていた。

 

 

 

 旅をしていく内にわかることがある。ひもじいのは辛いこと、優しい人ばかりではないということ、人の優しさは特別心に染みるということ。彼は人と関わることが好きになった。

 

 

 彼は何処へでも行った。好奇心の赴くままに優れた身体能力でたくさんのものを見た。かつての己と同じ神。神ではないが進む人。過酷な自然の中で生きる猛獣。全てを捻じ曲げる強大な魔獣。

 

 

 生命を知っていった。決して気持ちのいいことばかりではなかったけれど。彼は他者が好きになった。

 

 

 そして、いつだったのだろうか。温暖で美しい島々の多い土地に足を伸ばした。戦士の多いこの国でもっと生命を知るために。人を知るために、彼は医学を習った。

 

 

 彼は治す……体と魂の分野については天賦の才を持っていた。戦で傷付いた戦士の体を何度も治療する中でだんだん容量が解っていき、調子のいい時は四肢の取れた戦士を治し、死にかけの戦士を復活させた。

 

 

 そんなことがあったからだろうか神は恵み深い(イオニアス)なんて呼ばれるようになる。彼は次第にそう名乗るようになった。

 

 

 イオニアスは戦場の救世主として知られるようになりやがてフードを被った蛇の医者と教え教えられる仲になる。目立った活躍をしたことで興味を持った神々にちょっかいをかけられるように

 

 

 

 なる前にまた別の土地へと旅に出て、知らないことを学ぶようになった。

 

 

 

 

 

 彼は知らない人と関わり、人を知っていく。

 

 

 人について知っていく内に次に興味を持つようになったのはこの世界についてだ。世界を知るために勉強する場所を探して足を運んだのは文化の国である。

 

 

 平民(プレプス)として市民権を手に入れて、将来的には貴族(パトリキ)に近い地位を手に入れることができた。戦争に関しても医者として腕を振るい人生を全うしていく。勝ち得た地位で手に入った金銭と権利を用いて行うのは世界を知るための実験。

 

 

 

 早すぎるというべき自然魔術である。

 

 

 森羅万象に潜む霊魂の力を抽き出す技。彼は世界を通して自分を知っていった。築き上げた人間の直感と感性で多種多様な学術を漁っていく。時には知恵者・専門家として偉い人に呼ばれることもあった。

 

 

 アナスタシウスの名前を名乗った、辛くも厳しい人としての人生を全うした時である。

 

 

 かの尊厳者とも話したことがある。どんな会話をしたかというのは心の中だけにしまっておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 紀元前を超えて。

 

 

 人が浮き足立っているように感じることが増えた。人が口々に救済主を褒め称えるようになりどこか近寄りがたくなった時の頃。私は、知恵者である魔術師の集まる集会に赴くことにした。中は薄暗く実に怪しげな場所である。

 

 

 彼らは口々にやってきた私に歓迎の言葉をかけて、奥へと誘っていく。悪い雰囲気というものは容易に察せるもので断って帰ろうとしたところ。なりふり構わずに攻撃を加えてきた。

 

 

 こちらも当然、応戦したが何処に隠れていたのか相手の数は増える一方だった。総数の九割を屠って力尽き、捕えられたボクという存在は……現在でいうところの封印指定に当たる拷問をされる。

 

 

 

 そこで、現代まで繋がる魔術師という存在を知る。

 

 

 

 

 バタール=ロゼ・シュル・レザーブル。樹木の落とした私生児を意味する名前を与えられたボクは時間感覚が無くなるほど長い間、この場所にいることになる。

 

 モルモットとしての日々は退屈で陰鬱で、人に軽蔑を覚えることになった。生贄、素材、治験の材料。少しのことでは壊れず、魔力の生成量もそれなりなボクは最高の実験材料となるだろうに。

 

 実験体を粗末に扱ってその程度の実力。玩具を弄ぶようにボクの体を扱っている魔術師共はボクからすれば呆れるほどに無様に感じた。

 

 

 

 彼の肉体は究極の身体と魂の教科書である。未熟な腕で彼の中身から学び……根源に辿り着いたものが三人もいる。その度に魔術師は熱狂してボクの体を雑に解剖する。死にたくても死ねないし、行動もできない。

 

 

 魂と肉体、両方が同時に深刻な欠損をしない限り人生を繰り返させられるのはうんざりだった。やがてボクに対する少しの敬意も無くなったことで彼らを見限った。荒む、飽きる。変わらない日々に疲れていった。

 

 

 

 

 

 ここにいるのはオレだけじゃない。オレ以外の実験体というのも当然いる。それは優秀な魔術師だったり、凶暴な魔獣だったり……子供だった。

 

 

 子供の悲鳴が胸を掻き鳴らした。どれだけ気分を害したところでオレは何一つ出来やしない。もどかしい気持ちが積もりに積もってオレは精神を病んでしまった。

 

 

 だんだんと気持ちが衰えて生きることだけに専念するようになる。つまらない人生。人生に悲痛さに涙を流したくても流せない。そこまでの興味を持てないから。

 

 

 自分の殻に閉じこもることでオレはオレ自身を見直していく。今まで、今、これからを客観的に振り返って現実逃避し再定義して精神を守る。幸か不幸かいつのまにか憑依能力を獲得した。

 

 

 そんな生活で一生物の名前を手に入れる。

 彼はアグド。魂の結束者(アグド)

 その名前は自然と、永遠に世界に刻まれた。

 

 

 

 外道に全てを蔑ろにされる生活。勿論、こちらも抵抗して大切なものは差し出さなかった。記憶と知識、感性と人間性の保存。勝手に己の異常な身体を見て能面のような顔を狂った笑みに変えるこいつらにうんざりしていると。

 

 

 彼が来た。魔術師の実験場を容易く踏み潰す男。癖のあるやや長い金髪に紺色の司祭服を着用し、眼鏡をかけた姿の彼は穏やかそうでいて、酷く冷酷な印象を抱いた。

 

「ん?」

 

 

 彼は視線に気付いた。こちらを不思議そうに見ている。

 

 

「生きてたんですね」

「……おかげさまでな」

 

 

 

 

 長い囚われの日々も終わり、オレは助けられた教会に保護されることになる。埋葬教室……のちに埋葬機関となる前身に生徒として関わるようになり、オレを通して皮を破ることになる目の前の男の名前は、

 

 

 

 

 ミハイル・ロア・バルダムヨォン

 

 

 カバラ系の魔術師、知識欲の魔人。後世の【アカシャの蛇】である。

 

 

 

 

 

 教会の人々を知り、彼らを支えている教えを知る。当時は詳しく知るつもりはなかったが今では興味深く感じてくるのが面白い。時が経てば変わる心もあると学んだ。

 

 

 埋葬教室はオレを含めて五人の生徒がミハイルから教えを受けていた。

 

 

『出産』の起源を持つ聖女。

 

『天使の遺物』を扱う呑気屋。

 

 自己を顧みない『祈り手』。

 

 メレム・ソロモン(例のアレ)

 

 以上である。異常である。

 

 

 

 

 生きていてこれほど視座が違うと思ったのは初めてである。なんで魔女(ベル)と初めて話した時よりもズレてんだよと強く言及したくなるが、言ったところでロア含めて不思議がるだけだろう。厄介だな十字教徒。これも常に神のことを考えているからなのか? 不思議である。

 

 

 どいつもこいつもオレを()()()強者ばかりだ。これほど死の危険を身近で感じることはなかった。けれど、関わっていて面白い。この世に蔓延る死徒とやらを殺して回るのも新鮮な経験だ。

 

 

 

 

 

 オレが現場にたどり着くということはそこは既に地獄になっているということ。強く打ちつけた血の跡がそこらに広がり、辛うじて生きているが、身体の至る所から体液を出して恐怖する若者たち。

 

 

 化け物はその様子を見て愉悦するのだ。矮小な存在がわざわざ目の前から立ちはだかってくるからそうなるのだと偉そうに説明をする。その間も血を啜ることをやめない。本能と知性を併せ持つ怪物。個人的に見ててとても不愉快だった。

 

 

「お前程度の実力で、粋がるなよ」

 

 

 (ひと)としての経験を持つ私からすると死徒は無様で矮小だと見下す対象だ。殺したくなるし壊したくなる。それに監禁してくれやがったあの魔術師どもに似ていて不愉快。

 

 

「……なんだ、貴様はッ!?」

「生きる才能ないよ、天に還って出直しな」

 

 

 食ってきた食糧(こどもたち)的にも、本能に囚われたお前的にも哀れである。主に代わって送ってやろう。

 

 

「不遜なる我が手で赦しを与える。隣人(ひと)を愛せぬ憐れな者よ。慈悲を与える。愛と希望を抱えて散るがいい」

 

 

 身体が強く輝いた。その様子を見ても死徒は動けない。オレは導線を用意してやるだけ。充分な魔力の道筋を作ってやれば雄大な自然も自ずと従う。

 

 

「神の光」

 

 

 本当はそんな大層な名前ではないけれど、こういうことを言っておけば教会ウケはいいのである。

 

 

 今回使ったのは落雷落とし。魔力で避雷針を作って誘導し、体内で循環した雷を聖別化させる妙技。目の前にいる時点で雷からは逃げられない。逃げられる能力があったところで、大気の腕が逃さない。逃げてもいいが、今度は容赦なく流水(すいぶん)を使うぞ? 洪水をその身で味わうといい。

 

 

 

 死徒は消え去り、脅威の去った現場では生き残った信徒がうつ伏せて泣いていた。光で目を灼きながらも「感謝いたします、感謝いたします……」と繰り返すものだからうざったくなって蹴り上げた。

 

 

「オラッ帰んぞボケどもッ! 帰ったら身を清めてメシ作れ! オレになぁ!!」

 

 

 

 はい、と嗚咽混じりに応える信徒達。

 実に充実した毎日である。

 子供達の慰問を繰り返し、気を利かせるオレを上は使いやすいと思ったのか。いつしかミハイルを越えた司教にすらなっていた。別に神を信じてはいないのに。人を信じているだけなのに。面倒臭いことである。

 

 

 

 

 

 

 

「出世祝いだ、アグド殿」

「お前、殿とか使うのか……揶揄ってるのがバレバレなんだよ」

「何、顰めっ面した友人がいるからな。解してやろうと思っただけだ。許せ」

 

 

 乾杯、とグラスを軽くぶつけてワインを飲み合う。アグドはそんな配慮はいらねぇと呟いて愚痴を吐き出した。

 

 

「そういや最近出動命令が出ないんだよ。……お偉いさんの護衛だとかに回されてこっちとしてはいい迷惑だ。騎士団がいるだろうに、そっちを使えよ」

 

「ふむ、お前の格が高過ぎる。相手とて間抜けの集まりではない。動けば気付かれ、逃げられるということだ」

「つまり、腰抜けばかりということか」

「違いない」

 

 

 

 オレと彼は教え合う仲である。勤勉な彼は魔術に造詣が深い。オレが魔術や教えについて訊ねて、彼が魂や歴史について訊ねるのだ。出会った時には考えつかないほど仲良くなれたようで、本当に偶にどちらも機嫌がいいときなら酒を共にすることのある関係だ。

 

 

 

「知識欲の権化だなお前は……見ていて楽しいよ。まったく」

「こちらこそ、身近に先人がいるとはありがたいことだ。喜んでその恩恵を授かろうというもの」

 

「知れば知るほど……自分が無知だと悟るのだ。いずれ全てを理解できればいいと心が騒つくよ」

 

 教室で普通に会話できるやつが少ないとも言う。

 

 

 特にあの聖女である。金髪清楚の理想系のような女が特に恐ろしくてしょうがない。眼差しは穏やかなのにどこか壊れているのだ。よくもまぁあの領域に辿り着いたと言うべきか、辿り着かざるを得なかったことに同情すべきか……本人はニコニコしてるから平気そうだけれど。

 

 

 産み直し。

 これまでの人生で犯してきた罪の強制浄化。

 逆らう存在を、死徒を穢れの無い赤子にするのは何なんだ。オレを見てウットリするのも何なんだ。怖いんだよ……

 

 

 

 

 他にも、気分屋の彼は会話をし過ぎると引き込まれそうになるし、祈り手は聴いてはいるが全くの無口だ。壁に向かって話しかけている気分になる。

 

 

 メレムとは、会うと財宝の自慢や初恋語りをしあう関係であるが仲良くないし。

 

 

 

 こんなんだからオレが他所の部署に入り浸ることになるんだよと不満を流し、ミハイルが無視をする。そういえば最近頭角を表すようになったあのシスターは……と珍しい在り方の存在に興味を示すミハイルにあんまり余計なことをするなよと嗜める。

 

 

 お互いに行き過ぎを注意しながら、酒が回れば話すのはこの世について。どこを旅したとか、どんな人がいたとか。どんなものがあって、どんな魔術が好きだとか。人に目を向けるオレと真理を追求したいロアの会話は口が滑るほど過激になっていく。女のタイプ、趣味嗜好に対する口出し。神父らしからぬ悪逆の成果発表……などなど楽しい夜は一瞬で過ぎていった。

 

 

 

 

 私は埋葬教室の連中が好きだった。

 彼らは人間の中でも最高峰の能力を持つ希望である。そんな彼らは個人としては好ましいし、人としてこの世界を真剣に見つめて生きているので誇らしい。孤独を感じる程の才覚に振り回されながら二本足で生きているのは素晴らしいと思った。

 

 

 

 

 だから、

 

 

 

 

 ミハイルが知識欲に負けて、人の道から踏み外れ。真の永遠に魅入られて死徒になったと聞いた時。……ショックで疲れた(わし)は自然と教会を後にした。親しいものだけに別れの挨拶をする。今更第八秘蹟会の玩具になる気もなかった。

 

 

 

 

 

 ふらついた足で大陸へと歩き出し、辿り着いたのは知恵者の集まる庭である。

 

 

 世界と繋がるつもりはなかったけれど、研究は進み、存在を隠蔽出来るようになった。無断で宗派から抜けた儂は彼らからしたら敵だしな、誤魔化す手段が出来てよかった。もう会うこともないだろうと思う。

 

 

 知識も時間もあるけれど、少し魔術とは距離を置きたかった。というのもある。

 

 

 儂は疲れた身体で生きる理由を探す日々を送る。

 使うのではなく他者に魔術を教えてみたり、今まで以上に財に溺れてみたり、快楽を得ることに執着してみたり。

 

 学に専念してみたり。誰かに仕えてみたり。文化を学んだ視野を広げたり。何の得にもならないことに手を伸ばしてみたり。

 

 

 

 

 とかく、今まで以上に人の多い地域での暮らしだった。周りの人間が目まぐるしく産まれては死ぬを繰り返す日々を送る中、ある日。奇妙な情報が迷い込んできた。

 

 

 ──聖杯戦争。願いの叶う願望器の獲り合い。降霊術の極点に近い英霊の存在の確認。

 

 

 期待しない心で日の本へと飛び立って。時間をかけて拠点を築く。その日は今か今かと待ち侘びた寂れた老人の人生である。

 

 

 人として生きることを許された以上。自分から死ぬことはあり得ないし、他者に殺してもらうことも拒んだ珍しい超越者の話。

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 

「おはよーなんか悪夢みたわぁ……何その顔!? 大丈夫?」

「ははは……私も随分と熱量のある記憶を見ましたよ」

「……二度寝する?」

「出来るか!」

 

 

 

 





お前、本当にFate世界線のキャラか?となっている
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