大惨事聖杯戦争 with リリス 作:箱イベ・10周年備えなし
話は一段落した。英霊から、協力の言葉をもらえたなら、それだけで十分すぎる成果だろう。足並みを揃えることができた安堵から深く椅子に腰を下ろす。
けれど、バーサーカーは俺と違ってまだ話したいことがあったらしい。ねえねえと言って聞いてくる。
「この電車って……どこに向かってるの?」
「ああ、そうだった。まだ言ってなかったっけ?」
「うん。正直、電車に乗るのが目的かと思ってた」
「まさか。ちゃんと行き先がある。君に渡したいものがあるんだ」
電車の行き先に親指で指を指す。バーサーカーはふーんと返事をした。……座り方が綺麗だな。結構真面目な奴である。
電車に乗りたいという気持ちは……少しだけだ。本音はちょっと遠いから利用してるだけ。後、その間に人目につきたくないからし。他の奴に追跡されても困るし。
「渡したい、もの?」
「ああ、…………気に入ってくれると思う」
終点まで辿り着いた。山中の車両庫である。思った以上に着くのに時間がかかってしまった。なんと、一刻乗りっぱなしである。
当然、ずっと車内は暇だったのでバーサーカーと二人で遊んでいた。
お互いに気になることを聞く、どんな生活をしていたのか。マスターとして英霊の能力把握や出来ることを聞いたりもしたがおしゃべりの方が多い。
俺からは現代の娯楽の話をした。ご禁制のポケットラジオを聴いてみたり、最近見た映画の話をしてみたり。結構興味深く聴いてくれていたと思う。娯楽に興味があるようで何よりだ。
リリスからはリリンについて聞いた。どうやら彼女は生前についてあまりいい思い出はないらしく、聞かれても困るらしいので。リリスの一日に生み出す百を超える悪魔、リリンについて詳しく聞いた。
「こんにちは〜」
なんて、魔力を使った瞬間小さい悪魔が目の前にいてびっくりである。普通に知能もあり、飴をあげたら喜んでくれた。子供は甘いものが好きだからな。
車内から外に出てずんずんと山の中に入っていく。整備されたわかりやすい道などそこにはない。けれど、波長の整った魔力が流れており魔術師ならすいすいと目的地に進めてしまう。
歩き続けるとそこには寂れた小屋一つ、ぽつんと建っていた。人がギリギリ住めそうな外見のものである。バーサーカーはその小屋を見て怪訝な顔をしたが無視して小屋の扉を開けて、中へと入っていく。
中は意外にも整った状態である。電気の灯りがついていて椅子に一人、男が座っている。十字のネックレスをした作業着の男だ。男は俺が来たことに気付き、椅子から立つと足元のカバンを差し出してくれる。
カバンを手に持ち、そのまま外に出る。受け取った時点で契約はもう終わっているからな。ここに来た要件はおしまいである。
しばらく歩いて、街全体を見渡せる高所へと出る。ここからはさっきまでいた街が全域見渡せる。ありふれた街の様子が、とても綺麗に感じた。
「……マスター? 結局それ何?」
「コレ?」
バーサーカーにはさっきまで霊体化してもらっていたからな。男……教会関係者に見られるわけにはいかないし。教会には結構高額な寄付を繰り返しているから、個人的には良い関係を築けていると思うのだが……リリスは、見せちゃダメだろう。
カバンの中身を開ける。
リリスはうげぇと顔を歪めた。
「はい、コレ。プレゼントフォーユーだ」
「本気で言ってんの、マスター!?」
割と本気の殺意を感じる。けれどそんなものは無視して……聖別済みの三枚の護符を彼女に押し付けた。
刻まれた天使の名はセノイ・サンセノイ・セマンゲロフ。彼らの名前が書かれた幾何学的な模様の紙束だ。これはリリスという存在にとって大きな意味を持つ。
かの天使は、かつて神がアダムの願いに応えてリリスへと遣わせた天使たちの名だ。
リリスは、アダムとの確執がある。男女平等を望んだ原初の女。婚約者にも、神にも、従う気はないと楽園から飛び出した彼女は自由を手に入れた。
けれど神はその状況を当然良しとせず、リリスに対して「逃げたままでいるなら、一日百人の子供を産ませ、殺す」と脅されている。
普通なら従うだろうに、この女の凄いところは「やってみろ、そんなことをしたら逆にアダムの子供を永遠に殺してやる」と逆に脅し返したところである。
実に胆力のある女性である。文字通り神をも恐れぬという奴だ。
まぁ彼女は悪霊とか精霊とかアダルト・リリーとかそっちの要素が強い。サーヴァントなんて弱体化した身の上だし、令呪もある。
魔術師だろうと制御可能────
──だからこそ、慢心はしない。万が一を残したくなかった。対策は必要だった。バーサーカーにこの神話が再現されていたとしたら、大問題である。
そこで、大っ嫌いだろうこの護符を大層な金額払って用意させたのである。
──「三人の天使の名が記された護符を目にしている限り、リリスは子供に危害を加えない」という伝承がある。
リリスは嫌々に護符を持っていた。なんならステータスがダウンしている。
彼女は思ったより普通の女であった。悪魔らしいところはあるが、それでも理不尽に災禍をもたらす存在ではないと触れ合っていて思う。
こういう人には幸せになって欲しかった。魔術師としては余計なちょっとした善意である。みんな幸せになれば良いなんてのは無理でも俺と少しでも関わった誰もが、仲のいい奴が平和で幸福であってほしいと思うくらい許してくれ。
リリスには、その想いを寸分なく伝える。彼女は俺の真剣な言葉を聞いて顔を赤くしながら納得してくれた。
…………ダメだな。
やっぱりダメだ。俺は、彼女に聖杯戦争期間くらい楽しんで過ごしてもらいたい。これからどう転ぶかわからない殺し合いへと参加するのだ。嫌な思いもするだろうがせめて、過程くらいは楽しんでほしい。現代を見て、人と関わって。生きていく上で重要な大切なモノを増やして帰ってほしい。
足を前に出し、リリスの持つ護符を右手で奪うように握りしめる。何が何だかわからないだろう。呆けた彼女の顔を見ながら、俺は奇跡を実行してた。
「────令呪を使う。三画全て、三つ束ねて主命を捻じ曲げる。…………リリス」
「一度、過去に囚われず前に進め。──
命令と共に護符を破く。途端、強い光が辺りを照らす。リリスの霊基が目の前で作り直される。始まりの女は切り離されて……夜の魔女の要素だけが残った。
反英雄が、完全な形で顕現する。聖杯で呼び出された存在としては、あり得なかった奇跡。
彼女が、遠くに見える夕焼けと重なった。素敵だった。これまで見てきた全ての絶景を優に超えてきた。
リリスは笑い、俺は笑う。ユダヤ伝承を切り離した彼女に魅入るなんて俺は完全に悪魔信奉者だ。
「気分は……?」
「いいね」
「今なら、夜が全部私のものだ」
暗くなるまで、お互いに笑い合った。
楽しい時間は過ぎて、空は神秘的な紫に色に染まる頃。そろそろ本拠地に帰る予定だった。
「さて、バーサーカー。忙しく──!? なんだ……! 今の爆発音!?」
ご機嫌で彼女に帰ろうと言えば、大きな爆発音が鳴り響いた。音が鳴る方を見れば視界から左奥、大きな黒煙が立ち昇っている。尋常ではない様子に、全身が緊張する。
「もしかして、もう始まったのか? ……まだ夜も浅いだろうに!!」
そうだとしても、はっきり言って愚行だ。魔術師としてあり得ない。神秘の秘匿をものともしない行為。だが、偶発的ならうまく横槍を入れられれば、こちらにとって有利になる。
問題には、常に早期に動くべきだ。時間が経てば、それだけ厄介度は増していく。経験則でわかる。
リリスに……バーサーカーに抱えてもらい現場へと向かう。英霊の移動速度は破格だ。けど、横抱きはやめてほしい。誰にも見られていないけど、なんか恥ずかしい。
事態を引き起こした犯人の元へ、俺たちは向かう。これが、後の聖杯戦争開始の合図。爆発が起こったこの瞬間から普通ではない異常な、超人同士の殺し合いの舞台へと正式に上がることになる。
令呪を使わないと型月新規がいきなりHF見せられた気分になると思うので……無理矢理でも捩じ込む。
できたらそのバージョンも書きたい。
──
───
────
・リリス(マスター:アグド)
《スキル》
輝く夜のように EX
踊る翼のように A+
醜い恋のように A
《クラススキル》
狂化 EX
神性 E
憎悪 D
《ステータス》
筋力 C
耐久 B
敏捷 B
魔力 A+
幸運 A
宝具 EX