大惨事聖杯戦争 with リリス   作:箱イベ・10周年備えなし

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本作は読んでの通り、第三次聖杯戦争の穴埋めをしながら独自に再構成したものなのですが……ネットで探し探し書いてるとfakeのファルデウスはアサシンの人形師のマスターの縁者ではみたいな情報が出てきてしまった。
── 人形使いの魔術師の家系出身。冬木の第三次聖杯戦争に参加したアサシンのマスターの縁者でもあり、人形に刻んだ当時の聖杯戦争の『記憶』が一族に広く伝わっていた。(wiki調べ)


巡り巡って軍に協力してる戦争大好きな血筋が完成してる……!?別にいっか



5話

 

 

 

 聖杯戦争の開始の合図が出た。

 

 火の粉の舞い上がる物騒な夜に始めるとか、なんとまぁ騒がしい出し物だ。

 

 開始の宣言を出したのは最近冬木教会に着任した聖堂教会……第八秘蹟会の若い司祭、言峰璃正である。

 

 謙虚かつ真面目な人物なのだろう。火事騒ぎの対処をしながら、魔術師にしかわからない暗号をばら撒き監督役としての任を全うしていた。

 

 使い魔越しに見るせこせこと忙しそうに働く姿は、どこか哀愁の漂うものだった。

 

 

 

 

 

 

 風の噂で前回の聖杯戦争について知った俺は随分前から……それこそ半世紀前から現地入りして準備をしていた。

 

 一流の魔術師は手間を惜しまない。日の本の民は異人である俺に最初は嫌悪感を示した。けれどめげずに現地の言葉を学び、尊敬の精神を示し、ルールに馴染もうと努力をすれば三年もせずに認められることとなった。

 

 若返った俺は、さながら老いた俺である『儂』の孫と言ったところか。名物外人さん一家ということで可愛がってもらってる。

 

 

 魔術師は手札の多さがものを言う。俺の手にした手札……ご近所様方の耳の良さというのもバカにはならない。

 

 

 こんなピリピリした世界情勢だと言うのに、何故か来日する異人の多いことといったら。いくら暗示で忌避感を消せたところで違和感というものはそう簡単に消えない。

 むしろ、暗示の効かない俺からすればご近所の奥様から聞いた都合のいいすり替えられた現実とそれまでの事実を比較して隠したいところが丸わかりである。

 

 

 集めた情報を雇った事務員に機械を使わせ整理させる。貰った資料をこちらで暗号化しながら確認をしていく。粗方、相対する存在の目星がついた。

 

 

 マスターの存在。英霊らしき目撃情報。聖杯戦争の仕組み……あと色々。

 

 

 逆に情報が多すぎて取捨選択で困る事態となった。贅沢な悩みである。

 

 

 

 

 

 聖杯戦争は英霊を呼び出し、最後の一人が残るまで殺し合わせるバトルロワイヤルである。

 

 

 基本的にはルール無用なのだが。当然神秘の秘匿には最大限気をつけること。自分は根元に辿り着けるからいいやと後先考えない振る舞いは許さない。

 

 聖杯は黄金の器をしているらしい。第二次に参加した弟子が情報を残してくれている。その弟子はアサシンに無惨に殺されているが。……霊脈に固定した大規模礼装とかの類ではなく手に取れるものなのか。

 

 

 また今回の聖杯戦争から追加された要素がある。それは魔術教会と聖堂教会の参入と令呪の追加だ。

 

 

 前者は大雑把な殺し合いでは円滑な儀式の遂行が出来なかったのだろう。厄介な連中の介入を許すことになった。

 

 後者は……件のマスター全滅騒動だろう。サーヴァントの手綱を確実に握ることができる命令権。そのほかにも魔法に等しい奇跡を行使できるようなのだが……それは俺がリリスに試した通りだ。霊基の仕組みが変わった。噂は本当だろう、ぶっちゃけ信用してなかったけどよかった。基本的にはマスターの方が立場上、上であると示す聖痕だろう。

 

 …………令呪って、サーヴァントにとっちゃペットのリード見せつけられるようなものでは? 明らかにプライドを刺激するし持ってたら別の不和を起こしそうだけど、魔術師なら気にしないか! 

 

 

 そんなことよりも今は聖堂教会に注目しなければならない。

 

 俺たちの陣営にとって、一番邪魔になるのは正直コイツらだ。

 

 ページをめくり、数枚の資料を見ながらアグドは考える。

 

 ──聖堂教会。

 

 十字教信仰の宗教暗部、あらゆる異端の排除を目的とする活動団体である。組織としての力は当然強い。

 

 監督役の所属している第八秘蹟会は諸国に散った聖遺物の回収をしているし、()()なんて名の付いているもの、教会としては与太話だとしても目をつけて当然だろう。

 

 もし本物ならどう動いてくるだろうか……言峰璃正本人はたぶんだけど、横から掻っ攫うようななりふり構わない狂信者じゃなさそうだし気にしなくても良さそうだな。

 

 

 …………にしても、いくら敗退したとしても聖堂教会に守ってもらおうと思うマスターなんているはずないだろ。魔術師が教会に対する信頼って負のものしかないし。

 

「なに見てんの、アグド」

「ん? ……今回に限っては面倒臭い奴らの情報。お前を表立って活動させてやれない理由だな」

「うげぇ」

 

 

 近くでソファーに寝転んでいるリリスが聞いてきたので、資料をバサバサと振ってやる。嫌そうな顔をして顔を背けたので資料の中身を見る気はなさそうだ。爪を磨いて暇を潰している。

 

 

 令呪による命令をしてから、リリスの悪霊要素がグンと強まった。『男たらし』の理想の女。魅力がグッと上がり、操る風と闇が強くなっている。邪悪な魅力もアップである。彼女は見た目からして教会が目の敵にしてる悪魔そのものだし、見つからないように注意しなければいけないな。

 

 

 いや、ジッと見てたからって用はないよ? 本当だよ? 

 

 用はないのに近づいてくるのは何? めちゃくちゃくっつくじゃん。魅了が凄いんだよ、昼から誘惑しないでくれ。……ねぇ、その薄着で近寄ってくるのはなんなの? 誘ってるの? 

 

 頬赤く染めないでくれ、こっちまで恥ずかしくなってきた。

 

 お互いに目を逸らした後、アグドはまた情報整理に没頭した。

 

 ──当分、リリスには家の中で大人しくしてもらうことになるかもしれないな。そうアグドは思いながら。

 

 ───

 

 北欧、フィンランドに居を構える名家。宝石魔術の大家たるエーデルフェルトは、今回時計塔の参加枠を勝ち取ったふた枠のうちのひと枠である。

 

 世界中の争いに好き好んで介入し、美味しいところを掻っ攫う。秘法や魔術礼装を簒奪して成り上がって来た「地上で最も優美なハイエナ」は極東の田舎儀式にも手を伸ばしてきた。

 

 

 自分の家柄に恥じない能力を持つと自負する()()。呼び出した英霊は聖杯戦争最優と名高い剣士(セイバー)のクラスであり、順調なスタートを切ることができていた。

 

 

 

「幸先のいいこと。極東なんて、余り期待せずに来てみれば予想を超える代物でしたわ。これならやる気も出ると言うものです。しかも名高いサーヴァントを引き当てるなんて、聖遺物を仕入れた甲斐があるというものです」

 

「そうですね、姉さん」

 

 

 二人は仲良く歓談する。一応、戦争中だというのにとてもリラックスした様子で飲み物を飲んでいた。姉は珈琲、妹は紅茶。その様子には、これまでも似たような戦さを勝ち抜いてきた自信にある。

 

 

「ご機嫌で何よりだとも、レディ達。いやはや、貴女方のような傑物がマスターとは私も実に頼もしいことだ」

 

「嬉しいこと言ってくれるわね、流石私の剣士(セイバー)ね」

 

 

 横から口を出してくるのは美形にして、高身長の男性である。金髪碧眼、英雄としての存在感を感じさせながら、親しみやすい雰囲気を醸し出す魅力的な優男だ。瀟洒なスーツを着こなして余計に魅力を放っている。

 

 

 剣士、と呼ばれた男は主人を見て笑う。

 

 

 赤いドレスを着た姉は自慢げに笑い、その様子を見た紫のドレスを着た妹は、はにかんだ。

 

 

 

「さて、ではどう攻めるつもりかなマスター? ()は、貴女の指示に従おう。君たちに勝利を届けてみせるとも」

 

「当然です、セイバー。貴方には期待しています。どうか裏切らないでくださいまし? ……それにしても」

 

 

 三人は、使い魔で見た夜に闊歩する人形兵を思い出す。火事騒動で民衆が混乱している中、どこかのマスターは大量の戦力で先手を打ってきた。対応の速さ的に一連の騒動は人形主が起こしたのだろう。気の早い者もいたものだと呆れるしかない。

 

 

「なんとまぁ、下品な戦い方ね」

 

「同感です。……魔術師らしい優雅さも、誇りも感じさせない手動人形(ワンマンアーミー)。手腕は実に見事ですが、それだけですね」

 

「そうね、すぐにでもエーデルフェルトの鉄槌を下してやりましょう。セイバー、気を引き締めなさい。今日の夜は初陣となるでしょう」

 

「なるほど、わかった。準備を整えておこう」

 

 

 セイバーはそう言って霊体化する。姉妹は、向き合って会話を続けた。

 

 

「ねぇ、貴方のセイバーの様子は?」

 

 不思議な言い回しだった。

 

「……まずまずです。複雑な指令こそ出せませんが一対一なら脅威かと」

 

「なるほど、なら二対一なら不敗ですね」

 

 まるで、セイバーが二騎いるとも取れる言い回しをしあう。姉妹はお互いに未来を想像して笑い合った。

 

 

「「私たちは、エーデルフェルト。その名に賭けて負けはない」」

 

 

 

 

 

 ───

 

 

 リリスは下手に表に出せない。

 

 これが、俺の結論である。

 

 厄介事の種になる。それは俺も、リリスも望んでいないことだから。

 

 真名だけでなく、その姿すら隠さなければならないサーヴァントというのは俺にとっては面白い。

 

 

 普通のマスターならストレスで禿げそうだが、どうとでもしようがあるというものだ。能力自体は強力だしね。

 

 とりあえず待機を命じて、使い魔で情報収集の日々となるな。

 

 なんで外に出ちゃダメかと問われれば、狂戦士故に魔力消費が重いから出番は慎重に待っていてくれと言いくるめよう。

 

 

 

 

 三日、立った。

 

 

 聖杯戦争は実に賑わっていた。

 

 ──闇夜に蔓延る手動人形。

 

 ──路地裏軍警暗殺事件。

 

 ──エーデルフェルトの華麗な人形殲滅。

 

 ──ぶつかり合う、剣士と槍兵。

 

 

 

 特に最後のは見どころがあった。懐かしい……これほど激しいぶつかり合いは何百年ぶりに見ただろうか。これは、弟子も死ぬわけである。

 

 

 その中でも一番、興味を持ったのはこれだ。

 

 

 ──剣士と槍兵が争う中、突如として漁夫の利を狙いに来た弓矢の攻撃。

 

 

 推定三騎士、揃い踏みである。そして今回の聖杯戦争で今一番有利に戦えているのは、この街一番の楼閣に立ち隅から隅まで撃ち抜いてくるこのアーチャーだ。

 

 何と言っても、やけに攻勢に強いのだ。視野が広く威力もデカい。コイツの目に止まれば人形も使い魔も穴を開けられる。現に俺の使い魔もダメにされた。英霊でも弓矢が綺麗にハマれば最後一方的に射られて終わる、目下最大の脅威である。

 

 

 

 決めた。コイツをリリスの初陣にする。

 

 

 闇の魔女に数日、仕事を待たせたのだ。今頃、暴れたくてうずうずしてることだろう。

 

 

 ──闇に紛れて風に乗り、一人いい気になっている弓兵をぶっ殺せ。

 

 

 

 俺から、バーサーカーに対する聖杯戦争初めてのオーダーである。

 

 きっと、笑って実行してくれるだろう。

 

 

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