大惨事聖杯戦争 with リリス 作:箱イベ・10周年備えなし
冠位狂、スコア埋め終わりました
魅了弾くな、ヘラクレス
演出長いぞ、ヘラクレス
──ついでに人類の脅威になってくれ
バーサーカー、ようやくの外出解禁である。
夜という最大に能力を活かせる環境で、闇に紛れて風に乗る。弓兵に気付かれないように慎重に距離を詰めていく。近づくのは、思っていたよりも余裕そうだった。彼女の見ている視界を覗き見ながら様子を確認する。
貰ってばっかりは癪なので、少しは何かを返しておきたい。闇の精霊的に、少しくらい仕事をしませんと、なんて。恩に慣れていない女は見事に返報性の原理にハマっていた。
そうなることを少しくらいは期待していたけれど……なんとも律儀なものだと思う。甘えることに慣れていない。甘える場合は自分優位な時でありたい、せめて対等……そこ在り方は、生きることに絶望的に向いていない。きっと、そういう切羽詰まった環境でしか生きてこなかったのだろう。
夜を移動する一つの影。バーサーカーは、これまでについて考える。
聖杯戦争について、自分について、
敵については興味ない。どうせ、やることは決まっている。弄んで殺すだけだ。
それより気になるのはマスターから聞いた、聖杯戦争の概要だ。
生前叶えられなかった傑物が、未練を解消する為に召喚に応え、他者を打ち破って願う資格を手に入れる場所。
何故、私はそんな場にいるのだろうか。呼ばれたことには何か意味があるのだろうか。
私の記憶には何も無い。砂と嵐、闇と死。本当に少しだけこびりついた昔の思い出だけ。
そんな願う余地すら無い、白痴の頭で何に手を伸ばしたのか?
私は、興味を持ってしまった。
また、英霊の座には時間の概念がなく、英霊は今ではなく未来で願望を持つことがあるのかもともマスターは言っていた。
未来の私は、何かを願ったのだろうか。自分のことなのに不思議なものだ。
「……楽しいな」
バーサーカーはその時、柄にも無い純粋な笑みを浮かべた。
もう一つの走る理由はマスターだ。
使い魔として命令を下そうともせず、対等の存在として目線を合わせてくる男性。エスコートなんて受けたことはなく、男性と一夜以上を共にすることが珍しい私にとって隣にいても苦にならない人だ。
一度、家の家令に聞いたことがある。若く、綺麗で利発そうな子だ。彼は一体、どういう人なんですか?と。彼女はクスリと笑った。メガネの奥の赤い瞳が私を見て楽しそうにしている。馬鹿にされたと睨んでやっても口で謝るだけでまだ笑い続ける。
「旦那様について、よくそのような質問をされるのです。私も以前拾われてこの屋敷に来た時は驚きましたよ……女はこうあるべきといった価値観に囚われない不思議な方です。私もこうして働けているのは旦那様のおかげですしね」
彼女も女性でありながら、この屋敷と資産の管理を任されている。当人的には「女性を舐めるとか三歩下がらせる趣味はないよ……あんな経験しておいて見下せないし。というか三歩後ろ歩かせたら刺してきそうで怖い」と返されたそうな。何それ、怖い。
使えるものをちゃんと使う。彼の信条らしい。物でも人でも、あるようにあることを気に入っているとか。私にも、そうして欲しいのだろう。
同じ目線に合わせてくれて、
何処かを見ている、アーチャーの姿。近くにはマスターらしき存在はいない。折角の好奇、活かし切らねば勿体無い。
【
「なっ!?」
弓兵を起点に大きめの竜巻を発生させた。荒れ狂う暴風に魔力を乗せて確実に仕留める威力へと仕上げた。不意打ちとしては完璧、
「……やってくれたな、卑怯者!」
「──なに、その盾!?」
の筈だったのだが、アーチャーは健在である。
紫の花びらを思わせる魔力の盾がそこにはあった。おそらく、宝具。宝具に被さり風が止むまで耐え切ったのだろうが、それでも損傷は隠せない。
殺意を隠さない瞳で、ボロボロな身体を手で払うアーチャーに睨み付けられる。
「この俺様に悟らせずにここまで、近づいてくるとか……オマエ、アサシンか?いや、違えなぁ。そこまで繊細なことできそうなツラしてねぇわ。……オマエ、バーサーカーだな?」
「うわ、単純に失礼!?」
思わず、言い返してしまうが思考は冷静に詰めていく。ビリビリとした覇気、会話のペースに乗せて戦の流れを取ろうとする天然の会話術なのだろう。有利はコチラ。焦ることなくボロボロにしてやろう。
にしても、英雄……全然効いていない!?バーサーカーはそっちの点で少し動揺をした。
今の彼女は、女性の魅力の体現者である。
優れた魔性が目を合わせるだけで存在を魅了するように、夜の彼女はその姿をかけらでも見ているだけで魅了する。
よっぽどの精神力か対魔力でも無いとダメなのだ。近づかれれば骨抜きにされ、精気とともに魔力を吸い出されて堕ちてしまう。
すぐさま彼女の肢体に目線が行く。身体を走る
声が聞きたい。──そう思ってしまった時点でもうダメだ。
私を見て欲しい。──取り返しのつかないところまで堕ちている。
人知無能。知覚できるというのに決して理解し尽くすことの出来ない深淵だ。そんな危ない悪魔の
──けれどそんな、例外が溢れているのが聖杯戦争だ。
目の前の男にはどうにも魅了が効いていないようだ。英雄としての精神性に対魔力、揺るがない芯がブレることを許さない。
本気を出せば落とせるだろうが……それはたった一人の相手に付きっきりになるということ。戦場でそんなことはしたくなかった。
少し悔しいが、堕とすのは諦めて素直に戦う。
何もないところからハサミを取り出す。自分の身長の倍以上はある凶器。相手に突きつけると凶悪な笑みを返してきた。
「いやーいい夜じゃん。調子どう?てことで殺すわ」
「やってみやがれクソオンナァ!」
盾を消して魔力にし、即座に弓を引いて迎え撃つアーチャー。けれどこの至近距離で引かせてやるつもりはない。一方的に殺してやる。
風を操り逃げ場を無くす。ハサミを手に取り二つの両刃剣にして距離を詰める。必中の距離での
「がっ!?!!」
「オラァ!」
アーチャーは絶望することなく、したり顔で笑い突如、弓を捨て徒手空拳で顔を狙い出す。リリスはギリギリのところでその身を翻して拳を回避した。身体捌きがやけに上手い。さっきの動作は誘いだったのか。けれど、遅い。この距離からなら攻め殺すことができる。
刃を浮遊する円刃へと変形させて押し付ける。その間にまた闇に身を隠し、風を飛ばす。
拳ではガードしてもダメージを喰らう猛攻を受けて、アーチャーは守りに徹するしかできなかった。再び盾を呼び出すには距離が近過ぎる。
──やられたな。
人型と油断して、特殊な能力に翻弄される末路。アーチャーは己の失策を笑った。だがこんなのは窮地でしかない。絶死には程遠いと己を奮い立てる。
魔力を内に溜めてチャンスを待つ。風が弱くなる一瞬を、攻撃が緩くなる一瞬を。弓兵としての己の感覚を頼りに機を待っていた。
悪魔は嗜虐に身を任せ、憐れな英雄を見て嗤う。
夜の魔女に油断は無い。正面からの戦闘は得意ではないが、人を見る目は確かにある。
目の前にいる敵はまだ諦めていなかった。一方的な攻めを許しておきながらその心には余裕があった。なら、その余裕をボロボロにしてやろう。男を疲労からの解放に誘う。生を
攻撃は緩くなるどころか、強まる一方。アーチャーはそれでも耐え忍ぶ。戦争に比べれば、この程度マシだと攻撃を捌く。
月が空へと昇ってきた。青白い光は両者を照らす。
その時、ツキは巡り出す。
宝具でも使うべきではないか?とバーサーカーが考え始めた頃。このような序盤で使ってしまえば後先が無くなるという不安で使用が遅れたその瞬間。
一騎の介入者が現れた。
それは、翼の付けた鎧兜を纏った戦士である。
それは、戦場をかける勇者である。
腰に剣を靡かせて、男は……有利な状況にあった女悪魔を剣を抜いた。戦況が一変する。
アーチャーはチャンスに、己の機転が利いたことに感謝した。
「すまねぇな、バーサーカー」
全く悪びれもしない様子で、攻められている女に話しかける。ご丁寧にクラス名を唱えることで剣士に情報を提供するおまけ付きだ。
「実はさっきまで監視してたセイバーなんだが、こっちの位置バラしちまった。どうか楽しく殺し合ってくれ、俺はその間に帰るからさ」
アーチャーは夜中、集中して街を見ていた。だからこそバーサーカーは楽に奇襲が出来たのだが……なら、誰を見ていたのか。監視するなら誰がいいか。一番コトを起こしそうな奴だ。一番強そうな奴だ。一番面倒そうで、動かれたら困る奴だ。
聖杯戦争最優と名高いセイバーを目で追い続けていた。
アーチャーが合図を放ったのはあの時。弓を構えて、近接を誘った時である。手放した弓矢は一瞬の間に剣士の元へと放たれた。格闘で気を引き、気づかれなくするおまけ付きである。結果、漁夫の利を狙う形で消耗の無いセイバーが乱入してきた。
アーチャーは一方的に喋り、一目散に逃げ出した。現場にはセイバーと向き合う自分である。最悪だ。
真正面から勇者と向き合う愚行。夜の魔女は一変して窮地に陥った。
「マスターの為に貴様と戦おう。嫌と言ってくれるなよ双刃使い」
お構いなしにセイバーは語りかけてくる。コイツも魅了の効きが悪い。ふざけんな。
「今宵の試練も乗り越えよう。この
雄弁な掛け声と共に突っ込んでくる銀の勇者。やけに夜風が冷たく感じた。
アーチャー(マスター:遠坂)
《スキル》
カリスマ B
心眼(真) A
千里眼 C
《クラススキル》
対魔力 D
単独行動 E
《ステータス》
筋力 A
耐久 C
敏捷 C
魔力 C
幸運 B+
宝具 C