大惨事聖杯戦争 with リリス   作:箱イベ・10周年備えなし

7 / 15

連続投稿である。
そろそろ序盤も終わりそう。
みんな大好き、アイツです。


7話

 

 

 ──失われた()()()()を求める大魔術師。ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンは召喚の結果を確認し、今回の聖杯戦争を諦めた。

 

 

 アハト(現在で四台目だからフィーアなのだが)は錬金術の大家であるアインツベルンを管理する人間型端末筐体を操る、城の中枢制御用人工知能である。前回の第二次聖杯戦争から関わっている重要人物だ。

 

 永久に稼働し続けるオートマトン。そんな彼の望みは聖杯戦争に勝利すること。そして失伝した魔法を取り戻すことのみ。それだけを常に考え続けている。

 

 

 毎度聖杯の器たる小聖杯を作り出し、儀式場である冬木に運ぶ。同時に家のものが参加者として勝ち抜くために様々な手練手管を用いて有利を得ようとしている。

 

 莫大な資金を元手に周到な用意を繰り返しているのだ。聖杯戦争に対して、彼に並ぶ熱量を持つ関係者は間桐の御老公以外に存在しない。遠坂さえ及ばない。

 

 

 今回彼が必勝のために考えた策は、神霊の召喚である。

 

 

 神霊の召喚……普通は不可能である。そもそもそれができるのであれば聖杯など必要ないと言えるほどの奇跡。しかし、実行できてしまえるのならば隔絶の切り札となる反則である。

 

 

 アハトは聖杯戦争のルールに介入、ルールには存在しない……当てはめられない()()()()()のクラスを召喚する改変を行うことで無理やり呼び出そうとした。あえて不定形の型を作り出すことで既存から大きく離れた存在を呼び込むのである。

 

 神に近い存在を呼び出し、制御できるかは不安があるが目的のためには全ては些事。結局、召喚を決行した。

 

 結果召喚されたのは今まで見てきたサーヴァントの中で最もか弱い、人と同じほどの力を持った黒いモヤであった。

 

 

 直ちに呼び出した境界記録帯の能力を共有させる。もしかしてそのスペックは見た目によらないものかもしれないという最後の希望すら虚しく、見せられたものは衝撃的だった。

 

 

 筋力 E

 耐久 E

 敏捷 E

 魔力 E

 幸運 E

 宝具 C

 

 

 全身の三割を魔術回路で埋めたホムンクルスをマスターにしてもこの程度。悲しい程に最弱である。

 

 

 

 悪神アーリマン。この世全ての悪(アンリ・マユ)と呼ばれる本来御三家が根絶させたい業を呼び出したのは何の因果だろうか? 

 

 すぐに名前だけは優れた幻霊への興味をアハトは次の聖杯戦争を勝ち抜く手段を模索する。目の前の現実に目を向けずに、節穴の目で目的しか見ずに直走る。

 

 もし正常な判断が出ていれば、聖杯への危険性を考えられただろうか。どのような縁で呼ばれたのか因果関係を考えるには至っただろうか。

 

 

 結局、そんな事はなく期待外れの英霊とマスターのホムンクルスは聖杯と共に冬樹に送られる。純然たる願いを押し付けられた人身御供のただの人間は人を殺す呪いだけを秘めて日の本に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにだが、ウチは結構金持ちである。

 

 

 魔術師たるものお金を稼げなければ論外というか、真に優れた魔術師は自身の研鑽のために莫大な財を稼ぐのである。自分磨きに命をかけているのが魔術師だ。

 

 俺の場合は子孫からの仕送り、弟子からの未払い指導料と研究材料の返済利子だけで食っていけるがそこに長年の資産と高価な嗜好品の商売でウハウハである。

 

 

 ということで、生活に何一つ不自由しない。ハウスキーパーの類いも雇っているし、毎日の暮らしは実に快適なものである。

 

 

 そんな生活を送ることに我がサーヴァントは慣れなかったらしい。

 

 

 

 

 

 帰ってきてからリリスがずっとそわそわしてる。

 

 

 悪魔らしく我儘を言う時もあれば、かまってくれとせがんでくる時もある彼女だが。ここ最近はそれもなく、自分の時間を持て余していた。

 

 

 それもそうか。アグドは一人、彼女について考える。

 

 

 

 悪霊リリスは夜に人から精気を奪う怪物だ。原初の女としての彼女ならともかく、夜の魔女の彼女は日々を転々と移動しながら過ごしたのだろう。

 

 

 それは、過酷な旅の日々だ。夜に紛れて風に乗り、男と子供を誑かす。その繰り返し。とつぜん世人からは恨まれ忌避される。きっと安住出来る場所など、出来ることはなかった。

 

 

 

 だからこそ一箇所にこれほど留まっている、ということが初めてなのだろう。故に不思議な気持ちに陥った。アグドには、その気持ちが痛いほどわかった。

 

 

 他にも考えられるのはリリスは一日に百を超える悪魔、リリンを生み出す。彼女たちは悪魔らしく大変お転婆だったのだろう。

 

 それを全て、面倒見きった彼女は人類史が誇る死の母(デス・マザー)だ。

 

 その負担を俺が、令呪で断ち切った。今の彼女は誰にも左右されず彼女の意思でリリンを生める。

 

 子供と共に移動を繰り返す人生を送った彼女は、子育てしない環境に慣れていない……毎日ってこんなに楽だっけ? と混乱しているのだろう。ハウスキーパーに仕事を手伝わせて欲しいと冗談めかして相談していたのを見た時は不覚にも笑ってしまった。めっちゃ睨まれたけど許して。

 

 

 家の掃除をしたいと請う、魔女など可笑しさの塊だ。

 

 

 もちろん、ハウスキーパーは「奥様には任せられません」と言って断っていた。彼女にとっては仕事を奪われるに等しい願いだからな。というか奥様では無いぞ、相棒だ。刎頚の交わりでもある。

 

 

 外には聖堂教会の関係者がウジャウジャといるからな。見られるとまずいから俺が出るな、出るなら隠蔽のお守りでも付けていろ、と言った約束を守ってくれているのだ。約束事はしっかり守る、律儀で可愛い悪魔である。

 

 

 そんなこんなで、外に好き勝手出られず今の暮らしに馴染めないリリスはしょっちゅう俺のところに来ては暇を持て余しているのである。

 

 

 

 

 

 リリスは現代をよく知らないので色々体験させて見せている。今回もその一環、地下室の隠れ遊技場に連れてきた。隠れ遊技場(業者がよく掃除に来る)なのだが。

 

 

 中央にどーんとビリヤード台。他にはダーツ台が二つ。奥にはギャンブルに使える大きな細工テーブルが存在し隅っこには黒いピアノが鎮座している。遊んでばかりでは疲れるため、休むためのバー風の場所。後いい感じに観葉植物の模造品(レプリカ)を配置してある。

 

 

 リリスは目を光らせた。結構何でも好きな子だよな。それでも喜んでくれて嬉しい……うん、我ながらいい感じの場所である。

 

 

 まずはビリヤードに誘ってみる。ルールはナインボールでいいだろう。適当に打って辺りに散らした的玉に狙いを付ける。キューで撞いた手球は俺の望む方向より少しズレてしまった。久しぶりならこんなものだよなぁと言い聞かせる。

 

 

 今、初めてのビリヤードに腰が引けてるリリスに質問をした。お、上手いじゃん……綺麗に一番がポケットに入って行った。

 

 

「さぁて、どうだった? 英霊どもと戦ったその感想は?」

「どうって、もう最悪っ!! あんなのさ、気の迷いでしかなかったわ」

 

 もう二度としないーと不貞腐れてるリリスを見て、昨日の夜のリリスの初戦を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 最初は上手くいっていた。どの陣営も迂闊に手を出せないアーチャーに奇襲を行い勝利一歩手前というタイミングでセイバーを呼ばれるという手痛い反撃を受けてしまった。

 

 

 現れたセイバーは万人の理想通りの勇者である。リリスに前口上を述べて、自身に呪文を唱えた後容赦なく襲いかかっていたのだ。

 

 

「やるではないか戦乙女!!」

「ッ!? ……めんどくせぇ〜今ちょっと男はオコトワリなんで! 英雄は死ね、勇者も死ね!!」

 

 リリスのスキル、輝く夜のようには間違いなくEXの輝きを放っているはずなのだが。この男には全くもって効いていなかった。さっきのアーチャーといい嫌になる。

 

 

 けれどそのご立派な耐性に比べてフィジカルの方は、微妙であった。

 

 手応えがあり過ぎる。見た目と比べて中身が備わっていない感じ。後でマスターに聞いてその理由がわかった。

 

 

 

 

「アイツら……エーデルフェルトは『姉妹』の特性を活かして二人で一組のマスターをやってるみたいだよ。アーチャーの方には、ホレ」

「何じゃこれ」

 

 

 記録があるから見せてやると映像が映し出される。それには泳ぐ巨大な水竜が傷を負ったアーチャーを追いかける様子があった。速度的にはそんなに注目するほどでもなかったようでアーチャーには逃げ切られている。

 

「硬いし、強い。夜の街を壊しながら進んでいくあのセイバー……セイバーがこっちを担当していなくて良かったな。大方、人型の方が傷の少ないこちらに柔軟に対応できると思って派遣したんだろうが、人型ならまだ有利が付く」

 

 

 バーサーカー(リリス)も大概だが、聖杯戦争ってこんなヤバいのばかりなのか? アサシンの暗躍祭りとは毛色が違い過ぎるぞ……と呟きを聞いてリリスも頷いた。

 

 英霊の側面を分割して運用しているのだろう。並の英霊なら脅威には決してならないが、並ではない英霊と優秀な魔術師が使う事でしっかりと強い二騎の盤面を整えていた。よくやるものだ。

 

 

「おれたちのほうは結局、セイバーからは碌に逃げられずにいた」

「闇に紛れてもすぐに見つけてくるし、何なのアイツ〜」

 

 

 そんなどうしようもない状況を打破した切り札が俺の下にいるコイツである。

 

 所変わって逃避行の記憶。今一つ振り切れずにいた状況が突然セイバーが止まる事で一変する。

 

 セイバーは異変の元凶を目で捉えていた。目線を追えばそこには黒猫。俺の使い魔である。

 

 

 

 アツィリ。静止の魔眼を保有する俺の使い魔である。可愛らしい黒猫だ。オスだ。品種はペルシャ猫である。赤茶色(カッパー)澄青色(ブルー)の目の色が多いんだが……ウチの子は両目真っ赤である。よく外で鳥を食べる時に重宝している。

 

 

 どちらからともなくビリヤードからダーツに移る。放置してても後で片付けてくれるし安心である。的に当てるのはリリスの方が上手く、一日の長的にめちゃくちゃ悔しい。

 

 

 勝ったというのにリリスは嬉しがる事なく、俺の顔を見て不安げに質問をした。負けた俺をアツィリが慰めてくれるからいいよ。

 

 

「結局、見せないようにしていた強力な魔力はその時使っちゃったけど。大丈夫? あんだけ、教会の心配を口にしてたし」

 

 

 撫でながらリリスの心配事に答えていく。おい、腹を見せても遊戯場でブラッシングはしてやれんぞ。ごめんな。その様子に察してしまったのか不満そうな声でなぁと鳴いて足元で寝始めた。

 

 

 

「俺の術で隠蔽してる。翼も見せていないんだ。問題ない。他のマスターも馬鹿ならそこまで考えないし、システムに詳しい奴が見ても狂化も相まって精々主人に唆されて性質の変化した反英霊程度にしか思わんよ」

「そっか」

 

 というか、令呪で性質は変化してるしその認識で正しいのだが。本来の機能からズレているしな……直球だがオルタとでも読んでみるか? まぁ本人も元の自分って奴がわかってないみたいだから必要はないか。一々お前は別モノって呼ばれてもムカつくだけだし。

 

 





セイバー(マスター:エーデルフェルト)

銀の勇者

《スキル》
勇壮なる導、巫女の呪歌 (グロー・ガルドル)A
直感 A

《クラススキル》
対魔力 A
騎乗 B

《ステータス》
筋力 C
耐久 C
敏捷 B
魔力 D
幸運 A
宝具 A


水竜 

《スキル》
怪力A
竜の炉心C

《クラススキル》
対魔力 C
狂化 A

《ステータス》
筋力 A+
耐久 A
敏捷 D
魔力 A
幸運 E
宝具 A
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。