ヤハタちゃんの青春ラブコメはできるのだろうか?   作:龍造寺

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第20話です。


第20話ー悪魔は駒を得て、にやりと微笑む。

 

総武高校・昼休み・2年F組近辺。

 

総武高校の2年F組の教室前、廊下の隅に立つ少年がいた。久保美津雄、2年G組の生徒だ。ボサボサの髪に寝癖、夏服のカッターシャツは妙に白く、ズボンは標準的な制服そのもの。

 

目立たない、どこにでもいる生徒――だが、彼の視線は、F組の教室に向けられ、じっと何かを探していた。F組には、グラビアアイドルの上条美紗希、バスケ部のエース麦野静乃、女王様気質の三浦優美子、その親友の由比ヶ浜結衣と、名前を挙げればキリがないほどの注目株が揃う。

 

だから、久保が廊下から覗いていると見られても、『あの女子たち目当てだろう』としか思われない。

 

だが、彼が見ていたのは、そうした陽キャたちではない。教室の隅、なるべく目立たないように縮こまる比企谷八幡だった。久保の視線は、執拗に八幡を追う。彼女が購買に向かうとき、教室を出る瞬間、友達と話す一瞬一瞬を、まるで監視するように見つめていた。だが、彼の存在感の薄さゆえ、誰もその異常に気づかない。生徒たちは素通りし、教師も気に留めない。久保自身、その「見えない」存在を利用していた。

 

 

回想・6月末・市内・昼間・とある書店。

 

とある書店久保美津雄が八幡を付け狙う理由は、6月末のとある書店での出来事に遡る。その日、久保は本棚の陰で、漫画雑誌をカバンに滑り込ませようとしていた。万引き――彼にとっては、初めての行為だった。緊張で手が震え、周囲をキョロキョロ見回す中、背後から冷ややかな声が響いた。

 

【ねえ、あなた、そこで何してるの?】

 

久保が振り返ると、茶髪にピアス、制服をだらしなく着崩した女子が立っていた。怒級高校の2年生、塵山絵里だ。スカートの丈は短く、屈めば下着が見えそうなほど。丁寧な口調だが、目は嘲笑に満ちている。

 

彼女は、八幡や材木座義輝の中学時代にいじめの主犯格だった人物だ。中学での不祥事が原因で転校し、海浜高校の受験を諦め、怒級高校に進学した過去を持つ。

 

【あ、う、うそ、違うんです!】

 

久保の声は震え、弁解しようとしたが、絵里はニヤリと笑う。

 

【ふーん、万引きね。店長に言ったら、どうなると思う? 警察? 学校? 親? あなた、人生終わりたくないでしょ?】

 

久保の顔から血の気が引く。絵里はそんな彼を値踏みするように見つめ、提案した。

 

「私、黙っててあげる。その代わり、私の言うこと聞いてもらうだけ。簡単でしょ?」

 

久保は迷った。だが、家や学校にバレる恐怖に耐えきれず、絵里の命令に従うことを選んだ。

 

「あなた、総武高校よね? 比企谷八幡って知ってる?」

 

絵里の質問に、久保は小さく頷く。

 

【隣のクラスです。話したことないけど、名前は……】

 

【ふふ、完璧ね。じゃあ、最初の命令。八幡に痴漢しなさい】

 

久保は目を丸くする。

 

【え、痴漢!? そんな……】

 

【嫌なら、店長に言うだけよ? 選ぶのはあなた】

 

絵里の笑顔は、冷酷そのものだった。久保は唇を噛み、渋々頷いた。

 

久保と絵里の取り引きから数日後。

 

八幡がいつもの本屋で立ち読みしていたとき、背後でかすかな気配を感じた。お尻に、ほんの一瞬、触れる感触。彼女が振り向いたとき、すでに久保は人混みに紛れ、姿を消していた。久保の存在感の薄さは、まるで幽霊のようだった。だが、彼の手は震え、心臓はバクバクしていた。

 

絵里の命令に従ったものの、罪悪感と恐怖が彼を苛んだ。絵里は、久保に「ちゃんとやってる証拠」を求めた。

 

スマホで八幡の写真を撮り、送るよう命じたのだ。久保は、校内で八幡を尾行し、彼女が購買に行く姿、教室を出る瞬間をこっそり撮影。絵里はそれを見て、満足げに笑う。

 

【いいわ、久保君。あなた、なかなか使えるじゃない】

 

絵里にとって、久保は忠実な❝犬❞であり、八幡への復讐のおもちゃだった。彼女の心には、中学時代、八幡や材木座たちの告発で転校を余儀なくされた屈辱が渦巻いていた。八幡がバスケの練習試合で新聞に載り、総武高校で目立つ存在になったと知ったとき、抑えていた恨みが爆発した。直接手を下すのはリスクが高い。だから、久保のような❝使いやすい駒❞を利用したのだ。

 

ーー

 

一方の奉仕部では。

 

八幡の不安は、奉仕部の教室に持ち込まれた。八幡、雪乃、結衣の3人が揃う中、八幡は緊張した面持ちで話した。雪乃と結衣は、八幡の依頼を正式に受け彼女を守るために行動に移す。

 

もちろん平塚先生に協力を求め、本屋にも連絡をしてもらう手筈を取る事した。

 

 

総武高校・翌日

 

翌日、雪乃は平塚先生を通じて本屋の店員に連絡。監視カメラの確認を依頼した結衣は朝から八幡にくっつき、

 

【やーちゃん、守るよ!】

 

と過保護モード全開。

 

八幡は『ちょっと恥ずいよ、結衣』とぼやきつつ、内心、ほっとしていた。

 

校内では、雪乃と結衣が八幡の周囲をさりげなく警戒。久保は、相変わらずF組の近くで八幡を観察していたが、雪乃の鋭い視線に気づき、慌てて姿を消す。彼の存在感の薄さは、奉仕部の目すら逃れるほどだった。一方、絵里は、怒級高校の校舎裏で、久保から送られてきた八幡の写真を眺め、ニヤリと笑っていた。

 

【ふふ、八幡、怯えてる顔、最高ね。このまま、もっと追い詰めてあげる】

 

絵里の復讐心は、八幡の不安を増幅させる燃料だった。

 

だが、彼女は知らなかった。奉仕部の調査力――雪乃の分析、結衣の行動力、そして八幡自身の過去の経験――が、静かに動き始めていることを。

 

 

総武高校・数日後・放課後・奉仕部。

 

奉仕部は、本屋の監視カメラ映像を入手。映像には、八幡の背後で一瞬だけ姿を現す、ボサボサ髪の少年が映っていた。雪乃が目を細める。

 

【この子、総武高校の制服ね。比企谷さん、知ってる顔?】

 

八幡は映像を見て、首を振る。

 

【わかんない。なんか、いるようでいないような……」

 

結衣が叫ぶ。

 

【やーちゃん、これ、犯人じゃん! 誰だろ、めっちゃ地味!】

 

雪乃が冷静に言う。

 

【地味なのが逆に怪しいわ。存在感の薄さを活かしてる可能性がある。2年F組の近くで視線を感じたなら、隣のクラス、G組を調べるべきね】

 

奉仕部の3人は、新たな手がかりを握った。八幡のトラウマを刺激する事件は、過去のいじめと繋がる予感を漂わせていた。塵山絵里の影が、じわじわと近づいている――。

 

 

総武高校・昼休み・2年F組近辺

 

総武高校の2階、2年F組の教室近くの廊下。久保美津雄は、いつものようにボサボサの髪と白いカッターシャツで、目立たぬよう壁際に立つ。彼の視線は、教室の中で縮こまる比企谷八幡を追っていた。

 

だが、最近、八幡の周りには雪乃と結衣が常にいる。彼女たち2人の鋭い視線とガードにより、久保は八幡を尾行するのが難しくなっていた。

 

放課後、久保は怒級高校の校舎裏で、塵山絵里と密会した。絵里は、茶髪にピアス、短いスカートで制服をだらしなく着崩し、嘲笑を浮かべる。

 

【久保君、最近、仕事サボってるんじゃない? 八幡の写真、送ってこないじゃない】

 

久保はうつむき、震える声で答える。

 

【雪ノ下さんと由比ヶ浜さんが、比企谷さんの周り、ずっと見張ってるんです。休み時間も離れないし、覗きすぎるとバレそうで……放課後は奉仕部という部活で……】

 

絵里の目が細まる。

 

【ふーん、八幡、ガード固めたのね。奉仕部ねえーまぁ、いいわ。今動かし続けたら、あなた、バレちゃうでしょ? 一旦、引いてなさい】

 

久保がホッとした瞬間、絵里の声が冷たく響く。

 

【でも、忘れないことね。私のこと無視したら、学校と警察と親に、万引きの話、全部バラすから】

 

久保の顔が青ざめる。絵里は満足げに笑い、スマホを弄りながら去った。彼女にとって、久保はただの❝犬❞だ。だが、八幡の警戒態勢が強まる中、久保一人では限界がある。絵里は新たな❝犬❞を探すことにした。

 

市内・夕方・バス停。

 

総武高校近くのバス停。2年F組の森崎弥太郎が、鞄を肩にかけ、バスを待っていた。七三分けの髪、きちんと着た制服、膨らんだ鞄は置き勉をしない真面目さを示す。だが、彼の雰囲気は、クラスでも目立たない陰キャそのもの。バス通学の彼は、静かにスマホを眺めていた。

 

そこへ、自転車に乗った絵里が現れる。彼女は森崎の前を素通りし、わざとらしく自転車を停め、振り向いた。スカートの裾を軽く揺らし、挑発的な笑みを浮かべる。

 

【ねえ、あなた、私のパンツ、見たでしょ?】

 

森崎は目を丸くし、慌てて否定する。

 

【え、み、見てないです!】

 

【ふーん、嘘つかないでよ。ちゃんと見たよね? 怒級高校の女子のパンツ、気になったんでしょ?】

 

絵里の声は丁寧だが、言葉の端々に嘲笑が滲む。森崎はおとなしい性格ゆえ、強く反論できない。顔を真っ赤にし、うつむく。

 

【見、見てないですって……】

 

絵里は鞄に❝森崎❞と名前が書かれてることにニヤっと笑い

 

【じゃあ、学校や警察、親に言っちゃおうかな? ❝総武高校の森崎君、パンツ覗き魔だった❞って。どうなると思う?】

 

絵里の脅しに、森崎の心は折れる。彼は絵里の言う

 

『見たことにする』選択を呑んだ。彼女の言葉が、世間に信じられると感じたからだ。絵里は満足げに笑い、森崎に近づく。

 

【いい子ね、森崎君。じゃあ、私の言うこと聞いてもらうだけ。簡単でしょ? 比企谷八幡、知ってる?】

 

森崎は小さく頷く。

 

【同じクラスの……最近バスケとかで目立ってる子ですよね】

 

【そうそう、その子よ。八幡のこと、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣、奉仕部のことも、全部教えて。毎日、情報送ってね。怠ったら、わかるよね?】

 

森崎は唇を噛み、頷いた。絵里の新たな❝犬❞が、こうして誕生した。

 

総武高校・放課後・奉仕部。

 

奉仕部の教室、いつもの空気。雪乃、結衣、私、3人で本屋の監視カメラ映像見た後、平塚先生に報告。この件、さすがに生徒だけで解決するのはキツいって、雪乃が判断。

 

平塚先生も同席で、久保美津雄を呼び出すことになった。私、内心ビビってる。久保の顔、映像で見たけど、なんか、いるようでいないような、影薄い奴。雪乃と結衣、

 

『無理して立ち会わなくていいよ』って言ってくれたけど、私、なんでこんなことされたのか、知りたくて。トラウマ、チラつくけど、逃げたくないよ。

 

会議室みたいな教室に、平塚先生、雪乃、結衣、私、そして久保。久保、ボサボサの髪で、目、キョロキョロしてる。なんか、怯えてるみたい。私も、久保見るの、ちょっと怖い。平塚先生、厳しい声。

 

【久保、本屋の監視カメラ、確認した。比企谷のお尻を触ったのは、君だね?】

 

久保、意外にも否定。

 

【触ってないです! ただ、間違ってぶつかっただけです!】

 

雪乃、冷静に突っ込む。

 

【久保君、映像では、明らかに意図的な動きだったわ。偶然ぶつかったにしては、不自然よ】

 

【いや、絶対触ってない! 無実の罪を擦り付けるなんて、奉仕部、ひどいですよ! 親、弁護士だから、世間に公表しますよ!】

 

久保の言葉に、結衣、カチンときて。

 

【何!? やーちゃん、怖かったのに、言い訳すんなし!】

 

私、久保の言い訳に、なんか既視感。材木座君いじめてた連中、調べたとき、似たような言い訳してた奴、いたよね。あいつ、絵里に指図されて、頑なに否定してた。絵里、転校したから、その後どうなったか知らないけど、この手口、めっちゃ似てる。でも、絵里と久保が繋がってる証拠、ないよ。偶然かもしれないけど、なんか、モヤモヤする。

 

雪乃、久保の目をじっと見て、言う。

 

【久保君、弁護士を出すなら、こちらも映像を警察に提出するわ。どうする?】

 

久保、顔真っ青。でも、頑なに『触ってない』と繰り返す。平塚先生、ため息。

 

【久保君、これ以上は無理がある。現行犯じゃないから、逮捕は難しいけど、疑われる行動は慎みなさい】

 

事情聴取、ここで終了。雪乃と結衣、なんか不完全燃焼っぽい。雪乃、唇噛んでる。結衣、『やーちゃん、ごめんね、なんかスッキリしない!』って。私も、モヤモヤ。絵里の影、頭から離れない。

八幡の相手は誰が良いですか?

  • 1ー高橋雅史
  • 2ー葉山隼人
  • 3ー材木座義輝
  • 4ー戸部翔
  • 5ーその他
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