千葉市内・夕方・廃工場。
千葉市内の寂れた工業地帯、景気の煽りで潰れた廃工場跡。錆びたシャッターと埃まみれの窓が、夕暮れの光を鈍く反射する。事務室の片隅で、塵山絵里が古びたデスクに腰掛け、久保美津雄がパイプ椅子に座り、森崎弥太郎が立っていた。絵里の茶髪とピアス、だらしない制服が、薄暗い空間で異様に映る。久保は、絵里に報告する。
【平塚先生、謹慎。比企谷さん、停学。父さんの弁護士の繋がりで、学校と本屋に圧力かけた】
絵里は手を叩き、ケラケラ笑う。
【久保君、最高! 八幡を停学にするなんて、思ってもみなかったわ!】
久保は勝ち誇った顔で話し出す。
【父さんの力だよ。いろんなとこに顔が広いから、校長も教頭も保身で動いた。本屋も、店長と従業員、クビにした】
森崎が、うつむきながら呟く。
【……クラスの連中、比企谷がお前の前にお尻出したって話で、学校が納得したのか?】
【まあね。保身第一の大人なんて、証拠より圧力に弱い。父さんが本屋のお偉いさんに話つけたら、すぐ従業員クビになったよ】
森崎、顔をしかめなから久保を見る。
【お前……ひでえな。全部、親父の権力で?】
久保の目が、急に鋭くなる。
「ああ。塵山さんや父さんに、弱い自分は捨てろって散々言われた。成り上がるには犠牲が必要だろ? 森崎、お前もだろ? 比企谷さんの下着、盗んだよな?」
森崎、言葉に詰まり下を向く。
「それは……塵山さんに命令されたから……」
絵里が森崎の前に立ち、ニヤリと笑う。
【私は『恥ずかしいモノ』を取ってこいって言っただけ。パンツなんて一言も言ってないわよ?】
絵里の後に久保が続ける。
【森崎、お前、そーゆー性癖だろ? 自分に正直になれよ。下着ドロした事実は変わらねえんだから】
絵里、楽しげに話しだす。
【久保君、平塚がうちの学校に来ようとしてたの、知ってる? 怒級高校、校内じゃ私が『普通の生徒』だから、校外のことノータッチで助かるわ】
森崎、低い声で下を向きながら話す。
【比企谷さんや平塚はともかく、雪ノ下さんや葉山が動き出したら……】
久保、ニヤリと笑い森崎に話し出す。
「雪ノ下グループも弁護士会も、父さんが根回し済み。雪ノ下雪乃や葉山隼人、動いたって無駄だよ」
絵里、感心したように久保を見ながら
【久保君、ひ弱な君はどこ行ったのかしら?】
久保、絵里を見ながら冷たく笑う。
【世の中の汚いもの、見ないようにしてたけど、父さんに嫌ってほど見せられた。もう我慢しない。成り上がるために、父さんも塵山さんも森崎も、利用するだけだ】
森崎は唇を噛む。あのバス停で絵里に絡まれなければ、こんな事態にならなかった。下着を盗むことも、怯える必要もなかった。警察に駆け込みたいが、逮捕の恐怖が彼を縛る。絵里はそんな森崎を無視し、八幡をさらに追い詰める作戦を企む。
東京・夜・神室町。
東京、神室町。欲望と喧騒が渦巻く歓楽街。ネオンの光がアスファルトを照らす中、平塚静が歩いていた。彼女は総武高校の教師だが、謹慎処分中だ。久保の件で千葉の弁護士を訪ねたが、誰も八幡の弁護を引き受けてくれなかった。仕方なく、かつてある事件で共闘した男を頼りに、神室町へやって来た。八神隆之――神室町で活動する弁護士だ。スーツに緩いネクタイ、鋭い目つきだが、どこか飄々とした雰囲気。いつもならくたびれたジャンパーとジーパンをはいているはずだが、今日は正装している。とある弁護を引き受けて、今日判決が下ったようだ。その後処理を八神はこなしている。
そんな中、悲痛な表情を浮かべる平塚は、八神探偵事務所の看板を見て覚悟を決める。
平塚は八神探偵事務所のドアをノックする。中から声がする。
【鍵なら開いてますよ】
【八神君…平塚だ】
【お、平塚先生、久しぶりだな。何か用か?】
八神の軽い口調に、平塚は真剣な表情で切り出す。
【八神君、頼みがある。私の生徒、比企谷八幡が無実の罪で停学処分を受けた。私も謹慎中だ。久保美津雄と塵山絵里――この二人に法の裁きを受けさせたい】
八神、椅子にふんぞり返り。
【へえ、なかなか面白そうな話だな。証拠は?】
【本屋の監視カメラ映像と、比企谷の自宅から盗まれた下着。だが、学校側は久保の父親、弁護士の圧力に屈した】
八神、ニヤリ。
【汚え大人だな。ま、俺の得意分野だ。塵山絵里、ってのはどんな奴?】
【中学時代、比企谷や材木座をいじめた主犯格。転校したが、比企谷への復讐で動いてる可能性が高い】
八神、目を細める。
【復讐ね。根深いな。よし、引き受ける。比企谷って子のため、久保と絵里、ガッツリ調べてやるよ】
平塚はホッと息を吐く。
【ありがとう、八神君。頼んだよ】
八神は軽く手を振る。
【ま、任せな。神室町の闇、舐めんなよ】
神奈川県内・朝・横浜市・異人町。
横浜市異人町、閑静な住宅街。八幡は母方の叔母、麦谷桜花の家に身を寄せていた。桜花は黒髪ゆるふわロング、穏やかな笑顔の女性。未婚で会社経営者だが、おしとやかで丁寧な口調が特徴。だが、怒るとその丁寧さに鋭い怒りが滲む。服装も貴婦人が着るような感じの服装である。
【八幡さん、ごゆっくりなさいませ。ご家族の皆様も、八幡さんがこちらで心機一転なさることを願っていらっしゃいます】
桜花の優しさに、八幡は小さく頷く。八幡の両親と小町は、彼女の心が壊れるのを防ぐため、停学期間中、横浜に預けることを決めた。新しい環境で、八幡が自分を見つめ直す時間が必要だと考えたのだ。
総武高校・海浜総合高校の者たち。
総武高校と海浜総合高校では、八幡と平塚の処分取り消しを求める動きが広がっていた。上条美紗希は、事務所のマネージャー北条輝子に相談。
【北条さん、比企谷さんが無実なのに停学なんて……何かできること、ないですか?】
美紗希の話を聞いた輝子は冷静に話す。
【美紗希、事務所の繋がりで、弁護士やメディアに話を持っていくわ。比企谷さんの無実、証明しましょう】
麦野静乃は、女子バスケ部をまとめ、
【八幡、絶対無実だ! 学校に訴えよう!】
と声を上げる。バスケ部の仲間たちも賛同し、署名活動を始める。葉山隼人とサッカー部は、海浜総合高校の高橋雅史たちと連携。
【比企谷さん、俺たちのために動いてくれた。絶対、助ける!】
【八幡は大切な幼なじみだ。彼女には昔、助けてもらった。だから今度は俺たちが救う番だ!】
と、葉山隼人と高橋雅史の掛け声で、両校のサッカー部で抗議の声を上げる。
材木座義輝は、自分の原稿を手に、
【八幡のために、俺の物語で世論を動かすぜ!】
と意気込む。彼も彼なりに八幡を救いたい。助けたい気持ちは誰よりも強いかもしれない。
川崎沙希も、八幡から受けたアドバイスを思い出し、独自に情報を集め始める。
そう夜のバイトでできた横の繋がりを活用して。
雪乃と結衣は、奉仕部で調査を続ける。雪乃は怒級高校への問い合わせを強化し、結衣は八幡のクラスメイトや海浜総合高校の仲間と連絡を取り合う。
久保と絵里を繋ぐ人物――森崎弥太郎――の存在を、未だ知らないままだった。
そんな彼は八幡を助けようとしているクラスの中で唇を噛み締めるしか出来なかった。
神奈川県内・昼・横浜市・異人町・麦谷家・リビング。
横浜の異人町、叔母さんの家に来て10日くらい。久保の件で、めっちゃ落ち込んでた私、家族が見かねて、桜花さんのとこに預けたんだよね。実家にいるとき、なんか嫌な視線感じてた。久保か、絵里の差し金か、わかんないけど、怖かった。横浜に来て、正解だったかも。
7月、夏休み目前だよね。総武高校、みんな、夏休みの話で盛り上がってるのかな。
雪乃、結衣、上条さん、麦野さん、綾音、緑子、七海――毎日、メールくれる。彼女たちの励ましで、なんとか心保ってる。雅史、葉山君、龍造寺君、材木座、戸塚君も、メールで応援してくれてる。みんな、私のために動いてくれてるんだよね。
平塚先生、謹慎中、大丈夫かな? 給料、出るのかな? 私のせいで、先生、困ってたら……。
ううん、桜花さんに『マイナス方面に考えてはダメ』って言われたっけ。暗い気分、ダメだよ。
停学中、勉強は自分で予習復習してるけど、授業出てないから、遅れてる気がする。麦野さんや上条さん、葉山君が、授業の内容やテスト対策、教えてくれる。ほんと、感謝しかない。雪乃と結衣にも、めっちゃ迷惑かけてる。
停学、取り消されたら、みんなにお礼しないと。桜花さんにも、だ。
ずっと部屋にいるのも、なんか息苦しい。外、ちょっと出てみるか。この時間、学校あるから、補導されないよね? 気分転換に、異人町、散歩してみよう。外に出ると、横浜の空、なんか新鮮。千葉のモヤモヤ、ちょっと薄れる気がする。
絵里、久保――まだ見えない敵だけど、雪乃、結衣、みんなが動いてくれてる。私も、負けてられないよ。比企谷八幡、こんなことで折れないから。
今日は昼投稿です。
八幡の相手は誰が良いですか?
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1ー高橋雅史
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2ー葉山隼人
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3ー材木座義輝
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4ー戸部翔
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5ーその他