ヤハタちゃんの青春ラブコメはできるのだろうか?   作:龍造寺

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第2章5話です。


第2章ー第5話ー美沙希からの贈り物。

 

比企谷家近く・昼・書店。

 

上条さんとのカフェでの相談から、数日が過ぎた。補習もテストも終わり、九州旅行も終え、日常が少しずつ戻ってきている。

 

今日は特に予定がなかったので、家の近くの本屋に立ち寄った。昔なら、私はほとんど歴史コーナーか推理小説の棚に直行していた。ファッション誌や女性誌のエリアなんて、遠回りして通ることもあったくらいだ。でも今日は、ふと足が止まった。雑誌の表紙に、上条美紗希の顔があった。『……MISAKI』手に取ってみる。

 

グラビア特集のページを開くと、そこには新作の水着を着た美紗希が何枚も載っていた。ワインレッドのビキニ。肌のトーンに映えて、彼女の明るい表情をさらに引き立てている。生き生きしていて、元気いっぱい。カメラに向かって笑う姿は、CMで見たときと同じ自然さがあった。

 

私は無意識に、そのワインレッドのビキニをしばらく見つめてしまった。今までなら『ビキニなんて興味ないし、スクール水着で十分』と思っていた。実際、体育の授業でも特に気にしたことはなかった。

 

でも、最近は少し違う。九州で温泉に入ったときも、鏡に映る自分の体を見て『もう少し自信を持ってもいいのかな』と感じたし、美紗希のグラビアを見ていると『着てみたい』という気持ちが、小さく湧いてくる。

 

「……似合うのかな、私なんかが」

 

独り言を呟いて、雑誌を閉じた。結局、美紗希が載っているその雑誌と、欲しかった歴史の新刊、それから気になっていた推理小説の文庫を買って、店を出た。

 

夏の日差しが、アスファルトを照り返している。

 

まぶしい。思えば、あの嫌な事件は、この本屋から始まった。

 

久保が塵山に弱みを握られ、操り人形になっていた頃だ。私が立ち読みしているときにお尻を触られ、その後のストーキングや下着泥棒……すべてがここから連鎖した。でも、今は違う角度で見られるようになった。あの事件があったからこそ、雪乃や結衣、上条さん、麦野さん、他のクラスメイト、雅史や綾音たちと、より強く深い絆で結ばれた。

 

横浜では桜花叔母さんに世話になり、藍沢姫香と和解した。かつての敵が、今では❝それなりに話せる相手❞になっている。

 

マイナスだけじゃない。プラスも、確かにあった。だから、これからはマイナスに沈むのではなく、プラスの方を見ていこう。

 

私はレジ袋を抱え直して、自宅へ向かって歩き出した。

 

比企谷家・午後。

 

玄関を開けると、お母さんがリビングから声をかけてきた。

 

「八幡、おかえり。上条美紗希さんって子から宅配が届いてるわよ」

 

「……え?」

 

小町がすぐに飛んできた。

 

「お姉ちゃんに宅配!? 何が届いたの!? 開けていい?」

 

「だめ。自分で開けるから」

 

小町をあしらいながら、荷物を抱えて自分の部屋に戻る。段ボールはそれほど大きくない。

 

宛名は『比企谷八幡様』

 

差出人は上条美紗希。

 

部屋のドアを閉めて、ゆっくりと紐を解く。中から出てきたのは、スイカ柄のビキニと、少し透け感のあるセクシーな下着。そして一通の手紙。

 

手紙を開く。

 

『比企谷さんへこの前は相談に乗ってくれて、本当にありがとう。

 

比企谷さんの言葉のおかげで、少し整理できました。

 

監督さんには❝学生のうちは学業優先で、将来的に考えたい❞と伝えたら、快く待ってくれるって言ってくれました。

 

お礼に、私のお気に入りを送ります。

 

スイカ柄、今年の夏にすごく気に入ってるから。比企谷さんにも似合うと思うから、よかったら着てみて。

 

また何かあったら、いつでも話してください。上条美紗希』

 

私は顔が熱くなるのを感じた。

 

スイカ柄のビキニを手に取る。生地は柔らかくて、色合いも明るい。本屋でワインレッドのビキニを見て『着てみたい』と思ったばかりなのに、実際に届くとは。

 

「……試着、くらいなら」

 

カーテンを閉め、服を脱いでビキニに袖を通す。鏡の前に立つ。思ったより悪くない。むしろ、想像していたより自然に体に馴染んでいる。

 

私は少しだけポーズを変えてみた。腰に手を当てたり、髪をかき上げたり。美紗希のグラビアを思い出して、真似してみる。

 

「……こんな感じ?」

 

そのとき、ドアが開いた。

 

「お姉ちゃん、何して——」

 

小町の声。私は凍りついた。小町の目が、まん丸になる。

 

「お姉ちゃんがビキニ着て、セクシーポーズ取ってる……!!」

 

「ち、違う! これは——!」

 

小町はすでにリビングに向かって走り出していた。

 

「お母さーん! お姉ちゃんがビキニ着てセクシーなポーズしてる!」

 

「はあ!?」

 

私は慌てて服を引っ被り、後を追う。リビングでは小町が興奮気味に報告し、お母さんが呆れたような、感心したような顔で立っていた。

 

「八幡……男ができたの?」

 

「ちがう! 上条さんからお礼のプレゼントで届いただけで! 試着しただけ!」

 

「ふうん。試着してポーズまで取っちゃうくらい気に入ったのね」

 

「ちがうってば!」

 

小町がじと目で私を見る。お母さんも同じ目。

 

「どうだかなあ」

 

「どうだかなあ」

 

2人に同時に言われて、私は完全に言い返せなくなった。顔がさらに熱い。

 

結局、その日の夜まで『お姉ちゃんのビキニ事件』がネタにされた。

 

私は布団にくるまって、天井を見つめるしかなかった。

 

数日後・比企谷家・午後。

 

夏休みも後半に入り、学生たちは残り日数を数え始める頃。部屋で九州の写真を整理していると、スマホが鳴った。

 

画面に『平塚先生』の文字。

 

「……はい、比企谷です」

 

「比企谷か。元気にしてるか?」

 

いつもの少し低い声。謹慎が解けてからの平塚先生は、以前より少し柔らかくなった気がする。

 

「元気です。どうしました?」

 

「奉仕部の話だ。夏休みの学宿をやることになった。千葉村で2泊3日。雪ノ下と由比ヶ浜にはもう伝えてある」

 

「学宿……ですか」

 

「ああ。ただの合宿じゃない。例によって、何か問題が起きる可能性もある。だが、君たち3人で乗り切れ」

 

「……わかりました」

 

「詳細は後でメールする。準備しておけ」

 

電話が切れる。私はスマホを置いて、窓の外を見た。夏の陽射しがまだ強く、蝉の声が聞こえる。九州旅行で家族と笑い、上条の相談に乗り、ビキニのプレゼントで小町とお母さんにからかわれ……。

 

ようやく❝普通の夏休み❞を味わい始めた矢先に、また奉仕部の活動だ。8月後半は、千葉村での学宿になるらしい。

 

この時点の私は、まだ知らなかった。学宿先で、また新しい問題が起きることになるなんて。

 

私は椅子に座り直し、平塚先生からのメールを待った。

 

遅れて始まった夏休みは、まだまだ続きそうだ。

 

でも、今度は雪乃と結衣と一緒だ。1人じゃない。そのことだけは、はっきりわかっていた。

 

八幡の相手は誰が良いですか?

  • 1ー高橋雅史
  • 2ー葉山隼人
  • 3ー材木座義輝
  • 4ー戸部翔
  • 5ーその他
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