ヤハタちゃんの青春ラブコメはできるのだろうか?   作:龍造寺

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第6話です。


第6話ー由比ヶ浜結衣は、背中を押され、独り立ちをする。

 

【…あの、平塚先生から聞いたんだけど、ここ、生徒の願いを叶えてくれるんだよね?】

 

由比ヶ浜さん、キラキラした目で言う。

 

【え? 私が聞いてたのと、なんか違う…】

 

【比企谷さん、違うわよ。奉仕部は手助けするだけ。願いが叶うかは本人次第】

 

雪ノ下さん、冷静に訂正。

 

【あ、龍造寺君にアドバイスしたみたいに?】

 

【そうね】

 

【龍造寺君も奉仕部に来てたんだ…って、それ、さっきのとどう違うの?】

 

雪ノ下さんが龍造寺君に英語のアドバイスして、ペラペラ喋れるようになったんだよね。帰国子女で、フランス語やスペイン語もできるから、覚えるの早かったんだろうけど。

 

【魚を与えるか、釣り方を教えるかの違い。ボランティアは方法論を与えるもの。結果をただ与えるんじゃない。自立を促すのが一番近いかしら】

 

雪ノ下さんの例え、アフリカでの日本と中国の支援の話みたい。簡単に言えば、奉仕部は背中を押して導くってこと。

 

【な、なんかすごい!】

 

由比ヶ浜さん、目から鱗って顔。この子、大丈夫? 新しい知識に感動しすぎ。

 

【必ず願いが叶うわけじゃないけど、できる限り手助けするわ】

 

雪ノ下さんの言葉で、由比ヶ浜さん、「あ!」と本題を思い出した。

 

【あの、クッキーを…】

 

チラッと私を見る。え? 何? 何か言いたい? 雪ノ下さんが。

 

【比企谷さん、飲み物買ってきてくれる?】

 

【え、私?】

 

【あなたしかいないでしょ】

 

なんで私が追い出されるの? クッキーの話、男子には聞かれたくないよね、わかるけど…私、男子!? 由比ヶ浜さんがクッキーをあげたいのは、クラスの男子。知られたくないか、牽制か。どっちでもいいけど、私の好きな男子なんていないし。

 

【はいはい、飲み物ね】

 

立ち上がり、扉に手をかける。

 

【私は『野菜生活100いちごヨーグルトミックス』で】

 

雪ノ下さん、パシリ扱い…。ため息つきながら教室を出る。由比ヶ浜さんの思い人、ペラペラ話さないのに、そんなバレちゃダメな人? わけわかんない。

 

特別棟の3階から1階、往復10分かからない。ダラダラ歩けば、話も終わるよね。初の依頼者、雪ノ下さんとの勝負の始まり。でも、私いないのに勝負になる? なんか差がついてる気が…。

 

総武高校・午後・購買部

 

購買前の怪しげな自販機、コンビニじゃ見ない紙パックジュースだらけ。美味しいかマズいか、両極端。楽しむ人もいるらしいけど。制服のポケットから緑の財布出し、100円投入。雪ノ下さんの『野菜生活』、由比ヶ浜さんのスポルトップ、私の緑茶。計300円。

 

戻ろうとしたら。

 

【飲み物3本? やっぱり部活入ったんだ】

 

【麦野さん?】

 

麦野さん、バスケ部のユニフォーム、ポニーテール。長い髪が映える。なんか、新鮮。主張すべきとこ主張してる。

 

【麦野さん、バスケ部だったんだ】

 

【2年からね。1年の時、誘われてたけど断ってて。部長になったやつに頭下げられて、入部した】

 

初日に麦野さんが遅くまでいたのは、バスケ部か。

 

【麦野さんこそ、購買で?】

 

【飲み物買いに】

 

クーラーボックス担いでる。部員全員分?

 

【お互い、部活頑張ろうね】

 

【まあ、ね】

 

麦野さん、体育館へ。私は奉仕部へ。バスケ部、夏の大会で綾音たちと対戦するかも。名勝負になるかな。

 

話、終わってるよね。戻ろう。

 

総武高校・午後・奉仕部

 

部室の扉を開けると。

 

【比企谷さん、遅い】

 

【麦野さんと話してて、ちょっと】

 

【麦野さんとね】

 

【ヒキガヤさん、むぎのんと話すんだ! でも、教室で喋ってるの見たことあるね】

 

雪ノ下さんに『野菜生活』、由比ヶ浜さんにスポルトップ渡す。私は緑茶。

 

【話、終わった?】

 

【うん。これから家庭科室に行くわ。比企谷さんも一緒に】

 

【家庭科室? クッキー作り?】

 

【うん、そう】

 

【由比ヶ浜さんは、手作りクッキーを誰かにあげたいけど、自信がないから手伝ってほしい。それが依頼よ】

 

【…わかった。けど、なんで私、除け者に? クッキーあげたい相手…】

 

【ほら、クラスの女子がいると、牽制し合うじゃん】

 

【…確かに】

 

由比ヶ浜さんのグループ、抜け駆け許さない感じか。私、恋愛経験ないから、アドバイスできるか…。でも、由比ヶ浜さんの努力、わかる。勝負なら、やるしかない。

 

【由比ヶ浜さんがあげたい人に、うまいと思わせるクッキーを作ればいい!】

 

【比企谷さん、やる気でも、由比ヶ浜さんがどうするかよ】

 

由比ヶ浜さん、目をキラキラさせて私を見る。

 

【ヒキガヤさん、カッコいい!】

 

【キラキラすんな! クッキー作るんでしょ?】

 

【ヒキガヤさん、料理できる?】

 

【まあ、人並みに。雪ノ下さんもでしょ?】

 

【もちろん】

 

総武高校・午後・家庭科室

 

鶴見先生の許可を得て、家庭科室でクッキー作り。雪ノ下さんと私、冷蔵庫から卵や牛乳、ボウルや測りを準備。準備OK。

 

制服の上着を脱ぎ、エプロン着用。由比ヶ浜さんもエプロン着るけど、紐の結び目がグチャグチャ。

 

【曲がってる。エプロンもまともに着れないの?】

 

【ごめん…って、エプロンくらい着れるよ!】

 

【着れてないから指摘されてるんじゃ…】

 

雪ノ下さんが結び直す。私はニコニコ。

 

【比企谷さん、なんで笑ってるの?】

 

【雪ノ下さんと由比ヶ浜さん、姉妹みたいで…つい】

 

【私の妹がこんな出来の悪い子なわけないわ】

 

【雪ノ下さん、姉ポジ決まってるね】

 

大人びた雪ノ下さん、童顔の由比ヶ浜さん、姉妹っぽい。

 

【ヒキガヤさん、家庭的な女の子、どう思う?】

 

【なんで私に?】

 

男子から見たら理想、女子から見ても尊敬できるよね。

 

【雪ノ下さんより答えてくれそうだから】

 

雪ノ下さん、呆れたため息。

 

【男には理想だと思うよ】

 

【そっか! よし、やるぞ!】

 

由比ヶ浜さん、袖まくり、卵を割る。小麦粉、砂糖、バター、バニラエッセンス…でも、素人丸出し。しばらくして、ボウルに黒々しい山。殻入りの卵を混ぜ、壊滅状態。私と雪ノ下さん、言葉なし。小町に教えた時よりひどい。

 

焼き上がったのは、真っ黒なホットケーキみたいな何か。苦い匂い…。

 

【どうして…】

 

由比ヶ浜さん、困惑。私と雪ノ下さん、原因わかる。

 

【どうやったら、ここまでミス重ねられるの?】

 

雪ノ下さんの心の声、漏れてる。私も同感。

 

【見た目はアレだけど、食べてみないと!】

 

【悪いけど、比企谷さん、味見して】

 

【私!?】

 

【啖呵切ったんだから、責任持って食べられるでしょ】

 

確かに啖呵切ったけど、ここまでとは…。でも、責任取るか。震える手で黒いクッキーを口に。食べられるけど、美味しくない。緑茶を一気飲み。口の水分、持ってかれた。

 

【うぅ、苦い、不味い…】

 

由比ヶ浜さん、ポリポリかじり、涙目。自分の作ったもの、文句言えないよね。

 

【噛まずに流し込んで。舌に触れないよう注意して。劇薬よ】

 

雪ノ下さん、オブラートに包もうよ…。

雪ノ下さんが紅茶を入れてくれる。ノルマ達成後、口直し。やっと落ち着く。

 

【どうすれば良くなるか、考えましょう】

 

【数をこなすしかない。私もそうやって上手くなった】

 

【諦めず努力する。それしかない】

 

【それで解決? できる人にしかできないんじゃ…】

 

【由比ヶ浜さん、その認識、改めなさい。努力しない人間は、才能ある人を羨む資格ない。成功できない人は、成功者の努力を想像できないから成功しないの】

 

雪ノ下さん、正論すぎるけど、由比ヶ浜さんにはキツい。困惑と恐怖の表情。誤魔化すように、へらっと笑う。

 

【でも、最近、みんなこういうのやらないって。あってないよ、きっと】

 

カタッ。雪ノ下さんがカップを置く。静かなのに、氷のような音色。怜悧な雰囲気。

 

【周りに合わせるの、やめて。不愉快。自分の不器用さ、無能さ、愚かさを他人に押し付けるの、恥ずかしくない?】

 

強い語調、嫌悪滲む。私も気迫に押される。由比ヶ浜さん、うつむき、スカートの端をギュッ。心の表れ。

 

由比ヶ浜さん、コミュ力高く、陽キャグループ所属。協調性あるけど、迎合上手い。孤独を避け、自己を貫く勇気がない。私や雪ノ下さんは逆。雪ノ下さんの突破力、折り紙付き。いじめを1人で耐えた。

 

由比ヶ浜さん、瞳潤む。そりゃ泣きたくなる。

 

【か…】

 

帰る? 普通ならそう。

 

【かっこいい!】

 

【【はぁ?】】

 

私と雪ノ下さん、ハモる。

 

【建前なし! そういうの、かっこいい】

 

雪ノ下さん、私に助けを求める目。私にどうしろと…。由比ヶ浜さん、本音で怒られたことない? グループ、上辺だけか。

 

【ヒキガヤさんと話してる時も、ちゃんと話してる。あたし、合わせてばっかだったから、初めてで…】

 

覚悟できた? 表情変わった。

 

【ごめん、次、ちゃんとやる】

 

まっすぐ雪ノ下さんを見つめる。雪ノ下さん、言葉失う。髪を払うけど、何も出てこない。私が言うしかない。

 

【ほら、雪ノ下さん、由比ヶ浜さんやる気出したんだから、お手本見せよう】

 

【そ、そうね。一度見せるから、真似して】

 

雪ノ下さんが作り、由比ヶ浜さんが真似る。何度も失敗しつつ、懸命にやって、1人でクッキー完成。最高や美味しいじゃなく、作ったことが大事。

 

昔、料理始めた頃、お父さんに不格好なクッキーあげた。お母さんに「あげなさい」と言われ、まずいと言われる覚悟だったけど。

 

【美味しいかどうかは別。八幡が作ってくれたのが一番嬉しい】

 

頭撫でられ。

 

【男は、好きな女が作ったものは何でも美味しい。服やアクセサリーもつける。単純かもしれないけど、男はそういうもんだ】

 

熱く語られたっけ。2人に噛み砕いて話す。

 

【比企谷さんのお父様の話はさておき、手段と目的を履き違えてたってことね】

 

【手作り感…よし、わかった!】

 

由比ヶ浜さん、立ち上がり、鞄持つ。

 

【依頼したのに悪いけど、あとは自分でやる。ヒキガヤさん、雪ノ下さん、時間使わせてごめん】

 

来た時より、表情明るい。

 

【また、明日。バイバイ】

 

手を振り、エプロン姿のまま帰った。

 

【本当にいいの?】

 

雪ノ下さん、ドアを見つめ、つぶやく。

 

【自分を高めるなら、限界まで挑戦すべき。それが彼女のため】

 

【確かに。でも、人それぞれ歩むスピードは違う。努力は裏切らないけど、夢は叶わないかもしれない】

 

【どう違うの?】

 

雪ノ下さん、私の目を見つめる。

 

【努力しても、夢が叶うとは限らない。叶うのは一握り。でも、頑張った事実は残る】

 

【…】

 

何か言いたそうだけど、黙る。調理器具を洗い、由比ヶ浜さんの残骸を処分。鶴見先生に報告。完全下校時間になり、そのまま下校。

八幡の相手は誰が良いですか?

  • 1ー高橋雅史
  • 2ー葉山隼人
  • 3ー材木座義輝
  • 4ー戸部翔
  • 5ーその他
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