総武高校・放課後・特別棟廊下
次の日、昼休みに雪ノ下さんに平塚先生の手紙の話をする。【わかったわ】と表情変えずに去る。
由比ヶ浜さんじゃないし、細かく説明しなくてもいいか。奉仕部の前につくと、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんが廊下で教室を覗いてる。
【2人、何してるの?】
【ひゃうっ!】
由比ヶ浜さん、ビクッと跳ねる。カマクラが夜中のリビングで驚くみたい。
【比企谷さん…びっくりした…】
【驚くのはこっちだよ】
【いきなり声かけないでくれる?】
雪ノ下さん、氷の目で睨む。カマクラそっくり。
【驚かせたならごめん。でも、教室に入らず何?】
由比ヶ浜さん、扉を少し開けて中を覗き。
【部室に不審人物が…】
【不審人物?】
2人の方が不審者に見えるよ。
【いいから、中見てきて】
雪ノ下さん、私を不審人物に差し出す? 私が安全って理由、知りたいよ。ため息ついて、扉を開ける。一陣の風が横を抜ける。海辺の学校特有の潮風。プリントが散らばる。
【あ〜…】
小声で呟き、拾う。すると、目の前に人影。
【クククッ、こんなところで出会うとは、待ちわびたぞ、比企谷八幡!】
【は? 待ちわびたって何?】
ストーカー!? 怖いんだけど。見ると、知ってる顔。材木座義輝。中学からコートと指ぬきグローブ。名前、足利義輝と同じで覚えてる。今も変わらず。
【比企谷さん、知り合い?】
雪ノ下さん、私の背中に隠れ、軽蔑の目で私と材木座君を見比べる。
【まさか、お主が総武にいるとは、驚きだ!】
【私がどこ行こうと、関係ないでしょ】
【ヤーちゃん、知り合い?】
由比ヶ浜さんの「ヤーちゃん」、あだ名らしい。雪ノ下さんが「ゆきのん」、私が「ヤハタ」で「ヤーちゃん」。彼女らしい。
【中学一緒なだけ】
【嘘はよせ!我とお主、語り合った仲だ!】
雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの目、冷たっ! 誤解招く発言やめて!
【語り合うって、やめてよ!】
材木座君に近づき、口を塞ぐ。【無駄話に来たんじゃないよね?】
目で訴えるから、手をどかす。
【平塚教諭の導きで、八幡、お主は我の願いを叶える義務があるな! 八幡大菩薩の導きか!】
【奉仕部は願いを叶えない。手助けするだけ】
【ふむ…では、我に手を貸せ。かつてのように天下を握らん!】
【天下? なんで呼び捨て!】
雪ノ下さんと由比ヶ浜さんのジト目、精神削られる! 材木座君、室町幕府の話ばっか。転生者かよ。
【いつまで室町の話!?】
雪ノ下さん、室町は知ってるけど、由比ヶ浜さん、蒼ざめて引いてる。
【比企谷さん、ちょっと】
雪ノ下さん、袖を引いて耳打ち。
【剣豪将軍って何?】
【十三代将軍足利義輝。材木座君、転生したとか言ってるだけ…中二病】
【ちゅーに病?】由比ヶ浜さん、聞き耳。【ヤーちゃん、病気?】
【病気じゃない。男の子が…カッコつけたい時期。特別な存在って騒ぐ】
なんで私が中二病説明してるの?
【え?】
由比ヶ浜さん、意味わからず、嫌そうな顔。雪ノ下さん、納得。
【自分で設定作って芝居してるのね】
【そう。材木座君、足利義輝がベース。名前同じだし】
【仲間って何?】
【私の名前、八幡。八幡大菩薩、清和源氏の武神。鶴岡八幡宮、知ってるね?】
【知ってるわ】
雪ノ下さんなら当然。由比ヶ浜さん、ポカン。
材木座君との出会いは、私へのいじめがなくなった後。別の女子たちが材木座君をいじめてた。彼、今みたいなことやってて、気持ち悪いって標的に。
書いた小説破られたくなければ、私に偽告白しろって脅されてた。私はYESもNOも言わず。偽告白、知ってた。女子たちがトイレで大声で話してて、個室で聞いてたから。彼、アニメやゲーム好きで、小説書いてた。
それをバカにされ、いじめられた。友達いないって言われたから、私も助けられた身、放っておけなかった。面倒嫌いな私が、首突っ込んで、いじめっ子女子たちを懲らしめた。お礼言われた時、小説完成したら見せるって言ってたっけ。
その後、あんま話してなかったけど、総武にいるなんて。ただ、今の材木座君、中二病こじらせすぎ。
【比企谷さん、依頼は心の病を治す?】
雪ノ下さん、鋭い。
【八幡、汝との契約で、朕の願いを叶えん! 崇高な欲望だ!】
材木座君、私見て、一人称ブレブレ!
【話してるの、私よ。人の顔見なさい】
雪ノ下さん、冷たく、材木座君の襟掴んで正面に。礼儀にうるさいのに、自分は…。襟離すと、材木座君、ゲホゲホ咳き込む。キャラ作る余裕なし。
【モ、モハハハ…】
【その喋り方もやめて】
雪ノ下さんに冷たくあしらわれ、材木座君、黙って下向く。容赦ない攻撃で、サンドバッグ状態。もうライフ0よ。
【とにかく、病気を治す?】
【…病気じゃない、ですけど】
私を見てくるな! 雪ノ下さんに怒られるよ! 材木座君、余裕なく、原稿用紙を雪ノ下さんに見せる。
【これは?】
【原稿用紙!? まさか!】
由比ヶ浜さん、驚く。
【ふむ、通じるか。伊達に地獄の時間を共にしてないな】
【誤解招くこと言わないで!】
ジト目。雪ノ下さんから原稿渡され。
【小説の原稿ね】
【いかにも。ライトノベル、新人賞に応募する。友達いないから感想聞けん。読んでくれ】
【悲しいことさらっと…】
【感想なら、投稿サイトやスレに上げれば?】
【無理だ。奴ら、容赦ない。ボコられたら死ぬ】
ネットは辛辣。友達なら気使うかも。
【私は勧めないよ…】
雪ノ下さん見る。容赦なさそう。
【雪ノ下さん、怖いと思う】
原稿を私、雪ノ下さん、由比ヶ浜さんで持ち帰り、一晩読むことに。
総武高校・放課後・靴箱
材木座君が先に帰り、雪ノ下さん、由比ヶ浜さんと奉仕部の教室で別れた。
材木座のライトノベル原稿、持ち帰ったけど……読むの面倒だな。雪ノ下さんの容赦ない感想が目に浮かぶし、由比ヶ浜さんは「頑張ってるね!」で終わりそう。まぁ、明日考えよう。
図書室に寄って、借りてた推理小説を返却。高校の図書館にこんな最新の本置いてるなんて、意外とやるじゃん、総武。
さて、帰ろうと靴箱に向かうと、バスケ部の練習着姿の麦野さんが走ってくるのが見えた。汗で髪が少し張り付いてて、なんかカッコいい。向こうも私に気づいたみたい。
【比企谷、今帰りなの?】
【うん、部活終わって帰るところだよ】
麦野さん、ちょっと息切れしてるけど、目がキラキラしてる。バスケ部、練習キツいって聞いてたけど、こんな遅くまでやってるんだ。
【なあ、比企谷。ちょっと時間ある?】
【時間? まあ、帰るだけだけど……】
嫌な予感。奉仕部でさんざん面倒事に巻き込まれてるのに、また何か? でも、麦野さんの真剣な顔見ると、断りにくいんだよね。
【バスケの練習、付き合ってくれない?】
【は? バスケ?】
【他の部員、みんな帰っちゃってさ。1人でシュート練習してるんだけど、相手いないと限界あるんだよね】
麦野さん、体育館の方をチラッと見て、ちょっと恥ずかしそう。珍しいな、いつも強気なのに。次の言葉で、ピンときた。
【次の週の日曜、海浜総合と練習試合なんだ。レギュラーになりたくてさ。勝ちたいんだよ】
【海浜総合?】
その名前で、頭に浮かんだのは綾音。雪柳綾音、海浜総合のバスケ部エース。
中学の時、綾音と七海の練習に付き合ってたら、私もバスケそこそこ上手くなっちゃってたっけ。でも、海浜総合か……。綾音に会うの、ちょっとドキドキするな。
【私、運動はあんまり……】
断ろうとしたけど、麦野さんの目がマジすぎる。レギュラーになりたい、勝ちたいって気持ち、なんか響くんだよね。奉仕部で雪ノ下さんと勝負してる私と、どこか似てる気がする。
【……まぁ、いいよ。手伝うだけなら】
【マジ!? 助かる! 体育館行こう!】
麦野さん、ニヤッと笑って私の腕引っ張る。ちょ、ちょっと強引! でも、嫌いじゃないよ、こういうの。
総武高校・体育館・バスケコート。
体育館の更衣室で、体操服に着替える。制服だと動きにくいし、汗で汚れたら面倒だしね。麦野さん、すでにコートでボール持って待ってる。
体育館の床、ピカピカで、なんか懐かしい。小学生の時、綾音たちに連れられて3×3やってたっけ。嫌々だったけど、楽しかったな。
【比企谷、遅い! 準備できた?】
【はいはい、来たよ】
コートに出ると、麦野さんがボールパスしてくる。軽くキャッチ。うわ、久しぶりなのに体が覚えてる。綾音のスパルタ練習、役に立ってるじゃん。
【なあ、比企谷。練習試合、マジで勝ちたいんだ。海浜総合の雪柳綾奈、めっちゃ強いからさ】
【綾音、ね……】
麦野さん、綾奈は妹の名前、でも綾音のこと知ってるんだ。まぁ、バスケ部なら県内の強豪校のエースくらい知ってるか。私と綾音が中学一緒だった話、したっけ? まぁ、いいや。
【雪柳に勝ちたい。レギュラー取るには、あいつに勝たなきゃ】
麦野さんの声、熱い。なんか、雪ノ下さんと勝負してる私みたい。負けたくない、って気持ち、私もわかるよ。
【じゃあ、私、綾音の真似してみるよ。どんなプレーする?】
【マジ? 雪柳、スピードあってドライブがエグい。ディフェンスもガチガチ。1対1で抜くの、めっちゃ難しいんだ】
【ふーん、綾音らしいね。じゃ、やってみる】
麦野さん、ニヤッと笑う。私もちょっと笑っちゃう。綾音のプレー、中学で嫌ってほど見てきたから、なんとなく真似できそう。よし、やってみるか。
八幡の相手は誰が良いですか?
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1ー高橋雅史
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2ー葉山隼人
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3ー材木座義輝
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4ー戸部翔
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5ーその他