龍騎外伝 仮面ライダーモリオン   作:EpoMeta

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第12話「新たな参戦者」

 街中の噂によると、都市伝説に言う「仮面ライダー」は何人もいるそうです。でもそれがどこの誰なのかは、誰も知りません。

 

「ハッ!ヤッ!」

 人馬形態のシジルが目の前に立つライダーめがけ、手にしたオースピナーを突き出す。だが、その相手「仮面ライダーオグ」は手にした刀型召喚機「角召刀ゼネルバイザー」を巧みに扱い、その攻撃を凌いだ。

(武道のようなこの動き、やはりモンスターとは違いますわ……!)

 シジルは仮面の中で冷や汗を流す。しかしオグの攻撃は止まらない。面、突き、小手。ゼネルバイザーの切っ先が人馬形態と化したシジルの身体に迫る。

「どうした!こんなもんなのか!ライダーってのは!」

 オグはそう叫ぶと、中段に構えた刀を振り降ろした鋭い一閃でオースピナーを弾き飛ばした。手から離れたオースピナーが地面に突き刺さる。

「ッ!やってくれましたわね!」

 シジルは大きく前脚を振り上げると、蹄鉄を思い切りオグへと蹴り込んだ。その蹴りを受けてのけぞるオグ。

「……なるほど、防御力はこんなところか」

 しかし、オグは冷静に自身のダメージを観察する。おそらく、生身のままでは胴体が吹っ飛んでいたであろう一撃だったが、ライダーとして強化された肉体や装甲では、この程度は軽微な傷でしかなかった。この身体は違うのだ。脆弱な人間とは違う。

 

「防御力が自慢、ということかしら?契約モンスターと同じで?」

 目の前に立つオグとログゼネルを見ながら、しかしシジルは表面上は落ち着いていた。静かな口調でそう言うと、腰のカードデッキからさらにカードを抜く。

『GUARD VENT』

 電子音声と共に、シジルの腕にオースメアリーの鬣を巻いたような巨大な盾「オースクウェア」が装備される。その盾を構えシジルはオグに相対する。

「なるほど、カードはそう使うのか」

 オグもカードをデッキから引き抜くと、見よう見まねで召喚機へと読み込ませた。

『SWORD VENT』

 オグの両腕にはログゼネルの角を模した二本の七支刀「ゼネルブレード」が握られた。

「二刀流……!海外の選手がやっているのは見たが」

 オグはそう呟くと重心を落とし、両手の刀を下段に構えた待ちの態勢を取った。

「行きますわよ」

 静かにそう告げると、シジルは手にしたオースバイザーを構えオグへと襲い掛かった。その高速の一撃がオグの身体へと迫る。

「見えるぞッ!」

 だがその一閃にオグは対応し、手にした二刀で弾き飛ばした。

「まだッ!」

 しかし、シジルの狙いは攻撃ではなかった。弾かれた勢いを利用し、飛ばされていたオースピナーを回収、装備し直す。そしてシジルはそのまま再度オグ向けて突撃する。

「ウオッ!」

 アクセルベントの加速により音速を超えるスピードで突撃するシジル。先程とは段違いの速度に、オグは対応しきれない。かろうじて致命傷こそ避けているが、その身体には次第に傷が増えていった。

 

「ヤバいぜ……。何かオレにも手がないか!」

 シジルの勢いに押され膝をつくオグであったが、攻撃の合間を縫って何とかカードを発動した。焦りを隠せないまま、そのカードを装填する。

『FREEZE VENT』

 電子音声が鳴り響くと、ゼネルバイザーの刃から強烈な冷気がシジル向けて放たれた。その直撃を受けると、シジルの下半身が次第の凍結していく。

「えっ何これ!?動けない!」 

 何とか動こうと力を込めるシジルであったが、全く身動きが取れない。それどころか、次第に氷が上半身に迫りつつあった。

「素早くても、動きを封じてしまえば」

 両手のゼネルブレードを構え警戒しながら、オグはシジルに恐る恐る近づいた。

 おそらく態度や言動から、最近ライダーとなったばかりの人物なのだろう。しかしそうした初心者に追い詰められた事実に、シジルは内心恐怖と悔しさがあった。

(まさか、ここであたしは死ぬのかしら?そんな、まだ何かできるはず)

 かろうじて動く手を使い、オースバイザーに手を伸ばすシジル。

(こんな人を殺すことを何とも思っていないような奴に!)

 シジルは意を決すると、手にしたオースバイザーとオースピナーを凍結した下半身であるオースエンターに何度も突き立てた。

「!?何してんだ!」

「はあああっ!」

 火花を散らしながら、凍結したオースエンターが砕け散る。そして拘束から脱したシジルは盾であるオースクウェアをオグ向けて投げつけ、大きく距離を取った。

「って!投げてくんのかよ!」

 手にした刀を振り回して悪態をつくオグを、シジルは睨みつける。しかし低体温によるダメージは大きく、彼女は肩を大きく上下させて荒い息を吐いていた。

「けど、オレも戦いに慣れてきた。この調子ならお前だけじゃなく他の奴らも倒せそうだ」

 そう言うとオグは刀をシジルに向け突き付ける。その切先をシジルの仮面の奥の瞳が睨んだ。

 

『SHOOT VENT』

 不意に、彼女らの耳に第三者からの電子音声が鳴り響いた。その音の方向を振り向いたオグに無数の弾丸が襲い掛かった。

「聞き捨てならないわね。不意打ちで斬りかかっておきながら、わたしたちに勝てるだなんて」

「……黒井先生」

 ダメージを負ったシジルを庇うように、仮面ライダーモリオンが戦場へと降り立った。その左腕から肩にはヒドゥンスキャッターが装備されている。

「また別のライダーか……。お前確かリーダー的な奴だろ?いいぜ、オレは受けて立つ」

 オグはモリオンに対し挑発的にそう言うと、両手のゼネルブレードを下段に構え、臨戦態勢を取った。モリオンはヒドゥンスキャッターの銃口を向けながら、オグの言葉を考えていた。

(オレは受けて立つ、か……。最近どこかで聞いたような気がするわ)

「二対一でも余裕そうね?殺し合いなのに」

 半笑いでモリオンはそう吐き捨てた。だが、その言葉を意に介さずオグはその刀を彼女らに向け続け、じりじりとすり足で迫る。

「殺し合いだからなんだ。オレは命がけの戦いがしたいんだ!」

 そう叫ぶとオグはモリオンへと勢いよく斬りかかった。そしてそのままオグは続ける。

「ライダー同士の殺し合いに勝ち残れば、どんな願いも叶うらしいな!」

「ええ、そうらしいわね」

「そんな戦いに引き寄せられるような必死な奴らなら、命がけの戦いができる!オレはそう思ってるよ!」

 二本の刀が重なった重い一撃を、モリオンはヒドゥンスキャッターで受け止める。そしてそのままヒドゥンスキャッターの引き金を引き、無数の銃弾をオグへと浴びせかける。

「……リーダー格なだけあって、アンタの力は格別みたいだな。けど二人がかりでもオレを殺せなかった」

 大きく吹き飛ばされたオグだったが、その重装甲が彼を守り致命的なダメージは無いようだった。

「今ここでケリをつけちまうのは早い、いずれアンタとは決着をつけてやる」

 そう言い残すと、オグはモリオンらに背を向けて立ち去った。間もなくログゼネルもどこかへと消える。その様子を彼女らは見つめていた。

 

「また面倒な人が増えたわね、理々恵ちゃん?」

「そうですわね、黒井先生」

 埃を払うようにして立ち上がったシジルにモリオンはそう話しかけた。しかしシジルは冷淡な口調で言葉を返す。

「……これで恩を売った、などとは思わないでくださいまし」

「そんなことはないわ。患者を助けるのは医者の当然の義務よ」

「義務……」

 そう語るモリオンを、シジルは仮面の奥の瞳で見据えた。

「とりあえずは早く戻りましょう。さっきのお友達も待たせてるんでしょう?」

「……そうですわね」

 無意識に、シジルはその拳を強く握りしめていた。それに気づいたモリオンは彼女の拳を自身の手で覆った。

「!?黒井先生、何のつもり!」

「理々恵ちゃんは大丈夫、今日も生き延びたわ……。わたしがいる限り、あなたは死なないわ、絶対」

「!?」

 そう言うとモリオンは凍えて震えるシジルの身体を強く抱きしめた。その行為はシジル本人を思いやってのことのように見えたし、黒井本人も本心はともかくそうした目的としての行為であった。

 しかし白沢はその仮面の中でどこまでも冷徹に、むしろ他人事のように冷たい目をしていた。自分を見据える瞳を遮るその仮面の奥で小さくため息をつく。

(ああ……また『コレ』ですわ、この人の目。どこまでもあたしを支配しようとしている、黒井先生は)

 自分を抱き寄せるモリオンの腕は、白沢にとって自身を縛り付け、もがけばもがくほど強く締め付ける重い鎖のように感じられた。その鎖を解く方法は、まるで見当がつかなかった。

 その白沢の内心を、黒井は気づいているのか。目の部分だけが大きく開かれた、不気味なペストマスクのようなモリオンの仮面の奥で、黒井は何を考えているのだろうか。

 

「ごめんなさい、お待たせしましたわね」

 同級生たちが待つカフェの扉を開けた白沢はいつも通りに努めてそう言った。その声に彼女らが振り向く。

「え、姫……。めっちゃ顔色悪いけど大丈夫?」

 少女の一人が心配げに白沢に話しかけた。もう一人も不安そうな表情を浮かべている。彼女らのその様子に、白沢は不思議そうな声を上げた。

「え?あたしが?」

 彼女らの言葉に、思わず白沢は窓ガラスに映る自分の姿を見た。

 そこに映っていたのは、青ざめた肌にうつろな目でぼんやりと立つ少女の姿だった。それは紛れもなく白沢理々恵その人であったが、彼女はその少女の姿を自分だとは認められなかった。

「本当に大丈夫?姫?」

 白沢を心配し、もう一人の少女が声をかける。しかしその言葉は白沢の耳には届かなかった。先程まで戦っていたこともあるが、オグのフリーズベントによる低温攻撃が、その身体のダメージに尾を引いていた。

 しばしその場に呆然と立ちすくむ白沢を前に、少女たちはどうしたらよいのか分からずお互いに顔を見合わせた。白沢が思っている以上に、彼女の身体は弱っていた。太陽が沈み、次第に窓の外は暗くなっている。

 

「おーい!黒井!」

「青池さん、割と時間通りね」

「俺は結構時間を守るタイプなんだよ、こう見えても」

 赤い夕陽がビルの輪郭を照らす黄昏時に、街の繁華街で黒井と青池は昨日同様に再会した。腕時計を確認しながら、青池は黒井に尋ねる。

「それで昨日の名札持ってきてるよな?」

「もちろん。これがなければ会う動機もないわ」

 そう返すと、黒井は懐から首掛けが伸びる名札を取り出した。それを青池は確認する。

「よし、ちゃんとあるな。それじゃあとっとと返しに行こうぜ」

「ええ、そうね」

 青池と黒井は並んで繁華街の歩道を歩きだした。まだわずかに空の端は明るい。

「青池さん、最近モンスターと戦ってる?」

「まあできる限り戦ってるけどよ。どうかしたのか?」

 横断歩道の前で二人は歩みを止めた。道路を何台もの車が横切っていく。それらを眺めながら黒井は呟いた。

「さっき、別のライダーと戦ったわ。理々恵ちゃんも一緒よ」

「え!マジかよ!どんな奴だった!?」

 驚きの声を上げた青池は、黒井にそのライダーの情報を質問する。それに黒井は静かに答える。

「あなたと同じ接近戦タイプね。声色からして男性。モンスターは二足歩行型。敵を凍らせるカードを使うそうよ」

「氷のカード……。確か前に緑川が使ってたな」

 その言葉に反応した黒井は、思わず青池の方を見た。

「緑川さんが?知ってたの、そのカード?」

 黒井の鋭い目線が青池に向けられる。だが、それには気づかず青池は目の前を横切る車列をぼんやりと見たまま答えた。

「いや、何かランダムで効果が決まるカードらしいぜ。俺もそこはよく分からん」

「そう……。色々なカードがあるのね」

 そう言うと黒井は少しだけ下を見ながら考え込んだ。そしてふと何かを思いついたように顔を上げた。そしてごく自然な流れで言葉を続ける。

「そう言えば青池さんはどんなカードを持ってるの?」

「そうだな……。そんな変なカードはないけど、基本的にモンスター出すのと剣出す奴と盾出す奴、あと必殺技ぐらいかな」

 この時の青池の行動はうかつだった。黒井のたくらみに気づかず、文字通り自分の手札を全て晒してしまったのである。

「そう……。ちゃんとしたデッキね」

 青池の返答を聞き、黒井はそう言うと目を伏せて小さくため息をついた。

 

「理々恵ちゃんだけど」

「え、白沢がどうかしたのか?」

 横断歩道が青信号になる。車を確認し道路を渡りながら黒井は小さな声で切り出した。

「本人は強がってるけど……あんまり体調がよくないわ。ミラーワールドで見た時とか、不思議な点はなかったかしら?」

「白沢が?」

 確かに、青池は白沢のメイドである黛から病気については聞いていた。だが、まさかそこまで深刻な状況にあるとはまるで考えていなかった。青池が思い浮かべる白沢の姿は、いつも高飛車で高圧的な、そしてどこか儚い少女であった。

「わたしもできる限り理々恵ちゃんの様子を見ているんだけど、青池さんも気を付けてもらえないかしら?」

 普段通りの口調で黒井はそのまま続ける。

「かりそめの同盟だけどね……。だけどそんなお願いができるのは同盟相手だけだわ。ライダーも増えてきてるし」

 黒井のその言葉に青池はしばし考え込んだ。二人分の足音が彼らの周りに響く。しばらく歩いた後、青池は重い口を開いた。

「……俺にできることなら。だけどあんたに言われたからじゃあない。俺がやりたいことをやる」

 青池の言葉を聞き、黒井はその表情を緩め彼の顔を見た。その眼差しに青池はどきりとした。

「ありがとう。あなたのそういうところ、緑川さんの友達って感じがするわ」

「……そうかよ、誉め言葉として受け取っておくわ」

 青池の言葉に、黒井は静かに笑うと目の前の建物に目線をやった。

「さて、着いたわよ。今日は出勤日かしら」

 そう言うと黒井と青池は、目の前に立つ居酒屋ののれんをくぐった。

 

 青年は焦っていた。小刻みに息を吐きながら繁華街の歩道を走っていた。バイトのシフトに遅れそうだからである。

「足止めを喰らっちまった。間に合うかな……」

 横断歩道の信号待ちをしながら、青年は携帯電話で時刻を確認する。このペースで走っていけばバイトの時間には間に合いそうだ。

 だが、立ち止まった青年の身体の中では心臓が力強く拍動していた。じんわりと全身に熱気が渦巻いている。

(さっきの戦い……!あれがオレの望んだ『本物』の戦いか……!)

 青年は静かに目を閉じ、先程経験した風景を思い出した。異形の戦闘甲冑に身を包み、同じく武装した戦士たちと、誰の邪魔も入らない鏡の中の世界で存分に殺し合うその戦い!青年はその情景に興奮していた。

(最初の小さいケンタウロスはまあそれなりだったが、後から来た二人目の黒い奴。アイツは良かったな。前見た時は他にも青い剣士と緑の戦士がいたはずだ。そいつらとも戦えんのかな)

 今でも剣戟の感触が手に残っている。命を取り合ったその感触を逃がさないように、青年は強く手を握りこんだ。

 信号が青になった。軽く息を整えると、青年はバイト先の居酒屋向けて駆け出した。

 

「おはようございます」

「加賀谷さん、おはよう」

 居酒屋の裏手からスタッフ用のロッカー室に入った青年「加賀谷 晴輝(かがや はるき)」は、同僚のスタッフに挨拶をかわした。そして彼はそのまま身支度を整えようと、バッグから着替えを取り出した。

「?あれ、名札……」

 バッグを開いた加賀谷であったが、そこに自分の名札がないことに気づいた。驚いた様子で彼はバックのポケットを開けて確認する。

「おかしいな……。オレの名札知りません?」

 加賀谷の問いかけに、店先から戻ってきた店長が答えた。

「ああ、それならさっき親切なお客さんが届けてくれたよ。まだいると思うから、お礼言っときな!あっちの席」

「あ、はい」

 着替えを済ませた加賀谷は店長の指示に従い、店先に出ると名札を届けてくれたという客の元へ向かった。

「すみません、名札届けてもらったみたいなんですけど」

 そう言いながら加賀谷は個室の扉を開けた。

「!お前らは昨日の」

 加賀谷の目に入ってきたのは、昨日の喧嘩の際に見かけた男女、黒井と青池だった。黒井は加賀谷の顔を確認すると静かに微笑んだ。

「こんばんは。加賀谷さん?でよかったかしら?名札、届いたみたいでよかった。ねえ、青池さん?」

「そうだな、とりあえず無事届いたみたいでよかったぜ」

「はぁ……」

 黒井は青池と談笑しながら加賀谷の方を見てあいさつした。それに彼は生返事を返す。その様子を見ながら黒井は懐のポケットに手をやった。

「ところで、加賀谷さん?こんなの知ってるかしら?」

「っておい!黒井!」

 そう言うと黒井は自らのカードデッキを取り出し、加賀谷に見せつけた。その行動に青池は驚きを隠せない。だが、加賀谷はあくまで表面的には落ち着いた様子で、ズボンのポケットからカードデッキを取り出し、黒井らに見せた。その行為に、加賀谷は顔をひきつらせた。

 

「……なんでオレだとわかった?」

「そうだぜ、何でこいつがそうだってわかったんだよ」

 冷たい口調で加賀谷が黒井に問いかける。その問いかけに青池も言葉を続ける。その二人を前に黒井は口を開いた。

「まあ、そうね……。加賀谷さん、あなたの『癖』かしら?」

「癖?オレの?」

 不思議そうな表情を浮かべる加賀谷を見ながら、黒井は続ける。

「喧嘩の時の身のこなしとミラーワールドでの身のこなしに共通する癖があったわ。これは青池さんは見ていないから何とも言えないと思うけど、多分東洋系の武術。間合いの取り方に特徴があるわ」

 沈黙を返す加賀谷に対し、少しだけ間を空けてから黒井は続けた。

「具体的には剣道かしら?直線的な接近に、二刀流とはいえ狙いが有効打に集中していたわ」

 そう言うと黒井は手元の携帯を操作し、ある動画を見せた。そこには先程のモリオンとオグの対決シーンが撮影されていた。確かに、黒井の言うようにオグの剣戟は顔や胴、前腕部に集中していた。

「撮ってたのかよ……!そういうのあるなら俺にも見せといてくれよ」

「もちろん撮ってるわ。モンスターの攻略本も、わたしの契約モンスターに頼んで写真を撮ってもらってるんだから」

 その小さな携帯画面を青池は覗き込みながら昨日の喧嘩を思い出していた。決め技こそ加賀谷の投げであったが、そこに至るまでの間合いの取り方や接近は、確かに共通するものがあった。

「けどよ、それは偶然の一致なんじゃないか?ただ単に、剣道経験者がライダーになったってだけかも。ほら、緑川だって中学時代は柔道やってたぜ」

 黒井の推理に青池が横から意見を入れる。しかし加賀谷はその横で無言を貫いていた。彼の様子を横目で観察しながら黒井は続ける。

「鋭いじゃない、その通りね。でも、一番そうかもって思ったのは、加賀谷さん、あなたの口癖かしら?」

「口癖?」

 黒井のその言葉に青池は不思議そうに声を上げる。

「ほら昨日、喧嘩の前に『オレは受けて立つ』って言ってたじゃない?変な言い回しだと思ったけど、さっきの戦いでわたしが出てきたときにも同じこと言ってたからもしかしてと思って」

 そう言いながら不敵に微笑む黒井に、加賀谷はようやくその重く閉ざされた口を開いた。

「……アンタ、一体何者なんだ?」

「わたし?わたしは黒井由利亜、何よりも命がだいすきなお医者さんよ。ふふ……」

 黒井の目元は細く微笑みを湛えている。その奥底の真っ黒な瞳が目の前に立つ新たな参戦者をひたすらに見つめていた。

 

―続―

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