神殺鎗は、神々の世界に生きる   作:レヴィ

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#10 You are a lot like me

「おはようさん、()()ちゃん」

 

「……おはようございます」

 

開店前の店の清掃をしていたフレイヤに、普段通りの笑みを浮かべたギンが片手を挙げる。

昨日の今日でこの挨拶は良い性格をしているわね、という苛立ちを唾液と一緒に飲み込みながら挨拶を返したフレイヤだったが、ギンはその返事を聞きもせずにいつものようにフラッと外へ出て行こうとする。

フレイヤの握る箒の柄が、ミシリと音をたてる。

 

「……?シル、いつの間にイチマルさんと仲良くなったのですか?」

 

絶対に何処かで痛い目を見せてやる、と意気込むシルの背からリューがひょこっと顔を出す。

 

「あ、あはは……昨日ちょっと、外で会う機会があって」

 

「シル、変なことされてないニャ!?どこかに連れ込まれてないよニャ!?」

 

「男は皆ケダモノニャ!あんな何考えてるか分からない顔をしてる割に、可愛い可愛いシルにあんなことやこんなことを……!」

 

「されてないから」

 

面白そうな雰囲気を嗅ぎつけたアーニャとクロエが茶々を入れる。

されてるワケないじゃない!と、フレイヤの握る箒がバキッと音をたてて折れた。

 

「本当に大丈夫だったの?なんか、含みのある挨拶だったけど」

 

「大丈夫だよ?」

 

面白がる二人とは逆に、ギンの出て行ったドアを心配そうに見つめるルノア。

 

「手に怪我はないですか?木の破片が刺さったりは……」

 

「大丈夫。ありがとう、リュー」

 

「ああ、シルの純潔はもう……」

 

「落ち着くニャ……悲しいけど、それが現実なら受け入れるニャ……」

 

「怒るよ?」

 

舞台のような大仰な身振り手振りで泣き崩れるふりをするアーニャとクロエをシルが睨みつける。

そんな猫二匹の額に、厨房から飛んできたお玉がクリーンヒットする。

 

「バカばっかりやってるんじゃないよ!そろそろ怪物祭なんだから、キビキビ働きな!」

 

ミアの怒鳴り声に、目を回して倒れるアーニャとクロエを放って他の従業員は仕事を再開するのだった。

 

 

 

 

 

#10 You are a lot like me

 

 

 

 

 

「うー、頭痛ぁ……」

 

「飲み過ぎるからだ」

 

執務室のソファにだらしなく寝転がるロキを、リヴェリアが呆れたような声色で窘める。

先の遠征で使ったポーション等の消耗品や武器の修理の経費を計算していたフィンは、トンと机で書類の角を纏めてファイルに挟み込む。

 

「終わったよ。待たせたね」

 

「早いな、フィン。確かに私が手伝う必要はなかったみたいだな」

 

「書類仕事も慣れたものさ」

 

机に積まれた書類の山を手伝おうとしていたリヴェリアを『十分で終わるから大丈夫』と断っていたフィン。

きっかり十分で終わらせ、手に付いたインクをハンカチで拭いながら紅茶を飲む。

 

「で、何だっけ?」

 

「あぁ。フレイヤはあのイチマルとかいうヒューマンと何かしら関係があるのは間違いないわ。昨日の神の宴で『ソウルソサエティ』って何か訊いてきたからな。このタイミングっちゅーことは、間違いなくイチマルから聞いたんやろ」

 

「なるほどねぇ……」

 

「それは少し困るな……」

 

フィンとリヴェリアはそれぞれ上を向いて思案を始める。

 

「イチマルの目的が分からん以上詳しくは分からんけど、最悪なのはフレイヤとイチマルが協力しとった時や。ただでさえ向こうにはオッタルが居るのに、フィン達がサブイボ立つようなイチマルまで仲間に引き込んどったらいよいよ手が付けられなくなる可能性があるわ」

 

「どこかで監視下に置けたら、と思っていたけど……対応が遅れたかな」

 

ムムムと唸る三人。

しばらくそのままだったが、ふとリヴェリアがとある可能性に気付いた。

 

「……なあロキ。フレイヤは()()()きたのだったな?」

 

「ん?ああ、そうやけど」

 

「もしイチマルがフレイヤ・ファミリアに入っていたとしたら『訊く』のはおかしいんじゃないのか?」

 

「どういうことだい、リヴェリア?」

 

「いや、あくまで可能性の話だが……もしイチマルがフレイヤ・ファミリアに入っていたら、主神であるフレイヤにソウルソサエティについて説明をするはずじゃないか?」

 

「……確かにそうやな」

 

リヴェリアの説明に、ロキとフィンも頷く。

 

「となると、イチマルはフレイヤ・ファミリアの仲間ではない、と考えても良いんじゃないか?現にイチマルはウチにもソウルソサエティについて訊きに来ただろう?フレイヤ・ファミリアにも訊きに行ったんじゃないか?」

 

「なるほどなぁ……ううん……?」

 

でも、得体の知れん部外者とそう簡単に会うか?あのフレイヤやぞ?

筋の通ったリヴェリアの説明に納得しながらも、フレイヤという神について良く知るロキは別の疑問が浮かんでいた。

 

「僕はリヴェリアの今の推測は粗方正しいんじゃないかと思う。ロキは?」

 

「うーん……うちも筋は通っとると思う。ただ、あのフレイヤがイチマルと直接会ったとは思えんわ」

 

「なるほど……確かにそうかもね」

 

またも会議が行き詰まる。

 

「……とにかく、怪物祭の日にアイズたんをフレイヤに紹介することになっとる。近々不穏な動きも見せとるし、いっぺん問い詰めてみるわ。口を割るとも思えんけどな」

 

「頼むよロキ。僕も一度、イチマルと接触してみようと思う」

 

「大丈夫なのか?」

 

「うん。出会ってすぐに殺してくるような人ではないだろうしね」

 

「だーんちょーう!聞いてよー!」

 

バアン!という凄まじい音と共に執務室のドアが開け放たれ、半べそをかいたティオナが弾丸のように突っ込んでくる。

アマゾネスの突進など受けていられない小人族のフィンは紙一重でそれを躱し、壁に激突したティオナにハンカチを差し出す。

 

「団長!聞いてよ!ティオネが酷いんだ……って、あれ?みんなで話し合い?」

 

「……まぁ、そうだね」

 

フィンは言ったはずなんだけどなぁ、と思いながらも、天真爛漫に笑うティオナの頭を優しく撫でる。

そして会議のあらましを軽く伝えると、ティオナは『ほほう』と唸った。

 

「フレイヤ様がイチマルに弱みでも握られてるってのはない?」

 

「あのフレイヤがかいな」

 

あるわけないやろ。

ロキはティオナの意見を一蹴した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、何や、あれ?」

 

いつものようにオラリオ街中をぶらぶらと歩いていたギンは、ギルド近くで、大小様々な大きさの箱がカートに乗せられ運搬されている様子を見かける。

ジッと動かない物もあれば、中からガンガンと箱を叩く音が聞こえる物もある。

 

「やあ、奇遇だね」

 

「ん?」

 

「僕のこと覚えてるかな」

 

「……あ、ロキ・ファミリアのところに居った」

 

「そう。ロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナさ。自由に呼んでもらって構わないよ」

 

箱が運ばれる様を眺めていたギンに、フィンが話しかける。

『奇遇だね』と言いつつも、接触のためギンを探していたフィンだった。

 

「団長さんはなしてこんなところに?」

 

「僕はギルドに用事があってね。今終わって、帰るところさ。君こそ何故こんなところに?」

 

真っ赤な嘘である。

 

「ぶらぶら散歩しとっただけや」

 

フィンと違い嘘をつく理由のないギンは素直に答える。

コロッセオへ運び込まれるカートをギンが目で追っていることに気付いたフィン。

 

「あぁ、そろそろ怪物祭の時期だからね」

 

「怪物祭?」

 

「あれ、知らないのかい?年に一度オラリオで開催される祭りさ。コロッセオでモンスター同士の戦いを見る祭りだよ」

 

「それ、何がおもろいんや?」

 

「人それぞれじゃないかな。まぁ、それなりに迫力はあるよ。それより、怪物祭を知らないってことは、イチマルは最近オラリオに来たのかい?」

 

「そうやな」

 

「なるほどね。前は何処に居たんだい?」

 

「尸魂界。前に訊いた場所や」

 

……何というか、思ってたりも嘘をついているようには見えないな。

それが、ギンと何度かやり取りを交わしたフィンの感想だった。

 

「着ている服装からするに極東生まれかと思ったのだけど、違うのかい?」

 

「どうやろ。多分違うんとちゃうかなァ」

 

「どこのファミリアに所属してるんだい?」

 

「何処にも所属しとらん。豊穣の女主人ちゅう店に居候しとる」

 

「はぁ……ダンジョンに潜ろうとは思わないのかい?」

 

「別に思わんなァ」

 

表情を変えることもなく言い放ったギンは、ぐるりと顔だけをフィンに向けた。

 

「団長さんは何でダンジョンに?」

 

「……僕は、小人族の再興が目的さ。僕達小人族はこの身なりから何かと差別される機会が多くてね。そんな小人族がダンジョンで名声をあげたとなったら、もう誰も差別しないだろう?」

 

「なるほどなァ」

 

「……君は何が目的だい?」

 

ギンからの質問を逆に利用したフィンが本題に切り込む。

ギンがフレイヤ・ファミリアと何故接触したのか。それを知ることが、フィンの今の目的だった。

 

「目的……何やろな」

 

しかし、フィンの予想とは違い、ギンの返事は歯切れの悪いものだった。

斬魄刀を抜く様子すら見せず、ただぼんやりと、虚空を見つめる。

 

「……ボクは何故自分が生きているのか。それが知りたいだけや」

 

たっぷり時間をかけてギンの出した答えはそれだった。

一度は藍染に殺されたはずの自分が何故生きているのか。

オラリオにおけるギンの目的は、彼がどれだけ絞ってもそれだけだった。

 

「何故生きているのか、か……難しい問いだね。哲学的だ」

 

明確な目的を持つフィンにとって、ギンの感情は分かりづらいものだった。

だが、そんなフィンは、ギンに身近な感情を抱き始めてもいた。

 

「……君は僕と少し似てるような気がするんだ。君もかつては、目的を持っていたんじゃないのかい?」

 

「昔の話や」

 

フィンは、小さく俯いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうだった?」

 

ギンとフィンのやり取りをカフェから見ていたリヴェリアは、どこか満足そうなフィンの表情に安堵する。

 

「どうだろうね。これといったことは聞き出せなかったよ。フレイヤ・ファミリアには入ってないということくらいかな」

 

「そうか……」

 

「ただ……彼にも伝えたけど、僕と彼はどこか似ている気がしたよ」

 

フィンはコーヒーを注文すると、脚のつかない椅子に深く腰掛けた。

 

「だからこそ、かな」

 

「?」

 

「彼が目的を持ってしまった時。それが怖いね。彼は恐らく、僕よりも過激だよ。自分の目的のためなら、偽りの仮面を被ることなど厭わないだろうね」

 

三日後に迫った怪物祭に向けて沸く民衆の中でも、フィンの声は良く通った。

 

「自分の目的のためなら、殺しだってする。あれは、そんな目だ」

 




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評価してくださり、ありがとうございました!

そして#8からになりますが、感想への返信をやめさせていただきます。
理由としては、どうしても今後の展開に繋がりそうなことを私がぽろっと言ってしまいそうだからです。
ご連絡が遅れてしまい、申し訳ございません。
今後もこれまでと変わらず、感想及び評価は一つ一つ大切に読まさせていただいておりますので、気軽に沢山書いてくださると嬉しいです!
二次創作の書き手としてまだまだ若い私を、これからもよろしくお願いします!
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