節穴ならば不要だな───!
そもそも、相容れるはずもなかった。
究極的に言えば『神に近づく』ことを
いつかは皆輪廻を脱し、『仏となること』を
「
「
セイバーとランサーの清廉な剣戟。
英雄の素晴らしき技のぶつかり合いを見た者は多く、しかしそのほとんどが覗き見た者だった。
「─────なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れッ!!!」
隠れ潜む輩に征服王は檄を飛ばす。
これほどのものを見ておきながら自らの姿を晒す事すらしない臆病さを、彼は許容しない。
アサシンは動かない。そのマスターも、師匠たるアーチャーのマスターも。
セイバーの真のマスターもまた同じだ。
侮蔑がなんだ。名誉がなんだ。
彼らに目的あれど、最中に誇りは不要なのだ。
効率のため/貴族の優雅さのために、彼らはそれぞれの理由で姿を晒さなかった。
だが、その挑発に乗った者もいる。
「─────まさか、王を自称する不届者が一夜に二匹も現れるとは」
黄金の鎧を纏う彼は英雄王ギルガメッシュ。
紀元前2600年頃のウルクの王。
神々に『人と神を繋ぐ』為に作られ、しかしその役目を捨て人の時代を作った始まりの英雄。
遥かな未来、ヒトの終焉すら見届ける千里眼を持ちながら、己こそ最大唯一の王であると疑わない。
故に彼は現れた。己以外の有象無象が『王』を名乗ることなど、あってはならないのだ。
「………
嫌悪感を隠さず黄金の王は言う。
一部の、限られた存在でもなければ己の視界に入る価値すらない。
だと言うのに、全く足りていない者どもがこちらを見上げている。
「間引くか。散り際で
空間に開いた黄金の穴から、多種多様な武器が露出している。
そのどれもが宝具であり、当たればサーヴァントであろうとも致命傷を負うだろう。
「アイリスフィール、下がって!」
数十門の宝具の雨から、偽りとは言えマスターを守ろうとして───
「
突如として現れた男が、戦いの空気を切った。
「(この距離まで、気付けなかった───)」
セイバーのサーヴァント、騎士王アルトリア・ペンドラゴンは冷や汗を流す。
彼が言葉を発するまで、そこにいることを認識出来なかった。これ程までに存在感のある男を。
もしも敵意を持って襲われていたら。
私は、アイリスフィールを守れたか───?
「───フハハハハハハッ!」
「貴様、よりによってそのような───フハハハハハハッ!」
「笑い過ぎですよ、先輩」
「これが笑わずに居られるか!」
「天上に居座る傲慢な神仏どもが、よりによって貴様の身体を使うなど───!」
神仏ども。身体を使う。
聖杯戦争の規格では神霊は大きすぎる。
まさか、人の肉体に降霊………『神下ろし』をしたのだろうか?
だとするならば、これほどの存在感とそれを隠す技術にも納得出来る。
それこそ『神懸かり的』技術を使えば、如何様にも出来るだろう。
「これは………!」
使い魔を通じて状況を見ていた神父、言峰綺礼は新たなサーヴァントのステータスに驚く。
「綺礼。あのサーヴァントのステータスは?」
「………筋力、耐久、幸運が
「な───」
ステータスだけで言えば、英雄王すら超える。
いくら英雄王に無数の宝具があるとは言え、正面から戦うのはリスクが大きい。
「一度、撤退すべきか───」
「ち───興が削がれた」
そう言って、黄金の王は何処かへ立ち去った。
「あ、サイン欲しかったのに」
残されたのは、得体の知れないこの男。
「我が名は征服王イスカンダル。高僧よ、貴様の名は何という?」
「まさか、名乗れないはずなかろう?」
ライダーは男を問い詰める。
妙だ。
あの気配遮断、間違いなくアサシンのもの。
だが、この男がアサシンのはずがない。
神下ろしによって力を得たとしても、元は人間のはずだ。
あれほどのステータス、あり得るのはバーサーカーだが、そうは見えない。
「申し訳ないですが、名乗れません。クラスも言えません」
「代わりに情報を。バーサーカーもキャスターも居ません。この聖杯戦争はもう
「でも、それはおかしいわ」
聖杯の器であるアイリスフィールには、七騎のサーヴァントが召喚された事が分かっていた。
既に揃っているから、聖杯戦争は始まったのだ。
召喚された英霊が座に帰る前の受け皿であるアイリスフィールには、脱落した魂が貯まる。
「いいえ。八騎居ましたが、今存在しているのは六騎です」
「二騎は
「え───?」
八騎?融合?サーヴァントが?
いや、そもそも男自身は何者だ。キャスターではなく、バーサーカーでもない。
「何故そこまで知っている。名を明かせなくとも、情報源は言えるだろう?」
「
「更に言えば、
なんて事ないように、男は言い放つ。
「待て待て!百歩譲ってお前がサーヴァントの融合体だとして、お前を依代に召喚をしたのは!?」
「私です」
「どうなってるんだよーー!!」
「アルトちゃんが呼ばれるなんてね〜。キリ君も一緒にいじっちゃおっかなぁ!」
マスターではない。サーヴァントでもない。そんな存在が、聖杯を狙って冬木の外から訪れた。
フランチェスカ・プレラーティ。
ギリシャ神話の狂気の女神が世界に残した情報の波が物理的な実体を持った存在の一部であり、相手を弄り倒すのが趣味の魔術師。
穢れた聖杯、そして虐め甲斐のある存在に手を出すつもりで彼女は冬木まで来た。
「………あれ?お邪魔虫かな?」
目の前に突然、ある人影が見えた。
夜も深くなっているというのに、そこだけが明るい。街灯など無いのに。
「引き返してください。逃げるなら追いません」
聖杯に呼ばれたサーヴァントだろう。
そして、懐かしい
「おっどろき〜。なんで神さまが呼ばれてるの?もしかして、ヒマだったぁ?」
「
「それよりも、引き返してください。貴女が求めるものはありません」
肌で感じるこの神性。間違いなく高位の神霊だ。
おそらく、依代を使っているのだろう。
器であろう青年にも、人から外れた神聖さを感じる。かつて会った、あの聖処女のような───
「三度目です。今すぐ引き返しなさい」
「そんなにカリカリしないでよ〜。折角の現代だし、もっと楽しまないと損だよ?」
「特に、
ドサ。
「………あれ?あれれ?」
いつの間にか、自分は地面に倒れていた。
いつ取り出したのか、青年は剣を持っていた。
「二度も言わせるな。
「まあ、訂正しなくていい。代償は支払われた」
斬られた。倒れて数秒経ち、少しの間をおいてようやくその事実に気付いた。
「人を救うのはあくまでヒト。救世主は超常の存在などでは無い」
「故に、俺はヒトだ。俺がそう決めた」
光輪を背負って、天上からの光を浴びながら、剣を持つヒトはそう言った。
英雄王ギルガメッシュ
彼にとって王とは自分を指す言葉。
自分こそ至上にして絶対の王という認識を、彼は崩さない。
有象無象の顔など覚えていないが、千里眼で目が合った者は知っている。
あらゆる苦難を克服する権利があったというのに、ヒトを救うためにそれらを捨てた者を、当然彼は知っている。
だからこそ、笑った。
その男を
人類の裁定者が己ならば、その男こそが人類の
救済者だと、彼は知っている。
神仏
正直混ざっている状態は気に入らないが、それでもヒトで在り続ける◾️◾️◾️◾️に免じて見逃した。
天国のほう
神に近づく事が救済であるが故に、もう一人の救世主と相容れない。
あるのは互いの救世のぶつかり合いだけである。そして、その先には何も無い。
結局殴り合って戦った。
解脱のほう
仏になる事が救済であるが故に、もう一人の救世主と相容れない。
あるのは互いの救世のぶつかり合いだけである。そして、その先には何も無い。
結局殴り合って戦った。
フランチェスカ・プレラーティ
二度地雷を踏んだ。警告を無視した。
既に存在しない。
霊長王
生きる全てが霊長である。救済完了。
『彼』にとって現代ですら数千年前の出来事であり、今を生きる全てが先輩である。
彼らが自分の時代まで繋げてくれたから、あの大地は生き返ったのだ。
故に、彼は相手に敬意を持って接する。常に敬語を使うくらいには。
特に生前(まだ死んで無いが)参考にした人には最上級の尊敬を持つ。英雄王もその一人。
人と神を繋ぐことを望まれ、しかし神と人を分けた原初の英雄と、人殺しを星に望まれ、しかし人を救う道を選んだ『彼』。
当然バチバチに影響されている。というかファンである。サイン欲しかった。
俺が神仏?節穴だな。
誰に何を言われようと、己はヒトであるという認識を彼は絶対に崩さない。