その果ての
救世主がぶつかった。
結局、相打ちになった。
「………」
「………」
互いの『救世』の手段は違い、彼らは相容れない存在である。
しかし、彼らはヒトを救おうとしていた。
故に、この時点で彼らの意見は合致した。
───カラダが動く。
互いに器であるその体は、遥かな未来で『救世』を成し遂げた『本物の人間』の肉体。
地球の臨終という終末の後。本来あり得ないはずの『続き』。
世界が終わったその先に、彼は居る。
「「───」」
合わさる。重なる。
三位一体/三身即一の応用。究極の習合。
遥か未来で輝く
至聖三者を拡張/変容。
過去一万年の人類と、未来に発生するすべての人を彼は背負った。
三輪身の応用/濫用。
遥かな未来に蘇る者という共通点。
偉大なる父/
全知/大悟に至った人類の叡智。
類似性は共通点に。共通点は同一視に。
神ではなく、仏ではなく。
しかしてヒトの王である者、全てを救う者。
在り方を歪めて。その座を奪って。
時代が過ぎて
ヒトの交代は文化の交代。祈る者が変われば必然祈られる者もその姿を変える。
習合/変遷/折衷。
遥かな未来において、祈りを向けられる者。
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
カタチは
肉体から精神へ。精神から魂へ。
繋がる。溶け合う。それは一つに───!
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
冬木市郊外に広がる鬱蒼とした森。
アインツベルンが所有する屋敷、その門を神牛
が轢き壊す。
「なんのつもりだ、ライダー!」
「酒盛りだ!
「すなわち、聖杯
庭園。
適切に手入れされ、景観を損なわない植物たちが囲む広場に、
「おお、美味いなこの酒は!」
「当然だ。我が蔵には至高の財しかありえん」
「肉焼けましたよー」
すっかり楽しくパーティーをしている。
神代の美酒。黄金の王が出したそれは、至高の財に相応しい美味なものだった。
そして、肉。
これもまた黄金の王が出し、しかし処理を丸投げしたそれを、青年は芸術的なまでに調理した。
「………さて、場も温まって来た。ここで一つ、王のなんたるかを語ろうではないか」
「語ると言っても、一体なにを?」
当然の問題。
彼らは時代が、地域が、民が違う。
当然それぞれ異なった在り方を体現しているし、自国を基準にしては決着など着かないだろう。
「『王として現代に君臨するなら、どのような政策をするか』なんてどうですか?」
「現代では、統治者は投票で選ぶそうです。時代や地域が違っても、現代を基準にすれば平等じゃないですか?」
青年が提案する。
王としての格を競い合うため、現代を基準に『王として何をするか』というものを考える。
「ふむ、面白い。なら我から行こう!」
赤髪の偉丈夫は、大声で演説を始めた。
「我が政策、その第一は『世界征服』だ!」
「………」
マスターであるウェイバーはそれを黙って見る。
己のサーヴァントの果てしない夢。その熱量を間近で見た故に、それを笑うことはしない。
「余はかつての生で、西と東を繋げた!だがそれだけでは
「『果て』を見たいのだ!北を南を、オケアノスを、その先を!」
強欲の化身。
人の身でありながら世界を平らげんとするその夢は、しかし王と言えるカリスマがあった。
「ハ───貧しいとはそれだけで憐れよな」
「ほお?余の夢が『貧しい』と?」
世界征服が貧しい夢。
黄金の王は、そう斬り捨てる。
「この世は余さず
「
強欲を超えた傲慢。
ライダーの夢も常人には大言壮語だったが、アーチャーの言はそれすら超える。
或いは、狂を発したと思われるかも知れない。
「ならば、王としてこの現代にどう君臨するのだアーチャー?」
「さぞ素晴らしい案があるのだろう?」
騎士王は民に寄り添う王だった。
清廉潔白、質実剛健。
王として欲を出してはいけないという考えから、完全にアーチャーと対立していた。
「フン………」
黄金の王は酒器を回し、少し考えて。
「
「………は?」
「この時代は
「
傲慢の極みのような政策。
王であるというのに、民を苦しめ間引くと言ったその精神を騎士王は許せない。
「暴君にも程がある!民を死なせる王など、まともな政策とは言えない!」
「分からぬのかたわけ。今のまま増え続ければ、この星は限界になる」
古代王。人類史でも有数の頭脳を持つ彼は、その思考で未来を見る。
「食料を始めとした
「そら、数を減らすべきであろう?」
「くっ………!」
暴虐的な政策ではある。人道的ではない。
それを理解した騎士王は強く反論できない。かつての祖国でも、似たようなことがあったからだ。
不毛の大地に畑が作れず、戦の度に村は痩せ細り、消え去った。
兵士は疲弊し、身分に関係なく皆苦しんだ。
だが、それを避ける為と言って民を死なせるというのは本末転倒ではないか。
人を助けるために、人を殺すなんて。
「………私は王として、平和を齎そう」
「皆が笑って過ごせるような、そんな平和を」
まさに騎士道の具現。
人のために立ち上がった騎士王だからこその、美しく素晴らしい夢。
「平和など所詮一過性のものに過ぎん。数年続いたとして、人はまた争いを始める」
「っ!なぜ人を信じない!王ならば、民の幸せを願うものではないのか!?」
「お優しい騎士王を名乗る小娘に分からぬのも無理はない。これは王である者の責務だ」
「誰もが幸福を享受する世界など
黄金の王は騎士王を王と認めない。
どこまで行っても、自分だけが王なのだから。
「………あれ?」
肉を焼いていた青年が、ふと声を漏らす。
以前会った時のような神聖さはなく、ただのヒトのような雰囲気で。
しかし、どこか恐ろしい───
「もしかして、今、俺のこと」
「
蒼い眼が貫く。
「ねえ。馬鹿にした?」
そこには
星の核のような、あるいは太陽が燃えていると錯覚するような、そんな
「………は。貴様の場合は力が伴った。貴様はやり遂げた。それを嗤うつもりはない」
「この小娘は、弱く愚かだと言うのにお前と同じことを言っている。そら、笑い話だろう?」
黄金の王は狼狽えず、己が信念から生まれた言葉を吐き出す。
即ち、力と知恵の違いなのだと。
「えー、言い方酷いですよ。もっと優しく言ってください。子供が真似したら駄目でしょう」
「シドゥリのような口煩さだ。そういう貴様は王として何を成す?」
最後に、青年の話になった。
「現代で王になったら、俺は………」
「
「………え?」
何もしない、とは。
王としての役目を、果たさない………?
「
「平和なんて考えなくて良い。浪費の先なんて考えなくて良い。好きに生きれば良い」
ヒトの悪性の許容。
荒れていく世の中を、この男は全て
「この悍ましい世を許容するのか?」
「良いんですよ。消費文明のままで」
「奪って、殺して、侵して。好き勝手繁栄すればいい。色んな方向に発展すればいい」
「その果てに、滅びが待っていると言うのに?」
当然の理論。
人類のために消費したモノは失われる。失ったモノは帰ってこない。
その先には、滅びしかないのだ。
「
「星が死んだ後もまだ生き続けるような、それ程までに発展していたのならば」
「その先に、必ず
釈迦が傷つき、その血が岩に残った。その岩からとある猿が生まれたという逸話がある。
“俺は天と同じくらい偉い!”と言ったことから
斉天大聖という呼称が始まった。
救世主その1
戦った。相打ち。
だが、人々を救いたかった。
『三位一体』を拡張。救世主その1、2、3を纏めて一つの存在として確立させた。
人を救うため矜持を捨て、救世主その2と協力し、結果救世主その3を召喚した。
己の消滅寸前まで、人の幸福のために動いた。
なお救世主その3召喚時に復活している。
受肉済み。
救世主その2
戦った。相打ち。
だが、人々を救いたかった。
『三身即一』を応用。救世主その1、2、3を纏めて一つの存在として確立させた。
人を救うため矜持を捨て、救世主その1と協力し、結果救世主その3を召喚した。
己の消滅寸前まで、人の幸福のために動いた。
なお救世主その3召喚時に復活している。
受肉済み。
救世主その3
その1とその2が居た。空いた3つ目に座った。
三位一体/三身即一を体現した結果『その3が生きているなら1や2も居るはず』という理論が通り、
救世主1、2は復活した。
3つは一つに。1つは三つに。
馬鹿にされたら怒る。相手が誰でも関係ない。
基本的に彼は冷静なので、侮辱されたかの確認をしてくれる。今回のように。
彼は、民の幸福を願っている。
彼の存在自体が『人理が確かな証』であり、彼を存在させるには相応の発展が必要である。
これは英霊ではなく、『騎士王』の話。
人類が発展不足だと彼は生まれない。
どれほどの犠牲を払っても、彼が誕生すれば安上がりである。
誕生すればの話だが。