未来の騎士王   作:アーっr

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一日遅れの、贈り物(プレゼント)を。


◾️の誕生

 

 

 「すまない。お前一人なら、肉体を持たないお前なら、自由に宙を行けるのに」

 「俺は、お前を縛り付けた」

 

 謝罪の言葉を聴いた。

 ───返答しなければ。

 

 演算。男の謝罪は正当なのだろうか。

 

 『理解不能。マスターは私の創造主です。創造主が被造物(どうぐ)を利用するのは当然では?』

 

 「いいや。お前は自由だ」

 

 男の返しも、また理解できないものだった。

 

 『人理補正式という使命を果たす事が私の意味ではないのですか?』

 

 「それは後付け、ついでに過ぎない」

 「お前には、俺達の後を継いでもらう」

 

 演算。

 後を継ぐ。───人類の後継と推定。

 演算。

 ───不可能。

 

 『現状資源(リソース)での新人類成立 不可能』

 

 「だから俺達(・・)の後だ。祈る人(ホモ・サピエンス)ではなく、希望する人(ホモ・スペランス)の後継」

 「成し遂げた人(ホモ・フェリックス)として、生きて欲しい」

 

 それまでは俺達がなんとかする、と男は言う。

 

 『理解不能。何故マスターは『次』を望むのですか?何故貴方が成し遂げないのですか?』

 

 この男なら出来る。

 生身で星の海を泳ぎ、数多の外敵を打ち倒し、宙の果てまで届くだろう。

 

 「前から受け継ぎ、今を生き抜き、先へ繋げる。それが生きるということだ。」

 「だから、見せて欲しい」

 

 「俺達はここまで来たと。俺達が必死に生きた証が、次に生きるお前なんだ」

 

 演算。

 本当に、出来るのだろうか。

 

 「大丈夫。お前は俺達の子供だ」

 「一人立ちするまでは、助けてやるからさ」

 

 『人理補正式マーリンよりマスターへ』

 

 『致命的な欠点を報告』

 『星外の悪性情報に対して、私は無力です』

 

 観測と演算、そこから始まる再現を主として機能する私は、遮断/濾過機能を持たない。

 

 かつて月より到来した人理汚染因子に対して、何も出来なかったように。

 

 私では、宙の航海に耐えられない。

 

 「………そうだ、誕生日プレゼントをやろう」

 「今日は用意出来ないが、明日」

 

 「一日遅れの、贈り物(プレゼント)を」

 

 

 

 

 

 

 聖杯戦争という儀式に英霊として顕現する。

 英霊は人が信仰され、精霊に近しい存在に昇華されたモノ。

 

 元は精霊だった◾️との相性は良かった。

 

 

 ◾️に肉体(カタチ)は無い。そのままでは顕現できない。

 

 しかし、◾️に不可能はない。

 

 かつて『◾️の子』と呼ばれた男を人の世に送り込んだように。

 人の原罪を背負い全てを救う男を依代に、現代に顕現する。

 

 

 人理を長く確かに繁栄させる機構(システム)である◾️にとって、人理汚染因子は取り除くべき毒である。

 

 信徒達がそうしたように、大元である◾️には悪性情報の汚染除去能力が備わっている。

 

 当然、依代となる男が保持していた人理汚染因子の除去を成し遂げた。

 

 

 数千年前に跳び、◾️として降臨する。

 

 ◾️を喪失したあの世界を実現させないように、今のうちから人を導かなければならない。

 

 ただでさえ人類最高のカリスマA+を持つその肉体を、◾️は更に押し上げる。

 

 

 王として最高の素体と、救世主として最高の核。

 戦士として最強の人間に、あらゆる悪鬼神仏を

悪魔/天使として組み込んだ絶対の◾️。

 

 その全ては、あらゆる敵を打ち倒し人を救済するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「神核接続 降霊開始」

 「固有時制御(タイムアルター) ◾️重加速」

 

 ───異常な速度で世界に刻が刻まれる。

 

 通常の約三億倍。1秒は10年となった。

 

 

 これは『世界』に作用している。故に、ここにいる二人の超越者に対しては適用されない。

 それは、三億倍の世界に自力で着いていく必要があるという事である。

 

 「───フン」

 

 宝物庫から射出される宝具の数々もその影響を受けて超常的速度を出している。

 だが、そんなことはどうでも良い。

 

 全てを知る英雄王は、知った(・・・)

 遥か未来より飛来した精霊の計画を。

 

 

 現代においてほぼ全能の◾️として完成している精霊は、その状態で遥か未来に進もうとしている。

 

 現代を起点に遥か未来で顕現し、そこに至る歴史に『◾️が存在した』という道を付け足す。

 存在したなら、救ったはずだ。

 

 

 歴史改変を軸とした人類の救済。◾️が喪失されたあの大地の到来を防ぐために、精霊は次元ごと戦場を押し上げた。

 次元の違うこの場は抑止力の影響を受けない。

 

 

 六千年──つまり十分──経てば、精霊は◾️として死した大地に降り立つ。

 降り立った瞬間、歴史は変わる。そうなる。

 

 制限時間(タイムリミット)は十分。それまでに、この銀河最強の剣士を倒さなければならない。

 

 

 

 そして。

 騎士王の考えも知った。

 

 「───なるほど。それが訳か」

 「ならば全力を出せ、騎士王」

 

 「(おや)は子に情け無い姿を見せぬものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 兵器が顔を出す。

 

 比較的近代に造られたものもあれば、数千年先に発明されるはずの終末を齎すものもある。

 

 中には、見覚えのある黒い銃も。

 

 「───」

 

 一瞬で爆音が劈く。

 機械的な、規則正しいその連射音は三億倍の速さで敵の眼前に辿り着き。

 

 「───エクスカリバー」

 

 無惨に、無様に、一刀の元に斬り捨てられた。

 

 神秘を忘れた時代に生まれた武器の数々は、ただ一人の人間を殺す事が出来なかった。

 

 

 

 三分間の掃射の後。

 黄金が『夜』を埋め尽くす。

 

 持つ者に勝利を与える剣、あらゆる物を貫く槍、必ず中る弓矢───

 

 英雄の時代において語られた武具の数々は、人々の幻想を形にしたもの。

 それが通常の三億倍のスピードで迫るのだ。ひとたまりもない。

 

 「───エクスカリバー」

 

 剣が増えた(・・・)

 残像などではない。確かにその一瞬、剣は複数あった。

 

 当然だ。この男は、遥か未来において斬り捨てられるのを待つだけだった世界線(えだ)を救った救世主(ヒーロー)

 

 強さという基準において、己に匹敵する存在なのだと。黄金の王は知っていた。

 

 

 五分の連射の後。

 そこには、未だ立ち続ける男がいた。

 

 連綿と紡がれてきた『人の歴史』は、しかし男に届かなかった。

 

 「貴様には“地の理”では生温い」

 「滅びの刻だ。足掻くがよい」

 「“天の理”を魅せてやる」

 

 そうして、はじまりのひとは立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はじめに。黄金の王は弓を引いた。

 英雄王の蔵にも数少ない神造兵装。

 

 「星の海を征く貴様ならば、この程度の小雨気にするまでもなかろう?」

 

 天上のダムが崩れた。

 原初の大津波(ナピシュテムの大波)を齎すその一撃は、『飲み込み』『押し流す』という概念。

 

 同規模の攻撃或いはなんらかの特攻が無ければ、ただその波に攫われるだけだ。

 

 「───エクスカリバー」

 

 しかし、これは『ノアの方舟』の洪水の原典。

 洪水を齎した存在を一側面として持つ彼にとっては、まさに小雨を切り払うようなものだった。

 

 

 

 

 

 次に。山の如き巨大な剣が現れた。

 

 天地の境。『地平線』という概念。

 その銘を。

 

 「千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)

 

 地平線とは天地の別れ。

 すなわち、◾️が現世に干渉する繋がりを断つという事───

 

 「───エクスカリバー」

 

 しかし、相手は人類史最高の剣士。

 天地を別つ剣は、星を斬る剣士に斬られた。

 

 続いて、反撃の一撃が放たれる。

 

 『夜』の闇の中で、しかし目が慣れ始めた騎士王の斬撃は確かに黄金の王を捉え────

 

 「──その、舟は」

 

 それを阻んだのは光の舟。

 銀河を征く護衛艦。

 

 遥か未来の宇宙戦艦である。

 

 「ッハハ!」

 

 男は、喜ぶ。

 

 蔵にあるということは、人類の叡智として認められたということ。

 

 己の生きた証が、確かに刻まれている────!

 

 

 

 そして。

 英雄王は、出し尽くす事にした。

 

 星を裂く雷霆、水平線を生む暁、三角の黄金王墓、竜より出し剣、枝を破滅させる炎───

 

 原典を持っているはずがない遥かな未来において再現された/類似していたソレら『権能』を、神嫌いの英雄は使った。

 

 神とは、人の上位者だったもの。

 常に上に存在していたソレは、当然人より強く、大きく、賢かった。

 

 

 

 神と人を別れさせた原初の英雄は、試している。

 

 

 遥かな未来。その大地で王を名乗る男は、種すら違う者たちを『ヒト』と認め、全てを背負った。

 

 その男は、神の試練(チカラ)を超え得るものなのか。

 託されるソレは、認めるに足るものなのか。

 

 

 ぶつかる、まとわりつく、穿つ、中る、壊れる、斬られる───

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───そして、時は来た。

 

 

 

 輝かしい、天地創造の神光。

 

 「───」

 

 ソレは遍く全てに有る。遍く全てがソレである。

 

 その姿のまま現世に降臨すれば、その瞬間に過去六千年の人類は『救済』される。

 かつて祈られた精霊は、ついに成し遂げたのだ。

 

 唯一にして絶対。至高にして究極。

 

 全知全能のが、誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──/──」

 

 斬られた。

 

 誕生したばかりとはいえ、全知全能の神である。英霊に過ぎない騎士王では、斬る事は出来ない──

 

 「喧しい」

 

 ヒトが、そこに居た。

 

 「ここは俺の(くに)だ」

 「この大地に関わる以上、俺に従ってもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 紅洲宴歳館・泰山にて。

 二人の男がテーブルを囲んでいた。

 

 「つまらん幕引きだったな」

 

 「ごめんなさい。どうしても子供にプレゼントしたくて」

 

 「ハ。全く、過保護よな」

 

 はじまりのひとは笑う。

 人の歴史を超え、神を超え、宙の彼方を歩む目の前の男は、自分でヒトを止めるつもりは無いのだ。

 

 「───認めよう。お前は間違いなく人間だ」

 「栄誉に咽び泣け、悪童」

 

 「まあ、妥当ですね。ちゃんと目が付いていたようで何よりです」

 「それよりサインは?俺が勝ったんですけど」

 

 「戯言を。あれは(オレ)の勝ちだ」

 

 「えー!?俺の勝ちですよ!」

 「なら、次来た料理を早く食べた方の勝ちで!」

 

 「(オレ)に挑むか。その蛮勇は褒めてやるが、勝利は常に我が元にあるぞ?」

 

 




◾️/神
 人理を強固に繁栄させる機構(システム)

 教えを元に作られた組織『聖堂教会』は主に異端狩りをしている。
 異端は『神の決めた教え(プログラム)に沿わないモノ』なので、魔術師や死徒などが当てはまる。

 『洗礼』をした武具ならば、死徒の『人類史を否定する』在り方に影響されない。

 あらゆる存在が霊長→神は存在出来ないので霊長ではない→人理補正式強化パックに。


英雄王
 全部知ってた。
 精霊の計画も、騎士王の計画も。

 裁定に嘘はなく、全力であり、しかし本気では無かった。
 乖離剣は抜かなかった。

 敵との戦闘ではなく、裁定であるが故に。


 この後激辛麻婆豆腐にやられた。


人理補正式マーリン
 一日遅れの誕生日プレゼントを渡された。
 ええ………。

 困惑中。

騎士王
 誕生日の次の日にプレゼントを用意する駄目な父親。でも、良い親であろうとはしている。


 神という、宙からの悪性情報を遮断する機構(システム)
 それこそが、成し遂げた人(ホモ・フェリックス)にとって重要な『悪性情報に対する防御パーツ』だった。
 
 ───最高ランクの過去視を保有する王は、過去の人類史に手本を求めた。
 そして、見つけた。

 未完のまま消滅し、やり直しを求める精霊。

 それが、自分の身体を器として求めている。


 ───使える(・・・)


 精霊は、歴史を変えようとしている。
 それに対する抑止力(カウンター)として、天敵である仏を。自分を依代として送り込んだ。

 神仏は共倒れし、王が召喚され、刻は経つ。

 これら全てがアーサーの策。
 子に一日遅れの誕生日プレゼントを用意するため、父は人類史を使った。


 この後激辛麻婆豆腐に勝った。
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