寒い。
いや、本当に寒いわけではない。
彼──アーサーの辺り一面が氷で覆われており、そこに光は無く、まさに地獄と言えるような場所だった。
この程度、極寒の宇宙で生活できるアーサーにとってはなんら影響のないものだったが、思わず寒さを訴えた。
氷河期を思わせる寒波の中心、アーサーの目の前に『ソレ』が居た。
氷に封じられた『ソレ』は、アーサーに
そのために“話は通してある”とも。
なぜ、とは問わなかった。復讐なのだろう。
しかし、アーサーとしても丁度よかった。これで子供にプレゼントを用意できる。
彼らの目的は一致した。
『ソレ』の代理として、アーサーが神を追放する。追放した神を、アーサーが利用する。
偉大なる救世主への
謎のヒロインXの朝は早い。
「ほら、早く起きろ」
「むにゃむにゃ……あと1シーズン……」
「起きろバカ娘」
空気を読まぬ無粋な師匠、グランドセイバーを名乗る男が無理やり布団を剥ぎ取るのである。
「歯を磨け」
「むにゃむにゃ……やって〜」
「このガキ…………!おら、口開けろ!」
甘えていれば勝手に歯を磨く。厳しいが、便利な男である。
「お前も起きろバカ娘その2。いつまでも布団の中でぐっすりするな」
「むにゃむにゃ……甘味がなくて元気が出ません。甘味を所望します」
ついでに謎のヒロインXオルタの朝も早い。
えっちゃんは最初居なかったのだが、いつの間にか師匠が連れてきた。
犬猫じゃないんだからほいほい連れてこないで欲しい。
「飯食え。強くなれないぞ」
パンに色鮮やかな野菜、ジャムと少しの肉。
ご機嫌な朝食である。これで厳しさがなければ、彼を執事として雇いたいほどだった。
「はっ、セイ!」
「当てる気のない剣を振るな。今のお前にフェイントは早い。最低限の隙を突け」
毎日鍛錬をしている。
強くなっている実感はあるが、彼に追いつくビジョンが湧かない。
「もっと、必殺技的なものを期待していたのですが。そういうのないんですか?」
正直地味だ。最強というのだから、もっとド派手にセイバーをぶった斬る方法を教えてもらえると思っていた。
「ある。が、お前には無理だ」
「ええー。はっきり言いますね」
「無理なものは無理だ。お前では『槍』どころか魔剣すら再現できないだろう」
『槍』。聞く限り、魔剣よりすごいのだろう。
彼が武芸全般くらいに武を修めていることは知っているが、槍も特別得意なのだろうか?
「『槍』は格上殺しのために作った技だ」
「魔剣では対処できないほどの強敵を仮想敵に、それすら斃すための技。それが『槍』だ」
彼の魔剣は、存在規模に大きな差があれば無効化されてしまう。
現在の彼は宇宙並みなので、それを超える強敵がいるとは思えないが………。
「そんなことはない。宇宙の
「
宇宙をこの程度呼ばわり出来るのはこの男くらいのものだろう。向上心がありすぎる。
だが、興味が湧いた。
この男が『格上殺し』の技として確立したほどの、宇宙より強い敵を相手にするための『槍』。
一体、どのような───
「やあ。元気か?」
「───っ!」
咄嗟に銃の引き金を引く。
「………おっと、手厚い歓迎だな。安心しろ、今日はただ助言をしに来ただけだ」
お前には借りがあるからな、とその男は言う。
令呪を使用して、今すぐにでもセイバーを呼ぶべきか?いや、この男はその隙を見逃さない。
「口で説明するのも面倒だ───えい」
「───ッ!」
頭に直接知識が入る。
過去の風景、その詳細が衛宮切嗣の中にインストールされる。
「これ、は………」
理解した。今まで起こったことと、これから起こることを。
過去のアインツベルンの反則、それに伴って生じた聖杯の中に巣食う悪性。
「俺は
「だが、それは
「………僕に、何をしろと?」
「俺はお前に対して何も求めない。これは俺なりの
「『悪』を討つ
「───来たか、セイバー」
「
市民会館の中央に、黄金の杯を持った男がいた。
「貴方は───!」
聖剣を持った騎士王はその男を知っていた。いや、それには語弊がある。
何度か見かけたことはあったが、彼が何処の英霊なのか、真名どころか宝具すら分からない。
「
「逃げるなら追わない。お前がそのまま眺めるなら、それを許そう」
「戯言を………!」
強く反発するが、行動は慎重である。
この男の強さは直感で分かる。比較するならば、かつての卑王。
日中のガウェイン卿を一撃で打ちのめし、聖槍まで持ち出して漸く勝利できた怪物。
この男は、それに匹敵する。
「───令呪を持って我が傀儡に命ずる」
「っ!キリツグ!」
彼女のマスター、衛宮切嗣が令呪を使用する。
確かに、令呪によるバフはこの男を打ち倒すために必要だ。
だが、何かおかしい。彼女の直感は、見逃してはならない違和感を訴えている───!
「セイバー。聖杯を───」
「───
「な───何故だ!?」
男という障害を滅ぼすためでなく、聖杯そのものを破壊するために令呪を使用した───!?
「やめろ───キリツグ!令呪を止めろ!」
今ならまだ間に合う。令呪を使用したマスター本人が撤回をすれば、この強制力も消える!
「壊すのか? 俺の役目としては止めるべきなんだが───」
「重ねて命ずる───セイバー」
「やめろ!キリツグ、なぜこんなことを!」
今まで騎士道を無視して、無辜の民にすら影響が出るような作戦の数々。
ランサー陣営を陥れたように、彼は非道な行為を繰り返した。
しかしそれは、聖杯のためなのではないのか!?
「まあ、六千年分の『利息』があるからな。今回は見逃そう」
「やめろ───!」
「───聖杯を、破壊せよ」
泥が溢れた。悪は、呪いは人の街を焼き尽くし、そこに生きる全てを汚染するだろう。
「私が殺す 私が生かす 私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない」
全人類を殺す超級の呪いだ。神代の魔術師でもなければ完全に祓うことはできない。
「打ち砕かれよ」
「敗れたもの、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え」
───しかし、ここに例外が存在する。
「休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる」
これなるは悪魔祓い。聖書において地獄を巡り、悪魔を退けたとされる救世主。
「装うなかれ」
「許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を」
その正体が殻を被った精霊の欠片であったとしても、人々の信仰心が彼を押し上げる。
「休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう」
「永遠の命は、死の中でこそ、与えられる」
「────許しはここに 受肉した私が誓う」
「それは駄目だ。お前に手を貸すが、無辜の民に手を出すことは許さない」
『────“
「俺はこのまま冬木の外に行きます。ゆっくりと世界を見て、時が来たらまた来ます」
黄金の髪に碧と緋の
「今回は下らん結末だったな。だが、安心しろ」
「
返したのは、こちらも魔的な
その目には執着が、怨念とも言える“未来の愉悦”を追い求める
「では、その時はまた『勝負』ですね。悪魔を復活させる俺と、それを許さない先輩の」
「
救世主/唯一神
本来神霊であるそれは、聖杯戦争の規格には合わない。依代を用意したとしても、完全な召喚が成功するわけがない。
望まれたのだ。精霊に、悪魔に、そして人に。
『ソレ』
氷に封印された悪魔。赤き竜ともされる存在。
神の追放を望み、アーサーに代理を依頼した。
聖杯に関わる存在に『話を通した』らしい。
悪魔同士、気が合うのだろう。
聖杯に巣食う悪性
悪魔の王。生まれることを望む。
救世主召喚を許したのは、それに対抗して召喚される『仲間』を求めたから。
裏切られたんですけど!?
衛宮切嗣
魔術刻印を奪われたが、それによって生じた『貸し』によって悪を滅ぼす機会を得た。
おめでとう。君のおかげで世界は救われた。
英雄王
麻婆の恨み。絶殺。
次は
アーサー
騎士王。赤き竜の化身。清濁併せ呑む者。
六千年魔術刻印を借りパクしてた。
流石に返した。
『悪魔代理』の恩返しとして、聖杯に巣食う悪性を誕生させる筈だった。
恩があるから悪魔誕生に協力するが、
召喚の恩<六千年の借りパクの恩である。
衛宮切嗣に対しての恩返しとして、聖杯の破壊を見逃した。
『どこか』に行くだろう。そして、十年後──