未来の騎士王   作:アーっr

17 / 21
最大の戦績。何故救世主の資格があったか。
或いは、ヒトの肯定。


『究極の神』の否定者

 

 

 大いなる宙には、やはり理解の及ばない存在が多数いる。

 邪神と呼ばれる存在もその一つだった。

 

 そして今回のものは、特に。

 

 『人理補正式マーリンよりマスターへ』

 

 『観測宙域内の情報圧縮を確認』

 『空間歪曲度に極大の異常を検出』

 『時間流の変遷を察知』

 

 『宇宙大収縮(ビッグクランチ)が引き起こされています』

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは無限無窮の宇宙の最奥、あるいは外側。

 

 沸騰し湧き立つ原始の混沌の中心、あらゆる次元から切り離され、時間を超越した無明の閨房に坐す者がいる。

 盲目白痴にして全知全能、万物の創造主、すなわち魔王である。

 

 おお、見よ。外なる神どもがフルートを、オオボエを、そして野蛮な太鼓を演奏している。

 

 なんとも認め難いことに、この悍ましく冒涜的な宴は、その全てが“子守唄”なのだ。

 

 

 玉座に在るこの存在は宇宙を作った第一原因。

この邪神の、微睡の夢が今の世界なのである。

 

 つまりこの魔王が夢から覚めし時、この宇宙は泡のように弾けて消えるのだ。

 

 

 なんの因果か、魔王は目覚めようとしている。

 単なる偶然か、あるいは側に侍り全てを嗤う混沌の仕業か。

 

 何にせよこの宇宙は狭まっている。端の方から、表すなら“ギギギ“、だろうか。

 

 宇宙は物理法則が捻じ曲げられる音を立てながら───実際に音を立てていたかは分からない。私はそう感じた───圧縮されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 父は立ち上がった。

 私の父は強く、賢く、やはり偉大だった。

 

 ───父が、光となってゆく。

 知覚の深度を変えれば、母がその手助けをしていることも分かった。

 

 離拡光体現象(インフレーション)

 本来惑星の端末(真祖の王族)が持つ能力のはずだが、父は星々を背負いし王であるが故に再現できた。

 

 

 いつの間にか、父は光の巨人となっていた。

 宇宙から独立している父は、圧縮されていく宇宙を纏い始めた。

 

 ───集まる。束ねる。重なる。

 圧縮された宇宙は鎧となり、光体となった父を

宙外の存在から守る。

 

 圧縮され続ける宇宙を纏いながら、父は剣を持った。エクスカリバーだ。

 

 ………だが、不可能だ。

 父の偉大さは、よく理解している。故に、その能力の限界も分かっていた。

 

 エクスカリバーは、同等の相手までにしか通用しない。存在が大きい相手には効果を発揮できない。

 

 父は銀河を呑む大英雄ではあったが、それでも宇宙を夢として顕現させる魔王には届かない。

 

 

 

 

 ───構えた。

 この構えは、”突き”だろうか。

 

 しかし歪だ。

 まるで弓のように、或いは投げ槍のように全身をのけぞらせ、腕を後ろに伸ばしている。

 

 

 今まで見たことのない父の背中(構え)に、私は何も言えなかった。ただ、信じるしかなかった。

 

 

 「ロンゴ、ミニアド───!」

 

 

 

 

 

 よく“ジャイアントキリング”の例に『蟻と恐竜』が語られる。

 よく知る中で最も“強そう”な存在と“弱そう”な存在とを比べる表現である。

 

 だが、これはその程度ではない(・・・・・・・・)

 

 

 夢の中の登場人物がいる。それはどれほど高性能でも、結局は夢の中の存在。

 或いは、物語の存在。漫画やアニメの中でどれほど強くとも、それが読者に攻撃出来るはずがない。

 

 

 ───しかし、ここに例外が存在する。

 

 

 武の究極。最強の剣士。

 

 武とは、己よりも性能の高い存在との戦闘を想定して生まれた概念。

 武の極限たる彼の、その奥義とは即ち格上殺し(・・・・)

 

 故に夢の存在(げんじつ)現実(ユメ)を殺すという異常は成った。

 

 

 

 かくして、それは放たれた。

 

 単なる“突き”と変わらないにも関わらず、剣技と呼ぶにはあまりにも逸脱した故に後に『槍』と名付けられたソレは。

 ただ、初めからそうであったように。

 

 父は───我らが最強の英雄は、次元を超えて

邪神に届かせた。

 

 

 父が邪神を貫いた時、その過程で多重次元領域のその全てを貫いた。

 この偉業がどれほどのものか、他の者には分からないだろう。

 

 

 

 肉体より上位の──精神や魂の──次元に対して空いた穴により、第三魔法が成立した。

 

 更に“先”──神などが住む次元──に対して空いた穴により、我々がその域に入る(・・)余地が生まれた。

 

 そして今なお残り続ける『槍』の軌跡はそのまま“未来へ進む道筋”として我らを導いてくれる。

 

 

 資源(リソース)が足りなかった。もっと膨大な時間が必要だった。

 その問題を、父はたった一撃で覆した。

 

 父は、我らを救った(・・・)のだ。

 

 

 

 

 希望する人(ホモ・スペランス)でありながら、しかし夢を現実にした彼は最初の成し遂げた人(ホモ・フェリックス)であり。

 

 その道筋を開拓し高次元の存在となった私が、

そして続いた”我ら”が成し遂げた人(ホモ・フェリックス)と成ったのだ。

 

 故に我らはその英雄を忘れない。

 どれほど高次の存在に成ったとしても、最も始めに成し遂げた人は彼なのだから。

 

 

 

 

 

 『成し遂げた人(ホモ・フェリックス)マーリンより、偉大なる我が父アーサーへ』

 

 『感謝を。貴方の───貴方達の積み上げた文明は、生命(わたし)は』

 

 『肉体を捨て、不滅の存在となり、今や遥か高次元に至っています』

 

 『貴方ならば、未だ物質的な世界に留まり続けているとしても高次の私を捉えられるでしょう』

 

 だから。

 

 「だから───勝負(・・)です。私とかくれんぼをしましょう」

 

 「………へえ。俺に勝つ気か?大口叩くようになったじゃないか」

 

 「当然です。私は、貴方の子供ですよ?」

 

 ふう、と。息を吐いて。

 

 「一緒に遊びましょう、お父さん!」

 

 




人理補正式/成し遂げた人(ホモ・フェリックス)マーリン
 ヒトを高次元に押し上げた救世主。
 簡単に言うなら、高次元へのロケットを開発したイメージ。

 父の背中を見て、それを超えようとした。

 『息を引き取る』のは死。『息を吹き返す』のは蘇生を意味する。
 息を吐いた。産声を上げた。

 “勝負”です………!


◾️王
 『槍』によって貫かれ、剣によって斬られた。

 夢は夢のまま終わった。


ロマニ・アーキマン
 この情報を映像付きで突如脳にぶち込まれた感想を述べよ。



 第六魔法の過程において、『あらゆる既存法則からの独立』というものがある。
 宇宙のテクスチャを漂白出来る。秩序は第六法に敗北した。


偉大なる父 ”英雄“
 高次元への道筋を示した救世主。
 地動説を一人で証明したようなもの。

 圧縮され縮小した宇宙は彼の鎧となった。その後展開(パージ)され、物質的な世界が再び始まった。
 実質的な創造神。

 俺と勝負したい?仕方がない、子供のわがままを聞くのも父親の役目か………
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。