未来の騎士王   作:アーっr

18 / 21
竜が自然現象の具現なら、自然を破壊する人間とは相容れないよね。
おっとここに星を蘇らせた英雄が一人………


愚かな人間

 

 

 「──────」

 

 地に堕ちる。かつて天空を裂き飛んでいたこの身も、神秘の減衰に耐えきれず停止し始めた。

 

 「──────」

 

 最早『境界を越える』能力すら使えない。

 大地に穴を開け、星の内海に向けて進む。

 

 「──────」

 

 後悔が心を満たす。

 他の幻想種が世界の裏側に追いやられている様子を見て、自分は何もしなかった。

 

 己は違うと思っていた。

 星の誕生とともにあり、数十億年空を進み、『冠位』とまで呼ばれる己ならば、大丈夫だと。

 

 その慢心は、手痛い現実となって牙を剥いた。

 

 「──────」

 

 運命を観測する高位の竜としての本能が告げる。

 

 ───失敗した。最早遅い。

 この身は、星に帰ることができない。

 

 「──────」

 

 悔しい。悲しい。

 

 『◾️◾️』の体現として存在した自分は、終わるのだ───

 

 

 

 

 

 ───ふと、温かさを感じた。

 

 「ミハイル。蘇らせたぞ」

 

 「は?………おい、おい!?」

 

 なぜ朽ちた己が息を吹き返した?

 ───わからない。どうでも良い。

 

 大事なのは、今再び飛べるということ───!

 

 

 

 

 

 

 グレイにとって、その男は父や兄のような存在だった。

 

 「俺はアーサー。君の名前は?」

 

 「拙は……グレイ。ただの、グレイ(どっちつかず)です」

 

 ある日、肉体が変形した(・・・・)。自分の、自分だった体は知らない誰かになった。

 

 変わっていく自分を見て、村の人は喜んだ。

“ついにその時が来る”、と。

 

 「俺はアーサー。騎士王アーサーだ」

 

 変わっていく自分を特別扱いしていた村人達は、今では彼のことしか見ていない。

 『神の子に選ばれた』と崇めていた母、マグダレナでさえも、最早グレイを特別扱いしなかった。

 

 崇められていた時の、村人達の狂気に当てられていた時の異常な感覚は既にない。

 未だ戻らぬ変形した肉体への恐怖はあるが、これ以上酷くならないだろうという直感があった。

 

 何故なら、彼が居るから。

 

 「そういえば、アーサー王はどうしてこの村に?」

 

 「イッヒッヒッヒ!分かりきったこと聞くなよ

愚図グレイ!厭らしくオレのカラダを求めたからに決まってんだろォ!」

 

 「こら、アッド!アーサー王に対してなんてことを!」

 

 おしゃべりな匣、アッドを振り回して黙らせる。

 

 常勝の騎士王を相手にこんな下品なことを言うだなんて、相変わらず碌でも無い。

 

 「まあ、強ち間違いではない。俺はアッド………ロンゴミニアドを求めてきた」

 

 

 

 

 

 『終末にて現れる存在』の習合である彼は、今回

救世主の役を羽織る悪魔の代理として設置された。

 

 神霊に匹敵する格を持つ大悪魔は、そのままの出力で現界出来ない。

 だから依代を使った。

 

 

 聖杯戦争の規格で喚ばれた一人目の救世主は、しかし本体である◾️に接続することで全能の出力を。

 

 聖杯に依らず現れた二人目の救世主は、分霊ではあるが銀河団規模の権能を持っていた。

 

 其れらが争い、欠け合い、溶けて生まれたその器に憑依した悪魔代行は、彼らとは比べ物にならない程堕ちて(・・・)いた。

 

 

 仏と神は思想(テクスチャ)が異なる故に。悪魔と神仏は、正反対の性質故に反発し合う(・・・・・)

 

 水と油は溶け合わない。

 高温と低温が相殺され常温に近付くように、彼らは互いに打ち消し合う存在なのだ。

 

 

 能力こそ低下したものの、その肉体はどれも同じ英雄のもの故に致命的な破綻は発生しなかった。

 人間であり英雄である彼が潤滑油となったからこそ、ギリギリの安定があったのだ。

 

 ───その時(・・・)までは。

 

 『じゃじゃーん、三面六臂!』

 

 奇跡的なバランスで成り立っていた均衡は、このふざけた手品もどきを披露したことで崩壊した。

 

 裡に抑え込まれ、押し留められていたはずの存在は現世に顕現した。

 一時的なものだったとは言え、その存在を確立させてしまったのだ。

 

 

 英雄アーサーの逸話である『存在の簒奪とその負荷への耐性』が無ければそのまま消えていた。

 

 その身に残る悪鬼神仏の権能を使用すれば、次第に霊基は崩れてゆく。

 まして、三騎を束ねた霊長王として戦うなど、

“十分”が限度だろう。

 

 

 英雄王との十分間の戦闘によって、彼の霊基は崩れ始めていた。

 全能なる◾️は既に未来へ消え、『悟りを捨てた』逸話から仏としての側面も弱まっていた。

 

 全能であり銀河団級の存在であった神仏は既に無く、彼は精々恒星ほどだった。

 これは、寧ろ良い方向に働いた。

 

 「兄貴、借りる(・・・)ぞ」

 

 惑星の公転すら止める出力の『虹の魔眼』。

 応急処置ではあるが、それを己に向けることで崩壊を食い止めた。

 

 常に魔眼で停止させなければ、裡に潜む者どもはまた反発し始める。

 虹の魔眼は月の王の証。魔の象徴たる赤眼を晒し続けなければ、彼は現世に存在出来なくなった。

 

 「でも、今は蒼いですよね?」

 

 「カラコンで誤魔化しているだけだ」

 

 しかし、これは英雄王との再戦時にこれは大きな弱点になる。少なくとも、このような隙を晒して良い相手では無い。

 

 だからこそロンゴミニアドが必要だったのだ。

 

 星のテクスチャを留めるピンであるロンゴミニアドならば、固定することができる。

 

 アーサー王物語にて実際に騎士王が振るったとされるその槍ならば、彼との相性も良いだろう。

 

 

 「………だが、駄目だな(・・・・)。アッドはお前に必要な存在だ」

 

 「い、いえ! アーサー王がお望みならば、拙は───!」

 

 未来の王として作られたグレイはもう必要ない。本物のアーサー王が居るのだから。

 

 アッド───アッドと別れるのは少し寂しいが、それでも正式な担い手に使われるべきだ。

 

 「という訳で、代わりを用意することにした」

 

 

 

 

 

 魔力が練られる。

 歪んだ龍脈(・・)を利用し境界記録帯(ゴーストライナー)に接続する。

 

 ”蘇った竜“を『四肢』の原理で概念的に置換した左腕が熱を発する。

 

 

 川の流れ、そして嵐の具現として有名な災害竜

八岐大蛇。或いは、そのような流れを堰き止める者であるヴリトラ。

 

 このように、古今東西あらゆる地域で竜や蛇は自然現象、特に『流れ』の体現である。

 

 

 では、竜の中でも“冠位”と称される境界竜アルビオンはどのような概念を持っているのか。

 

 惑星の誕生とともに存在した、境界を越える竜(アルビオン)の役割。

 それは地球のあらゆる環境に吹く『風』であり、宇宙との『境界』である。

 

 

 ───『境界』が揺らぐ。英霊の座へ繋がる穴が形成される。

 

 「ハハハハハハハ! 極大の生命である竜!それを美しく愚弄し利用する手腕!」

 「全く、我ながら惚れ惚れする!最初の私(・・・・)を思い出すぞ!」

 

 「元気そうだなミハイル。真っ青な顔がマシになってる気がするぞ」

 

 騎士王アーサー、そして彼を構成する複数のサーヴァントは魔術に対する心得が無い。

 

 そもそも魔眼で停止中である。

 悪魔としての側面で魔術を扱えたとしても、それは崩壊を加速させる危険がある。

 

 故に、協力者が必要だった。

 

 

 ミハイル・ロア・バルダムヨォン。

 永遠を求め転生を繰り返す彼は、好条件の肉体に自動で魂を取り憑かせる。

 

 彼にとって不運だったのは、『星々を背負うほどの器』が受肉し現代に居たことである。

 

 

 

 ………目を覚ます。

 突然の覚醒。転生の失敗を予期させる唐突さは、間違いなく予定外のことだった。

 

 どうやら、転生の際何かに魂が“引っ張られた”

らしい。

 

 「釣れた。流石俺、優秀だな」

 

 「───ほう?面白い状況だ。転生先の意識が未だ残り続けているとは」

 

 今までそのようなことが無かったわけでは無いが、ここまで強固な状態は経験がない。

 

 余程『器』としての適性があったか───

 

 「やあ。元気か?」

 

 ───鏡を見る。相手と目が合う。

 

 気楽に挨拶をしたこの顔、この姿、この眼!

 前の自分(・・・・)が最期に見た、そのままの姿───!

 

 「面白いものを作る。手を貸せ、ミハイル」

 

 

 

 

 

 

 聖杯に依らず英霊召喚を行うには、やはり莫大な魔力と繊細な技術、そして要石が必要である。

 

 歪んだ霊脈も欠かせない。歪めば歪むほど、根源へ繋がり易くなる。

 

 

 魔力と要石はアーサーが。技術はロアが。霊脈の代わりに左腕の竜を利用し、儀式は成った。

 

 「───サーヴァント、アルターエゴ(・・・・・・)

 

 美しい女が現れた。

 黒く妖艶で、しかしどこか神聖さを感じさせる振る舞いで、少女のようでもあった。

 

 「召喚に応じ、───」

 

 女が言葉を切る。

 こちらを向き、目を見開く。

 

 「アー、サー………!」

 

 現存するロンゴミニアドが使えないのであれば、別のロンゴミニアドがあればいい。

 

 故に、召喚するのはロンゴミニアドを宝具として持ち込める英霊。

 

 「アーサーッ!」

 

 感情のままに女が近付き、右手で首を絞める。

 

 「貴様さえ居なければ……私が………!」

 

 魔女は呪いの言葉を吐く。怒りと、絶望と、苦しみと、嫉妬が入り混じった悍ましい声だった。

 

 首を絞める右手とは反対に、左手は優しく頭を撫でる。

 

 「貴方はもう十分頑張ったわ。もう苦しむ必要なんてないのよ………」

 

 精霊は癒しの言葉を放つ。悲しみと、慈しみと、優しさが混じった温かい声だった。

 

 「…………助けて下さい、姉さん(・・・)

 

 そうして、弟は姉に頼るのだ。

 

 




竜種
 基本的に自然現象に縁のある存在。高位の竜は自然現象そのものとも言える。

 星から生まれた竜以外にも宙から堕ちてきた竜種(テュフォン)人から変化したモノ(ファブニール)がいるが、それらは少し異なるのだろう。

 星から生まれた竜は特に『流れ』に関連していると思われる。
 自然は循環するものなので当然ではあるが。


アルビオン
 『大気』を体現する竜。星内の境界を越える竜であり、星の輪郭/境界そのもの。

 あらゆる環境、場所に分け隔て無く吹く風。
 存命していたころは2kmに及ぶ巨竜であったらしい。デカすぎんだろ。

 死後腐り落ちた左手が新たなカタチを得た(風の氏族に近くなった)メリュジーヌですら、起動から0.3秒で空気の壁を突破する。インフレし過ぎでは?


 死んだはずの自分が生き返ったことについて疑問はあるが、最早どうでも良い。
 再び飛べて歓喜。


ミハイル・ロア・バルダムヨォン
 自分を殺した相手に転生させられた。

 本来なら好条件の肉体に自動で魂を取り憑かせるはずが、アーサーの引力と器としての適性に惹かれてしまった。

 転生したアーサーの肉体に魔術回路は無いが、アーサーを襲う魔術師から魔術回路を剥ぎ取り、それを利用して魔術を使う。

 魔術の触媒やらを集めに霊墓に赴き、境界竜アルビオンの話になった。
 『生前はさぞ強大な生命だったのだろう。見てみたかった』みたいな事を、研究者として知識欲を隠さず話したらアホがその場のノリで生き返らせた。

 仕方がないので、教会が所有する『四肢』の原理をアーサーにパクらせ概念的に置換させた。
 ロアの魔術の腕とアーサーの存在強度によって成立した手術。

 同じ肉体を共有しているのでアーサーへの理解度がかなり高い。現代のヒロインレース暫定一位。
 なおどれほど頑張っても“審判”は越えられない。

 アーサーとの関係は悪友。馬鹿な男子高校生同士みたいな絡みをしている。


アルターエゴ
 魔女/精霊/姉がそれぞれ全盛期として呼ばれた。姉ではない。

 ロンゴミニアド要員。この後肉体を作成することでアーサーとロアを分離した。

 情緒不安定。いつ爆発するか分からない爆弾。


アーサー
 やらかし大魔神。ドが付くアホ。自称弟。

 勝たなければならない戦いなら必ず勝つし、その為に策を弄する事もあるが、そう言うのが無くなるとビックリするほど考え無し。

 「“とりあえずやってみよう“という精神が大事なんだ!」とは本人の談。

 『器』として最高の適性がある。星の断末魔を聴いた一因でもある。

 ロアをマーリンの代わりにしようとしている。
やはりカーナビか。

 魔術回路剥ぎ取り職人。
 本来魂から伸びている擬似神経である魔術回路だが、患者の命に影響を出さず摘出を行える。

 命だけは助けてやる。命より重いものは奪う。

 姉さん助けて………
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。