理想郷 アヴァロン。
その最奥にある宮殿、玉座の間にゴドーは訪れた。その理由は、当然。
「なんだ、寝てんのか?」
「王様は『聖剣』を振るわれました。起きるまでもう少し時間がかかります」
騎士王アーサー、ゴドーの目的の人物は玉座で眠りについていた。
タイプ・ウラヌス&ネプチューン射出作戦。
成層圏に張られた『
撃退しつつ戦闘による消耗も避けられ、正史では実行された作戦である。
しかしながら、この世界ではあらゆる障害を無視する『魔剣』が二体の
「………にしても、ホントに夫婦なんだな」
「はい?まさか、嘘だと思っていたのですか?」
玉座にて眠りにつく王の側には女がいた。
『六人姉妹』の末妹“審判”である。
亜麗百種の頂点である『六人姉妹』と
頂点である『騎士王』。
大戦の禍根が残っていないのは
『ビジネスパートナーであるだけで特に好きではないが、効果的であるから結婚した』という邪推は、少なからずあった。
「そんなわけがないでしょう。恋愛結婚です」
「まぁ、そうだろうな」
ゴドー自身、直接彼らを見るまではそのような疑念はあった。
だが、目の前の少女は眠っている夫の側に居続ける立派な妻だった。
「どこに惚れたんだ?やっぱり顔か?」
「違います。アーサー君の顔は好きですが、もっと別のところに」
「彼の魂に、惚れたのです」
───愚かしい
───愚かしい
───愚かしい
彼女は、従った。
「でも、戦いたく無かったな」
大戦が始まった。
星はもっと壊れて、ヒトはいっぱい死んだ。
もう、嫌だ。もう疲れた。
弱音を斬り捨てる。姉達は勝つ気だ。足を引っ張るわけにはいかない。
でも。
もし、“戦わなくて良い理由”が生まれたなら。
もしかしたら、姉達も戦いをやめるかもしれない。
姉達にも秘密で、人間種と接触することにした。
もし、和平を結べたら。戦わなくて良くなったら。
「お姉ちゃん達と、遊びたいな───」
「───オマエが、“審判”だな」
こひゅ、と。情けなく音が漏れた。
『魔法使い』であり“6つに分たれた魔法そのもの”である私は、目の前の騎士に心底
存在の規模が違う。強度が違う。
まさに星
───嗚呼、これが死か
大戦で多くの血が流れた。私も殺した。
だから、これは因果なのだ。
覚悟もなく戦いに挑んで、自分に都合のいい未来だけを得ようとした代償。
だから。
「わ、わたし、私はっ!」
ここで。
「
「ああ、俺もそうだ。だから協力してほしい」
「───ぇ?」
騎士は、私に話しかけた。
「ヒトは愚かで醜い部分がある。未だに争っているのがその証拠だ」
蒼い眼が私の心を貫いたかのように、私の内心をそのまま彼は言い放った。
「だがそれは一側面でしかない」
「ヒトには、光輝く良い面もあるはずだ」
彼の目に宿された煮えたぎるような『人の愛』は、直視した私の目を焼いた。
「俺は、それが好きだ」
「ヒトという星が輝くその
私以上に『人の輝き』に目を灼かれた彼は、彼自身が『輝き』の体現者になっていた。
「俺は、『輝き』を見たい。だからこそ、俺は王にならなければならない」
「ヒトを導く、
「───それで、協力というのは?」
彼なのだ。
“戦わなくていい理由”に、彼ならば成れる。
「亜麗百種も、人間種も。俺からすれば等しく『ヒト』だ」
「
ならばそうしよう。
この日、私は………
「貴方の、名前は───」
「俺か?俺は───」
───
「いや、そんな話聞かされても………」
「はい?貴方が聞いてきたんでしょう!」
唐突にこんな話を聞かされたゴドーは興味を無くしていた。何が悲しくて他人の惚気話を聞かなければならないのか。
最後のホモ・サピエンスであるゴドーには相手もいないというのに。
「というか、まだ起きないのか?」
「言ったでしょう。『聖剣』を二度も振るわれたのですから、その分お疲れなのです」
未だに起きない騎士王にゴドーが愚痴る。
「結局のところ、『聖剣』ってなんなんだ?騎士の魔剣と何が違う?」
───
魔剣と一口に言っても、二種類のものがある。
一つ目は『物質的な魔剣』。
“星が造った”、“多くの血を吸った”など、人類史でも様々な逸話が残る、カタチある魔剣。
騎士アド・エデムの『斬撃皇帝』が代表例であり、彼の場合は『星を平らげ大きくなる』という性質がある。
騎士の魔剣の場合、構成している『
故に、騎士の魔剣は『星の聖剣』とも言える。
二つ目が『技術としての魔剣』。“単なる技術でありながら魔法の領域に至ったもの”。
もっとも、彼の場合はただ燕を斬ろうとしただけなのだが。
騎士王アーサーの『魔剣』。
かつては
矛盾を矛盾のまま叶える夢のような魔剣だが、
その最も理不尽なところは攻撃にこそ発揮される。
『百回殴れば死ぬ敵』が居たとして。
彼の魔剣ならば、過程を
『死の概念がない』『相手が大きすぎる』『剣の間合いに届かない』などという条件は魔剣によって
「とんでもないじゃねえか!俺の銃とか、あんたらの魔法よりよっぽどファンタジーだろ!」
「そうでしょうそうでしょう!アーサー君は凄いんです!」
「じゃあ、『聖剣』はどういうのなんだ?」
ピシリ。
夫の栄光をゴドーに知らしめた喜びと、そんな夫を支えることが出来る誇らしさで胸を張っていた彼女は、ゴドーの何気ない質問に突然固まった。
「え、えっと〜。そ、それはぁ〜」
「どうしたんだよ。まさか知らないのか?」
「知ってる!知ってるもん!知ってるけど言いたくないの!」
ゴドーの追求を躱わす彼女は、とてつもなく怪しかった。
が、ちょうどアーサーが意識を取り戻した。
「ん───」
「あ、ほら!アーサー君に用があるんでしょ!」
「しょうがねえな。夫婦の邪魔になっちゃまずいからさっさと用を済ませるぞ」
「ほらよ、アーサー」
ゴドーが渡したもの。それは───
「まさか、この
「お前にやるよ。俺は弾けないしな」
チューニングもまともにされていない、ただの古いギター。
ゴドーの姉の、形見である。
「………何故俺に?形見だろう」
「ハッ!ご自慢の“眼”でも人の心までは見えないのか?」
「
それすなわち、ゴドーからアーサーへの信頼と愛の証である。
『恒星炉の完成を確認 目標性能を上回る働きが期待できます』
『アヴァロン計画 実行率30%を超過』
『一定程度の計画の終了を確認 再演算 開始』
『………エラー』
『過去視を応用した未来演算の結果、遊星ヴェルバー
『人理補正式マーリンより マスターへ』
『警告 警告』
『遊星ヴェルバー接近中 現在の戦力をデータとして演算………』
『勝率 0% 生存確率 0%』
“審判”
戦いは嫌い。死にたくないし、殺したくない。
でも、彼が頑張るなら。私はそれを支えたい。
『六人姉妹』とは、第六魔法の化身。ある種のシステムのようなモノ。
六人で一つの存在であるため、『同期』による経験の共有なども出来る。
この
ゴドー
惚気話を聞かされた可哀想な男。独身というか彼しかホモ・サピエンスがいない。
『騎士王』ではなく、アーサーという一人の人間を相手に話をする数少ない存在。
アーサーへの信頼度は青天井。彼が負けるなら
それは人類全ての敗北であると確信している。
旧人類でありながら、新霊長を認め次を任せた。
海王星の王
ナレ死。星に侵入できなくて困ってたら斬られた。
もはや王ではない
天王星の王
ナレ死。同上。
もはや王ではない
アーサー
過去視で人類の悪性も善性も見た。
悪性はある程度許容出来るし、なんなら彼自身が人類の悪性の最たるものである。
それはそれとして綺麗なものが見たいので、自分で良い方向に誘導する事にした。
次回中ボス戦。