未来の騎士王   作:アーっr

5 / 21
中ボスがラスボスより強いなんて型月じゃ珍しくないでしょ。主人公が限界超えて死にかけるのも。


おわりの五つ

 

 

 遊星ヴェルバー。

 

 一万四千年周期で天の川銀河に現れる彗星。

 『尖兵(アンチセル)』と呼ばれる衛星を星に降下させ、その文明を『収穫』する。

 

 その本体は空間跳躍航行機能を持ち、膨大な時間をかけて天文学的な数の文明を捕食した。

 

 

 遊星ヴェルバーの恐ろしい点は、その周囲を覆う複数の星舟である。

 既に捕食した文明を新たな力とし、様々な方法で侵略を繰り返すのだ。

 

 一体一体が星を喰らうほどの超兵器(カイブツ)

 無数のそれが、まるでアーマーのようにヴェルバーを守っている。

 

 

 

 

 『空間振動を検知』

 

 『約52,850光年先(銀河の外)から約45億km先(太陽系の外)までの空間跳躍を確認』

 

 『遊星ヴェルバー 現れます』

 

 

 

 

 

 

 そんな災害とも言うべき遊星が、銀河の外から

太陽系のすぐ側まで転移してきた。

 

 「うお————!」

 

 星の外どころか宇宙(ソラ)の彼方まで見通す”眼“を持っている王の視線が、遊星に吸い込まれた(・・・・・・)

 

 あらゆる星、あらゆる文明を捕食し続けた遊星ヴェルバーは『銀河級』の存在強度を誇る。

 

 

 周辺の星系は、そのあまりに大きい存在強度から発生する引力により物理的・概念的に吸い込まれている。

 

 瞬く間に、死した地球どころか太陽系そのものすら遊星に吸い込まれてしまうだろう。

 

 『恒星炉起動』

 『惑星 並列』

 『第六魔法を利用した”星の揺籠(アヴァロン)“発動します』

 

 当然、それを想定していないはずもない。

 

 

 

 本来地球の蘇生に使うはずだったエネルギー全てを、ただ現状維持のみに浪費する作戦”星の揺籠(アヴァロン)“。

 

 かつて侵略し、しかし敗北した王達の死骸及びソレらが代表していた惑星から支援を受けた。

 

 

 9つの惑星のエネルギーに『六人姉妹』の魔法、そして人類の叡智が結集し、銀河の引力から独立してみせた。

 

 だが………

 

 『太陽系航路 歪曲』

 『遊星衝突の可能性 大』

 

 『遊星の行動を演算………』

 

 『人理補正式マーリンよりマスターへ』

 『星の揺籠(アヴァロン)が遊星の追撃を振り切り重力圏を抜け出すことは不可能です』

 

 『提案 マスター単独による逃避』

 

 

 「論外(・・)ッ!勝つことだけ考えろ!」

 

 太陽系そのものの危機に、それでも王は己に逃走という選択肢を許さない。

 人間の輝きを求めて戦った王にとって、今を諦めずに生きる者たちを見捨てることは己の死よりも忌避するもの。

 

 『人理補正式マーリンよりマスターへ』

 『遊星の尖兵(・・・・・) 侵略』

 

 『時間経過による能力(スペック)向上を確認』

 『直ちに対処することを推奨』

 

 しかし、遊星は待たない。

 引力から独立した文明を捕食するために、尖兵を差し向けた。

 

 「出番だアド!」

 

 だが、それも王は予知済みである。

 

 

 アド・エデムの魔剣。

 

 星を喰らい成長するその剣が、具体的になにを(・・・)喰らっているのか。

 

 魔剣が平らげたのは『真エーテル(ジン)』。

 ジンとは、すべての惑星の基礎となるものである。星の構成要素、星の血肉である物質である。

 

 惑星サイズ(・・・・・)にまで大きくなったソレを見れば、結果はわかるだろう。

 超質量惑星剣。これこそが───

 

 「斬撃皇帝!」

 

 

 

 

 

 

 

───それは、天上の地獄だった。

 

遥か彼方からやってきた涙星は、瞬く間に周辺の星々を捕食した。

 

涙星から分たれた雫は、その星の文明を可能性に至るまで捕食した。

 

だが、当然抵抗する存在もいた。

 

星そのものとなり尖兵達を切り裂く魔剣。

 

“みんなを幸せにする”第六魔法そのものである『六人姉妹』。

 

星ごと尖兵に穴を開ける銃神。

 

そして。その星系の王(・・・・・・)となった者。

 

 

「エクス、カリバー───!」

 

 

 

 

 

 

 ───魔剣(おう)の話をしよう。

 

 あらゆる時間・世界の武を見た騎士王アーサーは、その見識と才覚を持って魔剣を成立させた。

 

 とはいえ、彼オリジナルの魔剣の効果はシンプル極まりないものだった。

 

 すなわち、『とても斬れる剣』。ただそれだけ。

 単体であれば、他星の王と戦う程には至らなかっただろう。

 

 だが、そこに人類史に積み重ねられた武と彼自身の肉体強度が加わることで『魔剣』エクスカリバーは完成した。

 

 

 敵の数、距離、物理法則、時間軸、世界の違い、概念にすら影響されない最高の剣技。

 

 だが、『魔剣』エクスカリバーにも弱点があった。存在規模の違いである。

 

 担い手である騎士王アーサーと敵との間に著しい存在格差があった場合、魔剣はその切れ味を大幅に落とす。

 

 

 騎士王アーサーと遊星ヴェルバーの間には、埋まらない存在の差(・・・・)があった。

 

 『存在規模の違いによる魔剣の無効化を確認』

 『魔剣による尖兵の両断を確認』

 

 『当初の想定通り、遊星本体に対しての魔剣行使は無意味と判断』

 『資源(リソース)の差により、持久戦は不利と判断』

 

 『推奨 短期決戦』

 

 「出来たらもうやってる!」

 

 詰み。火力は足りず持久戦での勝ち目もない。

 だが、使えるものをなんでも(・・・・)使うのが人間であり、王にはまだ手があった。

 

 「いけ、ORT!」

 

 

 

 

 

 

 ORT。One Radiance Thing(輝ける唯一の存在)

 太陽系外縁天体(オールトの雲)の代表。

 星系級攻性生物(バケモノ)

 

 

 ───究極の一(アルテミット・ワン)の強さは、その星の規模や性質に大きく左右される。

 

 その理屈で言えば、太陽系全体を覆う太陽系外縁天体の王であるORTはこの星系で最強である。

 

 

 そんなORTには、ある役割がある。

 惑星統括細胞(スターセル)の名の通り、太陽系の惑星を統括し、星系規模で安全を守ること。

 

 アリストテレス達が隣人だとするならば、ORTは警察、あるいは軍隊。

 『太陽系に悪影響を及ぼす者』との戦闘を前提にした存在であり、星系の防波堤。

 

 

 『ORTが1兆度の熱線を発射』

 『遊星の尖兵 おおよそ全滅』

 

 402光年先にすら影響を及ぼす超火力。

 超新星爆発すら上回るそのエネルギーに、尖兵はなす術もなく消し飛ぶ。

 

 そして。

 

 『警告 警告 警告』

 

 周囲を覆う星舟を失った遊星が迎撃をするのは、至極当然のことだった。

 

 『遊星本体に莫大なエネルギー収束を確認』

 『物理的・霊子的資源(リソース)の攻撃への転用と予想されます』

 

 『被害演算………』

 

 『圧縮され指向性を持って放たれた場合、天の川銀河の約三割が消滅します』

 

 『涙星流滝(ティアードロップ・フォトンレイ)まで 残り5分』

 

 「無茶苦茶しやがる───エクスカリバー!」

 

 圧倒的絶望を前に、王は希望を捨てない。

 

 

 魔剣エクスカリバー。

 あらゆる過程・障害を省略(カット)するその魔剣ならば、宇宙という広大な領域(フィールド)さえ自由に動ける。

 

 つまり。彼ならば間に合う(・・・・)

 

 

 

 

 『ORTに接近』

 『こちらを認識。捕食し成長するつもりと予想します』

 

 ORTは生存意欲から、手当たり次第に周囲を空間ごと捕食し成長している。

 ORTにも遊星の反撃が理解できたのだろう。今のままでは対処できないことも。

 

 当然ではある。銀河級の遊星と星系級のORTでは、出力に差があるのだから。

 

 そこに、自ら近づく。

 

 

「『聖剣』抜刀!」

「エクス、カリバー───!!」

 

 

 

 

 

 

 『聖剣』エクスカリバー。

 騎士王アーサーの魔剣。

 

 騎士としての生態故に生じた剣にして、この世で最も悍ましき聖剣。

 

 

 その能力は、『存在ラベルの移動』

 

 

 すべての存在には、“ラベル”が存在する。

 それぞれの名前で、それぞれの在り方で、それは存在している。

 

 とあるパン屋の娘は、魂のラベルが死徒のものとなったために不死性を手に入れた。

 

 このように、存在のラベルはそのまま力となる。

 

 

 聖槍ロンゴミニアドが、テクスチャを固定する『ピン』ならば。

 この悍ましき聖剣は存在のラベルを動かす『ピンセット』である。

 

 

 当然、簡単に存在のラベルを動かすことは出来ない。あくまで『聖剣』の能力は“移動”。

 

 『聖剣』以外のなんらかの方法で、対象の存在ラベルを『斬って』自分に『繋げる』必要がある。

 

 

 ───だからこそ、『魔剣』エクスカリバーなのである。

 

 『魔剣』が対象からラベルを切り離し、『聖剣』が移動させ、『魔剣』により己に貼り付ける。

 この合わせ技が、『エクスカリバー』である。

 

 

 (ソラ)からの侵略者に対しても、『エクスカリバー』は振るわれた。

 その結果が、『王位の簒奪』。

 

 

 現在9つの惑星の王座を持つ彼の存在強度は、

星系級である。

 

 

 

 

 

 

 

 ───魔剣は、著しい存在の差がなければ正常に作用する。王の剣は、ORTに届く。

 

 『ORT 活動を停止しました』

 『存在ラベルの追加を確認』

 

 奪って生きていくヒトの悪性、その象徴である

悍ましき聖剣は、騎士王(担い手)の存在規模を押し上げた。

 

 「エクス、カリバー───!」

 

 再び剣が振るわれる。

 あらゆる過程を無視して存在を奪う剣が全く同時に(・・・・)星の数だけ振るわれた。

 

 『アンドロメダ座υ星系を始めとした周辺星系からの存在ラベル移動を確認』

 

 『存在規模 膨張』

 『警告 これ以上の存在ラベル追加はなんらかの致命的・不可逆的な欠損を生じます』

 

 「未来(もしも)が怖くて生きていけるかよ!」

 

 

 

 

 

 

 ───限界を突破していた脳髄が焼き切れる。

 

 当然のことだろう。人間に過ぎない俺が、複数の星系を背負っているのだから。

 星の王位(アルテミット・ワン)簒奪の時ですら、玉座で時間をかけて休養する必要があったのだ。

 

 ───存在(カラダ)軋み(ヒメイ)を上げている。

 

 手当たり次第に奪い取って、好き勝手に浪費している代償だ。

 ズルの負債は必ず返ってくる。星を滅ぼしたヒトが滅ぼされかけているように。

 それがすぐに来ただけだ。

 

 ───それでも(・・・・)

 

 それでも、未来(マエ)に進んでいる。まだ進めている。

 

 ───当然だ。

 

 俺は、人の王。人類史全てを背負う者。

 今までに発生した、これから発生する全人類を救うのが俺なのだ。

 

 ───ならば、出来るはずだ。

 

 無限に存在する(ヒト)を背負う俺が、星々を背負った程度(・・)で潰れるなど、あってはならない!

 

 「エクス、カリバー───!!」

 

 

 

 

 

 

───星々を焼き尽くす滅亡光が放たれる。

 

涙星から流れ出るその光は、たった一つの生命体に対して放たれた。

 

───光の滝が分たれる。

 

一粒の砂程の大きさしかない生命体は、しかし光の滝を両断してみせた。

 

 「あ◾️◾️ア阿◾️──────!!」

 

───そのままの勢いで、涙星を斬りつける。

 

巨大な魔剣や全てを撃ち落とす銃神もそれに続く。

 

───涙星が剥がれる。

 

攻撃を受け剥がれた分だけ、それを奪われる。

 

砂糖の山に虫が集るように。

 

電灯に虫が集るように。

 

悍ましいヒトの悪性。それでも、美しい人の輝きのために剣を振るう。

 

 『遊星ヴェルバーの存在規模 縮小』

 

 一つの惑星から発生した一生命体は、ついに銀河すら追い詰めた。

 星の、人の意地は、ここまで来たのだ。

 

 

 

 

 『───警告』

 

 『遊星ヴェルバーの核に超高エネルギー反応』

 『保持している全エネルギーを自爆するものと思われます』

 

 『想定被害範囲 銀河団』

 

 『涙星爆発(ティアードロップ・ラストクライ)を止める手段はありません』

 『生存確率 0% ………再演算します』

 

 『………エラー。1億7千5百万回以上の再演算の全てにおいて、人類の生存は確認できません』

 

 ここまで来て、最後の最後で、こんな………

 

 「まだだよ」

 

 誰かがそう言った。

 静かに、しかし確かな自信を持って。

 

 「だって、私がいるから」

 

 「嗚呼………お前か」

 

 “みんなを幸せにする”第六魔法そのものである『六人姉妹』、その末妹。

 

 騎士王の右腕、”審判“。

 

 「第六魔法()は、アーサー君の幸せになれる」

 「ほら、剣を握って。振るのは君だよ」

 

 共に、剣を握る。

 

 ………あたたかい。

 (ヒト)の輝きを見るのも良いが、人のあたたかさを感じるのもまた良いものだ。

 

 『涙星爆発(ティアードロップ・ラストクライ)まで 残り10秒』

 

 「大丈夫。だって、死にたくない(・・・・・・)でしょ?」

 「なら大丈夫。貴方がハッピーエンドを望むなら、必ずそうなるよ」

 

 なんて事ないように、彼女は言ってみせた。

 それは、魔法のようで───

 

 「ほら、行くよ?せーのっ!」

 

 

 涙星爆発(ティアードロップ・ラストクライ) 発動』

 

 「「銀河両断/存在奪取(エクスカリバー・シージャー)」」

 

 

 




遊星ヴェルバー
 文明捕食彗星。
 以前の襲来で『ムーンセル』は、尖兵によってあり得たかもしれない那由多の“可能性”、数多くの
”if“すらも喰い尽くされたらしい。

 設定モリモリ。でもあり得ないとは言えないレベルではある。
 カービィの『ノヴァ』をイメージ。


人理補正式マーリン
 めちゃくちゃ準備して星を守るために設備を用意したり、戦う時に未来演算をした高性能AI。
 おかげで地球はまだあるし、生き残りもいる。

 感情はある。1億7千5百万回以上の再演算を繰り返したのがその証拠。


アド・エデム
 火星や金星などの惑星をそのまま平らげ、剣を成長させていた。コストは重いがその分優秀。

ゴドー
 ブラックバレルをブッパしてどんどん撃ち落とした。さすが銃神。


ORT
 惑星統括細胞という単語を見てから「実はコイツ警察ポジションでは?」という発想があった。
 心臓が無い状態で恒星規模というのも、星系の外から来る存在を止めるためなら納得出来た。

 でもコイツ機神とか素通りさせてるんだよなぁ。相変わらず謎の存在。

 正直心臓無い状態で恒星規模なので、もう少し強いと思う。でもそうなると「勝った方が人類の敵」状態になる。

“審判”
 とある普通の男曰く『みんなを幸せにするもの』。六人に分たれたそれは、末妹に統合された。
 戦いの余波から地球を守っていた。

 この身は、ただ一人の幸せのために。

騎士王アーサー
 銀河最強の剣士。というかもう銀河そのもの。
インフレの極地。
 最後のシージャーは『seizure(奪取、発作)』が由来。発作(本能)で奪うというヒトの悪性そのもの。

 人類最古の英雄王曰く「人は犠牲がなければ生きてゆけぬ獣」なので、鋼の大地における人の臨界を極めた“王”なら多分こうなる。

 下っ端が核爆弾レベルの戦闘力持った世界の王ならこれくらいやっていいだろ。
 最後はらぶらぶ♡カリバーンをイメージ。

 最大の敵を討伐。少なくとも本作でこれより強い敵は出てこない(予定)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。