ジェネリック歪君のあんまり楽しくない裏ドレスタプレイ日記   作:名無しの作者

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なるべく週一投稿で頑張ります。なんでも許せる人向けです。


光よ!

 「どうすんの!? カードがなかったら戦えないじゃん!?」

 

 渋谷さんが至極当然の疑問を叫ぶ。

 

 そうだその通りだ、このゲームはカードがなければ話にならない。キャラクターとプレイヤー、それぞれの役割を全うしてやっとゲームが成り立つのだ。

 

 ……そうならなかった末路は、原作序盤で嫌という程見てきた。

 

 敵が敵でいてくれるのはゲームプレイヤーの前だけ。そうでないものはただ絶対者と化した敵に蹂躙されるのみ。

 

 殴られ、蹴られ、潰され喰われ……逃げたとしても無駄だ。

 

 時間経過で二体目が出てくる。対抗手段がない以上、増え続ける敵にいつか捕まる。

 

 「………」

 

 こうなってしまった以上、俺たちにできることは一つしかない。

 

 「……渋谷さん。」

 

 死ぬしかない……敵の手にかかる前に……なるべく、苦痛なき手段で。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 【裏ドレスタ】はデスゲームだ。負ければ死に近づく、それは事実だ。

 

 しかし、一度の死が直ちに終わりを意味するわけではない。

 

 チュートリアルを超え、新たなるステージへ立って初めてゲームオーバーのリスクが発生する。言い換えればそれまではいくら死んでも問題は、ない。

 

 原作だって渋谷さんは相当数死んでいるが、精神的な問題以外後遺症などは描写されなかった。……それが一番辛いのだろうけれど。

 

 この場にカードがない以上、抗うすべがない以上、いかに精神負荷をかけずに抜け出すか。今この場に問われているのはそういった問題だろう。

 

 

 

 ……手持ちは、恐ろしく少ない。殆ど身一つで召喚されてきたため、自殺にも苦労する。ぱっと思いつくのは……首吊りだろうか。

 

 ブレザーで簡易的な縄を作り、無駄に生えている木々に引っ掛ける。肩車でもして高さを稼いだら何とか窒息は狙えるだろう。

 

 ……渋谷さんが先だな。このゲームはキャラクター役の人間を痛めつける傾向にある。原作でもプレイヤー役の人間は一撃で仕留められていたし。だから俺はサクッと殺してくれそうな気がする。逆に渋谷さんを残すとどんなトラウマを植え付けられるのか知れたものではない。

 

 気は進まないが、説得に取り掛かろうか。正直なんといって死んでもらうか全く思いつかないけど、後々の展開を知るときっと渋谷さんも納得してくれるだろうから。

 

 「……これから、大事な話をするよ。」

 

 「……秋葉……君?」

 

 ……なんといって説得しよう。一遍死んでみる?なんてなんとか少女みたいな決め台詞を唐突に放っても、確実に錯乱したとしか思われないだろう。ここが夢ということにしてみるか?創作とかでたまにある死ねば解放される夢の話をして、ここももしかしたらそうかもしれないってことでごり押ししてみるか。

 

 無謀だがもう時間がない、いつ熊が来るかもわからない。俺は渋谷さんを説得しようと向き合い、顔を見た。

 

 

 酷く怯えた顔を、見た。

 

 不安げに両腕を抱え、目じりには涙さえ浮かんでいる。よく見ると体中が細かく震えてすらいた。

 

 怯えた……原作でよく見た、そんな顔をしていた。

 

 

 

 「樽を、壊すんだ。」

 

 

 

 気が付いたら、口から世迷言が勝手に漏れ出していた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 俺は、何を言っている?

 

 「このゲームはこの樽からアイテムがドロップするんだ。さっき出したみたいにね。」

 

 「う、うん。それがどうしたの?」

 

 

 「もしかしたら、ドレスカードもドロップするかもしれない。レアドロップ扱いでね。」

 

 

 そんな訳あるか。

 

 原作、どころかドレスタ本編でさえそんな仕様はない。カードは筐体から出されるものか、自分で持ち込んだものしか使えない。

 

 「ほんとに!? なんとかなるかもってこと!!」

 

 「ああ、もちろん! だってさ。」

 

 このマップの内容は把握している、ドロップアイテムの位置でさえも。だからこそわかる。この言葉は、偽りの希望を与える欺瞞でしかない。

 

 「ここはゲームの世界なんだよ。ここに僕らがいるってことは、きっとプレイヤーとして呼ばれたってことだ。」

 

 「だったら、攻略不能なゲームなんてあるわけないだろ!」

 

 じゃあ原作はなんだったんだよ。

 

 一人でほっぽり出された渋谷さんは、ゲームに参加すらできずに死に続けた。このゲームはクソゲーに片足を突っ込んだ仕様だらけだ。攻略不能なんてざらにある。

 

 ここは神バランスの【ドレ☆スタ】ではない。

 

 人の負の感情を啜ることを目的に作られた、歪な【裏ドレスタ】でしかないのだ。

 

 

 

 ……ああ、しかし、それでも……

 

 

 

 「僕たちが諦めちゃったら、ゲームクリアなんて絶対にできない! どんな可能性でも挑み続けるんだ!!」

 

 

 

 ……そうだ。原作ではドレスタプレイヤーと偽って渋谷さんに近づいてきた輩がいた。結局そいつは召喚すらされずに一人渋谷さんが死ぬ結果に終わったが。

 

 俺がここにいるということは、少なくともゲーム側からはプレイヤーとみなされている可能性が高い。

 

 ……だったら、あるのか? カードを入手する方法が、ゲームクリアへの道が。

 

 「……わかった。とにかく樽を壊して回ればいいんだね!」

 

 「ああ! 二手に分かれてカードを探そう! 見つかったら大きな声で叫んで。敵に見つかるかもだけど、合流できずに各個撃破されるのが一番まずい。」

 

 「うん! 必ず見つけてくるよ! 秋葉君も気を付けてね!」

 

そういって渋谷さんは駆け出して行った。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 設置されている樽へ向かいながら俺は自問自答していた。

 

 俺は何故あんな嘘をついたのだろうか。あんなことを言うつもりなど全くなかった。というか考えすらしなかった。あの状況はまごうことなき詰みであり、いかに敗戦処理をするか考えるべきだったのだ。

 

 樽を発見、破壊する。ハズレ、ハズレ。

 

 決して、適当なことをいってぬか喜びさせるべきではなかったはずだ。無駄に希望を煽り、最期の絶望を増大させる。これではやっていることがデスゲームの運営と何ら変わらないではないか。

 

 また発見。ハズレ、回復アイテム、ハズレ。

 

 理性ではそうわかっていた、諦めさせることが最適解だと。

 

 ……けど

 

 渋谷さんの、これから至るであろうあの表情を見た。見てしまった。

 

 あんな顔にさせてしまうのは間違いだと、反射的に思ってしまった。

 

 ハズレ……ハズレハズレハズレ。

 

 鼓舞したかった。希望を持たせてみたくなった、いや……違うか。

 

 ハズレハズレゴミハズレゴミゴミ

 

 俺が、あの顔を見たくないと思ってしまった。とっさにエゴが出てしまったのだ。

 

 窮地に立たされてわかったのだが、どうも俺はリアリストにはなれそうもないらしい。

 

 ハズレハズレハズレハズレクマ

 

 余計な感情を振り払うように樽を壊し続ける。

 

 もう決断した、走り出してしまったのだ。ならどんな結末にたどり着こうとも、最後まで歩みを止めるわけにはいかない。

 

 だから………?

 

 今、なにかいたか?

 

 

 

 最後に壊した樽のすぐそばの木、その後ろに……音もなく。

 

 敵が突っ立っていた。

 

 

 「あ」

 

 

 ……吹っ切れるには少し遅すぎたらしい。

 

 至近距離から敵が組み付いてきた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 「やめろ!! はなせっ!!」

 

 脇を両腕で抱えられ人形のように持ち上げられる。あまりにも一瞬の出来事であったため俺の身体はろくに抵抗もできずに宙を浮いた。

 

 くそ、くそくそくそが!!ゲームでも原作でもお前はアグレッシブに動き回るタイプだろうが!!

 

 なにしれっと待ち伏せしてんだよ!!気配殺してんじゃないよくそったれが!!

 

 必死に胴体を掴んでいる腕を叩くが、柔らかい体表に反し中身は砂でも詰まっているのかと思う程固い。まるでサンドバックを殴っているかのようだ。

 

 「グゥ~?」

 

 俺の必死の抵抗を目の前の敵は不思議そうに眺め、そして……

 

 「っ! お、おい……よせよせよせよせやめオ゛ッ!?」

 

 俺を、上下にシェイクし始めた。

 

 ジェットコースターなんか目じゃないほどの加重が首を襲う、上下を一往復するころには頭痛まで起きる。

無茶な衝撃は背骨から尾てい骨まで貫き、内臓がシャッフルされている錯覚を覚えさせる。

 

 「ぐう゛ぁぁ……あ゛ぁぁぅ……」

 

 痛い、体中が痛い!! バラバラになりそうだ!!

 

 それ以上に怖い!! 自分より強大な存在に、まるでおもちゃのように弄ばれるのは、こんなにも恐ろしいものなのか!?

 

 頼む頼む頼む早く終わってくれもう痛めつけないでくれ!! 逃げるとか抵抗するとか何も考えられない、ただこの時間が一刻でも早く終わってくれ、そう願う以上のことが俺にはできなかった。

 

 「グル♪」

 

 ひとしきり俺を振り回し、満足したのかようやく敵は動きを止めた。もちろん俺も抵抗を辞めざるをえなかった。体中が痛く、吐き気も止まらない。今吐いたら内臓が全て出て行ってしまうのではないか、そんな恐怖さえある。

 

 「……あぁ……ぁ……」

 

 満身創痍の俺に、抵抗もままならない獲物に納得したのか。敵は、俺を、更に持ち上げて……

 

 「グアァ」

 

 その口を、大きく開いた。

 

 「……めろぉ……」

 

 明らかに人一人容易く呑み込めそうな大口、ギロチンのように鋭く生えそろっている牙。ぬいぐるみの外見に不釣り合いな生物じみた舌の奥は、一寸先も見通せぬ闇が佇んでいた。

 

 「ゃめろ」

 

 その闇が、ゆっくりと近づいてくる。闇が……死が……俺の目の前に……!

 

 「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだくわれたくないくわれたくないくわれたくないくわれたくないくわれたくないくわれたくないたすけてたすけてたすけてたすけてだれかたすけてくれええええええええええええええ!!!!

 

 死に物狂いで暴れる。痛めつけられた体も植え付けられた恐怖も忘れ、俺は虫けらのように悶えた。あれだけ振り回されたのに、いったいどこにそんな力が残っているのか。そんなことを思う余裕すらなく、腕を叩きつけ、掴んでいる魔手を蹴りつける。

 

 効かないと、無意味であるとわかっている。それでも、迫りくる死への恐怖は体へ全力で抵抗さしていた。

 

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああっ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 絶叫というよりは、生への執着が勝手に喉から漏れ出しているかのようだった。漫画や映画で死ぬモブキャラが断末魔を放つ仕組みが、今ようやくわかった気がした。

 

 

 敵に頭から丸かじりされるためか、視界がいつもより高い。そのため辺りが見渡せた。

 

 遠くで金髪の少女が、渋谷さんが蠢いているのが見えた。俺の断末魔が聞こえたのだろうか、泣きながら樽をぽこぽこ叩いている。

 

 絶体絶命の状況で、最後に見るのが熊公の汚い口の中と、半泣きになりながら樽を探し回っている渋谷さんか……

 

 「ア~~~~♪」

 

 ゆっくりと高度が下がっていく。

 

 ゆっくりと死へ近づいていく。

 

 鋭い歯、触手のように蠢く舌、その奥に控える闇、遠くで渋谷さんが動いている。大きく………こちらに……向かって……手を………振って……………………………………………………!!

 

 

 

 「カァドォオ゛ォォォ!!!! ゴン゛バグドオ゛ォーーーーーー!!!!」

 

 

 恐らく、前世含め今までで一番大きな声を叫んだ。直ぐに渋谷さんの姿は掻き消え、汚らしいピンクと闇が視界を覆う。

 

 やめろやめろやめてくれ!! 見つかったんだ!! 賭けに勝ったんだ!! 渋谷さんはやったんだ!!

 

 頼む、頼む頼む頼む間に合ってくれ!! 俺に勝負させてくれ!! 俺に、ドレスタをさせてくれぇ!!!

 

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 闇が、迫る

 

 

 もう既に俺の頭は、下の付け根を通過した。闇に、死の中に堕ちていく。押し込まれていく。

 

 闇

 

 闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇____________________________

 

 

 

 

 光が、見えた。

 

 優し気な、俺をあの世へ連れて行くような光。ではない。

 

 俺たちを地獄へ連れ込んだ光。

 

 この世界に召喚されるときに放たれる青白い光。

 

 何かが、この世界に生み出されるときに放たれる……光。

 

 

 

 …………このゲームをプレイするための、筐体が、生成されるときの、光ィ!!

 

 「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 先ほどまでの絶望の断末魔ではない、希望とアドレナリンに満ちた咆哮が俺の口から飛び出す!

 

 目の前の光に向かって手を伸ばす。否………押し込める!! こいつを、生成途中の筐体を、この化け物のより奥深くに!!

 

 「グッ!?」

 

 突如喉奥に感じた違和感に、敵が面食らう。押し込む手を止め、慌てたように俺を放り投げた。

 

 「おおおおおおおおおう゛ぁ!?」

 

 吐き捨てられたガムのように地面へ捨てられる。数メートル上からモロに落下した俺は痛みに悶えながら、それでも敵を見上げた。

 

 「グガッ!? グ……グゲッ!?」

 

 圧倒的優位に立っていたはずの敵は、文字通り無から湧いてきた異物を吐き出そうと必死になっていた。明らかにものを掴むことに適していない手を口の中に突っ込み、徐々に巨大になっていく筐体を引きずり出していく。

 

 ……ああ、でももう遅い。

 

 異物は、筐体のサイズは既に口の大きさを超えていた。

 

 吐き出そうと、或いはかみ砕こうと藻掻いている敵に対し、まるで他人事のように機械的に膨らみ続ける筐体。限界はそう遅くないだろう。

 

 熊の頭が徐々に筐体の形へと歪に膨らんでいく。苦痛か、それとも突如増えた重心にバランスが保てなくなったのか。クマがゆっくりと倒れ、その背が地面につかないうちに。

 

 敵の頭が、盛大にはじけ飛んだ。




どうにか敵を反則技で打倒した歪君!! 見える光明!! 始まるゲーム!!
今度こそジェネリック歪君はプレイヤーになれるのか!?



次回「やっぱこいつチュートリアルの強さじゃないよね」
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