宇宙世紀0153年
マリア主義を唱えるザンスカール帝国の侵攻は防がれた。
しかし、それを成したのは地球圏の守り手ではなく、レジスタンス組織、リガ・ミリティアであった。
それは地球連邦政府がコロニー間の争いを収める能力が無くなった証明にもなった。
そのリガ・ミリティアもザンスカールとの争いで、多くの力を失い、霧散。宇宙の秩序を代わりに担う事には至らなかった。

激化するコロニー間の争乱。
地球連邦政府は実質的に宇宙の支配権を実質放棄をしていた。

コロニー同士の紛争、それに伴い、退行する技術力。
宇宙世紀の終焉さえ見えてきた時代。

宇宙世紀0165年
ある運送会社がそんな時代を生き抜くためにコロニー間を縦横無尽に動いていた。
会社の名前は『ザンネンスワー運送』
会社名は社員からすごぶる評判の悪さであった。

1 / 1
第1の幕・宇宙の拾い物

宇宙空域を黒い艦船が飛んでいた。

運送会社『ザンネンスワー運送』の所持する艦船、『ブラックエンジャル』である。

「艦長、まもなく予定している宙域に到着します」

「おーう。あと、艦長じゃくて、社長な」

ザンネンスワー運送の社長、バイオ・ロロンである。

因みに、今バイオに声掛けをした女性はマリリン・ロロン。

バイオの妻でもあった。

「でもよ、シャチョー。なんだってタガナスのコロニーに行く時に、いつもこんな宙域に寄るんだよ?」

ブラックエンジェルのクルーの一人がバイオに確認をする。

「うーん。そろそろ見通しも立ったし、話すかな」

そう言うと、バイオはモニターをつける。

「数年前に偶然撮った画像だ」

「画像って言っても……」

何もない宇宙空間が映しだされているように感じ、言い淀む。

「拡大するぞ」

そう言うと、モニターを拡大していく。

すると、なにかぼやけたモノが見えてきた。

「なんだあれ、虹色の塊?」

そこには、宇宙空間に似合わない虹色の物体があった。

ぼやけた画像を修正していく。

「まさが、モビルスーツなの?」

「多分な。信じられない事にこの軌道上を超光速で周回している。偶然見つけなければ一生気が付かなかっただろうな。しかも、」

さらに画像を拡大する。

「ガンダムタイプだ」

映像にはガンダムタイプの特徴的な見た目が確認できた。

「だけど信じられないぜ。こんな速度で、どうやってモビルスーツが」

「そ、れ、も。これを手に入れれば分かるかもな」

「そんなの、どうやって捕まえるのよ。光の速さで周回しているのよ?」

「この宙域に寄った数回で幾つかビーコンを設置した。断続的に分割してモビルスーツの稼働に干渉するプログラムを転送していた。速度の低下、上手くいけば停止させることもできるかもしれない」

「そんなの何の意味があるのよ。ガンダムタイプって言っても、上手く手に入っても売り物になるかどうか……」

「ま、ロマンがあるだろ?」

ニヤリと笑う亭主の姿を見て頭を抱えるマリリンであった。

「社長、ボーナス出るんですかー?」

「おー。出す出す」

「ちょっと、勝手に決めないでよ!?」

会社の経理はマリリンの仕事である。勝手に出費を決めて不服を言うのであった。

「いーんだよ。今期は黒字だったんだ。ちょっとくらい、社員に良い目を見せないとな」

「もう!」

「(この夫婦相変わらず、仲良いなー)」

そんな事を離しながら進路を目的の宙域へとブラックエンジェルは進むのであった。

「(とは言ったが)」

目的の虹色の光理に包まれるガンダムタイプのモビルスーツの画像を見ながら、バイオは思う。

さすがに、今回の1回で手に入らないだろう。年単位で速度を落としてようやく回収ができるはずだ。

それに、どうして光の速さで軌道上を回っているかは知らないが、まともな状態であるとは思えない。

十中八九、コレクターの観賞用にしかならないだろう。

だが、木星の連中が探しているという噂の”幽霊”の存在も気になる。

ブラッククロ―運送も探しているという話だ。もし同じものなら金になる可能性もゼロじゃない。

「(ま、物のついでだな)」

商談先のタガナスのコロニーに向かう途中で、無理なく寄れる場所だ。

その程度の気分で彼は考えていた。

それがまさか、あんなことが起きるとは。

その時の彼は、いや、ザンネンスワー運送の皆知らなかったのであった。

 

 

 

 

数ヶ月後。

「よぉし、商談成立だな」

「まいど。しっかりと受け取ったぜ」

バイオはタガナスが取り仕切るコロニーで彼が育てた穀物を買い取っていた。

「今年は去年よりも多く買い取るな。捌ききれるのか?」

タガナスはバイオに尋ねる。加工しているとはいえ、ナマモノである以上売りもにできる期間は限られている。タガナスはその事を気にしてバイオに尋ねる。

「おう、何しろ最近、いいMS乗りを見つけてな」

そう言いながら彼は、部分部分が赤く塗装されているザクラオ、トリコロールカラーのジェガンを見つめていた。

「前は、殆どお前が運搬していたな。見たところスムーズにMSを動かしている」

柔軟な動きで荷物を運ぶMSをみてタガナスは感心した様子を見せる。

「たしかに、中々いい動きだ。元軍人か?」

「さてね。ちゃんと働いてくれるなら、よほどの悪人じゃきゃ、うちはOKだぜ」

「成程な。違いない」

かなりの量を買い取ったが、流石に複数のコロニーで育てた作物全てを買い取る事はバイオにはできない。次の商談もタガナスにはあるだろう。

バイオも早速別のコロニーに荷物を仲介業者に運ばないといけない。

彼は挨拶もそこそこ、その場を後にする。

「新人の名前くらい聞いてもいいか?」

「ん?ああ。エドワウとテムだよ」

見てみると、作業を終えた二人がモビルスーツから降りる姿が見えた。

一人は金髪の男性。もう一人は赤髪のやや天然の髪が目立つ男性。

金髪の男性は一仕事終えた事に爽やかそうに笑いながら飲み物を飲んでいた。

そして、そんな彼を赤髪の男性は複雑そうに見つめていた。

 

 

 

彼らとの出会いは摩訶不思議であった。

あの例の宙域でMSの停止プログラムを流し瞬間、虹色の光に包まれたガンダムがブラックエンジェルの前に現れたのだ。

その時の映像をスローで再生すると急に現れたのではなく、超光速で動いていた物体がピタリと艦の前で止まったのだが……。

問題は、そのMSのコクピットと、MSが持っていたカプセルから男性がそれぞれ見つかったのだ。

衰弱もひどく、何日も飲まず食わずだったのは目に見えた。

彼らを治療し、話が出来るようになった時に二人とも記憶喪失であったのが分かった。

……もっとも、二人がそう言っているだけだが。

エドワウが記憶喪失なのは本当だろう。

自分の名前も分からず、彼が思いつくな名前を片っ端から言ってもらった。

シャア・アズナブル、クワトロ・バジーナ、キャスバル・ダイクン、そして、エドワウ・マス。

どの名前も歴史上の人物の名前であったが、エドワウだけは心当たりがなかったので、とりあえずそれを彼の名前にした。

しかし、テム・レイだけは、直ぐに自分をそう言った。記憶が混濁していると自称しているが、それも怪しい。

しかし、バイオはそれを追及はしない。

傷に脛を持つ人間はこのご時世、幾らでもいる。

そして、なにより。

「何よ、私の顔をじっと見て」

「うーん。タガナスの奥さんも美人だけど、ウチの嫁が一番だなって」

「はいはい。ありがと」

彼の妻である、マリリンもそうだ。なにしろ、彼女は。

「ほう、バイオは愛妻家なのだな」

「エドワウ。どうだ、病み上がりなのにMSの操縦なんて大丈夫か?」

エドワウは飲み物を片手にバイオに声を掛ける。

「なに。記憶がないが、どうにもMSの中はしっくりくる。私は軍人か何かだったのだろう」

「シャ……。エドワウ! 年下とは言え、社長だぞ!」

気さくに話を掛けるエドワウにテムは苦言を言う。

二人は治療費の支払いの名目でザンネンスワーの社員になっていた。

「あー、構わないぜ。舐めた態度ならともかく、話す分には普通でいいって。社長ってのも名目上だしな」

ややゲンナリした姿で彼は言う。

「そもそも、MSの操縦も出来るの俺くらいだったし。ただの下っ端でいいのに、なんで俺が……」

「人を一番動かくのが得意なのは貴方なんだから、当然でしょ」

「うーん。嫁さんが厳しい」

「尻に敷かれているな。しかし、したくも無い纏め役か。どうにも他人事に思えんな」

「(お前が言うか)」

あっけらかんと言うエドワウにテムは苛立ちを感じるのであった。

「テムさーーーん!!」

そんな時、小柄な女性がテムを呼びながら近づいてくる。ザンネンスワーのメカニックの一人、リッカー・イットだ。

「リッカーか。どうした?」

「テムさん用に調整したジェガガン。どうだったかと思って!!」

この時代、MSは新造するものは少なく、過去のMSを組み合わせて運用するミキシングビルドMSが主流だ。

ジャガガンはジェガンをベースとしたMSだ。

「悪くはない。ただ、作業をするときはもう少しマニュピレーターの挙動が滑らかにしたいな。この後プログラムを調整するのに付き合ってくれないか?」

「は、ハイっす!!」

嬉しそうに言うリッカー。その様子を見てエドワウがニヤリと笑いながらバイオに声を掛ける。

「若いとは、良いものだな。今日はいい酒が飲めそうだ。甘いものがあると、なお良い」

「アンタ記憶喪失の癖に人生謳歌してるな」

 

 

 

テム・レイはリッカーと共に早速作業をしていた。

「今はこれくらいが精一杯か」

「けど、これなら大分滑らかに動きますよ。さすがです、テムさん!!」

「小型MSを弄るのはまだ慣れないが、ジェガンがベースならな」

テムは作業をしながらリッカーと談笑をしていた。

「けど、すごいですよ。大型タイプなら私よりも全然詳しいですし、小型MSも直ぐに整備するのに慣れちゃって!」

「リッカーの教えが上手なだけさ」

「えへへ! 本当に、記憶喪失だなんて思えない……っ!」

そこまで言って、リッカーは自分の失言に気が付いた。エドワウはともかく、テムは記憶消失を自称するにはMSの知識が豊富すぎる。

「……あ、いや、その!?」

慌てるリッカーに自傷するように笑うテム。

「皆には感謝しているよ。俺みたいな怪しい男の言う事になにも言わないでいてくれて」

テムは作業を中断して、ジェガンを見る。

「助けてもらった恩は返す。だが、その後は……」

その後に続く言葉にリッカーは察しがついた。彼はいずれここを去るのであろう。勿論、本人に彼がしたい事があるのならばそれは受け入れるべきだ。しかし、このまま彼が去る決意を固めるのははリッカーには受け入れられなかった。

「テムさん!!」

リッカーはテムにしがみつく。

「リ、リッカー?」

「あの、私ッ! 私ッ!! 実は―――」

「すまない、テム。少しいいか?」

リッカーがテムに何かを告げようとした時、エドワウが現れた。

「私のザクラオなんだが、相談が……む?」

エドワウが、テムにしがみつくリッカーを見て目を見開く。

「ふむ、お邪魔虫だったか?」

「むぅ! もう良いですッ!! エドさんの馬鹿!」

邪魔が入った怒りで、ズンズンとリッカーはその場を後にするのであった。

「やれやれ、馬に蹴られるつもりはないのだがな。君もなかなか隅に置けない」

凡そ、彼が自分に対して言う発言とは思えない物に、頭を抱えるテム。

「揶揄うのはよせ。それで、エドワウ。俺に何か用か?ザクラオのような小型MSなら、俺よりもリッカーに……」

「流石にあの後で無神経に話しかけれないさ」

エドワウは自身が使用していたMSであるザクラオを見る。ザクラオはジオン系の流れをくむMS。既に長い年月が経っているが、何故かエドワウにはしっくりと来る操縦系だった。

「あの機体は中々だ。ジェガンよりも動かしやすい」

「(だろうな)」

とは言え、かつての所属を考えると決して連邦系のMSを動かせないという事はないだろう。

「ただ、少し左右で腕の挙動に違いを感じる」

「プログラムの修正は試してみるが、あまり期待はするな。パーツに均一性を取るのが難しい。どうしてもジャンクパーツ頼りになる」

テムは今の世の中の歪さを感じる。自分の知る時代よりも進んだ世界。

だというのに、自分の知るMSが重要視もされる。

MSが高性能なのに、ビーム兵器ではなく実弾武器を使用してる、あるいは陸戦型、水中型MSを無理に宇宙用に改造したり、歪すぎる。

「ふむ、なら見た目を拘りたいものだ」

「見た目?」

「ああ。全身赤くして、頭パーツにアンテナがあるとなお良い」

「何を言っているんだ、お前は?」

これはひょっとして、逆に探りを入れて入れられているのだろうか?

「何か記憶の手掛かりになればと歴史のデータを見させてもらっているのだが」

それは知らなかった。自称の自分とは違い、彼は本当に記憶喪失だ。真剣に考えていたのだろう。

「君は、シャア・アズナブルという男を知っているかね」

お前だよ。

テムは言いそうになった言葉をギリギリ抑えた。

「彼がどうにも気になってな。時に彼が乗っていたとされる赤いザク。アレがどうにも心に刺さった。出来れば彼のMSのようにしたいのだ」

自分で自分のファンになってやがる。ここまでくるといっそ馬鹿らしい。テムは何だか目の前の男に警戒するのが馬鹿らしくなった。

「アンテナだけならともかく、全身塗装にどれだけの費用が掛かると思う?新参の俺達がそんな要望通せると思うな」

「それもそうか。仕方ない、肩など目立つ箇所で我慢するか。一つ目標ができた」

しかも完全に諦めきれてない。ここまでくるといっそ清々しい。

バイオ達に拾われて早数ヶ月。テムはずっとエドワウを警戒していた。

自分とは違い本当に記憶喪失。テムはそれを直感的に感じていた。だからこそ、なにかの拍子に記憶が戻れば何をするかと思って警戒していた。

自分達が過ごしていた時代から数十年経った世界。

世界は進歩と衰退をしているが、人間は何も変わらない事を知った。

世界が衰退した事で、過去の記録が容易に確認しにくくなっているが、断片的でも知ることができた。

クロスボーンバンガード、木星帝国、ザンスカール帝国。

そして、今の世の中はどうだ? まさにコロニー間で戦国時代だ。

その世の中を見て、一度は地球を生命の住めない星にしようとした男が何をするのか?

それを警戒していたのだ。

「エドワウ」

「ん?」

「お前は、今の世の中をどう考える?」

「随分と抽象的な質問だな」

エドワウは顎に手を当てて考える。

「そうだな、必要だろうな」

「なにがだ?」

「”100年戦争をしない国”が」

 

 

 

「あの二人、すっかり中核ですね」

管制官である男が、バイオに声を掛けていた。

「ん、テムと、エドワウか? 確かにな」

テムはMSパイロットしてもそうだが、技術者としてもかなり高い。

エドワウは純粋にパイロットをしているが、進路上のデブリ処理をするときの動きはバイオ以上に素早かった。だからこそ、貴重なザクラオを使用させているのだ。

「おかげで、俺はMS操縦の機会がめっきり減った」

「いいじゃね?シャチョーは社長なんだし。MS操縦は職員に任せればいいだろ」

「無敵運送とこはバリバリ操縦してるじゃねえか」

バイオはモニターに映る保管したガンダムタイプを見る。

「そう言えば、あの二人が乗ってたガンダムタイプって調べが付いたのか?」

「それが、全然ってリッカーちゃんが言っていましたね。多分連邦関連のMSと思うって言っていましたけど」

「ガンダムなんて殆ど連邦関連だろ」

「いやそうじゃなくて、部品がどうとか」

結局、調べてもあのMSが大型機のピーク期に作られたであろう大型機の中でも高性能なMSとしか分からなかった。

少なくとも、超光速で宇宙を飛び続けるような機能はついていなかった。

「(あの二人も自分達から説明してくれないと謎ってわけだ)」

テムに関しては問い詰めれば聞く事ができるだろう。

だが、それはしない。あの二人は特別分かりやすいだけで、このスワ―運送は訳アリが多い。

「(ま、俺も人の事は言えないっか)」

バイオはかつて、リガ・ミリティアにいた。もっとも最前線ではなく、スパイとしてザンスカールの支配するコロニーに潜り込んでいたのだが。そこで知った情報をリガ・ミリティアに知らせていた。

そこで、バイオは出会ったのだ。今のスワ―運送の母体となる人達。

そして、生涯のパートナーに。

「アホな事しない限りは、大切な社員さ」

せっかく手に入れたガンダムタイプは売り物に出来ないが、代わりに良い人材が入ってくれた。それで良い。

バイオはそう結論付けると、指示を出す。

「おし! 進路を地球方面に向けろ。”ソドン”と合流するぞ!!」

「「「はい!!」」」

ブラックエンジェルはザンネンスワー運送が保有するもう一つの艦船”ソドン”がいる宙域に向かうのであった。

 

 

 

 

 

一方その頃、マチュは”ソドン”を脱走。MS単独で大気圏に突入していた。

 

 

 




最後の一文を入れた作品がどうしても作りたくて、続きはないです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。