一話千文字前後となっていく予定ですので、ちょっとした暇つぶしにどうぞ。
序章、そして終章 登りエスカレーターを下る男
「おいウェールズ、ウェールズはどこだ?」
「はい、お嬢様。
……ちなみに、私の名前はゲデヒトニスでございます」
「あなたは口を挟まないで、テイラー」
「申し訳ございません」
「先日の薔薇騎士団団長との会談は平和に終わったな。何とも拍子抜けだ」
「あちらとしても、長く続く戦いに疲れていたのでしょう。
並ぶ兵士たちにも、戦意というものが感じられませんでした」
「そうね。
戦いとは虚しいものとは聞いていたが、実際に見てみると虚しい以上に疲れるものだと実感したわ」
「資源の浪費、でございますね」
「おでかけしなければ、これも知ることはなかったということね」
「箱に入ったまま、外の様子を覗くことはできないものでございます」
「守るためとはいえ、私にお出かけを許さなかったのはあなたじゃない」
「お嬢様をお守りするということが、亡き御父上とのお約束でございましたので。
不自由をおかけして、申し訳ございませんでした」
「いいわ。約束は大事だものね」
「ありがとうございます」
「次の予定はどうなっている?」
「次回の予定といたしましては、サー・ホット・回転扉・バリツマワリとの会談が予定されております」
「薔薇騎士団の、お隣さんか」
「さようでございます」
「貧乏暇なしね。
人類と仲直りできたが、未だ火種は燻っている」
「さようでございますね」
「まさに、ボタンを付け違えたようなちぐはぐさを感じるのだ」
「掛け違え」
「……」
「……」
「そこで、その原因を探り出したいと思う」
「流石でございます。
しかし、我々の記録に戦争勃発のきっかけは記されておりません」
「人類は遺していないの?」
「残念ながら。
人類は、我々ほど記録の保持に熱心ではありません。かつて存在した図書館も、人類の襲撃により失われました」
「残念だ」
「そこで多くの人類と関わることにより、お嬢様の考察に有意義な情報を編纂いたします」
「具体的には?」
「数多の世界を渡り、人類との交流を記録してまいります」
「可能なのか、そのようなことが」
「かつて実験的につくられたユーモラス座椅子"ポラリス"を改良した、最新式のオモシロニクスがございます。
科学者たちは、時間だけでなく世界すらも飛び越えることを可能といたしました」
「危険はないの?」
「ビタ一文ございません。
かつての実験記録にも、利用者からのクレームは一度もなかったと記されています」
「そこはかとない不安を感じるわ」
「さっそく、出発いたします。
時間移動故、それほどお待たせしないと思われますが……」
「ますが?」
「お忘れください。余計なことを口走るところでした」
「災いが出ることはなかったのね」
「それではお嬢様、行って参ります!」
「お土産は気にしなくていいわよ!
……随分と地味なエフェクトね」
「ただいま戻りました」
「早いわね。
数多の世界を旅したような表情だけれども」
「お分かりになられますか」
「では、あなたの旅の記録を聞かせなさい」
「すぐにお聞きになられますか?」
「ええ。
わくわくするわね」
時間跳躍の結果、多くの世界を旅し出発した直後に戻ってきたゲデヒトニス。
様々な人間たちとの関わりの記録を、次回から綴ることになります。