「令呪を以て我が傀儡に命ず!セイバー、土蔵に戻れ!今すぐに!」
~略~
墨汁のようにねっとりと行く手を遮る暗闇を、ヘッドライトの光芒で切り裂きながら、セイバーは鋼の猛獣を駆り立てる。
このルートは既に、アインツベルンの出城まで往復する際に既に使ったことがある。行きはアイリスフィールの運転で、戻りはセイバー自らがメルセデスのステアリングを握り、道程を確かめた。たった一往復の経験とはいえ、セイバーにはそれで十分だ。卓説したサーヴァントの記憶力によって、彼女は道幅から傾斜の緩急からコーナーリングのタイミングに到るまで、すべてを詳細に思い起こすことができる。
ついさっき、ライダーの『神威の車輪』が高度を落とし、はるか前方の路上へ着地するのをセイバーは視認していた。何のつもりか征服王は、ここにきてただの逃走に徹するのではなく、地を行く騎馬としての競い合いでセイバーの挑戦に応ずる気になったらしい。
その無骨な心意気は、アイリスフィールの身柄を押さえるという策略とは相いれないもののように思えたが、そこはライダーとそのマスターの思惑の齟齬なのかもしれないが―。
セイバーは違和感を拭えないでいた。
『おかしい・・・。なぜライダーはアインツベルンの城に向かっている?』
セイバーの追跡に気が付いて着陸する前から、ライダーの『神威の車輪』が取る進路はアインツベルンの城のものだった。アイリスフィールを攫ったその後に、彼はわざわざ敵の領土を目指すような逃走路を選んだというのか?
いや、そもそもこれが
生前の宮廷で味わった以来の、謀略の予感をひしひしとセイバーは感じていた。しかし、引き返すわけにもいかない。まだライダーの
~略~
ライダーにとって、まさにそれは予想だにせぬ奇襲であった。かつて我が物顔で天を翔けていた彼が、まさか頭上に舞う敵を仰ぎ見ることになろうとは。
ついにセイバーはライダーを剣の間合いに捉えた。それもポジションは白兵戦において絶対優位となる敵の頭上。
「ライダーッ、覚悟!」
セイバーが『風王結界』を乾坤一擲の気迫をもって振りかぶる。応じたライダーが愛用の宝剣を振り上げる。威力においては位置的優位を占めるセイバーが競り勝つはずの斬撃であったが、すんでのところで五分の拮抗に終わった。
落下するVMAXと、駆け抜ける『神威の車輪』の間には、さらなる剣戟のチャンスはなかった。セイバーは咄嗟の魔力放出で滑空のスピードを抑え、車体のバランスをぎりぎりで立て直し、全ての衝撃をタイヤとサスペンションに吸収させる。
必勝の好機を逃したセイバーであったが、十分に目的を果たしていた。
『やはりアイリスフィールがいなかった!』
剣戟の間際に、
ライダーも剣戟を終えたのち、
原作との変更点。
1.セイバーがライダーとの騎乗戦の後、即座に引き返す。
2.ライダーが『神威の車輪』を最終局面まで喪失しない。