聖杯戦争―
その脅威と驚愕を、いまアイリスフィールは目のあたりにしていた。神話、伝説の世界の住人を、この現世に具現させ激突させるという意味を。
それはまさに、あり得べからざる神話の世界の再演。
雷が天を裂き、荒れ狂う波濤が大地を砕く、幻想でしか成立し得ないはずの奇跡の具現。
”これが・・・サーヴァント同士の戦い・・・”
かつて想像だにしなかった領域の世界を、アイリスフィールは瞬きする隙すら見出せずに注視し続けるしかなかった。
そして驚愕の念はセイバーとて同じだった。
セイバーは、ランサーのサーヴァントが2本の槍を携えて現れたことは擬装の策―この考えをこの時点ではまだ捨てきれていなかった。その優れた”直感”スキルでランサーの真名にあたりをつけていたセイバーだったが、慎重に相手を見定めようとしていた。
ランサーの槍に巻かれた包帯状の呪符は、間違いなく槍の正体を秘め隠すためのものだ。彼とそのマスターは、真名の秘匿について慎重であるらしい。ならば、さらに敵を惑わす策略として、偽の槍まで用意するという周到さも十分に考えられる。
だとすれば、右の長槍、左の短槍―はたしてどちらが、あのランサーの”偽の槍”なのか?
あるいは、そのどちらの槍も”真の槍”なのか?
その見極めの必要性があると判断し、セイバーはランサーの槍捌きを見切るのに専念していた。愛用の得物とその囮では、必ずや技の重みに”虚”と”実”の差が生じるのが道理である。
ところが―
これで3度目に踏み込みを阻まれて、セイバーは大きく飛びすさり間合いを取った。
「どうしたセイバー。攻めが甘いぞ」
「・・・ッ」
ランサーの揶揄にも返す言葉がない。もう30合ばかりも打ち合いながら、セイバーはただの一度も敵を己の刃圏に捉えていない。
~略~
それでも竿状武器の宿命として、連撃の合間にはしばしば隙を見せるのだが、虚を衝いて懐に飛び込もうにも、そのタイミングに限って左の短槍が、周到にセイバーを牽制している。さっきからセイバーの打ち込みは、隙のない短槍の切っ先で封殺されたままだ。
2本の槍のいずれにも”虚”がない。このランサーの英霊は、左右それぞれの短長の槍を、それぞれ左右の腕一本で何不自由なく操っている。いかな研鑽を積んだ槍術が、これほどの離れ技を可能とするのか。
だがそれは、同時に彼女の”直感”がはじき出したランサーの真名が正しいことの、何よりの証左だった。
それは同時に、セイバーがランサーの決まり手を見抜き、その返し手も頭に浮かんだことを意味していた。
原作との変更点
1.左手を封じられることなく、ランサーの真名を看破
2.セイバーがランサーの罠をあらかじめ予測