「今後の方針だけど・・・切嗣、他のマスターも全員がキャスターを狙うとみていいのかしら?」
「まあ間違いないだろうね。監督役が出した報償にはたしかに旨味がある。だが僕らには他の連中にはないアドバンテージがある。やれやれ、よりにもよってジル・ド・レェ伯とはね」
切嗣は皮肉めかした笑いに口元を歪めて、続ける。
「おまけに何を血迷ったか、セイバーをジャンヌ・ダルクと勘違いして付け狙っているときたもんだ。こいつは好都合だよ、アイリ。この森の結界の術式はもう把握できたかい?」
「・・・ええ、大丈夫。綻びも見当たらないし、警鐘も走査もちゃんと機能するわ・・・」
返事を返しながらも、アイリスフィールは後ろに控えるセイバーの顔色を窺わすにはいられなかった。
セイバーの表情は先ほどから変わらず、微笑んだままだった。少なくとも、表情に出るほどの不満はないらしい。
「今回、この城を使うつもりはなかったが、状況が変わった。キャスターをおびき寄せるまでの間、僕らはここで籠城の構えを取る」
「万全の態勢でキャスターを迎撃するため?」
すると切嗣はかぶりを振った。
「キャスターが現れても、正面からぶつかる必要はないよ。君は地の利を最大限に活かしてセイバーを逃げ回らせ、敵を攪乱してくれればいい」
アイリスフィールは驚きのあまり、切嗣の言葉に瞠目した。セイバーは切嗣の真意に気が付いたようで、目を眇めた。
「キャスターと戦わせないの?」
「キャスターは他のマスター全員が狙っている。キャスターを追って血眼になっている連中こそ、格好の獲物なんだよ。セイバーを目当てにキャスターが動けば、それを追ってこの森にまで踏み込んでくるマスターが1人や2人入るはずだ。僕はそいつらを側面から叩く」
なるほど衛宮切嗣らしい発想だった。
切嗣がなぜ急に方針を変えて自分たちと合流したのか、ようやく納得したアイリスフィールは今度こそ振り返ってセイバーを見た。
アイリスフィールの視線に気が付いたセイバーだが、淡々とアイリスフィールに答えた。
「私は切嗣の方針に賛成です。むしろ、最も効率のいい方針といえるでしょう。それに・・・」
「・・・?」
「確信こそありませんが、あのバーサーカーの真名に心当たりがあります。もしバーサーカーが私の考えている人物であるならば、私が彼を倒すよりも、切嗣がマスターを打ち取る方がより上首尾に至れるでしょう」
自らの策に賛同の意を示し、また強敵への警鐘をならすセイバーの声にも、切嗣は冷淡な沈黙を通している。その仮面のような無表情が、アイリスフィールはたまらなく嫌だった。セイバーに、バーサーカーの真名を尋ねるのを忘れてしまうほどに。
~略~
「それじゃあ解散としよう。僕とアイリはしばらくこの城に留まってキャスターの襲来に備える。舞弥は街に戻って情報収集に当たってくれ」
「わかりました」
淀みない返事で頷くと、舞弥は席を立ってサロンを後にする。遅れて席を立った切嗣も、テーブルの上の地図や資料をかき集めてから退出した。最後まで、ただの一度もセイバーとは目を合わせることもなく。
しかしセイバーは不満を顔に出すこともなく、淡々としていた。セイバーにとって切嗣は確かにマスターではあるが、行動を共にしているのはアイリスフィールであるし、方針に不服がない以上、無理に会話をする必要性も感じていないようだった。
そんな彼女と残されたアイリスフィールは、いったいどんな言葉で場をとりなせばいいのか判らなかった。
現在との変更点。
1.セイバーが切嗣の方針に不満を持ってない。
2.セイバーがバーサーカーの真名に気がついている(自分では否定したがっている)。
切嗣のメンタルコンディションは原作より若干安定している程度です。
綺礼vs舞弥こそ発生していませんが、舞弥から教会の偵察に充てていた使い魔が消息を絶っているのを聞かされているうえ、元々アイリスフィールとイリヤの存在があるためです。