「―なぁ、ところでセイバー、そういえばまだ貴様の懐の内を聞かせてもらってないが」
いよいよ征服王がそう水を向けてきたときも、彼女は微塵も揺るがなかった。
「私は我が故郷の救済を願う。万能の願望機をもってして、ブリテンの滅びの運命を変える」
セイバーが毅然と放った宣言に、しばし座は静まりかえった。
「―なぁ騎士王、余の聞き違いかもしれないが・・・貴様はいま”運命を変える”と言ったか?」
「そうだ。聖杯が真に万能であるならば、必ずや」
断言しようとした言葉尻が宙に浮く。ここに至ってセイバーは、ようやくライダーやアーチャーとの間に横たわる微妙な空気の正体に気がついた。差し向かう二人の英霊が白けきっている。
「えぇと、セイバー?そのブリテンとかいう国が滅んだというのは、貴様の治世であったのだろう?」
ライダーたちの反応を訝しみつつも、セイバーは続ける。
「そうだ。だからこそ私は許せない。他でもない、私の責であるが故に」
〜略〜
「王による救済、だと?」
呆れたように失笑しながら、ライダーは肩を竦める。
「解せんなぁ。そんなものに意味があるというのか?」
「それこそが王たる者の本懐ではないか?正しき治世、それこそ全ての臣民が望むものだろう」
「で、王たる貴様は正しさの奴隷か?」
「それでいい。理想に殉じてこそ王。選定の剣を抜いて以来、私はそうした」
「そんな生き方はヒトではない。聖者はな、たとえ民草を慰撫できたとしても、決して導くことなど出来ぬ。確たる欲望のカタチを示してこそ、極限の栄華を謳ってこそ、民と国を導けるのだ」
「王たらんとするならば、ヒトの生き方なぞ望めない。そも、我がブリテンと貴様のマケドニアでは前提が違う」
「ほぅ?」
ライダーは表情を一転させて、さも興味深げにセイバーを見つめる。
「どのような違いがあるというのだ?その違いは王たるものにヒトの生き方を諦めさせるものなのか?」
「我がブリテンは不当な侵略を受けさせられた国であって、貴国のように他国を征服して版図に組み込んだ史実はない」
「然り。余は他国を犯した暴君であるが故に英雄だ」
「なにより民草は疲弊しきっていた。臣民と臣下が求めるのは己の欲や栄華ではなく安寧だった」
「成る程なぁ~」
かたや乱世を鎮めんとした王と、かたや自ら乱世を巻き起こした王との、埋め難い認識の相違がそこにはあった。
しかし二人の王には認識の相違を遺憾に思う心は何一つなかった。そこにあるのは、ただ互いを不倶戴天の好敵手とみなした、闘志だけだった。
ただ一人、アーチャーを除いては。
原作との変更点。
1.セイバーがライダーに論破されず、互いに敵と認める。
2.アーチャー→セイバーは原作まま。