遅れを取りはしなかった By アルトリア   作:蒼天退路

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未遠川決戦


変態はビームで焼き切ります

「今また再び我らは救世の旗を掲げよう!見捨てられたる者は集うがいい。貶められたる者も集うがいい。私が率いる!私が統べる!我ら虐げれたる者たちの怨嗟は、必ずや『神』にも届く!おぉ天上の主よ!我は糾弾をもって御身を讃えよう!」

 

~略~

 

「おぉい、セイバー!このままじゃ埒があかん。いったん退け!」

「馬鹿を言うな!ここで食い止めなければ―」

「そうは言っても手詰まりであろうが!いいから退け。余に考えがある!」

 是非もなかった。セイバーは水面を駆け、ランサーとアイリスフィールが待つ河岸にまで退却した。ライダーの戦車(チャリオット)もまた雷鳴で宙を踏み鳴らしつつ着地を果たす。

「―いいか皆の衆、この先どういう策を講じるにせよ、まずは時間稼ぎが必要だ」

 前置きも抜きにして、ライダーは早急に切り出した。さしもの征服王も、今回ばかりは普段の悠々たる余裕はない。

「ひとまず余が『王の軍勢』に奴を引きずり込む。とはいえ余の精鋭たちが総出でも、アレを殺しつくすのは無理であろう。せいぜい固有結界の中で足止めするのが関の山だ」

「その後はどうする?」

 そう問うランサーに、ライダーは

「わからん」

 あっけらかんと即答した。とはいえ巫山戯(ふざけ)ているわけではないのは、真剣な面持ちから明らかである。

「あんなデカブツを取り込むとなれば、余の軍勢の結界が持つのはせいぜい数分が限界―」

「その必要はない」

 征服王の秘策をもってしても、急場凌ぎの時間稼ぎがそれだけである以上、セイバーに悩みはなかった。

「ぬ?・・・セイバーよ、何か策があるのか?」

 毒気を抜かれた顔でライダーはセイバーに問う。その顔には秘策を隠していたセイバーを咎める様子は全くなかった。

 ライダーを一目すると、セイバーはアイリスフィールの方へ向き直る。

「我がマスター、アイリスフィールよ」

「―ッ!」

 セイバーは自陣営の偽マスターの策を踏まえて、アイリスフィールに声をかけた。その意図を汲み取り、”マスター”としての言動を求められていることを察したアイリスフィールの顔に緊張が走る。

「我が宝具の真名解放の許可を!」

『―!』

 驚きはその場にいた全員に共通するものだった。驚きから一番先に我に返ったライダーが関心に唸る。

「ほぉ。騎士王め、真名解放を温存しておったか」

 言葉とは裏腹に、口調にセイバーを咎める様子はない。寧ろ、セイバーの戦術眼に関心を寄せているようだった。

「わかったわ。セイバー、真名解放を許可します。キャスターを斃して!」

 

~略~

 

 柄を握りしめる両腕に渾身の力を込めて、騎士王は黄金の剣を振り上げる。

 光が集う。輝けるかの剣こそは―

約束された(エクス)勝利の剣(カリバー)ッ!!」

 

~略~

 

「あの威光―眩しいが故に痛々しいわ」

 誰に聞かせるわけでもなく、ライダーが呟く。

「勝てたわ・・・」

 歓喜に声を震わせて、忘我のままにアイリスフィールが呟く。両者の目線の先には、肩で息をするセイバーの矮躯があった。

 だがアイリスフィールの念に異を唱えるかのように、おぞましい呪詛の咆哮が夜気を震撼させて響き渡る。

 頭上を仰ぎ見たセイバーは、そこに憎悪の化身を見出した。漆黒の魔力に侵された鉄の化鳥に騎乗して、バーサーカーは今また再びセイバーに牙を剥かんとしていた。




原作との変更点。
1.ランサーの『必滅の黄薔薇』が初戦で破壊済み。
2.セイバーの真名開放のタイミングが原作より早めに変更。
3.ライダーが『王の軍勢』を展開せず、消耗しない。
4.バーサーカーがセイバーに襲い掛かるタイミングを、キャスター討伐後に変更。
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